DMGP2022 Day1:アドバンスメタゲームブレイクダウン
ライター:清水 勇貴
7勝2敗の選手ですら4/5が敗退する、熾烈な予選ラウンドをくぐり抜け、いよいよ出揃った128人の精鋭たち。まずは彼らのデッキ選択を紐解いていこう。
TOP128 デッキ分布
デッキ名 | 使用者数 |
---|---|
ガイアッシュ覇道 | 43 |
アポロヌス | 13 |
闇火ドルマゲドン | 13 |
5cコントロール | 13 |
旅路G3 | 7 |
水闇ゼーロ | 5 |
水闇自然キリコグラスパー | 5 |
ネバーループ | 3 |
光火自然ヴァリヴァリウスRX | 3 |
モルトNEXT | 2 |
自然単オービーメイカー | 2 |
水闇自然有象夢造コントロール | 2 |
ケンジキングダム | 2 |
その他(使用者1名) | 15 |
合計 | 128 |
かねてよりアドバンスを代表している【ガイアッシュ覇道】。下馬評でもトップクラスの人気を誇っていた強力なデッキだが、蓋を開けてみれば「大勝」という言葉ですら収まりきらないほどの大戦果。
実に決勝ラウンド進出者の1/3を占める異常事態となった。
アイタ デュエル・マスターズ グランプリ2022 Day1 アドバンス構築 |
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現在のアドバンス環境で最も純粋なデッキパワーの高いデッキが、この【ガイアッシュ覇道】だ。
《メンデルスゾーン》や《ボルシャック・栄光・ルピア》による爆発的なマナ加速で序盤をスキップして《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》・《インフェル星樹》でリソースを稼ぎ、伸び切ったマナを背景に複数のアクションで戦況を抑え込み、《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》がEXターンを取る。
《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》によって爆発的に山札を掘り進められるため、デッキは容易に一周する。殿堂カードの《時の法皇 ミラダンテⅫ》や《蒼き団長 ドギラゴン剣》にも触れられるゲームが多く、複数のフィニッシュ手段で詰め切れるため決定力は非常に高い。
受けはそれほど強くはなく、速度もそれほど速い訳ではない。
それがそのまま弱点とはなるが、《最終龍覇 ロージア》や《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》の踏ませ方次第ではビートダウンデッキにも十分勝利を狙えるし、先攻2ターン目に《メンデルスゾーン》を唱えられれば速度負けすることもそう多くなくなる。
苦手としているデッキは少なからずあるものの、デッキとしての安定性が非常に高く、そのうえで「上ブレ」が発生すれば容易に勝利しうるのが、【ガイアッシュ覇道】が広く支持される所以だろう。
【ガイアッシュ覇道】の構築は極めて洗練されており、メインデッキの40枚中37枚ほどが「テンプレート」となっている。
残りの枠は《》や《》の追加枠、《我我我ガイアール・ブランド》、《光牙忍ハヤブサマル》、《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》などが採用されることがほとんどだが、今回は関東の強豪プレイヤーを中心にシェアされた新たなアプローチにも触れておきたい。
Runo デュエル・マスターズ グランプリ2022 Day1 アドバンス構築 |
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《MEGATOON・ドッカンデイヤー》は、これまでの【ガイアッシュ覇道】の理念とは一線を画すカードだ。
一見するとドラゴンデッキにそぐわないカードだが、《インフェル星樹》で大量に増えた手札を5マナで過剰打点に変換できるのは理に適っているし、せっかくの《生命と大地と轟破の決断》から打点を出しづらい【ガイアッシュ覇道】の悩みをスマートに解消できる。
《流星のガイアッシュ・カイザー》を警戒して革命チェンジや侵略を使ってこないビートダウンデッキに対して意識の外からカウンターを仕掛けられるのも面白い。
ドラゴンでない点についてはデメリットも無視できないが、時としてはメリットにもなりうる。ミラーマッチを意識した《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》に引っかからず、過剰打点を生成できるのだ。
【ガイアッシュ覇道】の下には大きく水を開けて【アポロヌス】、【闇火ドルマゲドン】、【5cコントロール】の三者が並び、これらの1+3デッキが現在のアドバンス環境の上位層を形成していると言える。
話題となっていた《蒼き守護神 ドギラゴン閃》を採用する構築の【闇火ドルマゲドン】だが、決勝トーナメントに勝ち進んだ13名のうち4名が使用するにとどまった。
こと本大会に限れば、この枠を追加のトリガーや《凶鬼09号 ギャリベータ》などのカードに差し替えた構築が好成績を残したことはここに記しておきたい。
これらのデッキは事前の評価も高く、いわば「強い」とされてきたデッキが順当に勝ち上がった結果と言えるかもしれない。
つまり、真に注目すべきはそのすぐ下に位置するデッキ群だろう。
生配信でもMGR選手、ちのりん選手が2回連続でフィーチャーされ、予想以上の破壊力にプレイヤーたちを賑わせた【旅路G3】が7名。
次いで、◆ドラ焼き選手のプレイが冴え渡った【水闇ゼーロ】、準決勝まで勝ち進み、コンボデッキとしての強靭さを見せつけた【水闇自然キリコグラスパー】の両デッキが5名。
そして話題にこそ上らなかったものの、水面下で上位卓を荒らし回っていた【ネバーループ】が3名。
これらのデッキは、いずれも一定以上の受けの堅さを持ちながら、環境上位のデッキの防御手段のほとんどを無視、あるいは乗り越えて勝利できるよう構築された、ある種の「アンフェアデッキ」たちだ。
現在のアドバンス環境は上位4デッキを見れば分かるように、防御面に優れたデッキが増加したため中低速に寄っている。素早いデッキは【アポロヌス】くらいで、逆に言えば「アポロヌスに勝てるコンボデッキ」の通りは非常に良いのだ。
MGR デュエル・マスターズ グランプリ2022 Day1 アドバンス構築 |
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例えば【旅路G3】。スーパー・S・トリガーを中心に構成されたこのデッキにとって、《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》のメテオバーンによるシールド全ブレイクはむしろメリットに他ならない。
シールドの埋まり方に左右される部分はあるものの、《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》や《爆殺!! 覇悪怒楽苦》で《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》を除去できれば、あとはいくらマナが消えようが展開はS・トリガーで既に終わっている。
そして相手のトリガーブロッカーや除去呪文は、G・ブレイカーの処理順が相手のシールド→自分のシールドとなっているおかげで容易に突破できるのだ。
ゆう デュエル・マスターズ グランプリ2022 Day1 アドバンス構築 |
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例えば【水闇自然キリコグラスパー】。ループコンボはコンボデッキの花形だ。カード3枚から無限マナブーストに入り、一度動き出せばほぼ確実に《水上第九院 シャコガイル》でのEXウィンまで持ち込めるため勝ち筋の強さは環境でもトップクラスだ。
水闇自然の3色で構成された構築は往々にして防御力にデッキの枠を割いているが、中でも《バイケンの海幻》の活躍は記憶に新しい。
相手クリーチャーの攻撃時能力を全て処理したあとにクリーチャーを踏み倒してブロッカーを付与できるため、《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》お決まりの「相手のシールドを全て吹き飛ばしてからトリガーブロッカーを除去」といった乗り越え方ができないのだ。
マナが伸び切っていれば《蒼狼の王妃 イザナミテラス》から《グレート・グラスパー》に繋がるのはもちろん、《天災 デドダム》を踏み倒してマナを伸ばせるのが非常に強力だ。
環境に有効なメタクリーチャーが少なく、うっかり出てきたところで《絶望と反魂と滅殺の決断》や《終末王秘伝オリジナルフィナーレ》によってテンポ良く除去できる。
相手の大型ハンデスについても【キリコグラスパー】というデッキ自体がトップの《蒼狼の王妃 イザナミテラス》1枚で勝利できることもあってある程度の耐性があり、そこに闇が加われば《絶望と反魂と滅殺の決断》による打開パターンすらありうる。
優秀な受けトリガーやハンデスによる妨害と合わせて、闇文明を加える理由は十分だろう。
本大会の環境で「勝ち組」のデッキだったことは間違いない。
◆ドラ焼き デュエル・マスターズ グランプリ2022 Day1 アドバンス構築 |
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例えば【水闇ゼーロ】。このデッキは防御面にこそ一抹の不安はあるものの、ムゲンクライムや《暗黒鎧 ザロスト》が絡めば3ターン目に《闇王ゼーロ》をプレイできるため、【アポロヌス】にも真っ向から速度勝負を挑める。
予選突破者5名の多くが《∞龍 ゲンムエンペラー》を採用していた中で、◆ドラ焼きのみが《知識の破壊者デストルツィオーネ》を採用し、その構築でもってTop8に入賞したのは特筆すべきことだろう。
《知識の破壊者デストルツィオーネ》の全ハンデスが通らない相手は、現在のアドバンス環境にほとんどいない。
環境トップの【ガイアッシュ覇道】はもちろん、《∞龍 ゲンムエンペラー》では実質的にサーチカードしか止められない【アポロヌス】に対しても、《知識の破壊者デストルツィオーネ》は多大な効果を発揮するのだ。
いわゆる【ゼーロジャオウガ】のギミックをスパイスとして取り入れつつも、あくまでも【水闇ゼーロ】としてこのデッキを捉えたからこその構築だと言えるだろう。
ばんぱく デュエル・マスターズ グランプリ2022 Day1 アドバンス構築 |
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惜しくもTop8入賞を逃した【自然単オービーメイカー】も、理念としては【水闇ゼーロ】の《知識の破壊者デストルツィオーネ》に近しいものがある。
すなわち、「3ターン目に相手のデッキを機能不全に追い込めばほぼ勝ち」だ。
《とこしえの超人》、《ベイB セガーレ》といった強力な軽量メタクリーチャーをナチュラルにデッキに取り込みながら、3ターン目の《ソイソイミー》によるGR召喚の布石とする構築は極めて理に適っている。
【アポロヌス】とも速度勝負ができるゲームレンジにも関わらず、よしんば間に合わずとも《ベイB セガーレ》で遅延をかけて安易な突貫を許さないのは、破格というほかないだろう。
自然単色のコンボデッキは《トレジャー・マップ》や《ガガガン・ジョーカーズ》などのサーチ手段に恵まれており、安定性が担保しやすいのが伝統の強みだ。コンボパーツを探すのはもちろん、対面次第では必要なメタクリーチャーを探し出してプレイすることもできる。
GPで登場した新デッキだが、押し付けの強さ・再現性の高さを高水準で備えており、今後も活躍が予想される。
【アポロヌス】・【闇火ドルマゲドン】・【5cコントロール】といった競合が居並ぶ中、【ガイアッシュ覇道】が絶大な強さを見せつけ、華々しいワンツーフィニッシュを飾ったGP2022Day1。
その一方で、「【アポロヌス】を受けられるコンボデッキ」「3ターン目にビッグアクションを起こして相手の行動を強く制限できるデッキ」という、【ガイアッシュ覇道】・【アポロヌス】環境を攻略する「鍵」が示された大会でもあった。
今回は王冠を戴き、その強さに疑う余地はない【ガイアッシュ覇道】。しかし、未来のことはまだ誰にもわからない。
本大会のメタゲームがこの先のアドバンス環境に与える影響が、今から楽しみだ。
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