全国大会2024 関東エリア予選決勝戦 Aブロック:うっちー☆ vs. 申し子
ライター:谷口 雄飛
撮影:堀川 優一


カードデザインの話でいえばハイパーモードやハイパーエナジーなどがまさにそうで、ハイパー化であれば他のクリーチャーからエネルギーを託され、超化獣が強力な力を得てハイパーモードになると解釈できるし、ハイパーエナジーであれば、他のクリーチャーからエネルギーをもらって主役のクリーチャーが早期召喚される(駆けつける)とも見れる。
Dreamクリーチャーも我々プレイヤーの想いや期待、憧れを貰い受けてハイパー化する、なんて設定を感じることができる。
DMGP2024-2ndインタビュー
そしてこれは我々プレイヤーにも関係する話で、CSなどの会場で知り合いになり、互いに情報交換や切磋琢磨したりすることも想いや技術を人に託しているといえるし、それがコミュニティとして成長していく過程でその輪は少人数のグループから地域へと広がっていく。
そんな中で仲間と同じ大会に出場し、そこで対戦相手としてマッチングして対戦相手として戦うことになっても、真剣勝負を楽しめるのではないだろうか。もちろん勝負の世界であることに変わりはないので、負けた側は悔しいだろうが、それでも次がある仲間の背中を押すことはできる。今年度の全国大会エリア代表決定戦ではそんなプレイヤーによる物語が展開されていたと思う。
仲間との繋がりが、自分達の住む地域が育てた代表者を送り出すイベントとして、今年度のエリア予選を見るとそこにはドラマがある。
2020年に行われたリモートデュエマスペシャルトーナメント。過去のイベントのその記録として以下のようなテキストカバレージが残されている。
リモートデュエマスペシャルトーナメント決勝戦
テキストカバレージを記録・執筆しているカバレージライターはこの文中の
「カバレージライターには、素晴らしい戦いを特等席で見る特権を持つ代わりに、その素晴らしい戦いを読者に届ける。」
という理念を胸に刻んで活動している者が大半なのだが、今回話題にしたいのは、冒頭にあるこちらのフレーズ。
「物語を紡ぐ事とデュエルをする事は同じだ。」
という部分である。多くの人のデュエルによって紡がれてきた物語。しかし、2ブロックフォーマットによる全国大会の出場権利をかけた物語の糸は、2019年からの5年間紡がれることはなかった。
そんな背景があった中で数年ぶりに開催された全国大会2024エリア代表決定戦。また、物語は紡がれ始めた。
今年のエリア代表決定戦を振り返れば、プレイヤーによる様々な物語があった。
北の大地では全国大会優勝経験者に対して、北海道のデュエマコミュニティを育成してきた認定ジャッジがアップセットを起こし、
東北では洗練された光水自然ゼニスが環境の勢力図を変え、
東海では予選で土をつけられたプレイヤーが決勝戦でリベンジを果たして全国への切符を獲得し、
北陸ではDMPランキングで凌ぎを削る県内トップ2のライバル同士が激闘を繰り広げ、
九州では水闇火のプレジールが環境を支配。
関西大会では引力に惹かれあった、同じグループに所属して共に調整を行ったプレイヤーが自分達のコミュニティが最強であることを証明し、
中国・四国大会ではメカによる進撃がありながらも、決勝戦では流派が異なるハイクを詠むマジック同士が優勝を争った。
これまでを振り返ると、今年のエリア代表決定戦ではプレイヤー1人1人に物語があり、それぞれがデュエル・マスターズにおけるプレイヤー側の歴史として足跡を残していった大会となった。今年デュエル・マスターズをプレイしていた誰もが当事者だったのだ。そして肩書きのない、それでいて数えきれないほどのプレイヤーが紡いできたドラマのクライマックスとして今、エリア代表決定戦関東大会は決勝戦を迎えようとしている。
そして、筆者はデュエル・マスターズさんからお呼ばれされたゲストの立場であるからこんなことを書けるというだけであり、試合内容をお送りすることがメインであるテキストカバレージでこんなことを読者に問いかけるのもどうなのかとは思うのだが、どうしても読者のみなさんに聞いてみたいことがある。
今年の2ブロックフォーマットのデュエル・マスターズは、面白かっただろうか。楽しかっただろうか。
始めたきっかけは全国大会への参加のためだったり、CSでのプロモーションカードが魅力だったりで、ゲーム性が理由ではなかったかもしれない。
それでも、メクレイドや革命チェンジ、終極宣言や水晶ソウルなどの新能力で5文明5種族が盛り上がったアビス・レボリューションのカードたちと、ハイパーモードやハイパーエナジー、バラバラエティなどでクリーチャー同士の繋がりを駆使した王道編のカードたちが織りなす、オリジナルともアドバンスとも一味違うデュエル・マスターズは楽しかっただろうか。
仲間と協力して予選の突破を目指し、励まし合いながら過ごしたこの半年は、みなさんにとってどんな時間だっただろう。みなさんのいい思い出になっていれば、今年の2ブロックを盛り上げた人々やクリーチャー達も報われることだろう。そしてこの新しいカードがメインで戦う2ブロックフォーマットによる熱狂が、オリジナルやアドバンス、デュエパーティーとともに今後もデュエル・マスターズの楽しみ方の一部として続いていくと幸いだ。
このあとにはデュエル・マスターズを盛り上げてきた認定ジャッジやインフルエンサー、裏方に回って尽力してきた人々の中から代表を決める全国大会エリア代表決定戦のジャッジ大会が最後に控えているが、過酷な店舗予選を勝ち上がり、エリア代表決定戦まで駒を進めたプレイヤー達による物語はこれが最後となる。
デュエル・マスターズを愛する全ての人の夢の舞台、全国大会への切符を手にするのは果たして誰なのか。
決勝戦の席に座ることが許されたのは、2つのブロックに分かれた合計4名の関東圏のプレイヤー。Aブロックは東京都のうっちー☆と埼玉県の申し子が戦うこととなった。
デュエル・マスターズを楽しんできた全てのプレイヤーへのリスペクトとともに、全国大会エリア代表決定戦関東大会決勝の記録をここに紡いでいく。
Game
筆者がうっちー☆を知ったのは、Youtube上だった。「元カード開発者が」というフレーズからタイトルが始まる動画が流れてきて、それを見たのを覚えている。カードの特徴を捉えて、自身の経験をもとに説明する動画内容はとても面白く、理論的な説得力があった。彼はカードそれぞれの役割を正しく理解しているのだ。そんな彼は自分の知識と経験をもとに2ブロック環境のカードを正しく理解して、このエリア代表決定戦関東大会を戦い、見事決勝戦まで駒を進めた。Youtuberとしての活動はまだ始まったばかりだが、夢の舞台である全国大会まであと1勝。反対側のブロックで決勝を戦っているハマチとともに光水闇の暴発エルボロムをシェアしている。
うっちー☆ 「(これまで)練習に付き合ってくれた仲間とダブル優勝を果たしたいです!」
偶然にも決勝戦用の2つのテーブルでうっちー☆とハマチは互いの背中を預けるかのように背中合わせで試合を始める格好となっている。試合前に語っていたように、2人が使うデッキが今日の最強だったことを証明することができるのか。
一方の申し子を筆者が知ったのは、CS会場だった。彼はこの年度から2ブロックフォーマットのデュエマを始めたが、メキメキと頭角を表していた。しかしそれもそのはずで、彼は2023年の下半期のDMPランキングでトップ100入りを果たすほど、このゲームの実力は高い。今日はDM24-RP4 デュエル・マスターズTCG 王道篇第4弾 「悪魔神、復活」が発売されてから使っている、火水闇ジャオウガで勝利を重ねてきた。
本日のエリア代表決定戦では、普段千葉県で2ブロックCSを盛り上げている認定ジャッジが複数参加しており、普段のやんちゃな学生としての姿を知っている筆者も含めて彼が決勝戦まで駒を進めた時はとても驚いた。
試合開始前に、筆者から決勝戦にかける想いなどを軽く質問してみると。
筆者 「申し子選手は高校何年生ですか?」
申し子 「中学生です!」
うっちー☆ 「中学生なの!?」
申し子 「中学生だけど全国大会に行きたい!」
なんとまさかの中学生。ハンドルネームがもしかすると「デュエル・マスターズの申し子」になってしまうかもしれないのだ。そしてデュエル・マスターズには年齢なんてものは関係ない。あと1勝。あと1勝で、夢に見た全国大会への切符が手に入る。
うっちー☆は仲間の想いを、申し子は自身の夢をかけてこの決勝戦を戦う。全国大会への切符を掴むのはどちらになるのか。
先攻:うっちー☆



4マナ目をマナチャージしたうっちー☆ はデッキのキーカードである《超光喜 エルボロム》を召喚。効果で1枚ドローしながらS・トリガーをシールド化して守りを固めつつ、コンボ始動へ向けて着々と準備を行う。
一方の申し子も、4ターン目を自分の手を進めることに費やす。
《邪心臓の魔法陣》を場に出して、手札を交換しながら墓地へ《アーテル・ゴルギーニ》と《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》を送り込む。《邪心臓の魔法陣》は水文明と闇文明を持つタマシードであるため、あとで使われるであろう《ブレイン・スラッシュ》の効果をフルで使うことができ、《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》の攻撃時の効果で打点を増やすことが出来るようになった。
そろそろコンボを始動したいうっちー☆ だが、なかなかコンボパーツが揃わない。5ターン目は《カリッキ=リッキ》を召喚して山札からカードを3枚墓地へ落としてターンを終える。




だが、このシールドブレイクでS・トリガーが2枚発動!《終止の時計 ザ・ミュート》により手札が入れ替えられ、《イカリノアブラニ火ヲツケロ》によって《忍蛇の聖沌 c0br4》が場に。
《忍蛇の聖沌 c0br4》の効果で墓地から《アーテル・ゴルギーニ》が呼び出され、今度は《アーテル・ゴルギーニ》が《終止の時計 ザ・ミュート》と《同期の妖精 / ド浮きの動悸》を墓地から呼び出される!
2枚のシールドをブレイクしただけで場にクリーチャーが溢れかえってしまったのを確認したうっちー☆ はターンを終了するしかない。
逆に優勢になった申し子の6ターン目、プレイされるのは満を辞しての《ブレイン・スラッシュ》!!

切札である《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》が場に現れる!!
うっちー☆ の場とシールドと手札が減らされるが、ここで前のターンに回収した《貝獣 パウアー》が手札から捨てられた時の効果で、手札は6枚に回復する。
だが、ここで申し子が止まるわけがない。攻勢に出る。
まずは《同期の妖精 / ド浮きの動悸》が《超光喜 エルボロム》へ攻撃。バトルにより破壊されるが、メガ・ラスト・バーストによって《超光喜 エルボロム》を手札に戻す。
続けて《同期の妖精 / ド浮きの動悸》がシールドをブレイク。

S・トリガー、《忍蛇の聖沌 c0br4》!自身の効果で破壊されてしまうが、《アーテル・ゴルギーニ》が墓地から場へ。そして《アーテル・ゴルギーニ》が墓地から《陽炎の精霊メルキウス》と《超光喜 エルボロム》を場へ呼び出すことで、シールドを1枚追加する。
今度は《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》が攻撃。墓地から《アーテル・ゴルギーニ》が場に蘇り、うっちー☆ の《アーテル・ゴルギーニ》を破壊しながら仕込まれていないシールドを2枚ブレイク。

うっちー☆ のシールドから現れたのは、2枚目の《忍蛇の聖沌 c0br4》!墓地から先ほど討ち取られた《アーテル・ゴルギーニ》が蘇り、《アーテル・ゴルギーニ》が《終止の時計 ザ・ミュート》と《カリッキ=リッキ》を呼びだす!
だが、うっちー☆ のシールドは残り1枚。打点は十分。申し子は最後のシールドをブレイク。

まだ、終わっていない。仕込まれたシールドから現れたのは、《偽りの名 ドルーシ》!うっちー☆ は手札から1枚シールド化する。それでも申し子の攻撃を受け止め切るにはまだ足りない。
申し子は再びシールドを攻撃する。
うっちー☆ がこの攻撃を耐えるには、あるカードをS・トリガー・プラスで発動するしかない。しかし、うっちー☆はその条件をクリアしてみせた。

その条件とは、《終止の時計 ザ・ミュート》のS・トリガー。申し子のクリーチャーの攻撃は全て停止した。
逆転こそが、カードゲームだ。といわんばかりのS・トリガーの応酬でターンが回ってきたうっちー☆ 。まず唱えるのは、ゲームの決着を告げるハイク、

《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》!
そしてここに来るまでの流れで、ループに突入する条件は達成されている。これから行われるのは、つわものが集った全国大会エリア代表決定戦関東大会で行われる、最後のループ証明だ。
うっちー☆ はここから異なる手順のループをそれぞれ駆使して最終的に無限に自身の追加ターンが発生する状態を目指す。

初期盤面
・場に2体の《カリッキ=リッキ》、《陽炎の精霊メルキウス》、《アーテル・ゴルギーニ》、《倍掘人形ニモドース》、《超光喜 エルボロム》
・使用可能な8マナ
1.まず、《超光喜 エルボロム》を《カリッキ=リッキ》をタップしてハイパー化。《カリッキ=リッキ》の効果で墓地にある《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》を墓地から手札に戻す。
2.戻した《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》に《陽炎の精霊メルキウス》の効果でハイパーエナジーを与え、《カリッキ=リッキ》を含めた場のクリーチャーを4体タップして1マナで《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》を唱える。この際にタップされた《カリッキ=リッキ》の効果で再び《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》を手札に戻す。
こうすることで1ターンに1回追加ターンを獲得することができ、《カリッキ=リッキ》1体分の効果は墓地から任意のクリーチャーを回収することに充てることが出来るため、回収したカードをターンに1回のマナチャージのタイミングでマナに置けるので、使用可能なマナを増やしながら何回でも追加ターンを獲得することが出来る。

1.1のループの過程でマナの総数を9マナにして、《カリッキ=リッキ》を含めた場のクリーチャーを4体タップし、1マナで《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》を唱える。そして《カリッキ=リッキ》のタップされた時の効果で《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》を手札に加える。
2.8マナを払い、《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》を唱える。
3.《超光喜 エルボロム》を《カリッキ=リッキ》をタップしてハイパー化。《カリッキ=リッキ》の効果で墓地にある《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》を墓地から手札に戻す。
こうすることで1ターンに2回追加ターンを獲得することが出来る。このループを証明し、無限追加ターンの手順の省略を済ませたうっちー☆ は1ターンに1枚シールドをブレイクしてからターン終了を繰り返す。
ダイレクトアタックが通ったことが確認された瞬間、全国大会への切符を掴み取った関東代表はうっちー☆ に決定した。

試合が終わったあと、仲間に祝福されていたうっちー☆ と対照的に、あと1歩のところで夢が手から零れ落ちた申し子は失意の底に沈んでいた。
側から見ればここまで勝ち上がってきたことはとてもすごいことなのだが、本人の気持ちは察せられるところがある。千葉県で2ブロックを盛り上げるべく頑張っている認定ジャッジ2名と筆者の3人は、2ブロック村からここまで羽ばたいた若き才能に対して、どう声をかけるべきか迷っていた。普段はやんちゃな部分をもう少し抑えてくれと思ってはいるのだが、ここでは勝ってくれと願っていた部分はあって、最後までその勇姿を見守っていた。
しかし、そんな彼はしばらくしてから顔を上げて会場を後にした。また来年ここに戻ってくるために。今度こそ全国大会へ出場するために。全国大会へ出場したいという想いは、対戦相手のうっちー☆ へ託された。
だが、心配することはない。今年度の関東代表は激戦を潜り抜けた素晴らしい実力を持ったプレイヤーであることは今日一日で証明されている。
おめでとう!うっちー☆!たくさんの人の想いを受け取って全国大会へと羽ばたく関東エリア代表は君だ!

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