DMGP2023-2nd デッキテク:せいなのブレスラチェイン
ライター:河野 真成(神結)
撮影者:後長 京介
ブレスラとは、《ブレイン・スラッシュ》の略称。 要するに《ブレイン・スラッシュ》を起点として《邪眼教皇ロマノフⅡ世》や《龍風混成 ザーディクリカ》を“チェイン”していって勝つ、というのがこのデッキだ。 そして今回、フィーチャー卓でこのデッキを使って勝利を収めたのが、DMGP2nd覇者のせいなである。
彼の使った【ブレスラチェイン】のリストやその秘密について、話を聞くことが出来た。
拘りの単色枚数
せいなのリストは、以下の通りだ。
せいな DMGP2023-2nd デッキリスト オリジナル構築 |
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筆者がまず気付いたのは、《ディスタス・ゲート》+《Disアイ・チョイス》のパッケージがないという点だった。
【ブレスラチェイン】は楯の強い、つまりはS・トリガーが厚いデッキであり、1回トリガーで耐えてからチェインを決める、というのがこのデッキに対する筆者の認識だった。
だからこそ一般的に《ブレイン・スラッシュ》のみならず《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》、そして《ディスタス・ゲート》という3種の踏み倒しトリガーを採用するケースが多い。
しかし、せいなはこのデッキに対して少し違う認識を持っているようだった。
せいな「このデッキて、4ターン目に(《神の試練》などで)フィニッシュまで持っていけるのががいいところだと思うんですよ」
このデッキは【5cザーディクリカ】をかなり参考にして制作されている。親戚というよりかは先祖と言うべきかもしれない。
だが【5cザーディクリカ】が≪ナウ・オア・ネバー≫から《龍風混成 ザーディクリカ》を出しても、そこからのゲームだ。勝つまでにはまだまだ手数が必要だし、そこから逆転されることも、或いは既に手遅れなケースもある。
そこで≪ナウ・オア・ネバー≫からそのまま勝ってしまおうというのが【ブレスラチェイン】なのだ。
《邪眼教皇ロマノフⅡ世》を繰り出し、そこから落ちた呪文で繋いでいく。《邪眼教皇ロマノフⅡ世》を出し直したり、或いは《龍風混成 ザーディクリカ》を経由したりで山札を減らしていき、最終的には《神の試練》を唱えて追加ターンを獲得。そこから
せいなのリストの場合は大量に落ちた墓地のカードを《強振の超人》を使ってマナに変換し、《次元の嵐 スコーラー》を召喚。最終的には《水上第九院 シャコガイル》でのフィニッシュを目指すか、並べきったクリーチャーたちで殴り切るか、という構築となっている。
ともかく、毎回綺麗に連鎖が決まるわけではないにせよ、少なくとも「4ターン目でそれなりに勝ちうる」というのが大きな主張点を考えられるわけだ。
しかし、と彼は続ける。
せいな「でも一般的なリストだと、どうしても多色が多すぎて手札が多色まみれになってしまうんです。こうなると、4ターン目に≪ナウ・オア・ネバー≫を唱えられる時って、結局《天災 デドダム》を引いた時だけになるんですよね」
せいなは【ブレスラチェイン】を「受けの強い5c」というよりかは、コンボデッキとして考えている。しかしコンボデッキとして見るには、多色が多すぎる。
せいな「ですので、単色の枚数や色配分にかなり拘りました」
せいなは、デッキの多色枚数を19枚に抑えた。所謂テンプレと呼ばれるようなリストでは、23~24くらい。先に述べたように《ディスタス・ゲート》+《Disアイ・チョイス》が採用されているからだ。本人の言うとおり、かなり枚数を抑えていると言える。
多色を減らせばアンタップインが増えて動きやすくる一方で、次に問題となってくるのは色ごとの枚数であった。当然、多色が減れば1文明ごとの採用枚数は減ることになる。
せいな「色はかなり試行錯誤しました。いまのリストだと緑(自然文明)は17枚。本当にギリギリだと思うんですよね」
このデッキは3ターン目から動くデッキだが、初動の色は一般18~19以上は欲しいとされている。
せいな「このリスト、黒(闇文明)も17枚なんですよ。とにかく黒緑のカードが欲しくて《呪術と脈動の刃》とかも採用していますね。このカード、弱い場面も目立つんですけどね(笑)」 チェインに貢献する闇自然のカードということで、最終的に白羽の矢が立ったとのことだ。単色枚数へと同様、色への拘りも感じられる1枚と言えよう。
拘りの採用カードたち
リストを眺めていると、ちょくちょく個性的なカードたちも見えてくる。まず驚いたのは《未来設計図》だった。その理由を尋ねてみると、こんな答えが返ってきた。 せいな「ずっと回していて感じたんですが、このデッキって結局は《邪眼教皇ロマノフⅡ世》を引けているかどうかなんですよ。だからサーチするカードが欲しくて。でも《ディメンジョン・ゲート》のようなカードだと、3コストなので初動と被り、結果として4ターン目の展開が出来ません。そこで2ターン目に撃てる《未来設計図》です」
確かに《未来設計図》であれば2→3→5のようなマナカーブの中で《邪眼教皇ロマノフⅡ世》を探しに行くことが出来る。
またこのデッキは《オ:ドユニワ / 喰土邪覇》を採用しているため、初動を引っ張ってくるケースもあるだろう。
せいな「あとこのデッキはデッキボトムを把握しておくこともプレイに大きく影響します。《邪眼教皇ロマノフⅡ世》からのチェインをしているときに、フィニッシュするカードがデッキに眠っているかシールドにいるかがわかっていれば、《マーシャル・クロウラー》や《黒神龍ブライゼナーガ》を投げる前提でプレイが出来ます」
ちなみにこれは、《ドラグハリケーン・エナジー》でも同じらしい。 曰く、テンプレリストの《フォース・アゲイン》のような動きをするカードだが、山札の中身を把握出来る点が大きく、加えて《龍風混成 ザーディクリカ》を出してもEXライフを付けないために楯落ちのリスクを減らせる、とのことであった。
また自然のカードであるため、先の色問題にも貢献してくれる。
……というように、リストを見ても1枚差しのカードが非常に多く見える。
だが、意図して“散らしている”というわけではないようだ。
せいな「そういうように作りたかった訳では無いんです(笑)リストを散らしているというよりも、『5枚目・6枚目』のカードとして採用しているイメージです。まぁ、《飛翔龍 5000VT》はもっと入れたかったんですけどね(笑)」
例えば《豊潤フォージュン》や《神秘の石柱》は《天災 デドダム》の5枚目・6枚目であり、《襲来、鬼札王国!》や《インフェルノ・サイン》も《ブレイン・スラッシュ》の5枚目・6枚目ということである。
1枚差しのカードは「デッキのメインではないけど、違う動きが出来るサブプラン用のカード」というケースも多い。
しかしせいなのリストはその逆で、あくまで基盤となる動きがあって、それを補強するためのカードたちであった。
せいな「《ディスタス・ゲート》型に比べると、受けは弱いですよ」
だがそれは即ち、4ターン目にチェインをする、というせいなのデッキへの拘りの裏返しとも言える。
《未来設計図》についても、最初見たときは筆者も驚愕した。だがせいなのこのデッキに関する考え方と狙いの動きを聞いてみると、大いに納得させらるものであった。
1枚差しのカードにこそ、制作者の拘りが詰まっていると言えるかもしれない。
おわりに
『頂上決戦!!デュエキングMAX2023』も発売間近とあって、歴代のGP王者にも注目が集まったのが今回の大会である。その中で「《マーシャル・クロウラー》入りのデッキを使うせいな」という構図を見たときは、思わず興奮してしまった。
せいな「いや、これは本当にたまたまなんですよ(笑)マークロ在りきでデッキを選択した訳では無いです。愛知の人は知っていると思うんですが、ずっとこれ使っていました」
ですが、とせいなは一言付け加えてくれた。
せいな「今回フィーチャーで《マーシャル・クロウラー》を出す展開となったときは、さすがに『めちゃくちゃ美味しい!』とは思っていました(笑)」 せいなは予選は抜けたものの、最終的には惜しくも本戦で敗れてしまった。
しかしそれでも、大会の中で印象に残るシーンを生み出してくれたプレイヤーである。
その背景には、細部まで拘った彼のデッキが存在していた。
せいなの珠玉の【ブレスラチェイン】。
読者諸氏も、ぜひ一度味わっていただきたい。
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