DMGP8th DAY1 準々決勝:L(神奈川) vs. ネコラック(兵庫)
グランプリはすでに名が売れた強者が輝くためだけに用意された舞台ではない。
まだ何者でもない彼らがその名を歴史に刻む舞台でもあるのだ。
ここに座るネコラックも例外ではない。兵庫県西宮市を拠点にする彼は、まさしく「町のデュエリスト」だ。
トップ8の舞台なのにその表情から真剣さはあまり感じられず、対戦相手と和やかに話す。それもショップでフリー対戦を挑むときと同じ雰囲気で、だ。
プレイヤーとしても勝利よりも楽しさを優先するタイプ。使うデッキは環境外やテンプレートに自らのチューンを加えたものばかりだ。
そしてその名は、DMGP6thで彼が所属する「Dark Horse」チームがトップ8に入賞したことでDMGPの歴史に刻まれることとなった。
当時彼の使用デッキは『青白黒《ヘブンズ・ゲート》』。意識外から《ファントム・ベール》を飛ばして盾から強力トリガーを踏ませる、当時誰も全く意識していなかったデッキは多くのジャイアントキリングを達成してチームの躍進に貢献。
そんなかつての「町のデュエリスト」は、1年ぶりにグランプリベスト8の場に戻ってきた。
今日も本人独自のチューンを加えた『白単サバキZ』でここまで全勝中。予想もつかないその攻め手で今回も数多の強豪を翻弄してきた。
しかしここで立ちはだかるのはLだ。
Round3で前回王者えんがわを撃ち破った勢いそのままにトップ8に進出。
その使用デッキは『バラギアラ』…そう、防御力が固い『白単サバキZ』に対して強いコンボデッキ。ネコラックもデッキタイプが判明した時点で負けを覚悟したほどだ。
しかし後には引けない。その先には全国大会の切符、そしてこの日の頂点へ。
ネコラックの笑顔が少し引き締まり、Lが初手を手に取った。勝負が始まる。
Lの初手《》セットを見たネコラックは、マナに《憤怒スル破面ノ裁キ》《剣参ノ裁キ》を置きながら《憤怒スル破面ノ裁キ》を撃つ展開。かなり展開が速い手札に見える。
対してLも≪レッツ・ゴイチゴ≫で初動に成功する。
ネコラックは3ターン目に《堅珠ノ正裁Z》で紋章を盾に重ねていく。
Lが考え込んでいる間…ネコラックは本当にショップでフリーデュエルをしているかのようだ。
ネコラック「《》のプロモかっこいいですねw」
L「まあわざわざ揃えようとは思わないですからね…w」
トップ8の試合中とは思えない雑談もそこそこに、Lはマナチャージを決め≪魂フエミドロ≫で2ブーストに成功。
そしてネコラックの4ターン目は…なんとターンエンド。
このターンのセットは《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》なので、《》セットを見て赤白《“轟轟轟”ブランド》を見たハンドキープになってしまったのだろうか。
その一瞬のズレがこの場では生死を分ける。
≪龍装艦 チェンジザ≫から≪ジャミング・チャフ≫でリソース獲得+動きの封殺を狙う。
当然呪文を止められ5マナしか有しないネコラックは《煌メク聖戦 絶十》を召喚するのみでターンを終える。
ターンが返ってきたLだが、ここで長考。
その理由は…ただひとつ。
ここで仕掛けられる手札だったから、覚悟を決める時間が必要だったのだ。
手札から≪奇石 ミクセル≫を追加し、≪マッド・デーモン閣下≫で墓地の《》を回収。
そして≪龍装艦 チェンジザ≫攻撃時、その呪文面を使いながらシールドをブレイク。
《煌世主 サッヴァーク†》のケアをしながら表向きのシールドが重なったシールドをブレイク。これでデッキの要となる表向きのシールドが消滅。
そして呪文を止められたネコラックにはできることがマナチャージしかない。
こうなってしまえばあとは全てを構えたLが好き勝手するのみ。
≪天地命動 バラギアラ≫を2体追加したのち、≪ツインパクト・マップ≫で拾われるのは…《》。そして盤面にはぴったり致死打点。
呪文を止められ、《煌世主 サッヴァーク†》の召喚は不可能。こうなったサバキZにLを止める手段がないのは、お互い周知の事実だった。
L 1-0 ネコラック
ネコラック「やっぱきついですねぇ~…w 1番当たりたくなかったんですよ」
笑いながら語るネコラック、負けが目の前に迫ってもその顔から笑顔は消えない。
デュエル・マスターズを心から楽しむ。ショップでフリーデュエルを楽しむときから変わらないこのスタンスこそが、彼の強さの源になっている。
ネコラックはまず2ターン《堅珠ノ正裁Z》で表向きのシールドを作成。
3ターン目はパスし、その返しにLが≪魂フエミドロ≫でブースト。ここでは《始虹帝 ミノガミ》が落ち2ブーストには失敗する。
ネコラックは4ターン目、今度こそ勝負を仕掛ける手はずは整っている。
《転生ノ正裁Z》から2枚の紋章を切り、《煌メク聖戦 絶十》《集結ノ正裁Z》。
しかしここで《集結ノ正裁Z》から強いカードは見えず、《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》を出すのみにとどまる。
これをLは見逃さず、《始虹帝 ミノガミ》でアタックし3ブーストに成功。これは《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》でブロックし、ディスアドバンテージを抑える。
ここでネコラックが仕掛ける。
《憤怒スル破面ノ裁キ》で《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》効果含む2ドロー、そこから《天門ノ裁キ》で《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》を追加。
その追加ドローで…さらなる《天門ノ裁キ》から《煌世の剣 メシアカリバー》。
見慣れない《天門ノ裁キ》+《煌世の剣 メシアカリバー》のギミック。
このカードの防御性能はサバキZ界でも特に強力で、環境を席巻する『赤白《“轟轟轟”ブランド》』に対しては出すだけで勝ちといっても過言ではないほど。
当然ただの離れない2打点というだけでコントロール対面にも強く、この《煌世の剣 メシアカリバー》を起点に詰めることができる。
だが…展開が少し遅かった。Lのマナゾーンには9枚のカード。
つまり…≪天地命動 バラギアラ≫が出るちょうどのマナ。
まずは《》《》が1体ずつ場に降り立つ。
…とはいえ、このターンの動きは控えめ。≪輪廻暴冥≫で《煌メク聖戦 絶十》を焼きつつ、≪コンダマ≫蘇生。
≪龍装艦 チェンジザ≫召喚で《》を捨ててエンド。≪ジャミング・チャフ≫が理想だったが、ここでターンを明け渡すことになった。
だが相手の場には《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》と《煌世の剣 メシアカリバー》のみ。余程のことがない限りターンが返ってくる。
そう、余程のことがない限り。
ターンが返ってきたネコラック、《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》の軽減が2つ乗った状態で《剣参ノ裁キ》からスタート。
《転生ノ正裁Z》を回収しそれをそのまま撃ち込み、大量に重ねられた表向きのカードを一気に爆発させる。
ここでサバキZ宣言されたのは《煌メク聖戦 絶十》と《集結ノ正裁Z》。その回収は《》と《金剛の断ち 那暮/ダイヤモンド・カッター》。
……ん? ≪ダイヤモンド・カッター≫!?
突如として不穏な空気が流れ始める中、ネコラックの手は止まらない。
6軽減が乗った状態で先ほど回収した《天門ノ裁キ》を撃ち込み、《煌世主 サッヴァーク†》が降臨。
本来『白単サバキZ』は《煌世主 サッヴァーク†》が出たタイミングで軽減が切れるためそこが展開の終着点となることが多いのだが、《天門ノ裁キ》経由ならばそれはない。
軽減が乗った《転生ノ正裁Z》でさらにシールドが回収される。
そして2回目の《天門ノ裁キ》。≪音奏ハイオリーダ≫が満を持して現れる。
2枚のシールドが追加されたことで《発起の意志 ラパエロ》《マシンガン・トーク》が追加打点として現れ……
そして、6軽減。
我々の目の前で起きた芸術的パフォーマンスは、このカードをもって終わりを迎える。
≪ダイヤモンド・カッター≫。
このターンに展開された全てのクリーチャーが…Lに襲い掛かってくる!!
そう、本来即時打点の形成が不可能である『白単サバキZ』ではありえない動きを可能にしたのがネコラック式『《天門ノ裁キ》型サバキZ』。
これこそが全勝の原動力。予想だにしていないタイミングで飛び込んでくる打点を前に、Lができることはシールドを捲ることのみ。そしてその中には≪輪廻暴聖≫のみで、打点を全て止めるには至らない。
そのままダイレクトアタックが通り…鮮やか逆転勝ち。
不利対面から1本をもぎ取り、勝負は3本目へと移る。
L 1-1 ネコラック
勝負には流れが存在する。それは往々にして、場の雰囲気を支配した側が引き寄せるものだ。
この場を支配していたのは間違いなくネコラックだ。もし放送卓で彼のデュエルが行われていればギャラリーが期待するのは彼の≪ダイヤモンド・カッター≫だ。
…だが、所詮そんなものはオカルトだ。
Lはこの勝負に勝って、全国に進まねばならぬのだ。
その気持ちに、手札が呼応した。
その動きはGame1と一切変わらず、≪レッツ・ゴイチゴ≫≪魂フエミドロ≫2ブーストという最高の滑り出し。
ネコラックも《憤怒スル破面ノ裁キ》《転生ノ正裁Z》→《集結ノ正裁Z》と大きく動くが、ここまでだった。
なぜならGame1と違い、先に動く権利を得ているのはLだから。
その手札からは≪龍装艦 チェンジザ≫≪ジャミング・チャフ≫。
《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》すらなく、早くも何もできなくなったネコラック。
それを尻目にLは動き続ける。≪魂フエミドロ≫と≪マッド・デーモン閣下≫での《》回収、そして≪龍装艦 チェンジザ≫でその呪文面をそのまま唱える完璧な動き。
ネコラックは≪音奏ハイオリーダ≫でシールドを増やして抵抗するが…目の前の脅威があまりに、あまりにも重すぎる。
さあ、総仕上げだ。
≪ツインパクト・マップ≫から≪ツインパクト・マップ≫を回収する動きを2回挟み、《》でマナリセット。
そして3回目の≪ツインパクト・マップ≫でついに…目当ての《マッド・デーモン閣下/デーモン・ハンド》に辿り着いた!!
もう何も憂いはない。手札の≪天地命動 バラギアラ≫を全て開放し、≪ジャミング・チャフ≫を墓地から回収し……
ターンは帰ってきた。当然≪ジャミング・チャフ≫が撃たれ、シールドは≪龍装艦 チェンジザ≫のブレイクで全て消え去った。もうどうやっても勝つことはできない。
それでも、≪音奏 ハイオリーダ≫を出して最低限動くことだけはした。
まだデュエマは、続いているのだから。
最後まで、デュエマを楽しむ気持ちを忘れなかったネコラック。
その想いを受け渡すかのようにターンを返し……
Lが小さくガッツポーズし、決勝第4回戦の全試合が終了したのだった。
L 2-1 ネコラック
Winner:L
ネコラックは悔しがらなかった。あくまでいつも通り、ショップでフリーを楽しむ感覚。
とてもここまで全勝で勝ち上がってきたとは思えないその男の顔は…まだ笑顔。
斬るか斬られるか、真剣勝負の舞台だろうが関係ない。彼のように純粋にデュエマを楽しむプレイヤーだって、この場に2回も立つことを証明してみせた。
1年前より先に進むことはできなかったが、結果以上に彼が残した功績は大きいものだ。少なくとも私はそう信じている。
一方勝ったLだが…朝から長丁場のグランプリ、疲労の色が全く隠せていない。
試合前、ラウンド間にジャッジの許可のもと飴を口にしてデュエルをしていた。その糖分不足は深刻なようだ。
……これがのちの悲劇の伏線であることは、この場にいた誰も知る由がなかったのだが。
まだ何者でもない彼らがその名を歴史に刻む舞台でもあるのだ。
ここに座るネコラックも例外ではない。兵庫県西宮市を拠点にする彼は、まさしく「町のデュエリスト」だ。
トップ8の舞台なのにその表情から真剣さはあまり感じられず、対戦相手と和やかに話す。それもショップでフリー対戦を挑むときと同じ雰囲気で、だ。
プレイヤーとしても勝利よりも楽しさを優先するタイプ。使うデッキは環境外やテンプレートに自らのチューンを加えたものばかりだ。
そしてその名は、DMGP6thで彼が所属する「Dark Horse」チームがトップ8に入賞したことでDMGPの歴史に刻まれることとなった。
当時彼の使用デッキは『青白黒《ヘブンズ・ゲート》』。意識外から《ファントム・ベール》を飛ばして盾から強力トリガーを踏ませる、当時誰も全く意識していなかったデッキは多くのジャイアントキリングを達成してチームの躍進に貢献。
そんなかつての「町のデュエリスト」は、1年ぶりにグランプリベスト8の場に戻ってきた。
今日も本人独自のチューンを加えた『白単サバキZ』でここまで全勝中。予想もつかないその攻め手で今回も数多の強豪を翻弄してきた。
しかしここで立ちはだかるのはLだ。
Round3で前回王者えんがわを撃ち破った勢いそのままにトップ8に進出。
その使用デッキは『バラギアラ』…そう、防御力が固い『白単サバキZ』に対して強いコンボデッキ。ネコラックもデッキタイプが判明した時点で負けを覚悟したほどだ。
しかし後には引けない。その先には全国大会の切符、そしてこの日の頂点へ。
ネコラックの笑顔が少し引き締まり、Lが初手を手に取った。勝負が始まる。
Game 1
先攻:ネコラックLの初手《》セットを見たネコラックは、マナに《憤怒スル破面ノ裁キ》《剣参ノ裁キ》を置きながら《憤怒スル破面ノ裁キ》を撃つ展開。かなり展開が速い手札に見える。
対してLも≪レッツ・ゴイチゴ≫で初動に成功する。
ネコラックは3ターン目に《堅珠ノ正裁Z》で紋章を盾に重ねていく。
Lが考え込んでいる間…ネコラックは本当にショップでフリーデュエルをしているかのようだ。
ネコラック「《》のプロモかっこいいですねw」
L「まあわざわざ揃えようとは思わないですからね…w」
トップ8の試合中とは思えない雑談もそこそこに、Lはマナチャージを決め≪魂フエミドロ≫で2ブーストに成功。
そしてネコラックの4ターン目は…なんとターンエンド。
このターンのセットは《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》なので、《》セットを見て赤白《“轟轟轟”ブランド》を見たハンドキープになってしまったのだろうか。
その一瞬のズレがこの場では生死を分ける。
≪龍装艦 チェンジザ≫から≪ジャミング・チャフ≫でリソース獲得+動きの封殺を狙う。
当然呪文を止められ5マナしか有しないネコラックは《煌メク聖戦 絶十》を召喚するのみでターンを終える。
ターンが返ってきたLだが、ここで長考。
その理由は…ただひとつ。
ここで仕掛けられる手札だったから、覚悟を決める時間が必要だったのだ。
手札から≪奇石 ミクセル≫を追加し、≪マッド・デーモン閣下≫で墓地の《》を回収。
そして≪龍装艦 チェンジザ≫攻撃時、その呪文面を使いながらシールドをブレイク。
《煌世主 サッヴァーク†》のケアをしながら表向きのシールドが重なったシールドをブレイク。これでデッキの要となる表向きのシールドが消滅。
そして呪文を止められたネコラックにはできることがマナチャージしかない。
こうなってしまえばあとは全てを構えたLが好き勝手するのみ。
≪天地命動 バラギアラ≫を2体追加したのち、≪ツインパクト・マップ≫で拾われるのは…《》。そして盤面にはぴったり致死打点。
呪文を止められ、《煌世主 サッヴァーク†》の召喚は不可能。こうなったサバキZにLを止める手段がないのは、お互い周知の事実だった。
L 1-0 ネコラック
ネコラック「やっぱきついですねぇ~…w 1番当たりたくなかったんですよ」
笑いながら語るネコラック、負けが目の前に迫ってもその顔から笑顔は消えない。
デュエル・マスターズを心から楽しむ。ショップでフリーデュエルを楽しむときから変わらないこのスタンスこそが、彼の強さの源になっている。
Game 2
先攻:ネコラックネコラックはまず2ターン《堅珠ノ正裁Z》で表向きのシールドを作成。
3ターン目はパスし、その返しにLが≪魂フエミドロ≫でブースト。ここでは《始虹帝 ミノガミ》が落ち2ブーストには失敗する。
ネコラックは4ターン目、今度こそ勝負を仕掛ける手はずは整っている。
《転生ノ正裁Z》から2枚の紋章を切り、《煌メク聖戦 絶十》《集結ノ正裁Z》。
しかしここで《集結ノ正裁Z》から強いカードは見えず、《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》を出すのみにとどまる。
これをLは見逃さず、《始虹帝 ミノガミ》でアタックし3ブーストに成功。これは《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》でブロックし、ディスアドバンテージを抑える。
ここでネコラックが仕掛ける。
《憤怒スル破面ノ裁キ》で《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》効果含む2ドロー、そこから《天門ノ裁キ》で《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》を追加。
その追加ドローで…さらなる《天門ノ裁キ》から《煌世の剣 メシアカリバー》。
見慣れない《天門ノ裁キ》+《煌世の剣 メシアカリバー》のギミック。
このカードの防御性能はサバキZ界でも特に強力で、環境を席巻する『赤白《“轟轟轟”ブランド》』に対しては出すだけで勝ちといっても過言ではないほど。
当然ただの離れない2打点というだけでコントロール対面にも強く、この《煌世の剣 メシアカリバー》を起点に詰めることができる。
だが…展開が少し遅かった。Lのマナゾーンには9枚のカード。
つまり…≪天地命動 バラギアラ≫が出るちょうどのマナ。
まずは《》《》が1体ずつ場に降り立つ。
…とはいえ、このターンの動きは控えめ。≪輪廻暴冥≫で《煌メク聖戦 絶十》を焼きつつ、≪コンダマ≫蘇生。
≪龍装艦 チェンジザ≫召喚で《》を捨ててエンド。≪ジャミング・チャフ≫が理想だったが、ここでターンを明け渡すことになった。
だが相手の場には《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》と《煌世の剣 メシアカリバー》のみ。余程のことがない限りターンが返ってくる。
そう、余程のことがない限り。
ターンが返ってきたネコラック、《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》の軽減が2つ乗った状態で《剣参ノ裁キ》からスタート。
《転生ノ正裁Z》を回収しそれをそのまま撃ち込み、大量に重ねられた表向きのカードを一気に爆発させる。
ここでサバキZ宣言されたのは《煌メク聖戦 絶十》と《集結ノ正裁Z》。その回収は《》と《金剛の断ち 那暮/ダイヤモンド・カッター》。
……ん? ≪ダイヤモンド・カッター≫!?
突如として不穏な空気が流れ始める中、ネコラックの手は止まらない。
6軽減が乗った状態で先ほど回収した《天門ノ裁キ》を撃ち込み、《煌世主 サッヴァーク†》が降臨。
本来『白単サバキZ』は《煌世主 サッヴァーク†》が出たタイミングで軽減が切れるためそこが展開の終着点となることが多いのだが、《天門ノ裁キ》経由ならばそれはない。
軽減が乗った《転生ノ正裁Z》でさらにシールドが回収される。
そして2回目の《天門ノ裁キ》。≪音奏ハイオリーダ≫が満を持して現れる。
2枚のシールドが追加されたことで《発起の意志 ラパエロ》《マシンガン・トーク》が追加打点として現れ……
そして、6軽減。
我々の目の前で起きた芸術的パフォーマンスは、このカードをもって終わりを迎える。
≪ダイヤモンド・カッター≫。
このターンに展開された全てのクリーチャーが…Lに襲い掛かってくる!!
そう、本来即時打点の形成が不可能である『白単サバキZ』ではありえない動きを可能にしたのがネコラック式『《天門ノ裁キ》型サバキZ』。
これこそが全勝の原動力。予想だにしていないタイミングで飛び込んでくる打点を前に、Lができることはシールドを捲ることのみ。そしてその中には≪輪廻暴聖≫のみで、打点を全て止めるには至らない。
そのままダイレクトアタックが通り…鮮やか逆転勝ち。
不利対面から1本をもぎ取り、勝負は3本目へと移る。
L 1-1 ネコラック
Game 3
先攻:L勝負には流れが存在する。それは往々にして、場の雰囲気を支配した側が引き寄せるものだ。
この場を支配していたのは間違いなくネコラックだ。もし放送卓で彼のデュエルが行われていればギャラリーが期待するのは彼の≪ダイヤモンド・カッター≫だ。
…だが、所詮そんなものはオカルトだ。
Lはこの勝負に勝って、全国に進まねばならぬのだ。
その気持ちに、手札が呼応した。
その動きはGame1と一切変わらず、≪レッツ・ゴイチゴ≫≪魂フエミドロ≫2ブーストという最高の滑り出し。
ネコラックも《憤怒スル破面ノ裁キ》《転生ノ正裁Z》→《集結ノ正裁Z》と大きく動くが、ここまでだった。
なぜならGame1と違い、先に動く権利を得ているのはLだから。
その手札からは≪龍装艦 チェンジザ≫≪ジャミング・チャフ≫。
《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》すらなく、早くも何もできなくなったネコラック。
それを尻目にLは動き続ける。≪魂フエミドロ≫と≪マッド・デーモン閣下≫での《》回収、そして≪龍装艦 チェンジザ≫でその呪文面をそのまま唱える完璧な動き。
ネコラックは≪音奏ハイオリーダ≫でシールドを増やして抵抗するが…目の前の脅威があまりに、あまりにも重すぎる。
さあ、総仕上げだ。
≪ツインパクト・マップ≫から≪ツインパクト・マップ≫を回収する動きを2回挟み、《》でマナリセット。
そして3回目の≪ツインパクト・マップ≫でついに…目当ての《マッド・デーモン閣下/デーモン・ハンド》に辿り着いた!!
もう何も憂いはない。手札の≪天地命動 バラギアラ≫を全て開放し、≪ジャミング・チャフ≫を墓地から回収し……
ターンは帰ってきた。当然≪ジャミング・チャフ≫が撃たれ、シールドは≪龍装艦 チェンジザ≫のブレイクで全て消え去った。もうどうやっても勝つことはできない。
それでも、≪音奏 ハイオリーダ≫を出して最低限動くことだけはした。
まだデュエマは、続いているのだから。
最後まで、デュエマを楽しむ気持ちを忘れなかったネコラック。
その想いを受け渡すかのようにターンを返し……
Lが小さくガッツポーズし、決勝第4回戦の全試合が終了したのだった。
L 2-1 ネコラック
Winner:L
ネコラックは悔しがらなかった。あくまでいつも通り、ショップでフリーを楽しむ感覚。
とてもここまで全勝で勝ち上がってきたとは思えないその男の顔は…まだ笑顔。
斬るか斬られるか、真剣勝負の舞台だろうが関係ない。彼のように純粋にデュエマを楽しむプレイヤーだって、この場に2回も立つことを証明してみせた。
1年前より先に進むことはできなかったが、結果以上に彼が残した功績は大きいものだ。少なくとも私はそう信じている。
一方勝ったLだが…朝から長丁場のグランプリ、疲労の色が全く隠せていない。
試合前、ラウンド間にジャッジの許可のもと飴を口にしてデュエルをしていた。その糖分不足は深刻なようだ。
……これがのちの悲劇の伏線であることは、この場にいた誰も知る由がなかったのだが。
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