DMGP2025-2nd Day1(アドバンス)準々決勝:フライゴン vs. とり🐥
ライター:高橋 穂(北白河)
撮影:後長 京介
長きにわたったこの大会も終盤、今や会場に残るのはわずか8人。長丁場の疲労と緊張からか、超次元ゾーンを見せ合いながら試合開始を待つ二人のプレイヤーの間に言葉はない。
やや所在なさげに上のほうを眺めているのが、地元愛知県のプレイヤーであるフライゴン。
彼の愛機は環境屈指のコンボデッキ【光水闇ゼーロ】……しかも、今のように流行する前に仲間が一から作り上げたものをベースに、ずっと調整を重ねてきた逸品だという。その研究の成果である《ポッピ・冠・ラッキー》や《ブレイン・スラッシュ》といった、いわゆるテンプレの構築とは一味違う採用カードもうまくこのアドバンス環境に刺さっていたといえよう。
「このデッキが一番強い」と確信してこの大会に挑んだ……と後に語ったフライゴン。「苦手とする呪文ロックさえなければあらゆるデッキに勝てる」という自信は、【ダーバンデ】や【サイバー】、【D・D・D】といったパワフルなデッキを押し返してここまでたどり着いたという事実が証明している。
……しかし、彼の前で腕を組んでじっとテーブルの上を見つめるとり🐥が駆るのは、まさにその呪文ロックを擁する【水火自然ドラグナー】。
《双龍覇王 モルトVERSUS》《夢双龍覇 モルトDREAM》をはじめとするドラグナー&ドラグハートによる圧倒的な出力に加え、4枚投入された《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》による呪文ロックも持ち合わせているなど、とにかく隙のない構成となっているのは見逃せない。
とり🐥と全く同じ構築のプレイヤーが準々決勝にもう1人残っていることも鑑みると、この構築はまさに「会場で最も洗練された【ドラグナー】の一つ」と言えるだろう。
己の強さを証明し、準決勝に駒を進めるのはどちらか。すっかり広くなった夜の会場に、「デュエマ、スタート!」の合図が響く。
Game1
先攻:フライゴン
ゲームが始まるや、じっくりと手札を眺めつつマナを埋めていく両者。フライゴンの《ブレイン・スラッシュ》チャージで相手のデッキ傾向を悟ったか、とり🐥は強力だが呪文系デッキに刺さりの悪い《地封龍 ギャイア》を抱えず早々にチャージ。
すると逆にフライゴンもとり🐥のデッキを悟り、大量展開のあとにターンが帰ってこない公算から《真気楼と誠偽感の決断》を抱えずチャージ……と、マナチャージによる言葉なき対話が繰り広げられていく。
ゲームが動いたのはフライゴンの先攻3ターン目。【ゼーロ】系列の3ターン目と言えば、《~地獄帰りの騎士~》→《DARK MEMORY CONTAINER》による超リソース確保コンボの時間だが……。
とり🐥の超次元ゾーンをじっくり確認したのちにチャージされたのは《戦国接続 ギャラクテスト・シデンシーザー》。つまり、フライゴンの手札に件のコンボは揃っていないということになる。
その代わりに2マナで召喚されたのは、《異端流し オニカマス》。これで安易な踏み倒しによる展開を封じることで、《闇王ゼーロ》までの時間を稼ぐ算段だ。
これに対し、とり🐥は《闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー / お清めシャラップ》の呪文面でじっくりマナを伸ばし、【ドラグナー】の本命たる5-6マナ域へのジャンプアップを図る。何としても動かなければならないフライゴンだが、どうしても能動的な動きができない手札の模様。《異端流し オニカマス》を重ねて召喚し、さらにゲームを引き延ばしにかかる構えだ。
踏み倒しを多用する【ドラグナー】にとって、これは本来かなり動きにくい状況だ。しかし、ここまでやってきたとり🐥がそれを突破する手段を考えていないはずはない。
ターンが返ってくるや、《炎龍覇 グレンアイラ / 「助けて!モルト!!」》の呪文面で登場するのは《夢双龍覇 モルトDREAM》!
このデッキ最大の切り札たる彼が携えているのは、定番の《熱血剣 グリージーホーン》《爆銀王剣 バトガイ刃斗》、そして《無敵剣 プロト・ギガハート》。
《異端流し オニカマス》2体によるバウンスで《夢双龍覇 モルトDREAM》自身はすぐさま手札に帰ってしまうが、その過程で装備者が離れるのを置換して龍解した≪最強龍 オウギンガ・ゼロ≫は咎めきれずにバトルゾーンに残る。
一見「5マナ使ってただのW・ブレイカーを出しただけ」にも見えるこの状況だが、実は話はそう単純ではない。次のとり🐥のターン、6マナで《双龍覇王 モルトVERSUS》を素出しして《爆銀王剣 バトガイ刃斗》を装備、スピードアタッカーがついた攻撃時に(9割近い確率で成功する)ドラゴン踏み倒しで≪爆熱王DX バトガイ銀河≫に龍解……という動きが決まれば、(踏み倒し先はすぐバウンスされるにせよ)《異端流し オニカマス》がいようと合計でシールド5枚ブレイクまではほぼ確約される。
そこに≪最強龍 オウギンガ・ゼロ≫を添えれば、ダイレクトアタック役となって速やかにゲームセットになってしまうのだ。しかも一般的な【ゼーロ】に7コスト域はそこまで多く入っていないので、《裏斬隠 テンサイ・ハート》でもなかなか止められない。
さらに、ここに《双龍覇王 モルトVERSUS》攻撃時に《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》に革命チェンジ……という動きを添えると、各種受け札や次のターンの《闇王ゼーロ》は封殺されてしまい、万一ターンが返ってきてもフライゴンの勝ちは一気に遠のいてしまう。しかもここに《異端流し オニカマス》を当ててバウンスしても、次のターンに同じ組み合わせが飛んでくるので「実質的に意味がない」と言っても過言ではない。
とり🐥の手札には今バウンスされた《夢双龍覇 モルトDREAM》がいるため、次のターンにそれをチャージすることで6マナ到達は確定している。つまり、とり🐥は言外に「この動きをやるからには手札に《双龍覇王 モルトVERSUS》があるし、次のターンにあらゆる角度から勝つぞ」という強烈なプレッシャーをフライゴンにかけることに成功したのだ。
実質的なラストターンを突きつけられたフライゴン。一縷の望みを懸けて《影世界のシクミ》を使用し、3枚の墓地肥やしと蘇生からの大逆転を願うが……フライゴン「……何も出しません」
ここまで墓地肥やしが出来ていないこともあり、この戦況を変えうるカードは来ず。
力なくターンを返したフライゴンに対し、とり🐥は満を持して《双龍覇王 モルトVERSUS》を送り込む。
予定調和的に《爆銀王剣 バトガイ刃斗》を装備した彼の攻撃時に宣言されるのは、その踏み倒しに加えて≪音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ≫への革命チェンジ。
《天革の騎令嬢 ミラクルステラ》がめくれて≪爆熱王DX バトガイ銀河≫への龍解と呪文ロックが無事に成立すると、(≪爆熱王DX バトガイ銀河)の攻撃時に先ほどの《双龍覇王 モルトVERSUS》が展開され、ダメ押しに≪爆熱天守 バトライ閣≫が建立されるという一幕がありながらも)《異端流し オニカマス》では受け流し切れないドラゴンたちの怒涛の連撃がそのままフライゴンに襲い掛かった。
フライゴン 0-1 とり🐥
6マナまで届きさえすれば、半端な妨害の上からでも全力で走りきれる…という【ドラグナー】の押し付けの強さを全力で見せつけたとり🐥。
しかし、フライゴンの【ゼーロ】の武器は強固な妨害だけではない。《~地獄帰りの騎士~》+《DARK MEMORY CONTAINER》が絡んだ際の高速ループ突入が決まれば、【ドラグナー】の準備が整う前にゲームを決めうるのも事実だ。
お互い寡黙にシャッフルを続けるフライゴンととり🐥。勝利への意志を貫き通すのは、どちらか。
Game2
先攻:フライゴン1ゲーム目に引き続き、じっくりマナチャージを進める両者。
特に最速の動きが要求されるフライゴンは、(できるだけ握っておきたいはずの)《DARK MEMORY CONTAINER》をチャージしてでも文明を確保していく。
その想いが実ったか、先攻3ターン目に無事に《~地獄帰りの騎士~》の召喚に成功するが……3ドローののちに手札から捨てられたのは、《不死鳥縫合 ブラック・ビッグバン》2枚。《DARK MEMORY CONTAINER》を見つけられなかったようで、シールドを1枚増やしてターンを返す。
そして、とり🐥はその隙を見逃さない。≪お清めシャラップ≫でマナを伸ばすとともに、《不死鳥縫合 ブラック・ビッグバン》を山札に切り戻させる。後で墓地に送りなおさせる手間に加え、わずかだが山札の必要牌の濃度を下げる作用も期待できるムーブだ。だが、フライゴンは二の矢として《~地獄帰りの騎士~》を送り込む。ここで《DARK MEMORY CONTAINER》が見つかれば、バトルゾーンに闇のクリーチャーを3体確保したうえで充分な手札が残る……つまり、《闇王ゼーロ》に繋がるのだ。
カードを3枚引き、その手から落とされたのは……《異端流し オニカマス》と《サイバー・J・イレブン / 「みんなと戦えてよかった♥」》。またも《DARK MEMORY CONTAINER》の姿はない!シールドを増やしつつ、そのままターンエンドを宣言する。
一番怖い序盤を乗り越えたとり🐥は、じっくり考えたのちここから動き出す。
まずは《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》を召喚し、効果で《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》を手札に加える。そしてマッハファイターで《~地獄帰りの騎士~》に攻撃する際に革命チェンジを宣言。手札から公開されたのは……
《蒼き団長 ドギラゴン剣》!予告されていた≪音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ≫を超えるカードの登場に、フライゴンの表情がこわばる。
ファイナル革命で予定調和的に踏み倒されるのは、先ほどの《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》。その効果で《双龍覇王 モルトVERSUS》までもがとり🐥の手札に馳せ参じつつ、攻撃中の《蒼き団長 ドギラゴン剣》を回収して攻撃をキャンセルする。
そして出しなおした《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》が再度マッハファイターで《~地獄帰りの騎士~》に攻撃。そして今度こそ≪音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ≫へと革命チェンジしつつ、バトルで1体を討ち取る。
バトルゾーンに《蒼き団長 ドギラゴン剣》と≪音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ≫を残しつつ呪文ロックを突き付けるという圧倒的な優位を築いたとり🐥。しかし、このゲームがまだ簡単に終わると決まったわけではない。
その理由は、フライゴンの7枚のシールド。
もともと【ゼーロ】はかなり受けの強いデッキであり、いかに【ドラグナー】といえど《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》のサポートなしで7枚のシールドを割り切ることには不安が残る。
もしとり🐥が2枚目以降の《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》を持っていない場合、次のターンの攻めを生き残って呪文ロックが解けた隙に《闇王ゼーロ》に繋げることも不可能ではない。幸いにも、2体の《~地獄帰りの騎士~》によって手札の質は充分高まっている。
そう考えてか、フライゴンが選んだのはメインフェイズで何もせず手札を抱えつつ、《~地獄帰りの騎士~》を《蒼き団長 ドギラゴン剣》に攻撃させて自爆させマッハファイターの的を消す……という、耐えのプラン。呪文ロックを受けずに返しのターンを生き残るという細い道ではあるが、まだ大逆転の可能性は残っているのだ。
間違いなく追い詰めている側にも関わらず、言外に「このターンでの勝利」あるいは「さらなる《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》の確保」を要求されたとり🐥。
実際に、その熟考ぶりを見るに現在の手札に《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》の姿はないようだ。
何度も超次元ゾーンを確認した末にまずとり🐥が召喚したのは、先ほど見えていた《双龍覇王 モルトVERSUS》。2ドローののち、超次元ゾーンに《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》を送り込みつつ《爆銀王剣 バトガイ刃斗》を装備させる。
そしてプレイヤーへの攻撃時、《爆銀王剣 バトガイ刃斗》の踏み倒しと《蒼き団長 ドギラゴン剣》への革命チェンジを宣言。≪炎龍覇 グレンアイラ≫が踏み倒され≪爆熱王DX バトガイ銀河≫に龍解を果たしたのち、革命チェンジが成就する。
凄まじい選択肢の数による思考負荷の中、ファイナル革命で踏み倒されたのは再びの《双龍覇王 モルトVERSUS》。2ドローののちダブった《双龍覇王 モルトVERSUS》を超次元ゾーンに送り込みつつ、先ほどの《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》を超次元ゾーンから呼び戻す。
そして、このターン9枚もの山札を掘り進めたとり🐥に、デッキがついに応える!
《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》の効果で手札に加わったのは、2枚目の《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》!
最後の望みを懸けて《蒼き団長 ドギラゴン剣》のブレイクした3枚のシールドの中に回答がないか探すフライゴンだったが、悔し気にそのまま手札に加える。とり🐥はそれを見届けると、≪音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ≫から≪音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ≫への革命チェンジを宣言し、再び呪文ロックをかけつつ攻撃を続行。
フライゴンの手札からは合計3枚もの《裏斬隠 テンサイ・ハート》が飛び出るが、コストがばらけているうえ《蒼き団長 ドギラゴン剣》でスピードアタッカーになっているドラゴン軍団を押しとどめるには至らないのであった。
Winner:とり🐥
フライゴン「ラブ(《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》)多投は勝てない……!」
とり🐥「ラブ4枚入ってます」
フライゴン「そりゃ3ターン目(にコンボを)決めるくらいしか勝てない……!」
今戦っていたデッキの全貌を知り、項垂れるフライゴン。
フライゴン「あとちょっとだったのに……!」
その言葉からは、溢れんばかりの悔しさが伝わってくる。だが、だからこそ。
フライゴン「……優勝してください!」
勝者を心から応援し、思いを託すのだ。
受け取ったものを抱え、とり🐥は準決勝に足を進める。
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フライゴン DMGP2025-2nd アドバンス構築 |
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とり🐥 DMGP2025-2nd アドバンス構築 |
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