DMGP2023-1st Day1(アドバンス)プレイヤーインタビュー :~十人十色のデッキ選び~
ライター:河野 真成(神結)
撮影者:後長 京介、瀬尾 亜沙子
※撮影時のみマスクを外しています。
筆者は悩んでいた。
何って、アドバンスのCSが少ないのだ。
筆者はどちらかと言えばアドバンスのCSを選んで参加しているが、残念ながら同志に中々恵まれていない。
これは様々な要因があるとは思うが、もっともわかりやすい理由として「そもそもアドバンスのプレイヤーが少ないから」というのがあると思う。
これは……実はあまりよろしくない。
アドバンスのプレイヤーが少ない→アドバンスのCSが少なくなる→アドバンスの情報が減る→デッキ選択がわからずプレイヤーが更に減る→アドバンスのCSが更に少なくなる
という悪循環に陥ってしまうのだ。
実際、今回のGPに参加するにあたって、アドバンスのデッキに悩んだ人は多いはず。
そこで今回は、アドバンスのデッキ選択やその魅力について、何人かのプレイヤーにインタビューを敢行してみることにした。
この記事をキッカケに、アドバンスを競技的に楽しむプレイヤーが増えてくれると、大変嬉しく思う。
(なおインタビューは予選の対戦の合間を縫って実施していました。試合直後、時間に限りがある中で協力してくれたプレイヤーの皆様、本当にありがとうございました)
Runo
というわけで、まずは関東DM界の長老であるRunoに話を聞いてみた。
前年度(2022年下期)のアドバンスランキング1位はGPで優勝したお馴染み目黒片倉ドラゴンの12000ptsであるが、Runoは2位となる10854ptsを叩き出している。
また今年岡山で行われた奇祭であるおじいちゃんCSのサブイベント、「黒緑速攻杯」の優勝者でもある。曰く「やり込みが生きた」らしい。
そんな彼は、今回のGPにあたってどのようなデッキ選択をしたのだろうか? アドバンスの魅力や今後の目標についても、併せて訊いてみた。
――Runoさん、お疲れ様です。今回の使用デッキを教えて下さい。
Runo「NEXTだね」
――それはどういった理由で使用しましたか?
Runo「GPで多いのは【水闇サガ】、【闇火侵略】、【4c“魔神轟怒”万軍投】だと思ってたんだけど、NEXTはサガには不利で、残り2つには、まぁ有利。それでGPによくいるようなデッキにも、大抵有利が付いてて」
――なるほど。
Runo「何にでも勝てるといえばサガもそうだけど、サガはどうしてもバイクにはちゃんと不利が付いてて、サガ-バイク対面よりはサガ-NEXT対面の方が不利を捲りやすいから、じゃあ『NEXTやなぁ』って」
――ちなみに普段CSに参加する際にも、どういった意識でやっていますか?
Runo「うーん、基本的には普段は大会の結果とかを見て、『自分がCSに勝つための効率的な方法』を取ってる、って言えばいいのかな」
――と、言いますと?
Runo「大会のデッキを選ぶ時に、『そのデッキの強みが生きる環境であること』を意識してる、って感じかな。例えばちょっと前の【ガイアッシュ覇道】環境なんかでは、環境的に強いと思ってたから(メタカードの刺さりも良く、ギミック的に覇道が対応出来ない)【闇自然ケンジ】使ってたし」
――Runoさんは、アドバンスのどのような点に魅力を感じていますか?
Runo「まぁ、シンプルに派手だよね。GRで言えば《天啓 CX-20》、《カット 丙-二式》。ドラグハートは《爆銀王剣 バトガイ刃斗》。最近だと進化サイキックもあって、打点を作るのがイマイチなデッキでもイケるようになったからね。うん、安定して派手」 ――『安定して派手』っていうのはちょっと面白いです。
Runo「あとは択が色々あって面白くて……マナ増えた時の《爆炎龍覇 モルトSAGA》とか、本当に無限の選択が出来るから……」
――……ところでRunoさん、先ほど『自分がCSに勝つために効率のいい方法』をと仰ってましたけど、CSに勝つことにどんな目的を見出してますか? やはりランキングですか?
Runo「いやいや、ランキングは無理じゃん(笑)」
――えー。
Runo「いやだって、平日ログボ勢(※高頻度で平日CSに参加して、ポイントの最低ラインである60ptsをコツコツ稼ぐ人のこと)にはやっぱ適わないし。目標は一旦軌道修正して、GPの参加権は欲しいから1byeかな。優先参加権とか300位くらいまであると嬉しいんだけどね」
――ではRunoさん個人として、今後の目標はありますか?
Runo「うーん、全国は出たし……。やっぱり、GP優勝かな」
――ありがとうございました。
みかづき
続いて話を聞いたのは、アドバンス界のフィクサーことみかづき。
Runoが所謂ランカーなのに対して、彼はバンバンCSに参加するといったタイプではない。
しかしアドバンス環境やデッキにはかなり精通しており、自信も窺える。今回のGPに向けてアドバンスを知るにあたって、彼のツイートやマシュマロを参考にしたというプレイヤーも多かったのではないだろうか?
筆者も今回初めて会うため、試合直後の彼を出待ちして話を聞かせてもらった。
――試合直後にすみません、ご協力ありがとうございます。今回の使用は……。
みかづき「【水闇サガ】です」
――デッキの使用理由を教えて下さい。
みかづき「まず予選の段階での、アドバンスの環境を読むのは難しいと思っていました。CSも少ないので、参考に出来る情報が少ないからですね。ですので、『予選を上がる前提で、優勝するなら』という基準でデッキを選ぶことにしました」
――なるほど。
みかづき「それで候補に上がったのが【闇火侵略(バイク)】、【火自然モルトNEXT】、【水闇サガ】ということになるわけなんですが……。まずバイクはちょっと環境外のデッキに弱い側面があって、前提に合わないので没になって。となると二択なんですが、直接対決になったときにサガが有利になるので、こっちを選びました」
――今回サガを使った上で、工夫した点ってありますか?
みかづき「今回、リソースを増やすカードを重視していまして」
――と、言いますと?
みかづき「《「敬虔なる警官」》が【4c“魔神轟怒”万軍投】のGRを止めるギミックがあるじゃないですか。
――《「敬虔なる警官」》を貼るとGRゾーンの《クリスマⅢ》や《サザン・エー》が出なくなるアレですね。
みかづき「そうです。それで、あれに対応するためにマグナ側が《絶望と反魂と滅殺の決断》を採用するケースが増えているんですが、どうしてもサガってあれがクリティカルに当たってしまうパターンがあるんですよ。つまり《「敬虔なる警官」》を貼った返しに喰らって、手札が1になるパターンですね。あれを避けるために、《叡智の聖騎士 スクアーロ/エナジー・ライト》や、あと《言祝ぎし神王のコンヤク》といったカードを採用しています」
――こ、コンニャク……?(カード検索欄に打ち込む)
みかづき「あ、コンヤクです。ターン終了時に墓地にいると、シールドと交換で手札に返ってくるカードなので、墓地を減らさずに手札を維持出来るんです」 ――なるほど……。
みかづき「他にも特に同型で《ブラッディ・タイフーン》が強いので、これを4枚採用するために、他の呪文の枚数を落としたりといった工夫はしていますね」
――みかづきさんは、デッキを作ったり決めたりする際に意識していることってありますか?
みかづき「周りに流されないことですかね。調整する際も、自分から発信するように意識しています。特にアドバンスはそうなんですが、そもそも外に流れる情報が少ないので、それが正しく精査されたものかわからないケースが多いんですよ。ですので、情報の取捨選択をしながら、という感じです」
――アドバンスをずっとやっていらっしゃる印象があるのですが、アドバンスのどのような点に魅力を感じていますか?
みかづき「どちらかというと、自分が覚醒編からのプレイヤーなので、外部ゾーンがあることが当たり前なんですよね。アドバンスがどうというより、ほとんどオリジナルをやらないというのが正しいと言いますか……。あとは超天篇の味を知っているから、というのもありますね。押し付ける方が好きなんだと思います」
――最後になりますが、今後のデュエマに期待していることなどを教えて下さい。
みかづき「アドバンスの大会がもっと盛んになると嬉しいですね……。あとか今回、こうしてインタビューしていただきましたけども、色々なプレイヤーがフィーチャーされていくことを期待しています!」
――ありがとうございました。
ぴゅう
ここまでの二人は言うならば「環境デッキの中で何を使うか」という競技的な思考からデッキ選択をするプレイヤーだったが、デュエマに対するスタンスはそれだけでない。
毎回毎回超奇天烈なデッキを持ち込み、その中でDMGP2022・最強位と結果を残しているぴゅうの話も聞いてみよう。
――お疲れ様です。今回もまた凄そうなデッキ使ってますね。
ぴゅう「【光闇火ドルマゲドン】ですね」
――このデッキ、何するデッキなんですか?
ぴゅう「今回デッキを作っていただいたのがなぐもさん(※)なんですけど、《Forbidden Sunrise ~禁断の夜明け~》から《魔光神官ルドルフ・アルカディア》、《魔の革命 デス・ザ・ロスト》で3ターン全ハンデスするのが楽しすぎて……。最強だと思ったので使ってます」
※横浜の妖精。《悪魔神ドルバロム》でランデスして《悪魔神王バルカディアス》で制圧して《聖霊王アルファディオス》でフィニッシュするという夢のようなデッキ、通称「なぐもコン」の作成者として、その筋では有名。 ――ズルい。
ぴゅう「【4c“魔神轟怒”万軍投】や【闇火侵略】にも有利だったのも大きかったです。アドンバスは≪終焉の禁断 ドルマゲドンX≫とか、パワーvsパワーみたいな強いカード同士で戦えるのがいいですね」
――ぴゅうさんは結構一風変わったデッキを使っていることが多いんですが、これってどういった理由からなんでしょうか?
ぴゅう「根が逆張りオタクなんで……」
――あー……。
ぴゅう「個人的に『バレてるデッキは勝ちづらい、勝てない』と思っているんで。逆にバレてないことはそれだけで強いと思っています。例えばさっきの試合も、相手が≪堕呪 ブラッドゥ≫で墓地をリセットしてきたんですけど、その時墓地に進化はなかったですし、《超神星DOOM・ドラゲリオン》とか入ってるわけではないので、墓地の枚数自体は関係ないんですよ。その隙に《アルカディアス・モモキング》が着地して勝ちました」
――最強位決定戦で持ってきたバイクは、いまでは大流行ですよ
ぴゅう「ホントにねぇ。あれはやっぱり、原案作ったスパゲさん(※)が凄かったですね」
※関東でよくジャッジを務めている人
――【JO退化】とか【水闇サガ】は使っていたのは、逆張れないほど強かったということですか?
ぴゅう「もちろん、イカれたデッキは使います(笑)」
――ちなみにこれまで使ってきた中でお気に入りのデッキってありますか?
ぴゅう「【カリヤドネループ】は好きですよ。あれもサガと同じで、ルーター撃ってるだけでプレッシャー掛けられるので。サガはヤドネだと思っています。あとはGP8thで使った【ゼオスコントロール】なんかも、かなりお気に入りです。他は全国で使った【4cギャラクシールド】とか、今回のデッキも気に入っています」
――では最後になりますが、今後の目標とかあれば聞かせてください。
ぴゅう「去年度(全国ベスト8、GP準優勝、最強位決定戦4位)に関しては正直出来すぎたと思っているので……まだCS優勝したことないので、それですかね」
――ありがとうございました。
どてら
様々なデッキの中から選択するプレイヤーが多い中で、1つのデッキを環境に合わせて弄って使い続ける、というプレイヤーもいる。
基本的にカードゲームというのは年月が経てば基礎パワーが緩やかにインフレしていくものであり、数年前のデッキは当然型落ちになってしまう。
が、勿論幾つかの例外が存在している。そのうちの1つが【5cコントロール】だ。
5cは《フェアリー・ミラクル》を軸に、時代のパワーカードを盛り合わせたデッキであるため、3マナ2マナ加速の価値が高い限りは戦い続けることが出来るのだ。遠い過去には《聖鎧亜キング・アルカディアス》、そして現在では《最終龍覇 グレンモルト》などを軸にデッキを構成している。
そして5cコントロールを使い続けていると言えば……5cの神様的存在であるどてらだろう。GP6th優勝という強豪プレイヤーでありながら、性格は穏やかで誰にでも丁寧、根っからの聖人とかいうカードゲーマーではあまりに珍しいタイプの人である。
――お疲れ様です。使用デッキはもちろん……
どてら「今回も【5cモルト】ですね」
――使用理由について訊いてもいいですか?
どてら「《フェアリー・ミラクル》出たときから、5cがずっと好きなんですよ」 ――自分もですね。小型並べて《鎧亜の咆哮キリュー・ジルヴェス》でアド稼いだり、《護精霊騎ヴァルチャー》や《深塊封魔ゲルネウス》でコントロールしたり……
どてら「わかります、自分もやってました」
(以下しばらく極神~神化編辺りの5cトークなので、省略)
――……それで、今回の5cはどういったコンセプトなんでしょうか?
どてら「いまに環境に関して言えば、追い風だと思っていまして。むしろあまり構築を変える必要がないといいますか、《とこしえの超人》や≪お清めシャラップ≫を構築を歪めずに採用出来ますし、自然な構築のまま戦えるんですよね」
――いまの5c、普通に使って普通に強いですからね。
どてら「そうなんですよ」
――環境はどのようなものになると思っていましたか?
どてら「サガが多いのはそうなんですが、ビートダウン……特にアポロが多いと思っていまして。それで、そこに有効な《S・S・S》なんかも、今回は採用しています」
――5cに限らずなのですが、アドバンスの魅力についてどのように考えていますか?
どてら「やっぱりカードパワーは魅力的です。あとはアドバンス特有の勝ち筋みたいなのがあるじゃないですか。それこそ今日のフィーチャー(※星龍マーシャルvsモルトNEXTのこと)とかアドバンスの魅力そのものだと思っています」
――どてらさんは使うデッキは5cだと思うのですが、普段どのような感じで大会に挑むのでしょうか?
どてら「『環境に合わせてどう戦うか』を考えるのが好きなんですよ。頭で考えてぶっつけ本番、みたいなのが好きなので、むしろそんなに練習とかガッツリするわけでもないですね。考えて挑んで、それが上手くいったいなかった、みたいなのをエンタメとして楽しんでいますね」
――(到達出来ない領域にいるな、と考えている)
どてら「CSとかも絶対参加、というわけではなくて。もちろん、週末はなるべく参加するんですけど。ランキングとかでどう、みたいなことを目指しているわけではないですね」
――最後になりますが、今後の目標とかあったら教えて下さい。
どてら「GPで1回勝たせていただいたんですけど、あれはチーム戦ということもあったので個人での結果を残したいですね」
――ありがとうございました。
今回はアドバンスのデッキや魅力について語ってもらおうと4名のプレイヤーに話を聞かせて貰った。
短い時間ではあったが、それぞれが個性的なプレイヤーであることもあり、それぞれに特徴を感じられて大変興味深い。
その中でアドバンスの魅力として共通であがったのが「強いカードが使える」という点だろうか。外部ゾーンはもちろんのこと、《》のような設置物、自身のデッキのアイデンティティとなる《最終龍覇 グレンモルト》などなど……。
どのデッキもパワーを感じられるのが、アドバンスの魅力だろう。自分に合うアドバンスのパワーカードを探してみて欲しい。
そしてそのカードがデッキが気に入ったら、ぜひともCSに参加して欲しい。
《最終龍覇 グレンモルト》やアドバンスのCSは、貴方の参加をいつでも待っている。
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