DMGP2023-2nd 準々決勝:カイザ/はっちCS vs. 青木瑠璃
ライター:清水 勇貴(yk800)
撮影者:後長 京介
オリジナルではやや稀有な【水闇火バイク】を除けば現環境で高く評価されているデッキ陣が順当に出揃う形となったが、準々決勝では唯一同じデッキタイプ同士の対決、いわゆるミラーマッチとなったのがこの対戦だ。
両者の駆るデッキは【水火マジック】。十分以上の再現性で3ターン目に過剰打点を形成してゲームを決める烈火のごときビートダウンと、ドローやサーチを駆使して手札アドバンテージを減らさずにゲームを進行する流麗なデッキ回転効率が最大の持ち味だ。
単なる速攻デッキとの大きな違いは、速度とリソース力を両立できることだろう。
デッキに含まれるほとんどのカードが手札を減らさずに展開を作れるため、仮に止まったとしても次ターン以降にリソースが枯れて全く動けなくなることはまずない。
また、環境最高のメタカードでありマジック・クリーチャーである《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》のクリーチャー側で相手からの突発的なリーサルを抑え込みながら、デッキに数枚採用されたフィニッシュパーツを対面に応じて探しに行く余裕を確保できる。
ではミラーマッチではどうなるか。これは非常にわかりやすく、ほとんどの場合で速度勝負が展開される。一般的な【水火マジック】の構築では2ターン目にできることは手札を整えることのみで、先攻3ターン目の最速展開を咎める術は基本的にないと考えて良い。
先攻の3ターン目にリーサルが成立しなかった場合、今度は≪ボン・キゴマイム≫のご機嫌次第になる。お互いの≪ボン・キゴマイム≫が睨み合って除去手段にも辿り着けない展開になれば、多少ゲームが伸びることも考えられるだろう。
いずれにせよ、ゲームの焦点はお互いの3ターン目にあることだけは間違いない。
お互いのデッキを知ってか知らずか、カイザ/はっちCSと青木瑠璃の間には狂おしいほどの緊張感が張り詰める。
環境でも屈指のスピード勝負。瞬き厳禁、息もつかせぬ激戦が幕を開けた。
Game1
先攻:青木瑠璃デュエマスタートのコールからおよそ30秒、青木瑠璃はゲーム開始直後から、険しい顔つきで自らの初手と向き合っていた。
なにせ、ほとんどのゲームが3ターン前後で決着してしまううえに、持てる手札すべてを費やしてリーサルプランを組み立てることも珍しくないのが【火水マジック】だ。
サーチやドローソースがまともに機能していない初手ないしは2ターン目までのマナ置きの比重は、他のデッキと比べても非常に高い。
十分に迷った末に、青木瑠璃は《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》をマナに置き、カイザにターンを渡す。
これに対し、カイザは多色カードである《AQsabbath / ♪このギター グシャっとすれば グシャっとなる》をタップインさせる順調な立ち上がり。
青木瑠璃が2ターン目もマナを伸ばしただけでターンをカイザに渡すと、カイザは《AQvibrato》を召喚し、先んじて革命チェンジ元を確保する。 迎えた先攻・青木瑠璃の3ターン目。彼が3マナのタップとともにバトルゾーンに送り出したのは≪ボン・キゴマイム≫。カイザのスピードアタッカーを押し留めるメタクリーチャーがバトルゾーンに現れた。
結果論でしかないものの、1ターン目に埋めた《AQsabbath / ♪このギター グシャっとすれば グシャっとなる》が恋しいカイザ。
しばしの検討の末にカイザも≪ボン・キゴマイム≫を召喚すると、《AQvibrato》で攻撃して革命チェンジを宣言。
《芸魔隠狐 カラクリバーシ》の登場時能力でドローし、《ストリーミング・シェイパー》で一気に手札を伸ばしたが、同時に《芸魔隠狐 カラクリバーシ》のコスト踏み倒しを受けて青木瑠璃もカードをドローする。カイザからすればリスクは承知の上で、自分のリターンを優先した格好だ。
お互いのバトルゾーンで≪ボン・キゴマイム≫が睨み合う展開。すわロングゲームかと思われたが、刹那の隙にゲームは決着した。
青木瑠璃は4マナ目を置くと、そのままタップして《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》を呪文側でプレイ。カイザの≪ボン・キゴマイム≫と《芸魔隠狐 カラクリバーシ》を手札に戻して盤面をこじ開けると、即座に自らの≪ボン・キゴマイム≫で攻撃して革命チェンジ。
《芸魔隠狐 カラクリバーシ》、ドローして《瞬閃と疾駆と双撃の決断》、踏み倒しとアンタップ付与が選択されて《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》がバトルゾーンに。登場時能力で手札を入れかえられると、シールドがブレイクされて無事に《芸魔隠狐 カラクリバーシ》がアンタップする。
再度起き上がった《芸魔隠狐 カラクリバーシ》が《芸魔王将 カクメイジン》へと革命チェンジし、墓地の《瞬閃と疾駆と双撃の決断》を再度詠唱。アンタップ付与と踏み倒しで≪ボン・キゴマイム≫がまたしてもバトルゾーンに送り込まれる。
カイザのシールドは残り2枚、青木瑠璃のバトルゾーンにはアンタップされた《芸魔王将 カクメイジン》に、《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》に、≪ボン・キゴマイム≫。
最後の仕上げとばかりに《芸魔王将 カクメイジン》が襲いかかると、最後の2枚を確認したカイザはそのまま投了を宣言した。
カイザ 0-1 青木瑠璃
Game2
先攻:カイザ1ゲーム目を落としたカイザが先攻となった2ゲーム目は、電撃的な決着を見せた。
2ターン目にお互いに《AQvibrato》を出し、順当に迎えたカイザの3ターン目。
《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》を埋めてまでカイザが唱えたのは《ストリーミング・シェイパー》。《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》の2枚目、3枚目が墓地に落ちてしまったが、待ちわびた《芸魔隠狐 カラクリバーシ》がカイザの手札に加わる。 《瞬閃と疾駆と双撃の決断》で踏み倒しとアンタップ付与。カイザの手札から《同期の妖精 / ド浮きの動悸》のクリーチャー面がバトルゾーンへと送り出され、《芸魔隠狐 カラクリバーシ》をG・ストライクの魔の手から防ぐ絶好の一手となる。
かくして《芸魔隠狐 カラクリバーシ》が《芸魔王将 カクメイジン》に成り、2回の呪文詠唱権を獲得。まずは《機術士ディール / 「本日のラッキーナンバー!」》の呪文面を唱えてコスト3を宣言してから、《瞬閃と疾駆と双撃の決断》で《芸魔王将 カクメイジン》のアンタップを予約しつつ《AQvibrato》を戦線に追加。
防御手段はおろか反撃手段まで奪われた青木瑠璃を守るものはなく、《AQvibrato》の振動剣がカイザの勝利を切り開いた。
カイザ 1-1 青木瑠璃
Game3
先攻:青木瑠璃最終ゲームは後攻のカイザが2マナで《淡いと濃い ケローラ / ♪やせガエル 負けるなケローラ スパイラル》を唱えるところから始まった。
先攻・青木瑠璃は2ターン目に《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》をマナに埋めて、そのまま何もプレイせずにカイザへとターンを渡している。
順当に考えれば、2ターン目に何もプレイできなかった際に3ターン目にプレイしたいカードとしては、《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》は最も有力な候補だ。
もちろん手札次第では≪ボン・キゴマイム≫の方が優先される場合もあるだろうが、どうしても火文明をここで確保する必要があったか、あるいは……。
とはいえ、カイザに青木瑠璃へと干渉する術はない。無事にターンが回ってきた後を見据え、カイザは手札を整える。
そして迎えた、運命の3ターン目。青木瑠璃は迷いなく3マナをタップすると、バトルゾーンにクリーチャーを送り込む。やはり持っていた、2枚目の《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》!
手札を入れ替えることなく即座に《芸魔隠狐 カラクリバーシ》へ革命チェンジし、《瞬閃と疾駆と双撃の決断》をプレイ。
今しがた手札に戻した《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》を踏み倒しつつ《芸魔隠狐 カラクリバーシ》にアンタップを付与すると、《芸魔隠狐 カラクリバーシ》で手札に余裕ができたか今度は《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》のルーティングを解決。《AQvibrato》を捨てて手札に余裕を持たせる。 アンタップした《芸魔隠狐 カラクリバーシ》は《芸魔王将 カクメイジン》へ、《瞬閃と疾駆と双撃の決断》を唱えてバトルゾーンの《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》と《芸魔王将 カクメイジン》にアンタップ能力を付与。
ここでG・ストライクやトリガーを踏まなければ、勝利は一気に近付く。諸手を擦り合わせる青木瑠璃の祈りに答えたか、カイザのシールドからはS・トリガーもG・ストライクも現れない。
《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》で攻撃、革命チェンジ《芸魔隠狐 カラクリバーシ》。1ドローして《瞬閃と疾駆と双撃の決断》を唱えて踏み倒し2回、《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》が2体バトルゾーンに。トリガーはない。
《芸魔王将 カクメイジン》で最後のシールドをブレイクしつつダメ押しの《瞬閃と疾駆と双撃の決断》、《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》2体にアンタップ付与を2回。もはや単体除去ではどうにもならない戦況。《終止の時計 ザ・ミュート》だけが裏目だが、トリガーは…………ない!
ガラ空きのカイザに引導を渡したのは、このターン最初に召喚され、2回の革命チェンジと2回の再登場を果たした功労者、《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》だった。
カイザ 1-2 青木瑠璃
Winner:青木瑠璃
青木瑠璃「とにかく《飛翔龍 5000VT》が環境の中心になると思っていたので、自分が3枚採用するのは当然としてどうやって乗り越えるかはかなり工夫して構築しました。
《Napo獅子-Vi無粋 / ♪オレの歌 聞けよ聞かなきゃ 殴り合い》を3枚取ったのは、《飛翔龍 5000VT》のロックを無視して《芸魔王将 カクメイジン》にチェンジできることを評価した結果です。下面は結構使いどころが難しいですが、【赤緑アポロヌス】対面の進化元タマシード除去として使えるのが一番嬉しいです」
ミラーではどうしても活躍しづらいですけど、と苦笑をこぼす青木瑠璃。
青木瑠璃「《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》はちょっと珍しいですけど、2ターン目に出して革命チェンジ元になるカードを増やしたいのがまずあって、一番強い2マナマジックがこのクリーチャーでした。【魔導具】系のデッキや、展開次第ではミラーでもドローソースになるのが強いです。呪文側もメタクリーチャー2体とかメタクリーチャーと≪同期の妖精≫みたいな盤面に対処できて、フィールドやタマシードも返せるので気に入ってます。」
実際に1ゲーム目は≪ボン・キゴマイム≫の睨み合いを≪♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて≫で突破して勝利を収めた青木瑠璃。
2ゲーム目以降はどちらも先攻側の3ターンキルで決着する、【水火マジック】のゲームスピードに圧倒される結果で準々決勝での同型対決は幕引きとなった。
アビス・レボリューションを代表するスピードスターがこのままGPの舞台を駆け抜けるか。準決勝以降の青木瑠璃の戦いから、目が離せない。
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