デュエル・マスターズ

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超CSⅥ群馬 Round 1:MarT 2号 vs. オチャッピィ

ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影者:瀬尾 亜沙子


 走り続けた者だけが、到達できる高みがある。

 競技デュエル・マスターズの頂点、日本一決定戦。一年に1回、招待選手のみによって開催されるその最高峰の舞台に挑戦する権利を得るためには、DMGPや超CSでの一発勝負の上位入賞のほかは、CSでの入賞によって加算されるポイントを蓄積して集計されるDMPランキングで上位10数名に名を連ねるほかない(※なお2024年度については「エリア予選」の復活が予告されている)。

 そのためには2つの方法がある。一つの大会から得られるポイントを増やす……すなわち実力を磨いてアベレージを引き上げることと、何よりもとにかく試行回数を増やす……すなわち一つでも多くのCSに参加することだ。

 だが、特に人口が集中する東京圏・大阪圏での平日CSの増加は、後者の方法に歪みをもたらした。一人のプレイヤーが一週間のうちに物理的・身体的に参加可能なCSの最大数は、DMPランキングが開始した7年前から比べて3倍や4倍近くにも増えていることだろう。結果引き起こされたのは、日本一決定戦に出場するためのポイントボーダーのインフレだ。

 曰く「今日は○○のCSから××のCSへ」「最低▵▵pts欲しい」「一つ下の順位の誰々が追い上げてきた。みんな強い」「大型CSで優勝した誰々が大幅に順位を上げて圏内に食い込んできたらしい。勘弁してくれ」……etc。

 迫るボーダーから必死に逃げて、あるいは先行するボーダーを懸命に追いかけて、吐き気を催すほどのプレッシャーと闘い続ける。DMPランキングで日本一決定戦出場を目指し、日夜CSに出続けることはしばしば「走る」ことにたとえられるが、CS1回の参加をスプリント(短距離走)とするなら、DMPランキングを積むことはさながらマラソン(長距離走)だ。

 その気の遠くなるような42.195kmを、見事に走りきった者がいた。

 千葉勢のオチャッピィDMGP7thでトップ8に入賞した経験もある言わずと知れた強豪だが、今回4ヶ月間でボーダー23500pts以上、月平均要求5800pts超えというかつてないほどの激戦となったDMPランキング2023年度後期を、1月までの集計で1位で終え、日本一決定戦の参加権利を獲得した。

 250人参加の4.8倍CSを2日連続優勝という曲芸じみた実績に代表されるアベレージの高さは、昨今のカードパワーとデッキパワーが極まりきった環境においてもなお現代デュエル・マスターズが実力ゲーであることを何よりも証明しているわけだが、それにしてもそこまで勝てるというのは、一体何が勝利の秘訣なのだろうか。このフィーチャーマッチで、その一端を垣間見ることがはたしてできるか。

 一方、対するは山形勢のMarT 2号。ペアリングを見て「初戦からめっちゃ強そうな方がお相手」とポストしており、オチャッピィの名は遠く山形の地にも轟いているようだ。

 カードプールとしては「エキサイティング・デュエパ・デッキ」4種が使用可能となる初めての大型大会でもある。各デッキ10枚ずつ、計40枚の新規カードを得て、環境はどのように変化したのか。  約2000名の参加者の頂点が決まる一日。その始まりを告げる第1回戦が、いま幕を開けた。

Game

 じゃんけんで先攻はオチャッピィ。《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》をマナチャージしてのターンエンドで、ランキング下期に使い続けた愛用の「闇単アビスロイヤル」を使用しているであろうことは想像に難くない。

 他方、MarT 2号のマナチャージは《ジョリー・ザ・ジョニー Joe》。コントロール系統のデッキなどでまれに採用されることがあるくらいで環境ではあまり見かけないカードだが、だとしても3ターン目の《天災 デドダム》を放棄する1ターン目のマナチャージはなかなかに不穏だ。

 それでも、返すオチャッピィがそうしたノイズの情報をあまり意に介さず《深淵の文暴具 ケシカス=カース》チャージから《ブルーム=プルーフ》を召喚し、得体の知れないデッキ相手にも自分のペースを崩さない一方で、返すMarT 2号はさらに《ドルマゲドン・ビッグバン》をマナチャージしてターンエンド。いまだに全貌が見えない。

 しかし、オチャッピィが《ブルーム=プルーフ》チャージから唱えた《サイバー・K・ウォズレック / ウォズレックの審問》が、ついにMarT 2号のデッキを丸裸にする。  《スパイラル・ビジョン》《イッツ・ショータイム》《光牙忍ハヤブサマル》《水晶の記録 ゼノシャーク / クリスタル・メモリー》……《完全水中要塞 アカシック3》

 「フィオナアカシック」といえば2週間前の超CSⅥ福岡の優勝デッキ。そこに独自のチューンが施されているようだが……傍目にもわかるとおり、かなり事故ってしまっているようだ。しかも《水晶の記録 ゼノシャーク / クリスタル・メモリー》が抜かれ、能動的なアクションの手段を一切失ってしまう。

 さらにオチャッピィの攻め手は続く。《イッツ・ショータイム》をマナチャージしてターンを返すことしかできないMarT 2号に対し、《漆黒の深淵 ジャシン帝》チャージから《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》《黒豆だんしゃく / 白米男しゃく》を抜き去り、自然マナを置き損ねたMarT 2号の一瞬の油断を的確に咎める。

 だがMarT 2号が《完全水中要塞 アカシック3》チャージのみでターンを返したところで、2→3→4と先攻で動いて手札が少ないオチャッピィの手も止まる。減速させたはいいものの、ここから打点を作って一息に倒しきるプランを作らなければならない。少考ののち、ひとまずノーアクションでターンを返すという「待ち」を選択する。  返すMarT 2号は《ロスト・Re:ソウル》チャージから《淡いと濃い ケローラ / ♪やせガエル 負けるなケローラ スパイラル》を呪文側で唱えてターンエンド。マナゾーンには自然なしの5マナで、3枚の手札のうち《スパイラル・ビジョン》《光牙忍ハヤブサマル》が公開情報のため、まだ次のターンもループに入るパターンはなさそうだ。

 それでもオチャッピィは《単騎連射 マグナム》チャージから《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》。直前の《淡いと濃い ケローラ / ♪やせガエル 負けるなケローラ スパイラル》で加わったばかりの《森夢龍 フィオナ・フォレスト》を抜き去り、トップ《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》などから《完全水中要塞 アカシック3》を設置されてしまうリスクをしっかりとケアする。

 3度の手札妨害で一向に態勢が整わないMarT 2号は、引いた《八頭竜 ACE-Yamata / 神秘の宝剣》をマナチャージのみ。そして返すターン、オチャッピィは《秩序の意志》チャージから引き込んだ《邪侵入》を力強く唱える! オチャッピィ「……落ちんか」

 だが、肝心の《アビスベル=ジャシン帝》の姿が見えず苦笑する。《邪龍 ジャブラッド》《深淵の文暴具 ケシカス=カース》《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》の3択から《邪龍 ジャブラッド》を選択すると、《深淵の文暴具 ケシカス=カース》を「アビスラッシュ」し、山札の下に戻るのを《邪龍 ジャブラッド》で置換することで打点だけ作ってターンを終える。

 手札破壊でリソースを締めつけ、自分は墓地をリソースとして少しずつ優位に立つ。オチャッピィのプレイは詰め将棋ならぬ詰めデュエマのごとく、真綿で首を絞めるようにじわじわとMarT 2号を追い詰めていく。  とはいえ、返すターンも《スパイラル・ビジョン》をチャージするのみのMarT 2号に対し、オチャッピィも引き込んだ《ブルーム=プルーフ》だけ出してターンエンド。勝負に出るのは、あくまで《アビスベル=ジャシン帝》を引き込んでの過剰打点を作ってからのようだ。

 対し、MarT 2号はなおも《激烈元気モーニンジョー》をチャージするのみ。しかし既に7マナには到達しており、《森夢龍 フィオナ・フォレスト》をうっかり引き込みさえすればいつでもループで即死の可能性がある。時間の猶予は、いつまでも残されているわけではない。

 ……と、いうところで。

オチャッピィ「よし、やっと引いた!」  2枚目の《邪侵入》から顕現するのは、当然《アビスベル=ジャシン帝》!!

 すぐさま《邪龍 ジャブラッド》2体を「アビスラッシュ」し、墓地に溜めに溜めた最大打点を解放する。

 ……の、だが。

オチャッピィ「マジかー……」

 《邪龍 ジャブラッド》2体の登場時効果を解決しても《漆黒の深淵 ジャシン帝》が墓地に落ちず、《サイバー・K・ウォズレック / ウォズレックの審問》を蘇生して墓地から《サイバー・K・ウォズレック / ウォズレックの審問》の呪文側を唱えての《光牙忍ハヤブサマル》ケアまではつなげることができない。

 とはいえ、それでも《光牙忍ハヤブサマル》の有無にかかわらずシールド5枚を割ってダイレクトアタックするのには十分すぎる打点が揃った。《邪龍 ジャブラッド》の除去耐性もあり、生半可な受けでは止まらない状況。

 受かるとしたら《卍月 ガ・リュザーク 卍 / 「すべて見えているぞ!」》か、《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》からの《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》くらいか。だが呪文である前者はもちろん、《単騎連射 マグナム》をマナに埋めている現状後者もまた、もはや「闇単アビスロイヤル」ではケアできない。オチャッピィは意を決して、MarT 2号の5枚のシールドをブレイクしにいく。

 《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》でブレイク。通る。《邪龍 ジャブラッド》でW・ブレイク。《未来設計図》がトリガーし、《森夢龍 フィオナ・フォレスト》が手札へ。だがそれも、ターンが返ってこなければ意味のないトリガーだ。

 《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》でブレイク。通る。《ブルーム=プルーフ》で最後のシールドに攻撃。これは「ニンジャ・ストライク」《光牙忍ハヤブサマル》でブロックされるが、打点はまだまだ十分にある。

 そして《邪龍 ジャブラッド》が最後のシールドをブレイクし……ダイレクトアタックが、通った。

Mar T2号「ありがとうございました」

オチャッピィ「ありがとうございました!」
 
Winner: オチャッピィ

 手札破壊によって分岐を自ら作り、その都度自分は正しい分岐を選択する一方で、相手には間違った分岐を選択させる。

 あらゆるゲームに通じる基本だが、少し変わった形の「フィオナアカシック」相手にも「待ち」まで含めて正着を淡々と選び続けることができたオチャッピィの強さはおそらく、CSで何百回と「闇単アビスロイヤル」を回し続けてありとあらゆるシチュエーションに遭遇したことによる、異常な量の経験値の蓄積に裏付けされているのだろう。

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