DMGP7th 準々決勝:えんがわ vs. W
カードゲームはその性質上、極めたとしても常に勝ち続けることが難しいゲームだ。
どんなに素晴らしいデッキを組もうと、どんなに完璧なプレイを身に付けようと、付きまとってくる運の要素。
避けられない手札事故。相手の上ブレ。試合を重ねると、これらの要素がどうしても発生してくる。
特にデュエル・マスターズはその傾向が強い。いくらdottoでも《“轟轟轟”ブランド》の2キル展開にノートリをしてしまえばどうしようもないし、ぎらさきでさえ3ターン目に《蒼き団長 ドギラゴン剣》が走ってくる展開には否応なく頭を抱えることとなる。
当然、避けられない運要素に心が折れてしまったトーナメントプレイヤーを何人も見てきた。
だが同時に、運要素と極限まで向き合ってそれを極限まで排除し、安定して勝ち続けるプレイヤーを何人も知っている。
デュエル・マスターズは主に構築で差をつけるゲーム。彼らが使うデッキは、得てして出力が非常に安定している。そこにミスのないプレイが加わることで、彼らは常に勝ち続けてきた。
僕たちは彼らを敬意をもって「トッププレイヤー」と呼び、常に憧れの目を向け続けている。
運否天賦で簡単に決着が着いてしまうからこそ、勝ち続けるのは難しい。
それでもなお勝とうとする姿勢が、常勝のトッププレイヤーを生み出す。
だからこそ、カードゲームは面白い。だからこそ、デュエル・マスターズは面白い。
もしも、もしもの話だ。
極めても上位に勝ち残ることが難しい、そんなゲームで勝ち残った顔ぶれが圧倒的強者ばかりなら。
たったそれだけで、最高の大会が出来上がる。
日本の古都、京都で行われたDMGP7thも準々決勝に差し掛かった。
前置きが長くなったが、断言しよう。
これは間違いなく、最高の大会だ。
トップ8のメンバーは右を見れば現・全国王者dotto。左を見ればdottoと双璧を為す関西の鬼才、ぎらさき。
DMGP3rd王者のW(ホワイト)に、YouTubeのカリスマZweiLance。
他にも超CSⅡで2位となったハマチのデッキを作ったえんがわ。千葉県の強豪オチャッピィ。
間違いない。DMGPトップ8で、史上最高に濃いメンバーが出揃った。
誰が勝ってもおかしくない。こんなトーナメントを見せられて、盛り上がらない観客がいるだろうか?
もちろん、トーナメント経験が浅いちょこくっきーや桐寺も大健闘。仮にこのメンバーを倒して頂点に上り詰めるとなれば、間違いなく次世代のスター候補として賞賛されるであろう。
注目のカードが集まる中、筆者がライターとして見守ることになったのはWとえんがわの試合。両プレイヤーともに実績十分、準々決勝屈指の好カードだ。
Wは今年九州のCSで個人4連覇するなど、GP3rdでの優勝、そしてこの場に立っていることが実力によるものであることは証明済。史上初、2度目の載冠に向けて邁進する。
対するえんがわも、自身が組み上げたデッキがハマチの超CSⅡ準優勝という形で結果を残す。この日は関東トップクラスのビルダー、taiseiが組み上げたデッキでこの舞台まで駆け上がってきた。
どちらが勝っても納得の一戦。歴代トップクラスのスター揃いとなったGP7th。
頂点まであと3勝。まずは1勝を掴むため、鹿児島と神奈川の竜虎が相搏つ。
Game1
先攻:WWのデッキは『赤青緑≪龍装艦 チェンジザ≫』。対するえんがわは『白ゼロサッヴァーク』。
Wは初動に恵まれず、最初にカードがプレイされたのは後攻3ターン目。えんがわの《剣参ノ裁キ》により《戦慄のプレリュード》が回収される。
Wも《フェアリー・シャワー》で追いすがり、キーアクションとなる6マナへと伸ばす。
返すえんがわは3マナをタップし《戦慄のプレリュード》……は撃てず。《剣参ノ裁キ》で《煌世主 サッヴァーク†》を回収する。
Wは予定調和の≪龍装艦 チェンジザ≫。2ドローののち捨てるカードは……早速の《“必駆”蛮触礼亞》!!
呼び出されたのはもちろん《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》!!
早速のハードパンチをえんがわに見舞うW。《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》がWブレイク。
……するも、仕掛けるのが少し早かったかもしれない。
ブレイクされた紋章を墓地に送ったえんがわは《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》。
これにより≪龍装艦 チェンジザ≫をシールドへ磔にする。
追加ターンを得たWだが、《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》が破壊された盤面には一切のアタッカーが残っておらず、手札に後続のアタッカーもない。《フェアリー・シャワー》を撃つのみと、弱い動きでターンを返してしまう。
ターンが返ってきたえんがわ、当然反撃の時間。
《戦慄のプレリュード》《サッヴァークDG》から《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》を含む3枚を回収。
終了時、紋章を撃つ効果は使わない。が、シールドに貼り付けられた3枚の紋章がこのデッキのフィニッシャーを呼び出す。
《煌世主 サッヴァーク†》。
本来相手のアタックに対するカウンターとなる新たなマスタードラゴンが、完全に攻めのタイミングで降臨する。
場を離れない効果を持った状態で現れたこのカード、Wのデッキで対処法は限られる。
Wはひとまず《フェアリー・シャワー》を撃つのみでエンド。
えんがわはさらなる《サッヴァークDG》……その効果で《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》、《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》の2枚目を回収!
さらに《サッヴァークDG》は2枚目の《煌世主 サッヴァーク†》に変身。
圧倒的な盤面を目の前にしたW。とはいえ、自分のできることをやるのみ。
10マナに到達し、≪龍装艦 チェンジザ≫を召喚するが……苦しい顔。声は発さなかったが、その口の形は「あーマジか」と呟いたように見えた。
いったん《ドンドン吸い込むナウ》で≪龍装艦 チェンジザ≫を場から逃がす。が、そんなことをしている間にえんがわはフィニッシュまでのルートを計算する。
理想は≪ジャミング・チャフ≫を唱えながらの《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》だが……それらを3枚目の《サッヴァークDG》で全て手に入れた!!
さらに回収された《煌世主 サッヴァーク†》を《サッヴァークDG》から呼び出す。難攻不落の要塞を前に、Wのアクションはターンエンドしかない。
そして、満を持して3枚のマスタードラゴンがWに襲いかかる。
≪ジャミング・チャフ≫《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》の効果を受けた3体のギラメシアが、Wを飲み込んでいった。
えんがわ 1-0 W
Game2
先攻:WWは先攻で幸先よく《フェアリー・ライフ》《フェアリー・シャワー》のロケットスタート。
対するえんがわは後攻3ターン目に《剣参ノ裁キ》で《転生ノ正裁Z》回収。このターンに考えた末置いた《戦慄のプレリュード》がどう響くか。
Wは最速≪龍装艦 チェンジザ≫とはならなかったが、《ドンドン吸い込むナウ》で《》回収。対するえんがわは《剣参ノ裁キ》で《煌龍 サッヴァーク》回収。
さあ、Wは≪龍装艦 チェンジザ≫から《“必駆”蛮触礼亞》《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》!
果敢にも表向きのシールドがある2枚に飛び込む。《煌世主 サッヴァーク†》をケアするためだろう。
が、この選択肢を取ってしまうとこのデッキもう1つの守りの要、サバキZを直撃するリスクが発生してしまう。
えんがわは《転生ノ正裁Z》、そして《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》をサバキZ。≪龍装艦 チェンジザ≫を失ったWは顔を歪める。
が、今回は追加のアタッカーを持っている。8マナに到達したWは2枚目の《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》。
シールドを1枚に落とし込み、さらなる追加ターン。えんがわはブレイクされた《転生ノ正裁Z》を一応撃っておき、《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》を放つ準備をする。
さあ、追加3ターン目となったwのターンだが、その手札はドロー含めてわずか2枚。
その選択肢は……6マナで《“乱振”舞神 G・W・D》。
最後のシールドをブレイクされたえんがわはたまらず《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》を切り、《“乱振”舞神 G・W・D》をシールドへ送る。
が、シールドを全て失ったえんがわの裁きの紋章は、その拠り所を失い墓地へと送られてしまう。
えんがわはいったん≪ジャミング・チャフ≫でお茶を濁すも、SA1枚で負けてしまう苦しい状況だ。
返しのW、SAには恵まれなかったものの≪黒豆だんしゃく≫をプレイする。
後が無いえんがわはそれを《隻眼ノ裁キ》でフリーズさせ、≪奇石 ミクセル≫で《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》に待ったをかける。
が、Wが追加打点として差し向けたのは≪龍装艦 チェンジザ≫。
≪奇石 ミクセル≫効果で手札の《“必駆”蛮触礼亞》《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》は起動できないが、ただの打点であることがもはやえんがわにとって最大の脅威。
ターンが返ってきたえんがわ、場の状況を整理し考えるが……
この2体を処理することを諦め、投了を選択。
ベスト8の対決は、3本目にもつれ込んだ。
えんがわ 1-1 W
Game3
先攻:えんがわマッチ初の先攻を手にしたえんがわは《憤怒スル破面ノ裁キ》から入る好スタート。対するWも初動の《霞み妖精ジャスミン》をキャストする。
えんがわはさらなる《憤怒スル破面ノ裁キ》で紋章を2枚に。Wも《フェアリー・シャワー》と最高のスタートだ。
だが、えんがわの4ターン目はチャージのみでノーアクションエンド。
Wは最速≪龍装艦 チェンジザ≫から《ドンドン吸い込むナウ》。《フェアリー・シャワー》回収、《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》を警戒し≪龍装艦 チェンジザ≫を手札に逃がす。
5ターン目を迎えたえんがわは《転生ノ正裁Z》で回収効果は使わず表向きのシールドを3枚に増やす。マナに2枚置いてある《煌世主 サッヴァーク†》の影が否が応でもチラつく。
Wはこのターンを一時休憩とし、《フェアリー・シャワー》《フェアリー・ライフ》と動いてエンド。
えんがわもなかなか動きに恵まれない。《憤怒スル破面ノ裁キ》を撃つのみでエンドする。
そして、W側の準備が整った。
10マナに到達したWは、満を持して《“必駆”蛮触礼亞》《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》。さらに《ドンドン吸い込むナウ》から《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を回収しつつ、≪龍装艦 チェンジザ≫を《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》から逃がすためバウンス。
《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》のアタックには予定調和の《煌世主 サッヴァーク†》が合わせられ、えんがわのシールドは守られるがWは追加ターンを得る。
追加ターン、Wは≪龍装艦 チェンジザ≫を撃ち、《“必駆”蛮触礼亞》から《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を出す……
だが。ここでたった一つの、致命的すぎる綻び。
《“必駆”蛮触礼亞》のバトル効果は強制。
えんがわの盤面には《煌世主 サッヴァーク†》のみ。当然それとバトルすることになる。
《煌世主 サッヴァーク†》のパワーは……バトル時パワーアップした《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を上回る17000。
アンタップ状態で破壊されてしまった《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》は、その効果を発動することなく墓地へ送られる。
長丁場のラウンド、疲れが引き起こした致命的ミス。貴重な勝ち手段である《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を1枚タダで失ってしまったW。
当然ターンが返ってきたえんがわはそれを見逃さない。《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》手打ちで≪龍装艦 チェンジザ≫を仕留め、《煌世主 サッヴァーク†》のドラゴンTブレイクで表向き3枚を含むシールド7枚を形成する。
Wはせめてもの勝ち筋となる打点を全力で形成。≪黒豆だんしゃく≫《霞み妖精ジャスミン》《終末の時計 ザ・クロック》と展開。不用意に手札を与えたくないえんがわは何もせずターンエンド。
ターンが帰ってきたWだが、≪龍装艦 チェンジザ≫のドロー効果を使いすぎた山札がどんどん薄くなっていき、残り5枚。
《ドンドン吸い込むナウ》で全ての山札を掴み取り、その中から《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を回収。残りの山札の順番を好きに入れ替える。
もはや攻める他ないWは《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》召喚、そのままアタック。これは《煌世主 サッヴァーク†》でブロックされる。
そして《終末の時計 ザ・クロック》がシールドに突っ込むが……表向きのシールド3枚が、《煌世主 サッヴァーク†》をもう1枚呼び出す!!
これには万事休すといった顔のW、≪黒豆だんしゃく≫ブロックのため《終末の時計 ザ・クロック》および《霞み妖精ジャスミン》の攻撃を通す。
《霞み妖精ジャスミン》の攻撃で、2枚となったシールドから《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》。残り限られたWの貴重なアタッカー、《霞み妖精ジャスミン》がシールドに送還。
が、Wはそれでもまだ諦めない。
≪機術士ディール≫10宣言で全ての《煌世主 サッヴァーク†》を手札に戻し、《“乱振”舞神 G・W・D》を追加打点とし《終末の時計 ザ・クロック》と《“乱振”舞神 G・W・D》で殴る……
が、これに《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》2枚目!≪黒豆だんしゃく≫がシールドに埋められる。
返すターンで《煌龍 サッヴァーク》が召喚され、≪機術士ディール≫がシールドに貼り付けにされる。
折り重なったシールドには2枚の《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》。山札残り2枚、その使えるリソースで、許されたターン中で、シールドを突破する方法は皆無。
その山札の中身は《ドンドン吸い込むナウ》で見た《終末の時計 ザ・クロック》2枚であることは分かっている。
前人未到のGP2回目の優勝は、目の前の厚く高い壁に阻まれ……
金沢の地でハマチを決勝まで送り届けた。だが、頂点まであと一歩届かなかった。
今度は自らの手で、あと一歩を踏み出すために。
えんがわがまず1つ、壁を乗り越えた。
えんがわ 2-1 W
WINNER:えんがわ
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