デュエル・マスターズ

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全国大会2018 甲信越エリア予選 決勝第2回戦:Nagumo(群馬) vs. パタ@いっせー(愛知)



パタ@いっせー「超次元です」

Nagumo「あ、はいw」

 対戦前、他に超次元から出てくるカードがないこの2ブロック環境におけるお約束の風物詩として4枚の《》をお茶目に提示したのは、パタ@いっせー。愛知県でカードショップWINNERSを経営しながらも、自らもプレイヤーとしてデュエル・マスターズを楽しむ男だ。

 そんなパタ@いっせーは、昨年も参加し、今年も1か月後に地元愛知で開催される東海予選ではなく、あえて今日この日に開催される甲信越予選に出場することを選んだ。その理由を聞いてみると、

パタ@いっせー「逆にスタッフが東海予選に出るのでその日にお店を閉めたくはなかったというのと、東海予選が12月24日で娘の誕生日ということもあって遠征は控えたくて……」

 と微笑ましい回答。だが逆に言えば、そうであるからには今ここに座っているパタ@いっせーは、父としてあるいは経営者としての一面を一旦忘れ、純粋な競技プレイヤーとしてここにいるということだ。

 昨年のエリア予選でのインタビューでも、変わらず競技に情熱を傾ける理由として「日本一になりたい」という目標があると語っていた。元デュエマプレイヤーであり、昨年マジック:ザ・ギャザリングの日本王者に輝いたJ-SPEED。デュエマ時代には愛知でともに研鑽を積んでいた彼に、先を越された悔しさがあると。

 日本一に懸ける思いがある。昨年はトップ8止まりと、あと少しというところで手が届かなかった日本一決定戦の出場権利。それを今度こそ手にするために、 パタ@いっせーはトップ16のゲームに臨む。


 その対戦相手、Nagumoはまだ高校生という若さだが、今年は9月に公認CSで3週連続優勝という離れ業を成し遂げるなどここまで好調子で来ており、DMPランキングでも群馬県で2位、全国では50位以内につけている。それゆえに、今回のエリア予選には期するところがあった。

 もう一度、あの舞台に立つために。Nagumoは小学四年生のとき、まだ《ボルバルザーク・エクス》が4枚使えていた時代に、レギュラークラスの日本一決定戦で優勝した経験があった。一度は頂点に立った全国という舞台。そこで味わった高揚と栄誉が、Nagumoを再びエリア予選へと駆り立てた。

 今年のDMPランキングで新潟県1位をひた走るペン山ペン太郎の運転する車に乗り、GP6thで3位に入賞したhiroyasuと、同じ群馬県のランキング1位で交流のある白梟とともに、この甲信越予選へと乗り込んだ。そして予選免除のシード権を持つhiroyasuを含め4名ともが無事、決勝進出を果たしている。この流れを、手放すわけにはいかない。

 何よりNagumoは、今日という日のために誰よりも綿密な調整を行ってきたのだ。

 日本一に懸ける思いがある。日本王者「だった」日々はとうに過ぎ去った。Nagumoは、再び飢えている。勝利に。トロフィーに。栄冠に……必要なのはだから、「今」最強である証明だ。


 パタ@いっせーがNagumoのスリーブの汚れを指摘してスリーブの入れ替えが行われることになり、その間に15分程度の待ち時間が発生するが、入れ替えが終わると両者とも気勢を削がれた様子はない。

 はたして勝つのは『白零サッヴァーク』のパタ@いっせーか。『赤青覇道』のNagumoか。

 栄光の舞台への切符まであと4勝。トップ16きっての注目カードの対戦が、いま始まった。
先攻:パタ@いっせー

 じゃんけんで先攻はパタ@いっせー。《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》《煌世主 サッヴァーク†》とチャージして《憤怒スル破面ノ裁キ》を打つ順調な立ち上がり。

 さらに《ポクチンちん》《“必駆”蛮触礼亞》とチャージしつつノーアクションでターンを返したNagumoに対し、パタ@いっせーは《憤怒スル破面ノ裁キ》チャージから《》を設置して急襲をケアする。一方、Nagumoは《異端流し オニカマス》をチャージしつつ《異端流し オニカマス》を送り出してターン終了。

 するとここでパタ@いっせーは早くも4ターン目にしてチャージ無しを宣言しつつ、《剣参ノ裁キ》。そして11月に発売した「超誕!!ツインヒーローデッキ80 Jの超機兵 VS 聖剣神話†」に収録されたばかりの新戦力、《集結ノ正裁Z》を加える。

 これを見たNagumoは《ゴリガン砕車 ゴルドーザ/ダイナマウス・スクラッパー》をチャージしつつの《ゼンメツー・スクラッパー》《》を排除。そして、《異端流し オニカマス》で……攻撃しない。

 それは、Nagumoがこの「『青赤覇道』 対 『白零サッヴァーク』」というマッチアップについて、今回のエリア予選に先駆けて見出した独自のプレイングセオリーだった。

 『白零サッヴァーク』には現在、主に2種類のタイプがある。《サッヴァークDG》型」と「《煌メク聖戦 絶十》型」だ。
 グランプリ7th時点では《煌世主 サッヴァーク†》のお披露目という要素が強く「《サッヴァークDG》型」が隆盛していたが、その後に『青赤覇道』が『白零サッヴァーク』というデッキの構成を細部まで認知したことにより、「《異端流し オニカマス》のアタックに弱い」という弱点が露呈することとなった。

 その弱点を克服したのが「《煌メク聖戦 絶十》型」だ。殴られたのが裁きの紋章なら、「サバキZ」で殴り返しのクリーチャーを立てられる。さらにマナ軽減能力により、複数体並ぶと《煌龍 サッヴァーク》《煌世主 サッヴァーク†》を積極的に展開することも可能となる。その最新型が、つい先週南東北のエリア予選で3位に入賞したばかりだ。

 Nagumoはこの「《煌メク聖戦 絶十》型」の『白零サッヴァーク』に対して、『青赤覇道』でどう立ち回れば安定して勝ち星を拾えるかを考えたという。そしてたどり着いた解答が、「待ち」だった。

 「《サッヴァークDG》型」に対してはある程度積極的にシールドを割りに行っても《異端流し オニカマス》さえいれば勝てるが、「サバキZ」のある「《煌メク聖戦 絶十》型」に対しては、不用意な攻撃が敗着となりかねない。ならば、いっそのこと徹底的に待つ。攻撃しなければ、《転生ノ正裁Z》などによってしか「サバキZ」は発動できないし、その分《煌メク聖戦 絶十》を出すための手札のやりくりも厳しくなる。

 だが、相手の『白零サッヴァーク』が「《煌メク聖戦 絶十》型」でなかった場合、この選択は裏目にもなりうる。《サッヴァークDG》の能力発動のために用意される表向きのシールドの蓄積を見逃す判断となるからだ。もちろん《サッヴァークDG》《煌メク聖戦 絶十》そのものがマナチャージされていれば判断は容易だが、そうでない場合はどうするのか。

 ここで、Nagumoはもう一つの判断の基準を用意した。4ターン目までに《集結ノ正裁Z》が見えた場合、「《煌メク聖戦 絶十》型」であると。
 「サバキZ」で小回りの利く《集結ノ正裁Z》は、しかし「サバキZ」であるがゆえに《煌メク聖戦 絶十》と同様、《戦慄のプレリュード》《サッヴァークDG》とのセット搭載がノイズとなりかねない。だから《集結ノ正裁Z》が積まれているということは、デッキ内の「裁きの紋章」の含有率を上げたいという要請に基づいているはずであり、《煌メク聖戦 絶十》が積まれている確率が高い……という推論により、この判断の基準を導き出したのだ。

 だからこそ。

 先手4ターン目にパタ@いっせーがチャージ無しで《剣参ノ裁キ》を唱えて《集結ノ正裁Z》を公開した時点で、Nagumoの中ではゲームプランが「待ち」で確定した。そしてそれゆえに、《ゼンメツー・スクラッパー》≪奇石 ミクセル≫を排除し、殴り返しの危険が一見ない上に表向きのシールドの枚数を減らせそうな盤面であっても、《異端流し オニカマス》で不用意に攻撃することはしなかった。

 そう、すべてはこのマッチアップでの正着手を得るために。Nagumoは今日まで「《煌メク聖戦 絶十》型」とのスパーリングを繰り返してきたのだ。

 ゲームの続きを見ていこう。《集結ノ正裁Z》をチャージして《集結ノ正裁Z》を唱えたパタ@いっせーは《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》《憤怒スル破面ノ裁キ》を手札に加え、これで表向きのシールドが3枚目となる。パタ@いっせーの手札が4ターン目のマナチャージを放棄してまでキープしたものであることを考えると、《煌世主 サッヴァーク†》《煌メク聖戦 絶十》を抱えている可能性は高く、この時点でNagumoの攻撃はかなり抑制されたと言っていい。

 だが、Nagumoは焦らない。《終末の時計 ザ・クロック》をチャージすると、≪トリプル・ブレイン≫で手札を補充する。そしてパタ@いっせーが返しで5マナ目となる《憤怒スル破面ノ裁キ》をチャージしつつ唱えた《剣参ノ裁キ》《煌世主 サッヴァーク†》を手札に加えて構えが透ける形となったこともあり、返すターンも《ポクチンちん》をチャージするのみ。さらに続く1ターンもお互いがそれぞれ《転生ノ正裁Z》《ゴリガン砕車 ゴルドーザ/ダイナマウス・スクラッパー》のマナチャージのみで回る。Nagumoは《煌世主 サッヴァーク†》を突破できる手札を作るため、とにかくロングゲームに持ち込む構えだ。
 だがパタ@いっせーとて、この状況でいつまでも静観を決め込むつもりもない。構えが透けている《煌世主 サッヴァーク†》をチャージすると、7マナから《煌龍 サッヴァーク》ドラゴン・W・ブレイカー持ちで厳しく攻め立てる。

 それでも。Nagumoは《終末の時計 ザ・クロック》をチャージするのみで、まだ動かない。

 これを見てパタ@いっせーは《煌龍 サッヴァーク》の攻撃時に《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》。ドラゴン・W・ブレイクでまずは裏向きのシールドを2枚追加する。NagumoはS・トリガーの《ドンドン吸い込むナウ》《“轟轟轟”ブランド》を手札に加えるが、《煌龍 サッヴァーク》は表向きの《剣参ノ裁キ》を犠牲にしてバトルゾーンにとどまる。

 さらに、再びの攻撃時に2枚目の《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》 ここでも《ドンドン吸い込むナウ》がめくれ、《“乱振”舞神 G・W・D》を手札に加えるNagumoだが、既に残るシールドは1枚。そしてここでパタ@いっせーは、仮に返しで《“必駆”蛮触礼亞》からの《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》が飛んできたとしても、《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》の「サバキZ」で脇の《“轟轟轟”ブランド》などの打点を減らして返せるよう、あえてNagumoのシールドを残してターンを返す手堅いプレイ。
 そしていよいよNagumoの、盤面状況からしてほぼ最後のターン。《“乱振”舞神 G・W・D》をチャージして、マナは既に9マナ目にまで達している。まずは5マナで二度目の≪トリプル・ブレイン≫を唱え、3ドロー。

 だがここで、Nagumoにとっても計算外の事象があった。ここまで山札を掘り進め、さらに4枚のシールドを割られて《ドンドン吸い込むナウ》も2回打ったにもかかわらず、《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を引けていないのだ。

 やむなく残る4マナからさらに《エマージェンシー・タイフーン》を打つが、こうなると《“必駆”蛮触礼亞》を打つこともかなわない。残る1枚のシールドに望みを託し、再びターンを返す。

 ここでパタ@いっせーは《転生ノ正裁Z》《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》を回収し、≪ジャミング・チャフ≫を打って呪文を封じると、まずは《煌龍 サッヴァーク》でタップ状態の《異端流し オニカマス》に向けて攻撃するときに《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》。そしてNagumoの最後の1枚のシールドに満を持してアタックする際にも、《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》

 もはや《終末の時計 ザ・クロック》のS・トリガー以外では絶対に止めることができない。Nagumoが、最後の1枚のシールドを確認する。

 そしてNagumoは。

 《終末の時計 ザ・クロック》を公開する!
 それでも、パタ@いっせーにターンを返すまでは≪ジャミング・チャフ≫の効果が続くため、Nagumoは《“必駆”蛮触礼亞》を唱えることはできない。そしてそれは、追加ターンを得ても変わらない。だが、ターンを返せばその時点で敗北が確定する。パタ@いっせーには8枚のシールド、当然その中には表向きのものが3枚以上含まれている。この条件下で、Nagumoは勝ちきらなければならない。

 しかし、直前のターンの《エマージェンシー・タイフーン》が、ようやくNagumoに勝ち筋を呼び込んでくれていた。「《煌メク聖戦 絶十》型」に対してNagumoが想定していた具体的な勝ち手段。それは、≪ジャミング・チャフ≫の上からB・A・Dの《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を連打して殴りきること。
 《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》、さらに《異端流し オニカマス》をも横に並べ、ここからNagumoの詰め将棋ならぬ詰めデュエマが始まる。

 まず《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》の攻撃に対しては、パタ@いっせーが《煌世主 サッヴァーク†》を出してブロック。シールドは割れなかったものの、追加ターンはこの時点で確定。ならばとNagumoは続けて《終末の時計 ザ・クロック》でシールドをブレイク。シールドは残り7枚、「サバキZ」で《煌メク聖戦 絶十》が出てくるが、ターンを返すまでは防御性能は皆無に等しい。そしてNagumoには、ターンを返すつもりなど毛頭ないのだ。

 Nagumoの追加ターン。11マナから2枚目の《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》をB・A・Dで召喚し、脇には≪南海の捜索者 モルガラ≫も並べる。《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》がシールドを2枚ブレイク、《集結ノ正裁Z》も防御の役には立たない。《終末の時計 ザ・クロック》《異端流し オニカマス》と次々にシールドをブレイクしていき、パタ@いっせーのシールドはついに残り3枚。

パタ@いっせー「……悪あがきですけど、一応ジャッジに確認していいですか」

 パタ@いっせーがジャッジに確認したのは、この状況での《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》の挙動だ。普通なら、こうしたゲーム展開は《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》の「サバキZ」で打点を減らして乗りきれるはずだった。だが、Nagumoのシールドゾーンには1枚も楯が無いのだ!送る先の楯が無い以上、《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》は除去として機能しない。Nagumoの打点を減らす手段が、パタ@いっせーにはもはや存在しなかった。

 やがて、Nagumoの2度目の追加ターンが訪れる。Nagumoは3枚目の《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》と、さらに《“乱振”舞神 G・W・D》をもB・A・Dで送り出す。

 そして残る3枚のシールドも綺麗に割りきると、≪南海の捜索者 モルガラ≫の攻撃が、長かったゲームに終止符を打ったのだった。

Winner: Nagumo


Nagumo「スリーブ入れ替えで時間取らせちゃってすみませんでした」

パタ@いっせー「いえいえ。頑張ってください、応援してます!」

 終わってみれば、「5枚目のシールドが《終末の時計 ザ・クロック》だった」というだけの単純な話かもしれない。

 だがその裏には、パタ@いっせーが『白零サッヴァーク』というデッキを正確にプレイしたことと、Nagumoが積み上げた対『白零サッヴァーク』の新セオリーとの噛み合いがあった。Nagumoが不用意に攻撃せず、また無駄なリソースを一切使わなかったからこそ、5枚目が《終末の時計 ザ・クロック》だったという幸運を生かして、ギリギリで勝利することができたのだ。

 他方で「日本一になる」というパタ@いっせーの目標については残念ながら、今年は達成が難しくなってしまった。しかしこの素晴らしい好ゲームを経験したことで、来年また強くなって、どこかの舞台でフィーチャーテーブルに舞い戻ってきてくれるに違いない。
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