デュエル・マスターズ

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DMGP8th DAY2 決勝戦:セキボン vs. デデンネ


 残っていた準決勝の決着とともに、観客の歓声があがった。

 『サバキZ』 vs. 『光闇自然ドルマゲドン』という不利対面の相性差を覆し、セキボンが3本目を勝利したのだ。

 時刻は21時を回っていた。会場に残っているプレイヤーも既にまばらで、3,500人がいてさえなお十分に広々としていた幕張メッセ・国際展示場のホールはいつしか、どこか寂寞とした空気に包まれていた。

 そのままセキボンがその一角、フィーチャーマッチエリアに長期戦の疲れを癒す間もなく移動してくると、程なくして「優勝してくるぜ」とばかりに仲間たちとタッチを交わしたデデンネも、それと向かい合うようにして席に着く。

 会場に残っていた観客たちも、これから始まらんとする最後の戦い、デュエル・マスターズの歴史に間違いなく深く刻まれるであろう一瞬を目撃せんと、次第に周りに集まってきた。

 これから、決まるのだ。

 3,500人を集めた、GP8thの2日目。殿堂構築フォーマットの、その唯一無二の優勝者が。

セキボン「とりあえずお互いに、全国おめでとうございます」

デデンネ「そうですねw」

 熊本で行われた第1回超CSで既に決勝戦という大舞台を経験したことのあるセキボンは、舞台慣れの余裕からか、互いの緊張を和らげるための言葉をデデンネにかける。

 デュエル・マスターズ全国大会2019・日本一決定戦への出場権は3位まで付与されるため、決勝に進出した時点で2人の権利獲得は決まっている。権利のかかった胃が痛くなるような3位決定戦をやる必要がなくなって良かったという点に関しては、確かにデデンネにも同意できる部分があったことだろう。

 しかしそれはおそらく、何よりセキボン自身に対してかけられた言葉でもあったに違いない。

 昨年12月上旬に開催された北海道エリア予選。決勝ラウンドの第1回戦で敗北が決まると、悔しさのあまりに「ああぁぁぁ……!!!」と絶叫して崩れ落ちたプレイヤーがいた。必勝を期して臨んだ戦いでのミス負け。しかもその予選を抜けたのは、40枚をシェアしたチームメイトだった。

 それでも『絶十サッヴァーク』という最高の相棒を使いこなした彼は、年末から年始にかけて尻上がりに調子を上げ、各地のCSに遠征を繰り返してあと少しで日本一決定戦のランキング招待が見えるというところまで漕ぎつけた。しかしわずかにラインに届かず出場を逃し、チームメイトである北のあーさんの出場を見送るにとどまったという経緯があった。

 そんな彼が、3か月前あれほど望んでいた日本一決定戦の権利にようやくたどり着いたのだ。

 なればこそ「全国おめでとう」という彼自身の言葉には、きっと余人が推し量ることのできないほどの万感が込められていた。

 2人は互いのデッキをシャッフルする前に、超GRの枚数、12枚を裏向きのまま確認し、シャッフルする。

 事ここに至っては、それがブラフではないということはもはや両者にとって明らかだった。それどころか、デッキになくてはならない必要な12枚なのだ。超GRという最新のギミックを誰よりも使いこなした2人だからこそ、彼らは今ここに座っている。

 Skype調整コミュニティ「マラかっち」、そこに所属する◆ドラえもんとともに練り上げた、『光水零裁き《》≪音奏 ハイオリーダ≫とサバキZ呪文とのシナジーに着目し、どんな攻めでも捌くことができるこの形は、言うなれば超GRを使った最強の盾だ。

 対するは、「最強の地雷山」「#俺フィーチャー」で自ら宣言した、おそらく会場で最も斬新かつスタイリッシュな『メタリカ《BAKUOOON・ミッツァイル》。メタリカを愛する「DM会」だからこそたどり着くことができたこのデッキは、どんな防御も超GRの力で関係なく貫通する最強の矛と言っていい。

 やがてデッキのシャッフルも終わり、2人はシールドと手札を配置する。

 セキボンとデデンネ。《》《BAKUOOON・ミッツァイル》。超GRを使った最強の盾と、同じく最強の矛。

 超天を極めた者だけが、たどり着ける頂点。

 超天篇の幕開けにふさわしい決勝戦が、ついに始まった。

Game 1

先攻:セキボン

 先攻はセキボン。《》《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》とチャージのみで2ターン目までを終えたのに対し、デデンネは《“轟轟轟”ブランド》《音奏 ハープララ》とチャージすると、《音奏 プーンギ》を送り出す。

 さらにセキボンがこれにより打つ暇がなくなった《剣参ノ裁キ》をチャージしてターンを返すと、デデンネは《》チャージから《赤攻銀 ハムラービ/ハムラティス・ジャッジ》を召喚、能力で2枚目の《音奏 プーンギ》!!
 メタクリーチャーの性能という点において「《異端流し オニカマス》の再来」とも呼ばれるこのカードの能力は、デッキ内の呪文の比率が高ければ高いほど重くのしかかる。そしてセキボンが駆るデッキは、呪文である「裁きの紋章」を大量に搭載して効率良く「サバキZ」を使いまわすという、これ以上なく呪文に依存したデッキなのだ。

 返すセキボンは、《憤怒スル破面ノ裁キ》をチャージしてもまだ4マナ。すなわち、《転生ノ正裁Z》を唱えることすらできない。

 それでも、セキボンの手には使える札があった。《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》だ。これなら、「裁きの紋章」呪文のコストを下げて《音奏 プーンギ》1枚分と相殺できる。その上ブロッカーとして《音奏 プーンギ》2枚への牽制にもなり、現在の盤面における最高の解答であると、そう思われた。

 しかし、デデンネの決断は早かった。

 《Dの牢閣 メメント守神宮》チャージから《》を送り出すと、残る1枚となった手札からそのまま《“轟轟轟”ブランド》を召喚する!
 最強の矛が行く。

 引き込んだ《一番隊 クリスタ》を捨てて《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》を破壊すると、効果でシールドに表向きに貼りつけられるものの、構わず《音奏 プーンギ》でアタック。割るシールドはどこか。

デデンネ《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》のシールドをブレイクして『サバキZ』を使われた場合ってドローできますか?」

 既に手札にあるのでドローできないことをジャッジに確認すると、《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》が貼りつけられたシールドをブレイクする。

 セキボンは《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》を捨てて「サバキZ」を発動、だが公開したのは《煌メク聖戦 絶十》で、≪奇石 ミクセル≫がいるのでバトルゾーンには定着しない。それでも登場時効果で表向きのシールドが置かれると、そこで公開されたのは《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》。手札になかったカードを無理矢理引き込みにいった、セキボンのプレイングが光る。

 だが、だとしても。これを唱えればそれだけで、2体の《音奏 プーンギ》によってGR召喚されてしまうのだ。

 ましてこのアクションによって逆にセキボンの手札には《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》がないことが透けている状況である。当然デデンネは2体目の《音奏 プーンギ》で、表向きの《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》を避けてシールドをブレイクする。そしてセキボンに何のアクションもないのを確認すると、《赤攻銀 ハムラービ/ハムラティス・ジャッジ》でさらにブレイク。ここでもセキボンのアクションは、ない。

 さらに《“轟轟轟”ブランド》が、4枚目と5枚目のシールドをW・ブレイクする。ついに《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》を使う選択肢が与えられたセキボンだが、シールドが1枚もないこの状況で相手の頭数を増やすのは自殺行為でしかないため、そのまま手札に加えるしかない。
 すべてのシールドを割りきられ、ようやくセキボンのターン。とはいえ、取れるアクションは限られている。

 一縷の望みを託し、《剣参ノ裁キ》チャージから《》を召喚してシールドを追加しつつGR召喚……ここでめくれたのが《バツトラの父》で、何もない盤面から一気に3打点+αを止められる構えを作り上げることに成功する。

 それでも、デデンネのバトルゾーンには既に5体ものクリーチャーが並んでいるのだ。

 《音奏 プーンギ》を追加すると、まずは《“轟轟轟”ブランド》でアタック。《バツトラの父》で攻撃を中止。続いて《赤攻銀 ハムラービ/ハムラティス・ジャッジ》でアタック。≪音奏 ハイオリーダ≫でブロック。

 そして、《音奏 プーンギ》でシールドブレイク。残るアタッカーは2体。悪あがきをする意味はない。

 ダイレクトアタック。

セキボン「通ります」

 矛の一撃が、盾を砕いた。

セキボン 0-1 デデンネ


 《音奏 プーンギ》2体という、あまりに重すぎる枷。それをセキボンは、先手であっても乗り越えることができなかった。

 だが、光明はあった。《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》≪音奏 ハイオリーダ≫は、定着すれば《音奏 プーンギ》を無視できるエンジンとなる。

 あとは、デッキが応えてくれるかどうか。

 この半年足らずの間、セキボンのデュエル・マスターズは裁きの紋章とともにあった。北海道エリア予選での慟哭。DMPランキング期間締め切り間近の焦燥。GP8thに向けた「マラかっち」での調整。これまでの日々が、全てセキボンの支えになっている。

 だからこの決勝戦は、セキボンと裁きの紋章との集大成でもあった。

 今やセキボンは、全国でも随一の裁きの紋章使いとして知られている。ゆえにプライドにかけて、《“轟轟轟”ブランド》のポン出しを捌けなかっただけで終わるわけにはいかない。デッキの中の《煌龍 サッヴァーク》が、《煌世主 サッヴァーク†》が吠えている。

 捌くのは誰だ。裁くのはオレだと。

 セキボンは自らのデッキを信じて、2ゲーム目に臨む。


Game 2

先攻:セキボン

セキボン「負け先もらいます」

 《煌龍 サッヴァーク》《煌メク聖戦 絶十》とチャージしてからの《憤怒スル破面ノ裁キ》で先手の利を生かすセキボンに対し、デデンネは《赤攻銀 マルハヴァン》《Dの牢閣 メメント守神宮》チャージから《音奏 プーンギ》をしっかりと着地させる。返すターン、2マナ以下の呪文しか打てないセキボンは《》をチャージするのみ。

 このまま1ゲーム目の再現になるかと思われたが、デデンネの後手3ターン目のアクションは《BAKUOOON・ミッツァイル》チャージからの《絶対の畏れ 防鎧》

セキボン「……《絶対の畏れ 防鎧》

 《煌メク聖戦 絶十》《煌世主 サッヴァーク†》への牽制になるとはいえ、後手であるということを考えると現状そこまで効果的なカードではない。このアクションの弱さ、そしてデデンネのマナチャージを見る限り、コンセプトの中心となる部分はあまり引けていない可能性が高い…… ならばこの隙にとばかりにセキボンは、《剣参ノ裁キ》チャージからゲームの核となる《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》を送りだす。

 はたして返すデデンネのアクションは、苦しいことは自覚しつつも、手札を整えるために《龍装者 バーナイン》チャージからの《龍装者 バーナイン》で1ドローしてエンド。セキボンに自由な1ターンを渡す形となる。
 ここでセキボンは《煌メク聖戦 絶十》チャージから≪音奏 ハイオリーダ≫を召喚。6枚目のシールドを裏向きで追加すると、効果で《The ジョラゴンGS》がGR召喚される。

 すなわち、ブロッカー2体にシールド6枚、さらにサバキZを使えばGR召喚できるという態勢。

 バトルゾーンに《音奏 プーンギ》《絶対の畏れ 防鎧》のみという盤面から、この鉄壁の防御を崩す手段はもはや存在しないと思われた。

 しかし。

 返すデデンネは4マナ目となる《赤攻銀 マルハヴァン》チャージから、《一番隊 クリスタ》《赤攻銀 ハムラービ/ハムラティス・ジャッジ》、効果で《黙示賢者ソルハバキ》……からの、《BAKUOOON・ミッツァイル》
 《龍装者 バーナイン》《音奏 プーンギ》を残しての4体破壊で《越境の意志 ドナート》2体と《煌銀河 サヴァクティス》2体をGR召喚し、一気に4ドロー。

 さすがにこのターンはクリーチャーをアタックに向かわせないものの、もう1ターンあればさらなる大展開が待ち受けているであろうことは想像に難くない。しかもそれらは《BAKUOOON・ミッツァイル》の効果でスピードアタッカーを持つことになるのだ。そして《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》《BAKUOOON・ミッツァイル》に当たらない以上、大量のスピードアタッカーによる一斉突撃を止める手段はセキボンにはない。

 ならばこのターンでデデンネのクリーチャーの頭数を減らすしかない。面処理を要求されたセキボンは、この試合で初めて、少し気合を込めた様子でドローをする。

セキボン「アンタップ…… ドロー!…… うーん、そうか」

 そしてそんなセキボンに、デッキが応えた。

 ドローは《転生ノ正裁Z》。チャージなしでこれを唱えると、《憤怒スル破面ノ裁キ》が重なったシールドを手札に戻す。はたしてそこにあったのは…… 3枚目の《煌メク聖戦 絶十》

セキボン「『サバキZ』で」
 最強の盾が行く。

 《転生ノ正裁Z》を唱えたことで1ドロー。これがシールドに乗り、≪音奏 ハイオリーダ≫《バツトラの父》がGR召喚。加えて《煌メク聖戦 絶十》の登場時効果で《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》が表向きでシールドに乗り、《煌銀河 サヴァクティス》がGR召喚。

セキボン「……ふぅー」

 ワンミス即死の複雑なチェインに、セキボンの脳がフル回転する。続けて《煌メク聖戦 絶十》《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》による7マナ軽減で《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》を手札から素打ち。

セキボン「いま、《煌銀河 サヴァクティス》に『ウルトラ・セイバー:マスター・ドラゴン』が付いてる」

デデンネ「はい、付いてます」

 ならばと《龍装者 バーナイン》をシールド送りにし、《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》で2ドロー+《The ジョラゴンGS》がGR召喚。

 さらにこれだけでは終わらない。前のターンから出ていた《The ジョラゴンGS》がアタックに向かうとき、「アタック・チャンス」で《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》
 そう、これこそがセキボンのデッキの真骨頂。《煌龍 サッヴァーク》《煌世主 サッヴァーク†》に加えて、セキボンの超GRは12枚中6枚がマスター・ドラゴン。それゆえに急角度での《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》による逆転が可能となるのだ。

 《バツトラの父》がGR召喚されつつ、1枚ブレイクでS・トリガーはない。タップ状態となった無防備なデデンネのクリーチャーたちを、セキボンのクリーチャーが1体ずつ淡々と処理していく。

 さらにアンタップしていた《The ジョラゴンGS》《煌銀河 サヴァクティス》へと攻撃するときに2枚目の《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》。そしてここで≪音奏 ハイオリーダ≫の効果でめくれたのが、なんと《マシンガン・トーク》

セキボン「……《マシンガン・トーク》?」

 これにより攻撃を終えていた≪音奏 ハイオリーダ≫がアンタップすると、デデンネのクリーチャーをタップ状態の《BAKUOOON・ミッツァイル》だけを残してすべて破壊することに成功する。
 わずか1ターン。わずか1ターンの差で、セキボンのバトルゾーンには9体ものクリーチャーが並び、それとは対照的にデデンネのクリーチャーは1体にまで減らされてしまった。それでも何とか生き残る術を模索し、《》チャージから《龍装者 バーナイン》《音奏 プーンギ》と並べてターンを返すデデンネだが、その表情は既に結末を受け入れている様子だ。

 ターンが返ってきたセキボンは、満を持して《憤怒スル破面ノ裁キ》からの《転生ノ正裁Z》でシールドに重なっていた《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》を回収しつつ2枚の《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》を唱える。さらにダメ押しとばかりに2体目と3体目の≪音奏 ハイオリーダ≫を召喚すると、気づけばセキボンの超GRは12枚すべてがバトルゾーンに出ていた。

 ということは、《バツトラの父》《The ジョラゴンGS》《The ジョラゴン・ガンマスター》の3種でジョーカーズが6体並んでいるということでもある。裁きの紋章デッキであるにもかかわらず、だ。

 やがて《The ジョラゴン・ガンマスター》《The ジョラゴン・ガンマスター》《The ジョラゴンGS》が立て続けにシールドをブレイクし、デデンネにS・トリガーはない。

 そして最後のシールドをブレイクするべく、《The ジョラゴンGS》がアタックに行く。

デデンネ「墓地とマナ全部見ても大丈夫ですか?」

 それは事実上、投了前の儀式だった。

 盾の裁きが、矛を捌ききった。

セキボン 1-1 デデンネ


 裁き《》とメタリカ《BAKUOOON・ミッツァイル》

 超天篇第1弾の発売からわずか2週間で、ここまで超GRを綺麗に戦略に組み込んだデッキを持ち込めた…… その一因としては、「マラかっち」と「DM会」という彼らの背後にあるコミュニティの力が大きかったことは間違いないだろう。

 だがそれ以上に。何より彼らが持つデッキコンセプトへの愛がそうさせたのだ、とも思う。

 裁きの紋章というシールドを軸にした戦略を使っていたからこそ、セキボンは《》の可能性にたどり着いた。

 そして確証はないがデデンネも、プレイ中の《龍装者 バーナイン》の効果処理に慣れた感じや、《赤攻銀 ハムラービ/ハムラティス・ジャッジ》《黙示賢者ソルハバキ》といった細部のカード選択からして、おそらく『メタリカサザン』を相当に使い込んでいたはずだ。だからこそ《BAKUOOON・ミッツァイル》という、実質《ダイヤモンド・ソード》を内在した新カードにたどり着くことができた。

 彼らが裁きの紋章と、そしてメタリカとともに過ごした過去の時間。その重みが、その密度こそが、現在の彼らの強さにつながっているのだ。

 互いのデッキをシャッフルする2人の間に、もはや言葉はない。

 どちらのデッキも完成度が極限値に至っているということは、既にこれまでの戦いで示されている。

 ならば、その差を分かつものとは何か。その答えは、もうすぐ明らかになる。

 GP8th、最後のゲームが始まった。


Game 3

先攻:デデンネ

 ついにこの決勝で初めての先攻をデデンネが手にする。《“轟轟轟”ブランド》《赤攻銀 ハムラービ/ハムラティス・ジャッジ》とチャージして《一番隊 クリスタ》を送り出したのに対し、セキボンは《》《煌龍 サッヴァーク》とチャージするのみ。

 続けて《黙示賢者ソルハバキ》をチャージしたデデンネが3ターン目にして《龍装者 バーナイン》を着地させると、まるで他の選択肢など存在しないかのように速度のギアを上げていくデデンネのプレイとともに、ゲームが一気に加速していく。

 一方、返すセキボンの動きは《剣参ノ裁キ》チャージからの《剣参ノ裁キ》《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》を回収というもの。

デデンネ「手札何枚ですか?」

セキボン「5枚です」

 返すターン、《Dの牢閣 メメント守神宮》をチャージしたデデンネは2体目の《龍装者 バーナイン》から≪奇石 ミクセル≫を送り出し、一気に4枚の手札を補充してターンを終える。

 セキボンは《集結ノ正裁Z》《煌メク聖戦 絶十》《憤怒スル破面ノ裁キ》を手の内に加えるが、間に合っていない感は否めない。

 そして、デデンネのターン。

 ドロー。

デデンネ「よし!」
 最強の矛が、天を照準する。

 それは誇張なしに、この日のうちで最も美しい3分間だった。

 1マナ。《一番隊 クリスタ》。2ドロー。1マナ。《赤攻銀 ハムラービ/ハムラティス・ジャッジ》。2ドロー。効果。《絶対の畏れ 防鎧》。2ドロー。1マナ。《赤攻銀 ハムラービ/ハムラティス・ジャッジ》。2ドロー。効果。《音奏 プーンギ》。2ドロー。

 1マナ。《BAKUOOON・ミッツァイル》!!

デデンネ「考えます……《赤攻銀 ハムラービ/ハムラティス・ジャッジ》2体と《音奏 プーンギ》《一番隊 クリスタ》《絶対の畏れ 防鎧》の5体破壊します。《煌銀河 サヴァクティス》《煌銀河 サヴァクティス》《マシンガン・トーク》《越境の意志 ドナート》《発起の意志 ラパエロ》《龍装者 バーナイン》で8枚までドローできます。山札の枚数確認……11枚です」

 だが、デデンネは1ドローで止める。それはすなわち、現状の手札でもはやリーサルが組めているということを意味していた。

 1コスト、2体目の《BAKUOOON・ミッツァイル》先ほど出したばかりのGRクリーチャーたちのうち、《煌銀河 サヴァクティス》1体だけを残して残りの4体を破壊。《マシンガン・トーク》《純白の意志 ヴィンチ》《越境の意志 ドナート》《越境の意志 ドナート》。すべてがスピードアタッカーとなっている。

 そして。

 積み重ねてきた過去があるからこそ、現在の強さがある。

 ならば、天を超えた先にあるものとは。

 未来だ。

 《煌銀河 サヴァクティス》アタック時、「革命チェンジ」宣言。
 《時の法皇 ミラダンテⅫ》ファイナル革命、≪ジャミング・チャフ≫

 それはまさしく、絵画のようなラストピースだった。

 天に煌く龍終も、魂を穿つ煌世も、天をも超える弾頭と、時を超える龍には届かない。

 最強の盾を砕いたのは、マスターカードと殿堂カードとのまさかのシナジーだった。その完成度は、まるで未来を見てきたかのようだった。

 不可避のT・ブレイク。デデンネがセキボンのシールドに手を伸ばそうとする。

 その前に。

 ふと唐突に。

 セキボンが両の手のひらを、デデンネに対して向ける。

 その意味するところをデデンネが測りかねていると、セキボンがこう続けた。

セキボン「返せる手がないので、投了します」

 差し出されたセキボンの右手を、デデンネが掴む。

 それは、新たなる伝説が誕生した瞬間だった。

セキボン 1-2 デデンネ


セキボン「すごい。良いデッキ。良いデッキだ!」

 再び、今度は両手で握手を求めながら、セキボンはデデンネの健闘を清々しく称える。

 熊本の超CSに続いて、2度目の準優勝。けれども、今度は悔いもなかった。なぜなら、完敗という言葉がこれほど似つかわしい決勝戦もなかったからだ。

セキボン「本当に良いデッキ。感動した!!」

 この決勝戦を目撃した人たちも、少なからずセキボンと同じ感想を抱いていたに違いない。

 デュエル・マスターズにおいて、デッキの完成度と、それを正確に使いこなす判断力だけで、ここまで人を感動させられるのかと。

 だが無理もないだろう。なぜならそこには、メタリカという種族への深い造詣と愛着があった。

 デデンネは自分の好きなメタリカというデッキの可能性を信じていたからこそ、メタリカ《BAKUOOON・ミッツァイル》という未来の構築にたどり着いたのだ。

 すべてを貫く黄金の弾頭とともに遥かな高みへと一気に駆け上っていったその様は、まさしく「天を超えし者」と呼ぶに相応しい。

セキボン「全国で会いましょう!」

デデンネ「また!」
 DMGP8th (殿堂)、優勝はデデンネ!おめでとう!!
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