DMGP2023-2nd 準決勝:にわか vs. monokuro
ライター:高橋 穂(北白河)
撮影者:瀬尾 亜沙子
しかも今回はビデオマッチの行われるフィーチャー席がやや離れた場所にある都合上、見渡す限り広がるテーブルの中に座っているのはたった二人だけだ。
対戦前のがらんとした静寂の中で彼らが纏っていたのは、決戦前の緊張感でも、店舗大会のような和やかさでもなく……。
トラッシュトークの飛び交う、「勝手知ったる相手との調整中」とでもいうべき雰囲気であった。
準決勝までコマを進めたのは、にわかとmonokuro。
どちらも関東勢で、CS会場で出会って「使うデッキが似ている」と打ち解けた……と語る彼ら。どこかゆるさすら感じるやりとりから旧知の仲にすら見えるが、実はまだ3か月程度の付き合いだという。
「CSでよく会う仲間が準決勝の相手として立ちはだかる」と書くと劇的に見えるが……
monokuro「実は今残ってるトップ4のうち、3人が知り合い同士」
にわか「なんならさっき(ベスト8)の相手も知り合いだった」
両者とも、この程度のドラマはすでに完全に慣れっこのようだ。 にわかが駆るのは、【闇火自然アビス邪王門】。比較的珍しい3色のチューンだが、これもタネがあるらしい。
にわか「長丁場なので、受けのあるオールラウンドなデッキが使いたかったんですよね。で、そう考えた時に《百鬼の邪王門》っていうカードが一致して」
もとより硬い受けと《謀遠 テレスコ=テレス》などを絡めた3-4ターン目の押し付けムーブで活躍してきた【闇火アビス邪王門】。
しかも「魔覇革命」にてその押し付け性能を高める《アビスベル=覇=ロード》や《ア:エヌ:マクア》を獲得したこともあり、構築を大きく変え3色に変化。コミュニティ内で綿密な調整を進めてきた逸品のようだ。
対するmonokuroの相棒は、【水闇魔導具】。《堕∞魔 ヴォゲンム》と《「無月」の頂 $スザーク$》を核にビッグムーブを叩き付ける、魔導具デッキの最新鋭たるデッキだ。
monokuro「引きの偏りがない、低コストのカードで構成されたデッキが使いたかった」
デッキ内に大量の軽量ドローを擁するこのデッキは、安定感という意味では抜群。【アポロヌス】【水闇自然ジャオウガ】【マジック】といったシェアの高いデッキにも有利に出れる……など、こちらもGPという特殊な環境を泳ぎ切るための選択のようだ。
monokuro「実績なんか欲しいよね」
にわか「なる!」
GPベスト4という、それだけでも眼が眩むほどの実績をすでに手に入れている二人。だが、それでも足りない。
もっと上。てっぺんを目指して。目の前の友に、勝つ。
「いつも通りやろうぜ」とばかりに軽くお互いに拳をぶつけ合わせたのち、ゲームは始まった。
Game1
先攻:monokuro即座に《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》をマナに埋めるmonokuroに対し、かなり悩んで《フットレス=トレース / 「力が欲しいか?」》をチャージする立ち上がり。
直後、《堕魔 ドゥポイズ》をマナに送ってからの《堕呪 バレッドゥ》がこのゲームのファーストムーブとなった。少し悩んで2枚目の《堕魔 ドゥポイズ》を捨ててターンを返すmonokuro。
これに、にわかは《フォック=ザ=ダーティ》のチャージでタップイン処理をして応える。
ここから、お互いにゲームプランが立ったのか両者のプレイングは加速する。
monokuroはターンが回ってくるや否や《秩序の意志》をマナに埋めて≪堕呪 ブラッドゥ≫を相手を対象に唱える。山札シャッフル中に変顔をして笑わせようとするにわかに突っ込みを入れるという一幕もありながら、ドローと墓地肥やしを進めていくこととなった。
にわかも、まだ準備のターン。《ネオ・ボルシャック・ドラゴン / ボルシャックゾーン》をチャージして≪「倒したいか」≫を唱えるにとどまる。
勝負が大きく動いたのは、4ターン目。
このデッキのキーパーツである《堕∞魔 ヴォゲンム》を召喚するや否や、ほぼ同時に手札から《「無月」の頂 $スザーク$》の無月の門・絶の宣言を行うmonokuro。 《堕∞魔 ヴォゲンム》のターン終了時の13枚墓地肥やしでこの宣言が成就しない可能性はほとんどない。はたして、切札たるゼニスが盤面に降臨する。
間髪入れずに「どうぞ」と手札を扇形に差し出すにわかだが、ここで次のターンに出したかった《邪幽 ジャガイスト》が落とされると「だめです」と悔しげな表情。
だが、返しのターンの≪「力が欲しいか?」≫のメクレイド5から《邪幽 ジャガイスト》が出てくると話は変わる。 手札を2枚捨てて《信眼!ジェンゲガーvs.シェケダン》が出てくると、シールド回収と墓地回収で手札を補充した後に《邪幽 ジャガイスト》の効果が誘発。先ほど墓地に落ちた1枚目の《邪幽 ジャガイスト》が舞い戻る。
さらに先ほど《信眼!ジェンゲガーvs.シェケダン》がもたらした2枚の手札そのまま捨ててさらなるメクレイド&蘇生で《謀遠 テレスコ=テレス》を2体並べると、空っぽの盤面から一挙に5体のクリーチャーを並べることに成功する!
ただ、この過程で墓地にカードが大量に落ちたことで《「無月」の頂 $スザーク$》がmonokuroに大量の手札をもたらしているのも事実。
ターン終了時にその手札から2枚目の《「無月」の頂 $スザーク$》が無月の門・絶を通って出てくると、《謀遠 テレスコ=テレス》のうち1体は速やかに墓地に逆戻りすることとなる。
本来絶望的な手札差をもたらす《謀遠 テレスコ=テレス》のハンデスも、すでに山札が数枚程度になるほど掘削済みのmonokuroには焼け石に水といったところか。
手札に圧倒的な優位を持つmonokuroが次に狙うのは、にわかのリソースの完全破壊。
まずは≪堕呪 ブラッドゥ≫で自身の山札を回復すると、《堕魔 ドゥポイズ》で《「無月」の頂 $スザーク$》2体と《信眼!ジェンゲガーvs.シェケダン》を破壊。
そして即座に無月の門・絶が二つ開き、今破壊された《「無月」の頂 $スザーク$》が墓地から舞い戻ると、にわかは《邪幽 ジャガイスト》2体と手札全てを失うこととなった。
できることがほとんど残らないにわかは、マナチャージだけを行ってターンを返す。
こうなれば、あとは【水闇魔導具】の独壇場。
《神の試練》で更なる手札と追加ターンを確保すると、まずは2体の《「無月」の頂 $スザーク$》がシールドを全ブレイク。
全カードを公開領域に送り込んだmonokuroは、続く追加ターンで《堕魔 ドゥポイズ》召喚と《ガル・ラガンザーク》の夢幻無月の門を宣言。
先ほど披露された《「無月」の頂 $スザーク$》の反復横跳びギミックでこの先の逆転の芽がすべて摘まれることを認めたにわかは、速やかに投了を宣言した。
にわか 0-1 monokuro
押し付け性能で選ばれたはずの【アビス邪王門】に、さらなる押し付けで【水闇魔導具】が勝利した形となった1戦目。
ゆるさすら感じる仲の良いプレイヤー同士のやりとりと裏腹に、棋譜を取るのがやっとの迅速かつ正確な両者のプレイングはお互いの練度と練習量を物語っているかのようだった。
monokuro「《ネオ・ボルシャック・ドラゴン / ボルシャックゾーン》何で入ってるの?色?」
あまりに「いつも通り」すぎて感想戦まで始める始末だが、まだこれは1戦目。
決勝戦の椅子を賭けた、2戦目が始まる。
Game2
先攻:にわか今度は両者ともゲーム開始時から高速のプレイングを見せる。
《フォック=ザ=ダーティ》《「必然」の頂 リュウセイ / 「オレの勝利だオフコース!」》チャージから≪「倒したいか?」≫でブーストを行うにわかに対し、《堕呪 エアヴォ》《絶望と反魂と滅殺の決断》チャージから《堕呪 バレッドゥ》に繋いで手札と墓地を整えるmonokuro……と、両者とも滑り出しは順調だ。
先に自分のペースに持ち込みたいにわかは《ドミー=ゾー / 「倒したいか?」》をチャージすると《鬼寄せの術》を唱えてシールドを回収するが、デッキの半数ほどを占める軽減対象クリーチャーが手札にないようでそのままターンを返す。
ここで《邪幽 ジャガイスト》や《謀遠 テレスコ=テレス》に繋げていれば流石にゲームの流れは大きく傾いていたはずだけに、この不発は痛いところだ。
この隙にmonokuroは《堕呪 ゴンパドゥ》を埋めての《堕呪 ゴンパドゥ》でさらに手札を整えつつ、墓地に魔導具を溜めていく。
なんとか動きたいにわかは、手札に溜まっていた《ア:エヌ:マクア》チャージからの《ア:エヌ:マクア》を召喚。2ブーストと回収のモードを宣言し、リソースの拡充を図る。次のターンに《アビスベル=覇=ロード》へチェンジして使い回せると、さらにそのバリューは増大しそうだ。
これには返しのターンにmonokuroの手で《堕魔 ドゥポイズ》が差し向けられてあえなく破壊。おまけに≪堕呪 ブラッドゥ≫で墓地を掃除され、夢幻無月の門から《ガル・ラガンザーク》までやってきてしまう。
だが、ここまでやってきたプレイヤーがその程度で怯むはずがない。そもそも先ほどの動きをするということは、monokuroの手札には最悪のパターンである《堕∞魔 ヴォゲンム》と《「無月」の頂 $スザーク$》は揃っていないということだ。ならば。 にわか「ふんっ」
気合とともに素出しで登場したのは、「魔覇革命」のオーバーレアにしてこのデッキの切り札、《アビスベル=覇=ロード》! 自身の与えるマッハファイターで即座に《ガル・ラガンザーク》へ攻撃して破壊すると、マナから《謀遠 テレスコ=テレス》を繰り出して徹底抗戦の構えを見せる!
ターンを返してハンデスを行いつつ、にわかはこう呟く。
にわか「やることやった」
そして、それに対してmonokuroも口を開いた。
monokuro「終わったかもしれんそれ」
普通なら諦めの言葉とも取られかねない呟きだが、この言葉の主語がにわかの方であることは同時に手札から出てきた2枚のカードが証明している。すなわち。
《堕魔 ドゥポイズ》二連打! 都合二枚目と三枚目となるこのカードにより、反撃の起点となるはずだった二体のアビスは両方墓地へと引きずり込まれていく。さらに《ガル・ラガンザーク》の夢幻無月の門も再び開き、再び戦況はmonokuro優位となった。
これはさすがに予想外だったにわか。Game2始まって初めてとなる長考ののち、《フェアリー・ギフト》から≪ネオ・ボルシャック・ドラゴン≫を繰り出してせめて盤面にクリーチャーを残そうとする。
が、monokuroがその返しに繰り出したのは無情にも《堕∞魔 ヴォゲンム》。
monokuro「お願いお願い」
にわか「さすがにもういいでしょ」
ターン終了時の13枚の墓地肥やしで必要なパーツが落ちること……というよりも、「13枚も肥やして必要パーツが落ちないという超レアケースが発生しないこと」を祈るmonokuroに対して、半ば呆れたような声のにわか。
ここから増えていくトラッシュトークは、両者がこのゲームの終着点を見つけた証だ。 monokuro「引きしょっぺえな」
にわか「マジおもんない」
友人同士だからこそ許される軽口を叩き合いつつも≪「倒したいか?」≫→≪ドミー・ゾー≫アビスラッシュと繋いでみるにわかだが、できることはそこで終了。
ターン終了時、待ってましたとばかりに無月の門・絶がふたつ開いて《「無月」の頂 $スザーク$》と≪卍月 ガ・リュザーク卍≫が盤面に降臨する。ここでのハンデスで虎の子の《百鬼の邪王門》が落ちると、にわかの手札は完全にからっぽだ。
monokuro「ターンもらうよ」
にわか「どーぞー」
≪卍月 ガ・リュザーク卍≫のアンタップ阻害と《ガル・ラガンザーク》の踏み倒しロックが効いている以上、≪堕呪 ブラッドゥ≫で墓地を掃除してしまえば次のターンのにわかにできることはほとんど何もない。
にわかが最後のドローを即座にマナゾーンに送ったのを見届けたmonokuroは。
monokuro「っしゃあー!」
裂帛の気合とともに放たれた3体のドルスザクによる3連撃をもって、決勝へとコマを進めたのだった。
Winner:monokuro
1戦目は押し付けの差で、2戦目はまさかの応手の存在で勝負が決まったこの試合。
さすがに悔しげな表情のにわかに対し、monokuroは自然に声をかける。
monokuro「(GPが終わったら)いっしょに飯食おうな」
最後まで「いつも通り」に、monokuroとにわかはそれぞれの最後の戦いへと向かった。
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