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DMGP2023-1st Day2(オリジナル) Round 1:はやて vs. イヌ科

ライター:高橋 穂(北白河)
撮影者:三田 健太


 ここ幕張メッセのフィーチャー卓にて新たなGP王者が誕生してから一夜。

 日付が変わって1回戦目のフィーチャー卓に座っていたのも、またGP王者だった。

 GP9th優勝者にしてカバレージライター、イヌ科

 なんなら昨日もカバレージライターとしてこの卓に座っていた彼だが、今日は一人のプレイヤーとして再び王者を狙わんとする。

 張り詰めたフィーチャー卓の雰囲気も、彼にとっては慣れたものなのだろう。緊張している後輩ライターの筆者に対し、「気楽にやってください」と笑顔で気遣う余裕まで見せる姿は、まさしく王者の風格だ。

 そして王者に相対するのは、はやて

 口数こそ少ないものの、超CS金沢にてベスト32に輝いた経験を持つ彼の実力は十分以上。目の前の相手がGP王者であろうと、過剰な気負いは感じられない。

 コロナ禍で長らく見られなかった「デッキを相手に委ねて枚数チェックとカットを行う」という一連の動きの後、Day2最初のゲームが幕を開けた。

※撮影時のみマスクを外しています。

Game

先攻:はやて

 じっくりと何度も初手を眺めて迷いつつ、《煌ノ裁徒 ダイヤモン星》をマナに送ったはやてに対し、スピーディに《禁断竜王 Vol-Val-8》を埋めるイヌ科という立ち上がり。お互い、相手のデッキをまだ一つに絞ることができない。

 その速度の差は、「GP王者という絶対的強者」と「それに挑む者」という構図を思わせる。

 少ない情報から再びじっくりとプランニングを立てたはやてが最初に繰り出したのは、環境を定義するメタクリーチャーの一角《検問の守り 輝羅》だ。

 お互いに多くの踏み倒しを牽制するこのカード。このターンにチャージされた《奇石 ミクセル / ジャミング・チャフ》も見るに、はやてのデッキはメタクリーチャー満載の【光単ゴルギーニ】のようだ。

 対するイヌ科のファーストムーブは、《氷牙レオポル・ディーネ公 / エマージェンシー・タイフーン》をマナに送っての《》の呪文側。墓地に《蒼神龍ヴェール・バビロニア》を落としたことで、彼のデッキが【サガループ】であることが確定する。

 《絶望神サガ》が2枚揃えば即勝利…という理不尽極まりないムーブで環境の王者として君臨するこのデッキだが、何より注目したいのがそれを駆るイヌ科のプレイ速度と表情。

 墓地蘇生をカギとするこのデッキに痛烈に刺さるはずの《検問の守り 輝羅》を出されてもなお変わらない表情とプレイ速度は、「この程度の対策は織り込み済み」「どかして速やかに走り切る」という練度と自信の表れだろうか。  きっちりと墓地に二体のクリーチャーを落とし、即死ループの下準備を完了させて悠々とターンを返す。


 だが、ここから1枚のカードが二人の立場を変えることとなる。  完全に相手のデッキを【サガループ】だと把握したはやての手から放たれたのは、《ブルトゥーラ-D1》

 覚知山ボウイくらいしか採用しているのを見たことがないまさかのカードの登場に、思わずイヌ科もテキストを確認。初めてその表情が変わる。

 【サガループ】の主要なメタクリーチャー対策《「敬虔なる警官」》に引っかからない3コストで、《検問の守り 輝羅》を除去から守る手段となるこのカード。思わぬ伏兵の登場で、ループ成立のハードルは急激に高まってしまった。

 《検問の守り 輝羅》でシールドを1枚ブレイクしてターンを返すはやてに対し、イヌ科は熟考。この目の前の防御を打ち崩す手段は、5マナ溜めての《絶望と反魂と滅殺の決断》による同時除去くらいしかない。

 そう考えてか、しばらく経って彼が選んだ一手は再びの≪ローレンツ・タイフーン≫。またもや《蒼神龍ヴェール・バビロニア》を捨て、ブレイクで増加した手札の質をさらに高めて選択肢を広げていく。


 そして、はやては絶対強者の手が緩むこの瞬間を待っていた。

 帰ってきたターンではやての手から素早く繰り出されたのは、《正義の煌き オーリリア》  「自分のシールドの数が相手より多ければ、相手はコスト5以下の呪文を唱えられない」。《絶望と反魂と滅殺の決断》どころか【サガループ】に採用し得る呪文ほぼすべてを無に帰すこのメタリカが、イヌ科の希望を根こそぎ奪い去る!

 《ブルトゥーラ-D1》《検問の守り 輝羅》が軽快にイヌ科のシールドを刻むと、残るはたったの2枚。シールド3枚差となれば、呪文が封じられた今となってはラビリンスを解除する術はほとんど存在しない。

 もはや誰の目にも、ゲームの支配権は入れ替わっていた。  オーリリアのテキストを確認しても、ロックは止まらない。ブロッカーの《蒼狼の大王 イザナギテラス》が手札をもたらしても、そこから追撃の呪文が放たれることはない。

 《五憐の精霊オソニス》まで加わりシールドを刻み切ったはやての軍勢を前にイヌ科が最後にできた抵抗は、《ブルトゥーラ-D1》登場まで勝利のカギとなるはずだった《「敬虔なる警官」》2枚を「ギャラクシールド」で繰り出してターンを返すことだけだった。

 ダメ押しの《シェケダン・ドメチアーレ》の登場で5ドローしたはやてのアタッカーは4体。

 それを阻むのは、非トリガーが確定しているシールド2枚と、ブロッカーが1体。

 4-3=1。ダイレクトアタックという形で、スーパーカー軍団が絶望神に真なる絶望を叩き付けた。

Winner:はやて

 イヌ科「クソゲー!」

 ゲームが終わるや否やとんでもない声を上げるイヌ科だが、言葉と裏腹なその笑顔からは「敵ながらあっぱれ!」という想いが伝わってくる。

 メタクリーチャーによる相性差と言えばそれまでだが、それでも「メタのメタのメタ」と言わんばかりのカード・デッキチョイスで【サガループ】を完封したはやての構築センスと環境読みは、このゲームにおいてまさに完璧だったと言える。
 
 だが、これはまだ一回戦に過ぎない。

 彼らの選択が王者への道の最適解だったかは、長い予選ラウンドの中にて証明されていくことになるだろう。


 ……というようなことを書こうと考えながら片付けをしていると、ちょっとした言葉が筆者の耳に入ってきた。

 イヌ科「最後のほう、(ゲーム終了後に)どんな面白いことを言うかしか考えてなかった」

 どうやら、カバレージの取れ高まで考えてくれていたらしい。いや余裕あるな!

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