全国大会2019 Round 6:TIGHT(神奈川県) vs. るるる(神奈川県)
ライター:河野 真成
撮影者:後長 京介
他のゲームの蓄積があった彼は、公開情報から相手の手札や2,3ターン先の展開を読むのが、抜群に上手かった。そのスキルと、【闇単ヘルボロフ】というデッキとの相性が抜群によかったのだ。
しかしTIGHTは、決してその実績だけで満足することはなかった。お前の信じる道を征け――友から貰ったその言葉の通り、己の道を突き進んでいった。
昔は決して得意だったとは言えなかったデッキ構築も、鍛錬を重ねたことでいつの間にか彼の強みになった。2019年、彼の傑作デッキの一つである【火光轟轟轟ミッツァイル】を、そして自身でチューニングを重ねた【火水ミッツァイル】を使いこなし、この全国大会への出場を決めたのだった。
その卓越したスキルを考えると、彼が全国大会に出場するのもごく自然のことにように思える。
一方のるるるは、かなり直近で台頭したプレイヤーだった。飲み会でおじさんたちがデュエマの昔話をしていると「いや、全然知らないんですよね」「自分その時代わかんないですよ」みたいなことをよく言っていた記憶がある。
しかし年期とデュエマに懸ける情熱には、一切関係がない。
そしてるるるは、その端正な見た目とは裏腹に凄まじい根性も持っていた。2019年度の終盤、彼は脅威の19日連続でのCS参加を決行し、そして完走。その成果もあって、見事に全国大会へと滑り込んだ。
共に関東のプレイヤーで、今回は関東連合で調整をした仲だ。特にるるるは何度も、「このメンバーと調整出来てよかった」と語っていた。TIGHTも惜しみなく、るるるに知識やスキルを伝えていた。
TIGHT「全力で来てくれ」
るるる「もちろん、絶対勝ちますよ」
席に着くと、両者の間でそんな会話が行われた。
この卓はいわゆる階段卓だった。TIGHTがここまで4-1、るるるは3-2。TIGHTはここで勝つと予選進出に王手を掛ける。
数か月もの間、共に調整を続けた仲。だからこそ、だ。TIGHTの意図としては「そういった忖度一切抜きにして、全力に勝ちにこいよ」と言っている。
そしてるるるも、真っ向からそれに応える言葉を放った。強者との対戦を、デュエマを、全力で楽しむ。
デッキはもちろん、40枚同型。40枚全く同じの【モモキングダム退化】。チーム内で最強と結論を出したデッキだ。
写真撮影が始まると、「グータッチポーズをお願いします」と言われたるるるは、一切の躊躇いなくハートマークを作る。TIGHTがそれに応じてしっかり仲良しアピールもしたところで、試合は始まった。
Game 1
先攻:るるる先攻はじゃんけんに勝利したるるる。《禁断のモモキングダム》を埋めて終了。対するTIGHTは、《アルカディアス・モモキング》をチャージして終了。
続くターンで、《新世界王の闘気》を埋めて終了のるるる。上からの《禁断英雄 モモキングダムX》+退化パーツ、そこから走るための進化を抱えていく。
2ターン目をもらったTIGHTは、是非ともここでは動きたいところ。同じく《新世界王の闘気》を埋めて、《エボリューション・エッグ》だった。最善とは言えないかもしれないが、《禁断英雄 モモキングダムX》を手札に加えたことで、こちらも次の退化への布石を打つ。
しかし、次のドローを見た思わずるるるは歓喜の声を漏らした。
トップから駆け付けたのは《禁断英雄 モモキングダムX》本体!
これをそのままプレイすると、続けて≪堕牛の一撃≫を放つ。さらにここで「よし」ともう一声。
るるるは《未来王龍 モモキングJO》を迷わず攻撃に向かわせると、《禁断のモモキングダム》を乗せる。
このカードは、選ばれない。G・ストライクは効かない。
この走り方をしてくることは……と、TIGHTはこの時点でもう勝ちの見込みがないことを察していただろう。それは何百、何千回、自分たちが練習で繰り返してきた通りの動きなのだ。
すべては調整通り、すべては練習通り。そのままを、淡々とやるだけ。鍛錬を積み重ねたもの同士の戦いとは、時に淡泊なのだ。
るるるは続けて《未来王龍 モモキングJO》の攻撃時に、《キャンベロ <レッゾ.Star>》の侵略宣言、そして《無双龍騎 ボルバル・モモキング》を乗せる。
シールドは全て開かれ、キャンベロの効果でカウンターをすることも出来ない。
そしてそれはイコールで、るるるの勝ちが決まった瞬間だった。
WINNER:るるる
関東連合の同士討ちは、るるるの勝利となった。
るるる「最終戦、絶対勝つんで。絶対オポーネント上げるんで」
るるるは、TIGHTにそう伝えた。TIGHTは最終戦に勝てば、充分決勝トーナメント進出の見込みがある。だからこそ、るるるは勝者の責務を果たすと約束した。友から勝利を得た者としての、責務だ。
だが筆者はどちらかと言うと――強者と認め合った者同士が、その対戦に全力で挑み、楽しもうとする……この対戦で見せた両者のそんな姿勢こそ、とても誇らしく思えるのだった。
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