デュエル・マスターズ

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全国大会2019 中四国エリア予選 Aブロック準決勝:ゆで(広島) vs. レイ-(徳島)

撮影者:堀川 優一
ライター:金子 幹


「会場の中、暑い方はいらっしゃいませんか?」

 ヘッドジャッジがそう選手たちに呼びかけた。

 会場の外の気温は実に6℃を下回っていた。
 それに比例するように、中は少々暑差を感じる程度の温度にされていたのである。


 暫しの後、運営による空調の調節が図られたのもつかの間、カバレージ席には2人の選手が着席していた。

ゆで「出身はどちらなんですか?」

レイ-「徳島です」

 対戦前に軽い談笑を交える2人。
 その雰囲気は準決勝という場で拍子抜けするほど和やかなものだ。

 ふと彼らの顔を見るとお互いの額には、少し汗が滲んでいた。

 先ほどの空調の調整で、室温は下がりつつある。
 だが、彼らの冷めやらぬ興奮が、勝ちへの衝動がその汗から見て取れる。

 それほどまでの熱意が、レイ-、ゆで両者の間に伝わってくる


 レイ-は大きく息を吸い、呼吸を整えてデッキをシャッフルし始めた。

 彼がこの舞台に立つのは既にこれで4度目だ。

 中四国エリアでその2回も決勝で無尽蔵のサブウエポンに敗北し、そのたびに唇を噛む思いをしてきた。
 昨年度はベスト8、この中四国エリアにおいて常に最上位の成績を残している彼だが、未だに全国の切符を手にしたことはない。
 今年こそは、と意気込む彼をこの舞台まで導いたデッキは『火水自然ミッツァイル』。

 一方のゆで
 広島の西郷中央のカードショップに足しげく通い、ネコミミめだかめるへる等と調整しあい、ここまで来れたと誇らしげに話す。
 勝ちたいな…、と呟く彼の使用するデッキは『水魔導具』。


 熱気冷めやらぬ中、文字通りの熱戦の火蓋が切られる。


先攻:ゆで

 先に動いたのは、2ターン目のゆで。
 《堕呪 バレッドゥ》《凶鬼卍号 メラヴォルガル》を墓地に落とす。

 一方、レイ-は《霞み妖精ジャスミン》で順調にブーストをしていく。

 お分かりのように、この時ゆでの手札にはまだ《卍 新世壊 卍》がない。
 つまりは、山札からまずは、儀式の祭壇たる《卍 新世壊 卍》を掘り起こさねばならないのだ。

 その事実を把握したレイ-。

 ここまで来たプレイヤーなら対面の『水魔導具』に対して何をすべきかはわかっている。

 一般的な魔導具呪文で山札を掘り進めるものは《堕呪 ゴンパドゥ》《堕呪 バレッドゥ》《堕呪 ウキドゥ》だろう。
 どれも2コストの呪文ゆえ、この環境を代表するあのカードによってレイ-はゆでの動きを止めにかかる。


 そう、≪「本日のラッキーナンバー!」≫だ。

 もはや、この2ブロック環境において水文明を積む理由になるというほど、《BAKUOOON・ミッツァイル》と共に今回の環境の代名詞ともいえる、このカード。当然、レイ-のデッキにも4枚積まれている。

 ゆでの手札は4枚あるが、返しのターンに、マナをチャージしてターンを終了することしかできない。

 実質の追加ターンを得る形となったレイ-。
 6マナに達したことで、《マリゴルドⅢ》《天啓 CX-20》を始めとする全てのマナドライブ(6)持ちのGRクリーチャーの真価を発揮できるようになった


 満を持して、レイ-の手札から唱えられたのは《“魔神轟怒”万軍投》
 その効果で、《ダダダチッコ・ダッチー》《無限合体 ダンダルダBB》《マリゴルドⅢ》が一挙に並ぶ。
 そのまま《ダダダチッコ・ダッチー》の効果から解決すると、トップから捲れたのは《DROROOON・バックラスター》
 更に《マリゴルドⅢ》の効果でマナから場に出されたのは《κβバライフ》をライドした《全能ゼンノー》

 このターン、《BAKUOOON・ミッツァイル》こそ絡まなかったものの、たった1枚のカードから7枚のクリーチャーが生まれた。


 ただでさえダイレクトアタックをするまでの打点を有したレイ-の盤面。
 ここに《BAKUOOON・ミッツァイル》《天啓 CX-20》が絡めば今度こそゆでのターンは帰ってこないだろう。

 だが、ゆでの顔には焦りは見られなかった。


 返しのターンにゆでの手札から唱えられたのは《ゴゴゴ・Cho絶・ラッシュ》。同時に捨てられたのは、《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》

 「コスト99以下になるように好きな数のクリーチャーを選び破壊する。」
 実質、4コストの《インビンシブル・アビス》と言い換えても過言ではない。

 一瞬で更地になったレイ-の盤面。

 だが、ゆでの盤面にはいまだに《卍 新世壊 卍》はない。
 《卍 新世壊 卍》の門が開かれるのは、魔導具呪文のマナコストの関係上2ターン以上かかる。

 その間隙を縫うように、レイ-は《Wave ウェイブ》による再使用も含めて、2ターン続けて≪「本日のラッキーナンバー!」≫を唱える。
 宣言はもちろん「2」だ。

 当然、ゆではその間、大きなアクションはできない。


 このようにして、もつれにもつれこんだ今試合。

 きたる7ターン目。


 とうとう、ゆでの手札から《卍 新世壊 卍》が場に出された。
 そう、≪「本日のラッキーナンバー!」≫で止めれるのは呪文とクリーチャーのプレイのみ。
 それも《卍 新世壊 卍》がバトルゾーンにあれば、後続の水魔導具呪文も全て自由に撃てることになる。

 顔に焦りが見え始めたレイ-の続くターン。

 2体のクリーチャーを破壊して出てきたのは《BAKUOOON・ミッツァイル》

 レイ-も覚悟を決めたようだ。

 共に《バイナラシャッター》《ダダダチッコ・ダッチー》がGR召喚され、《ダダダチッコ・ダッチー》の効果で場に送り出されたのは《DROROOON・バックラスター》
 さらに追加で《無限合体 ダンダルダBB》も場に並ぶ。


 ここで、総攻撃に仕掛けるレイ-。

 だが、はやる気持ちを抑え、レイ-は冷静に攻撃を始める。
 《無限合体 ダンダルダBB》の効果で唱えるのは≪「本日のラッキーナンバー!」≫

 宣言は「8」。


 既に《卍 新世壊 卍》が展開されている以上、水魔導具及び《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を止めることはできない。
 であれば、《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》から出される《凶鬼卍号 メラヴォルガル》≪卍 ギ・ルーギリン 卍≫を止めるしかない。

 そして、最悪の場合を考慮したレイ-のプレイがここで活きた。


 1枚目のトリガーは《堕呪 カージグリ》
 《BAKUOOON・ミッツァイル》がバウンスされ、スピードアタッカーが失われたレイ-の盤面はターンエンドを宣言するしかない。
 が、《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を唱えられたとしてもゆでのバトルゾーンにドルスザクが並ぶことはない。

 だが、ここからのゆでのプレイは見事だった。

 続くターンで2枚目の《卍 新世壊 卍》を展開すると、ターン終了時に1枚目の《卍 新世壊 卍》の「無月の門99」で《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を唱えた。
 当然、先に述べた通り《凶鬼卍号 メラヴォルガル》≪卍 ギ・ルーギリン 卍≫は場に出ない。
 が、それ以上に2枚目の《卍 新世壊 卍》の門を開く猶予を無理やり生み出したのだ。

 ゆでは追加ターン、2枚目の《ゴゴゴ・Cho絶・ラッシュ》《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を捨て、再度レイ-の盤面を更地にする。


 帰ってきたレイ-のターン。
 どうにかして、≪「本日のラッキーナンバー!」≫に触ろうとするが、それはかなわない。

 とうとう2枚目の《卍 新世壊 卍》の下に4枚の魔導具が揃う。
「もう≪「本日のラッキーナンバー!」≫の宣言ないですよね?」

 こうして、開かれた最後の「無月の門99」。
 《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》により世界が流転する。


≪卍 ギ・ルーギリン 卍≫2体と《凶鬼卍号 メラヴォルガル》2体が盤面に並ぶ。

 と、ここまでくれば多くのプレイヤーが、このままゆでの勝利で終わるだろうと思っていた。

 だが、ゆでは、《卍 新世壊 卍》に水魔導具を唱える過程で残りの山札が残り2枚になっていたのだ。

 追加されたゆでのエクストラターンの直前、≪りんご娘はさんにんっ娘≫の効果で≪スゴ腕プロジューサー≫はマナに戻る。

 GR召喚

 捲られたのは《ダダダチッコ・ダッチー》
 ここで≪機術士ディール≫が捲れれば、その効果でコスト8を宣言し、≪卍 ギ・ルーギリン 卍≫《凶鬼卍号 メラヴォルガル》がすべてバウンスされ、ゆでがそのまま山札切れで敗北。レイ-の逆転勝利となる。

レイ-≪機術士ディール≫こい!……こい!!

 残された一縷の望み。

レイ-頼む……!頼む!

 ゆでも必死に祈る。

 緊張の一瞬の後


 レイ-の望みむなしく≪機術士ディール≫は最後までバトルゾーンに出ることはなかった。


Winner:ゆで

 両者の額には、対戦前よりもさらに汗が滲んでいたように見えた。

 それほどまでの熱戦と評するにふさわしい試合だった。

 またしても、全国への切符を逃したレイ-。
 喪失感のあまり、彼は試合後にしばらく頭を垂れていた。

 対して、ゆではまだこの熱を冷まさせるわけにはいかない。

 彼は、この日、最後のステージへ歩みを進める。

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