DMGP2023-1st Day1(アドバンス) :TOP5カード紹介
ライター:伊藤 敦(まつがん)
3825名が幕張メッセに集った、アドバンス・フォーマットで開催されたDMGP2023-1st Day1。ここでは、そんなDMGP2023-1st Day1で活躍したカードのうち5枚をピックアップし、トーナメント決着までの道のりを振り返っていこう。
第5位:《煌銀河最終形態 ギラングレイル》
第4回戦のフィーチャーマッチで、その事件は起こった。《超戦龍覇 モルトNEXT》に追い詰められたDMGP2ndのチャンピオンにして2016年の全国王者でもあるせいながトリガーしたのは、《アクア・スペルブルー / インビンシブル・オーラ》。そう、まさかの「マーシャル・デリート」を持ち込んでいたのだ。
「モルトNEXT」側も《禁断 ~封印されしX~》を採用しているがゆえに自ターン中の《オールデリート》が封じられているこのマッチアップで、頼みの綱はS・トリガーしかなかった。それゆえに、序盤の《マーシャル・クイーン》で埋めた《アクア・スペルブルー / インビンシブル・オーラ》を目論みどおり踏ませることに成功した。だが、本当の勝負はここからなのだ。
拝むように手を合わせ、対戦相手であるもちきんのシャッフルを見守るせいな。そして、「このシャッフルにはすべてがかかっている」という解説の言葉の後にめくれたのは……大当たりも大当たり、《煌銀河最終形態 ギラングレイル》!!! まさかのフィーチャーマッチでのこれ以上ない大興奮のめくりに、放送を見ていた視聴者たちのボルテージは最高潮に達する。
しかし、勝負はまだそれで決着したわけではなかった。攻撃を凌いだとはいえ、せいなには大量に並んだクリーチャーによる地道なダイレクトアタックで勝つしか方法がない。けれどももちきんの《禁断 ~封印されしX~》は既に封印が残り3枚。「革命0トリガー」による逆転の可能性がまだ残されているのだ。
W・ブレイク……通る。W・ブレイク……《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》がトリガー。5枚の中に「革命0トリガー」は……ない!!
最後のシールドもブレイク……通る!パン、パン、と両手を叩いて祈りつつダイレクトアタックするせいな!!
「革命0トリガー」は!?
《ボルシャック・ドギラゴン》2枚!!
2枚目こそ《ボルシャック・ドギラゴン》がめくれて失敗するものの、1枚目で《爆炎龍覇 モルトSAGA》がめくれていたことで、《禁断 ~封印されしX~》の封印を2枚剥がしながら《伝説の救世主 ワタル》が付いた状態でバトル。結果≪伝説の救世主 ワタル≫へと「龍解」し、トップの《ボルシャック・ドギラゴン》を手札に引き入れながら耐えるもちきん。
それでも、打点自体はまだ十分にある。問題は、トップが火の非進化クリーチャーかどうか。
追加されたシールドをブレイクし、再びダイレクトアタックするせいな。またも《ボルシャック・ドギラゴン》2枚が宣言され、そのトップは……。
《爆炎龍覇 モルトSAGA》!!
見事《禁断 ~封印されしX~》の「禁断解放」により、大量のGRクリーチャーの上に「封印」を乗せきるほどの山札が残っていなかったことで、せいなは逆転負けを喫してしまったのだった。
かくしてデュエマの醍醐味である逆転に次ぐ逆転、そのすべてが詰まった名勝負がフィーチャーマッチで繰り広げられるというこの奇跡的な巡り合わせに関しては、さすがに本稿で取り上げざるをえなかった次第である。
誇張抜きで本当に滅茶苦茶面白い試合なので、ぜひゲームの最初からご覧いただきたい。
第4位:《爆炎龍覇 モルトSAGA》
DMGPの歴史は、《超戦龍覇 モルトNEXT》というカードとともにあった。DMGP1stは2015年2月の「ドラゴン・サーガ 第4章 超戦ガイネクスト×極」での《超戦龍覇 モルトNEXT》の登場から半年後の開催だった。メタゲームブレイクダウンでは決勝ラウンド64名のうちの12名が使用し、トップメタの一角となった。
DMGP4thでは決勝ラウンド128名のうち47名が使用、DMGP5thでも決勝ラウンド128名のうち31名が使用と、その強さはとどまるところを知らなかった。
ただやはり勝太→ジョーという原作での主人公交代とカードスペックのインフレに伴い、そのあたりからDMGPにおける《超戦龍覇 モルトNEXT》の活躍は徐々に減っていった。
転機を迎えたのは昨年11月。「レジェンドスーパーデッキ 龍覇爆炎」の発売は、かつてドラグハートを自在に操ったドラグナーだった者たちの闘志に火をつけた。
そして今、2023年。
DMGP2023 1st、予選ラウンド9回戦を突破した128名。その上位3アーキタイプがこれだ。
26名……「サガループ」
19名……「レッドゾーン」
15名……「モルトNEXT」
《超戦龍覇 モルトNEXT》、時代を超えて完全復活。
その立役者となったのは、やはり「龍覇爆炎」で登場したこのカードだろう。 《超戦龍覇 モルトNEXT》の生まれ変わり、《爆炎龍覇 モルトSAGA》。
ただモルトの活躍を陰から下支えしていた女房役がいたことも忘れてはならない。《超戦龍覇 モルトNEXT》も《爆炎龍覇 モルトSAGA》もわずか5マナから降臨させられる《炎龍覇 グレンアイラ / 「助けて!モルト!!」》は、実質火の《ドラゴンズ・サイン》としてこのデッキの攻めと受けの両面を大幅に強化した。
その強さが遺憾なく発揮されていたのは予選ラウンド第7回戦のフィーチャーマッチ。全国大会2019への出場経験を持つのすけ/浅果七実Pと2015年の全国王者にして「天門のカギを持つもの」じゃきーという好カードのアーカイブは、ぜひお見逃しなきよう。
第3位:《最終龍覇 グレンモルト》
予選ラウンド9回戦と決勝ラウンド4回戦、計13回戦ののちに出揃ったトップ8進出者8名。そのデッキ内訳は、意外なものだった。5cモルト
5cモルト
モルトNEXT
サガループ
光水ライオネル
光水火ライオネル鬼羅.Star
4c万軍投覇道
アーキタイプで言えば7つに広がる多様ぶり。そして唯一2人を送り込んだのが、もう1つの「モルト」。 《最終龍覇 グレンモルト》だ。
《超戦龍覇 モルトNEXT》《爆炎龍覇 モルトSAGA》との違いは、やはり呼び出せるのが火のドラグハートに限られないところだろう。特に5文明すべてがマナにある状況では、《邪帝斧 ボアロアックス》だろうと《獄龍刃 ディアボロス》だろうと付けられるので、マナや墓地といった公開領域に自由にアクセスできるようになる。
また光のコマンドであり闇のドラゴンでもあるため、《轟く覚醒 レッドゾーン・バスター》にも「P侵略」できるし≪蒼き覚醒 ドギラゴンX≫にも「P革命チェンジ」できる点も大きい。
その意味でも今回活躍した「5cモルト」は、外部領域を使った出力の増加というアドバンスの醍醐味を最も体現したデッキと言えるだろう。
トップ8に勝ち残ったその使い手2人、シュガーフラワーと最強位決定戦でもトップ8に入賞していた西高/じゃんぜ界隈がいきなり激突した白熱の準々決勝の模様は必見だ。
第2位:《絶望神サガ》
もう1つの「モルト」があるならば、もう1つの「サガ」もあった。 《絶望神サガ》。たった1種類2枚のカードだけで実質完結する「サガループ」は、環境に絶大な影響を及ぼした。既にアドバンスの代名詞だった《とこしえの超人》だけでなく、《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》や《空間型無限収納ストラトバッグ》といった特殊なカードの採用が目立ったのも、クリーチャーだと《「敬虔なる警官」》や《龍装鬼 オブザ08号 / 終焉の開闢》によって容易に対処されてしまうからというメタゲームによる部分が大きい。
ただそれすらも「サガループ」側の新たな進化を促しただけという側面も否定できず、今大会でも《コダマダンス・チャージャー》や《蒼神龍ヴェール・バビロニア》、はたまた《龍素記号wD サイクルペディア》と《蝕王の晩餐》のパッケージなど、多種多様な「サガループ」が活躍し、トップ128時点では第1位の支配率を誇っていた。
それでも結果として、トップ8にまで勝ち残れたのはTJMただ一人だった。もちろん「サガループ」が弱かったということではなく、この大会に向けての強者たちの「サガループ」の戦力分析と対策がわずかに勝ったという、それだけの話なのだろう。
現に「サガループ」は、今大会のフィーチャーマッチにおいても幾度も絶望をまき散らしていたからだ。
そんな絶望の片鱗を味わいたいという奇特な方は、予選ラウンド第9回戦、すめらぎのフィーチャーマッチを見に行くといいかもしれない。
第1位:《「正義星帝」 <ライオネル.Star>》
そして、一体誰が予想しただろうか。前回のオリジナルGP、DMGP2022 Day2で準優勝を果たしたアーキタイプ。
その核となっていたカードが、まさかアドバンスのグランプリで大活躍することになろうとは。 《「正義星帝」 <ライオネル.Star>》。王来MAXで登場した「シンカライズ」持ちの「タマシード」を生かし、スター進化クリーチャーを連鎖させることができるこのカードは、超高速での決着こそ望めないものの、中速以降のあらゆるゲームレンジに対応できる器用さを改めて示す結果となった。
まずは守りの《「正義星帝」 <ライオネル.Star>》。4位に入賞した「光水ライオネル」は耐久やカウンターを得意とするデッキタイプだが、制限時間との戦いになりやすいために長丁場の大会には不向きとされてきた。そんなデッキを使いこなして頂点まであと少しのところまで勝ち上がったフンババ♪のプレイングスキルは、賞賛されてしかるべきだろう。
そして攻めの《「正義星帝」 <ライオネル.Star>》は、今回は《アルカディアス・モモキング》ではなく、もう1つの「正義星帝」こと《「正義星帝」 <鬼羅.Star>》を相棒にした連鎖展開という新たなコンセプトを引っ提げてきた。
「開発部セレクションデッキ 光水火鬼羅.Star」の発売から1ヶ月というこのタイミングでの活躍は、前回のGPでの「水火覇道」「水闇魔導具」と同様に何らかの引力があるのかとすら疑いたくなるが、これも優勝に至るほどのカード愛とやり込みの成せる業ということなのだろう。
ともあれ、3825名が目指した最高峰の戦いであるDMGP2023-1st Day1、決勝戦。その結末を、ぜひとも改めて見届けて欲しい。
絶望が世界を覆いそうになったとき、すずの音が力強く見せつけてくれた光景は、この言葉で締めくくるに相応しいものだったからだ。
「正義は必ず勝つ」、と。
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