DMGP9th 準々決勝:ころっけ vs. ゲルネウス
ころっけとゲルネウス。緊張を隠せない2人が準々決勝卓についた。
ゲルネウスが言う。
ゲルネウス 「ずっとカバレージの写真を撮ってもらいたかったんです。でも、本当にその日が来るなんて」
ころっけが応じる。
ころっけ 「僕、写真使用の承諾をまだしていないんですよ。終わったらやらなきゃ」
両名とも、自分がこの場に来ることを想定していなかったようだ。
もちろん、勝てないと思いながらGPに参加した訳ではないだろう。戦う前から負けることを考えるプレイヤーはいない。
2人が準々決勝への到達を想定し得なかったのは、彼らの経験――これまでGPのトップ8に残ったことがないという単純な事実――に依るものかもしれないし、あるいは彼らの使用デッキ選択に依るものかもしれない。
『赤単ブランド』
《凶戦士ブレイズ・クロー》や《ブルース・ガー》をはじめとした軽量クリーチャーを展開し、《“罰怒“ブランド》や《BAKUOOON・ミッツァイル》でゲームを終わらせるアーキタイプ。
ただ、高速でビートダウンするデッキの宿命である「勝率が相手のシールド・トリガー採用枚数へ強く依存する」「決着までのターン数が短く事故を誤魔化しにくい」という弱点を、この『赤単ブランド』もまた引き継いでいる。
ゆえに、トーナメントをどこまで勝ち上がれるかは使い手にも予測しにくい。
今日の予選では、足の遅い『青赤緑ミッツァイル』やその派生が多く見られた。そうしたデッキは『赤単ブランド』にとって良い獲物だ。
きっと使い手の読みが当たり、予選を勝ち抜くことが出来たのだろう。
が。
ころっけ、ゲルネウスのいずれも、使用デッキは『赤単ブランド』なのだ。
2人はまだ知らぬことだが、ここに来てのミラーマッチである。
じゃんけんで勝ち、先攻を手に入れたのはゲルネウス。
鏡写しの準々決勝が始まる。
Game 1
先攻:ゲルネウス相手のデッキが分からないゲルネウスは、少し考えて《爆殺!! 覇悪怒楽苦》をチャージ、ターンを終了。期せずして、同型戦を見越した『赤単ブランド』であることのアピールとなった。
対するころっけは、《花美師ハナコ》をマナに置いて《螺神兵ボロック》を召喚。それを見たゲルネウスは「ミラーかぁ……」とこぼした。頼みの《爆殺!! 覇悪怒楽苦》は、シールドではなくマナゾーンにあるのだ。
ころっけがターンを返す。
ここまでで、ゲーム開始から1分。
GP優勝、全国大会への参加権利。
準々決勝まで来たならば、2人には見えているはずだ。
だが制限時間が50分であるにもかかわらず、彼らは不必要に手を止めない。必要な分だけ時間を使う。
ゲルネウスの2ターン目、彼が選んだアクションは《TOKKO-BOON!》の詠唱だ。ここでGR召喚されたのは、《ドドド・ドーピードープ》!
ころっけは《ブルース・ガー》を召喚し、《螺神兵ボロック》でシールドをブレイクしてターンを返す。
きっと彼は、ゲルネウスが「持っていない」ことを祈っただろう。が、ころっけの対面に座す選手は《螺神兵ボロック》2体と《“罰怒“ブランド》を召喚し、ころっけのシールドをブレイク。そのままダイレクトアタックを決めた。
ゲーム開始から決着までにかかった時間は、わずかに3分5秒。
ころっけ 0-1 ゲルネウス
Game 2
先攻:ころっけ大会ルールにより、先ほど敗れたころっけが先攻。
彼が《螺神兵ボロック》を召喚すると、返しのターンでゲルネウスも《螺神兵ボロック》をバトルゾーンへ送り込む。
2ターン目、《龍装者 バルチュリス》をマナに置いたころっけは、《凶戦士ブレイズ・クロー》を召喚。
そして《螺神兵ボロック》でアタックしたその時、踏んだ。
再び、ゲルネウスが「持っていない」ことを祈る展開になった。しかしGame1と同じく彼は「持って」おり、彼の≪"罰怒"ブランド≫がゲームを終わらせた。
ころっけ 0-2 ゲルネウス
Winner:ゲルネウス
決着は、いずれの試合も3ターン目。
Game1は、3分5秒。Game2は、2分45秒。
2人の準々決勝は、合わせて5分50秒だった。Game間の準備時間を入れても、10分に満たない。
けれど、対戦を終えた彼らの会話は尽きず、とめどなく言葉が溢れ、流れていく。結果を受け入れ、今日という日を覚えておくために必要な儀式。
勝った側も、負けた側も。自分の在り様を相手の記憶に残すために。
話は試合の展開から構築談義へ、そしてゲームプラン、果てはサプライに及んだ。
そんな彼らにジャッジがそっと話しかけ、ころっけに《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》を手渡す。
俺、ところっけが呟いた。
「俺、GPマークのついたこのカードを手に入れられるなんて思わなかった」
彼は北海道からの遠征者だ。デッキ選択は『青赤緑ミッツァイル』と『赤単ブランド』で悩んだが、使い慣れ、周囲にも自分のデッキとして認められていた『赤単ブランド』を選択。
「『赤単ブランド』の方が良いよ」「GPで3killする姿、見たくないっすか?」――仲間たちとは、そんなやり取りがあったと語る。
《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》を眺めていたころっけが、断言した。
「やっぱ面白いっすわ、このゲーム!」
ゲルネウスが即座に応じる。
「やめらんないっすよ!」
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