全国大会2019 九州エリア予選:トップ5カード ~そして銀の弾丸は放たれた~
ライター:河野 真成
全国大会の九州予選は大本命の一角である『火水ジョーカーズミッツァイル』と、研究の成果とも言えるであろう『カウンタージョーカーズ』がそれぞれ優勝を果たした。
さて、本戦進出者の中で最も多かったのは『火水自然ミッツァイル』であった。まずは本戦進出者のアーキタイプ分布を確認しよう。
■九州大会本戦進出者アーキタイプ分布(計32名)
9 『火水自然ミッツァイル』
5 『火水ジョーカーズミッツァイル』
5 『火単B-我』
3 『水闇(光)ハンデス』
3 『火光ミッツァイル』
1 『ジョラゴン』
1 『カウンタージョーカーズ』
1 『闇単ドラガンザーク』
1 『水闇光オレガ・オーラ』
1 『火水闇ミッツァイル』
1 『火水クラッシュ覇道』
1 『水魔導具』
『火水自然ミッツァイル』、『火水ジョーカーズミッツァイル』を軸に環境が形成されることは予想通りで、そこに『火単B-我』『水闇(光)ハンデス』『火光ミッツァイル』が食い込む、という構造に大きな驚きはない。
最大数の(いわゆる)シータに対して有利な火水が勝つことは想定通りとも言える一方で、『カウンタージョーカーズ』は環境を読み切った上での見事な勝利であろう。
では彼らはどのようなカードを使い、勝利を手にしたのだろうか。
ここでは九州大会で活躍したカードを紹介し、大会の総括としていこうと思う。
第5位:《Wave ウェイブ》
九州大会の予選で圧倒的に多かったのは『火水自然ミッツァイル』、そして『水闇(光)ハンデス』だった。これらのデッキの共通点は《Wave ウェイブ》を軸としてゲームを組み立てるという点だ。
墓地から呪文を撃ちつつGR召喚が可能なこのカードは、≪「本日のラッキーナンバー!」≫ が必須級である本環境において、非常に重宝するカードであった。特に≪「本日のラッキーナンバー!」≫ は撃てば相手を1ターン止められるものの、自身もその1ターンを消費してしまう。普通ならば、いずれはリソース切れを起こしてしまうはず。
ところが続けて《Wave ウェイブ》から撃つことによって、動きを止めるだけでなく自身の展開も可能となる。《天啓 CX-20》や《回収 TE-10》等の強力なGRクリーチャーが召喚出来れば、後続の確保すら出来るのだ。
加えて唱えた呪文が山札下に行かない都合、《Wave ウェイブ》の連打も可能。気付けば≪「本日のラッキーナンバー!」≫ を撃たれている間に大量のGRも展開されていた……そんな光景もよく目撃されている。
もっとも、このカードにも弱点はある。それは《Wave ウェイブ》自身が他のカードとの組み合わせを前提としたカードであるということだ。ミッツァイルであれハンデスであれ、《Wave ウェイブ》+≪「本日のラッキーナンバー!」≫ をセットで引くで要求を突きつけられており、この点をデッキ構築の段階で意識せざるを得ず、多くのプレイヤーを悩ましたことだろう。
第4位:《BUNBUN・ヴァイカー》
『火単B-我』は強力なデッキだが、2ブロック環境に於いては1つ解決せねばならない問題があった。それはこの環境に《“罰怒“ブランド》が不在であるということだ。サブフィニッシャーであるこのカードの不在は痛く、取れるプランの数が大幅に減っていた。よって、何かしら代理のカードを探す必要があった。
そこで白羽の矢が立ったのが、《BUNBUN・ヴァイカー》である。
このカードは味方が相手のシールドをブレイクした後に、GR召喚をするカードだ。《DROROOON・バックラスター》等で横に並ぶ展開となった時にに威力を発揮することができ、自身がスピードアタッカーであるため最低1回の攻撃は保証されている。《“魔神轟怒”ブランド》や《マシンガン・トーク》と相性がよく、特に前者が召喚された日には、相手は忌々しくこのカードを見つめることになるだろう。
ただし、《龍星装者 “B-我”ライザ》と違って他のクリーチャーにスピードアタッカーを付与しないので注意。単体でゲームを終わらせるカードではないため、あくまでサブフィニッシャーとしての運用となるだろう。
第3位:《》
優勝した荒木。の『火水ジョーカーズミッツァイル』に採用されていたのがこのカードだ。クリーチャー面はトリガーとして1点は止められるブロッカー、呪文面はGR召喚出来るカードである。
このカードは1枚でゲームをひっくり返すような力のあるカードではないものの、効果に複雑な要素はなく、使い方がわかりやすいところがポイントだろう。
『火水ジョーカーズミッツァイル』は《ザババン・ジョーカーズ》や《メラメラ・ジョーカーズ》といったドロー呪文の効果の都合、可能な限りジョーカーズのカードでデッキを固めたい。また《“魔神轟怒”万軍投》を引き切れなかった時の予防線も欲しい。そんな両方の需要に応えるのがこのカードというわけだ。
『火水ジョーカーズミッツァイル』というデッキは、3ターンで決着も付けうる強力なデッキである反面、継続性には欠けるデッキだ。一度展開したら手札の消費が激しいことに加え、手札のカード同士の相性も重要だ。例えば《ザパンプ》と《オケ狭間 寛兵衛》は同時に手札にあっても相性が悪く、ゲームの作り方が難しい。
一方でこのカードは、使用のタイミングがわかりやすい。手札が揃っていればこのカードは必要ないし、《“魔神轟怒”万軍投》等がなく、4ターン目以降にゲームを引っ張りたいならば、手札に持っていてもいいカードだ。《Wave All ウェイボール》との相性の良さも見逃せない点である。
このカードの採用は、荒木。らがこのアーキタイプを使用する中で行った工夫の1つだと言えるだろう。
第2位:《SMAPON》
それは準決勝のことであった。
fogionの手札は0枚、場のクリーチャーもいない。対して相手のシールドはまだ2枚残っており、場には《全能ゼンノー》を含むクリーチャーがずらりと並ぶ、絶望的な状況。恐らく、ラストターンだろう。
だがここでfogionは≪キング・ザ・スロットン7≫をドローし召喚すると、2体目の≪キング・ザ・スロットン7≫が捲れる。更に2体目の出た時効果からは3体目の≪キング・ザ・スロットン7≫が捲られ、その出た時効果から最後に捲られたのは《SMAPON》だった。果たして《全能ゼンノー》は破壊され、攻撃可能になった2体の≪キング・ザ・スロットン7≫がアタックを決めて勝利をもたらした――
そんな奇跡のような所業を成した《SMAPON》というカードは、環境的に確かに強力なトリガーであった。特に『火水ジョーカーズミッツァイル』によって形成されるGRクリーチャーの並びはパワー2000以下が多く、1枚トリガーしてしまえば大抵のカードを止められる。かといって≪「本日のラッキーナンバー!」≫で「7」を宣言した場合、≪スゴ腕プロジューサー≫からの《全能ゼンノー》といったカウンターもある。
コストを散らしたトリガーの採用は北陸大会でも見られたが、これは≪「本日のラッキーナンバー!」≫ をすり抜ける方法として有力であろう。
なおこのカードはfogionに決勝でも勝利をもたらすが――その詳細はゲームカバレージの方に譲ろう。
第1位:《バレット・ザ・シルバー》
古来より西洋では“魔”を退治する切り札として、銀の弾丸はフィクション世界で存在していた。
デュエル・マスターズに於いても「特定の戦術に対するメタカードを少数枚数ずつ入れたデッキ(例えばマナ破壊対策に《光波の守護者テルス・ルース》を入れる)」をシルバーバレットと呼ばれたりもしたが、これは“銀の弾丸などない”という皮肉のニュアンスも含んでいるだろう。要は、この手のデッキは決して強くはない。
だが現実として、九州大会では銀の弾丸が確かに存在した。
《バレット・ザ・シルバー》はミッツァイルやB-我の攻撃を耐えた後の強力な対抗札として『カウンタージョーカーズ』というデッキタイプそのものを成立させ、そしてfogionに優勝をもたらした。
改めてこのカードを紹介しておこう。
相手がクリーチャーを3体召喚したターンの終わりにバトルゾーンに出すことができ、出た時または攻撃するときに山札を捲り、ジョーカーズのクリーチャーならば場に出すことが出来る。≪キング・ザ・スロットン7≫が見えれば更に展開が期待でき、《ジョリー・ザ・ジョルネード》ならば、そのままゲームが終わりうる。
ではどういった状況でこのカードを使うかを想定しているというと、ミッツァイル系統がGRクリーチャーを展開する時である。相手が《BAKUOOON・ミッツァイル》を持っておらずにターンを終了した場合や、トリガーで防いだ後にこのカードを着地させることで、返しの反撃の糸口とするわけだ。
そして想定通り、決勝では鮮やかな活躍を見せたが――やはりこれも詳細はカバレージに譲ろう。
ともかく、《バレット・ザ・シルバー》によってfogionは全国への切符を掴み獲ったと言っても過言ではない。
さて、九州大会で活躍したカードをピックアップしてみた。
《BAKUOOON・ミッツァイル》が強いことはわかり切っている中で、それを使う選択も使わない選択も、大きな挑戦だったと言える。使えば同型戦は避けられず、使わなければミッツァイルに勝てるデッキを生み出さねばならないからだ。
九州大会では使ったプレイヤー、使わなかったプレイヤーがそれぞれ優勝を果たした。しかし両者共にデッキに工夫が見られる内容であったのは言うまでもない。
残るエリアではどのようなカードがプレイヤーに勝利をもたらすのか。
それは《BAKUOOON・ミッツァイル》なのか、はたまたそれ以外か。
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