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DMGP2023-2nd 決勝戦:おなかいたい vs. monokuro

ライター:河野 真成(神結)
撮影者:瀬尾 亜沙子

 4000人の頂上は、まもなく決まる。
 
 だがその前に、どうしても確認しておきたいことがあった。
 【水闇魔導具】の同型戦とはどういう試合になるのか? という話だ。
 
 決勝が始まるまでの束の間、何人か上位プレイヤーが会場に残っていたので、そう尋ねてみた。
 
 Q.《「無月」の頂 $スザーク$》を先に立てた方が勝つ?
 A.否。そんなことはない。むしろ《「無月」の頂 $スザーク$》《「無月」の頂 $スザーク$》で返す方が、リターンが出てしまう。
 
 Q.じゃあどうすれば勝てる?
 A.《「無月」の頂 $スザーク$》を当ててそれごと《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》の呪文側で流して……。
 
 Q.そういう展開ってどうやって作る?
 A.なんかこう、わちゃわちゃして……。
 
 ……とにかく、単純な回答を得るのは難しいようだった。

 さて、いま筆者の目の前にいるのがおなかいたいmonokuroである。

 おなかいたいは大舞台どころか競技的なイベントもほぼ初めてだったというプレイヤーで、ここまで大躍進を見せている。
 対してmonokuroは、日々関東のCSでその腕を磨いている。

 では決勝にやってきたこの2人は、この「わちゃわちゃ」と表現された部分に対して、どういった回答を出すのだろう。
 
 今回もまた様々なことが起こったGP。
 その最後の戦いが、いよいよ始まる。

Game1

先攻:monokuro
 
 試合開始の前、この決勝には時間制限が存在することをジャッジより告げられ、なるべく早めのプレイを行うようにと伝達された。

 先攻のmonokuroはまず《堕呪 エアヴォ》をチャージ。対しておなかいたい《ガル・ラガンザーク》をチャージする。
 始動は2ターン目。互いに《堕呪 バレッドゥ》を唱え、手札を整え墓地に魔導具を溜めていく。
 
 3ターン目はmonokuro《堕呪 ゴンパドゥ》だったのに対して、おなかいたいはチャージエンドのみ。マナ埋めに《「無月」の頂 $スザーク$》があるというのは、やや手札状況が苦しいということだろうか。
 
 さて、【水闇魔導具】にとって重要な4ターン目が訪れる。
 
 ここまでテンポの良かったmonokuroも、ここではやや思考時間を使う。まずは《「無月」の頂 $スザーク$》をマナに埋めると、《堕∞魔 ヴォゲンム》を召喚した。  ターン終了時に13枚の墓地肥やしを行うが、《「無月」の頂 $スザーク$》は宣言しなかった
 
 どうやら、monokuroはこのミラーに明確なビジョンを持っているようだった。

 対しておなかいたいの方も、ここで時間を使う。彼の導き出した答えは、《堕呪 エアヴォ》チャージからの≪堕呪 ブラッドゥ≫。  monokuroの墓地をリセットし、ここはひとまずターンを終了。
 
 対してmonokuroはマナチャージをせずにこちらも≪堕呪 ブラッドゥ≫のお返しをする。ターン終了時に、再び《堕∞魔 ヴォゲンム》で墓地が増えていく。
 
 このやりとりを続けると、おなかいたいはほぼ一方的な対応を迫られて続けてしまう。どこかで活路を見出さなければならない。
 とはいえ、ここは再びの≪堕呪 ブラッドゥ≫で再度リセットを掛けた。
 
 その行動を見て、monokuro《堕呪 ゴンパドゥ》を唱えてから、《堕∞魔 ヴォゲンム》の起動時に今度は《「無月」の頂 $スザーク$》の宣言を行う。 「(ここでの《「無月」の頂 $スザーク$》の宣言は)≪堕呪 ブラッドゥ≫を2枚相手が使用したからですね」
 
 このゲームで初めて盤面にドルスザクが登場し、《「無月」の頂 $スザーク$》のハンデスによっておなかいたい《堕∞魔 ヴォゲンム》が打ち抜かれる。
 
 返しのターン、おなかいたいはまずは《堕呪 バレッドゥ》から入り、続けて《堕呪 ゴンパドゥ》と唱えターンを終了。
 しかしそれぞれで《「無月」の頂 $スザーク$》の効果が起動し、monokuroは着実に手札を増やしていく。
 
「手札が4枚?」
「4枚」

 そのやり取りの後、monokuroは自身の山札の枚数を数えていく。
 そして≪堕呪 ブラッドゥ≫を唱えて相手の墓地を洗うと、《堕魔 ドゥポイズ》で自身の《「無月」の頂 $スザーク$》を割りつつ終了時に2体の《「無月」の頂 $スザーク$》宣言。2ハンデスが入り、大きなアドバンテージ差が付いた。
 
 恐ろしい話だ。
 
 まるですべてがmonokuroが意図しているかのようにゲームが進む。
 それほど決定的な行動をしたわけには見えなかったが、その差が着々と開いていた。
 
 おなかいたい《秩序の意志》《「無月」の頂 $スザーク$》の1体に蓋をするが、それすらもわかっていたかのように山札を調整しており、そして返しに《神の試練》を唱えて追加ターンを獲得。
 
 追加ターン中で再度のハンデスと、次なる《神の試練》のための山札回復を行う。

 まもなくゲームも終わるかと思われたが、ただmonokuromonokuroで問題を抱えていた。
 
「本来、このミラーは《卍月 ガ・リュザーク 卍 / 卍・獄・殺》のクリーチャー側が強いんですよ」

 【水闇魔導具】は《神の試練》のループによって連続で追加ターンを取り続け、勝利をするデッキだ。ただしその起動には、大量のマナを使用する。
 だからそれを≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫で蓋をする、というのがもっともわかりやすい勝ち筋だ、とmonokuroは試合後に語っていた。
 
 しかし肝心のmonokuroの≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫だが、この時はマナゾーンに置かれていた。
 
「手札を開いたら≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫を《堕∞魔 ヴォゲンム》《「無月」の頂 $スザーク$》。埋められるカードが≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫しかなかったんですよね……」

 この≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫を諦めたことが、このゲームの思わぬ結末へと繋がっていく。
 
 さて、圧倒的な不利状況を作られてしまったおなかいたいだったが、《堕魔 ドゥポイズ》をプレイして《「無月」の頂 $スザーク$》を1体割ると、その墓地に≪堕呪 ブラッドゥ≫を当てた。
 
 次のターンで更なる《神の試練》を見据えていただろうmonokuroにとっては、少々厄介な≪堕呪 ブラッドゥ≫だった。
 
 とはいえ、monokuroは慌てなかった。《堕呪 ゴンパドゥ》からの《堕呪 エアヴォ》で、《「無月」の頂 $スザーク$》に蓋されていた封印を解く。
 
 こうなるとまた、おなかいたいが魔導具呪文を撃つたびにmonokuroの手札が増えていくことになる。
 
 ちゃくちゃくとマナを埋めていたmonokuroは既に10マナある。
 一度は妨害される格好となったが、いよいよ《神の試練》のループも見えてくる頃だ。monokuroは着々と山札圧縮と手札調整を進めていく。
 
 このタイミングで、おなかいたいの墓地に≪堕呪 ブラッドゥ≫を当てられれば勝利は間違いなかっただろう。
 だが彼の手札には、それがなかった。
 
 おなかいたいの手札はランダムに引かれた1枚のみ。
 だからこそ《「無月」の頂 $スザーク$》の宣言をしたmonokuroであったが、ハンデスで落した手札はなんと《「無月」の頂 $スザーク$》
 
 おなかいたいがカウンターで《「無月」の頂 $スザーク$》を宣言することとなり、monokuro《「無月」の頂 $スザーク$》を破壊すると、8枚ドローと一気に手札も回復した。
 
 そして返ってきたターンで≪堕呪 ブラッドゥ≫を唱えてmonokuroの墓地を洗うと、自身の《「無月」の頂 $スザーク$》《堕魔 ドゥポイズ》で割り、これまでのお返しとばかりに《「無月」の頂 $スザーク$》の2枚宣言する。
 
 明確なビジョンを持って、圧倒的に優勢にゲームを進めていたように見えたmonokuroが、一転してピンチに陥った。
 
 なんと恐ろしい話である。
 
 しかしこのゲームは、意外な形で決着となった。
 
「(状況の変化に備えて)《秩序の意志》はずっとキープしていましたし、ハンデスで落とされないようなるべく手札を膨らませるようプレイもしていました」
 
 そう、この状況でmonokuroが注目したのは相手の山札。

 《「無月」の頂 $スザーク$》のドローによって、おなかいたいの山札が3枚になったのを確認するや否や、コツコツと溜めてきたマナを使って、《秩序の意志》を2枚使用する。  それぞれの《「無月」の頂 $スザーク$》に封印が乗ると、おなかいたいの山札は残り1枚。もちろん、彼は《神の試練》を唱えていない。 「(1戦目は)完全に《秩序の意志》を失念していましたね……」
 
 思わず「あっ」と言いたくなるような幕切れでmonokuroがゲームを先取した。

おなかいたい 0-1 monokuro


 第1ゲームを終えた時点で、試合開始から30分が経過していた。互いのデッキがデッキだけに、長期戦となるのはやむを得なかった。
 しかしこの決勝には時間制限がある。ジャッジから再び、プレイを早めるよう注意が入った。
 
 この状況は間違いなく、ゲームのプラン選択そのものに影響を与えたことだろう。

Game2

先攻:おなかいたい

 2本目も序盤は互いに《堕呪 バレッドゥ》からスタートする。
 
 そして4ターン目、まずはおなかいたいが先に《堕∞魔 ヴォゲンム》を投げると、墓地に13枚のカードを置いた。
 先にmonokuroがやったように、《「無月」の頂 $スザーク$》の宣言はない。
 
 対してmonokuroは相手の墓地状況を一度確認すると、こちらも《堕∞魔 ヴォゲンム》を投下する。そして2枚の《「無月」の頂 $スザーク$》を宣言して、これに成功。
 2体の《「無月」の頂 $スザーク$》を場に立て、4ドローに成功した。
 
 しかしこれに対して、同じターン終了時、おなかいたいもまたカウンターで2枚の《「無月」の頂 $スザーク$》を宣言する。monokuro《「無月」の頂 $スザーク$》を場から退け、最大32枚ドローできるところを、一旦山札を4枚で残してドローを終了。

 一見すると「ゼニスを2体宣言して、どちらか1体が残ればいいという状況を作りたかったが、それに失敗して苦境に追い込まれた」ようにも見える。
 だが、monokuroはもう少し別な視点でゲームをしていた。
 
「≪堕呪 ブラッドゥ≫が3枚、落ちていたんですよね」
 
 monokuro《堕∞魔 ヴォゲンム》を召喚する前に、おなかいたいの墓地をよく確認していた。
 おなかいたい側からすればリセット出来る墓地はどちらかしかない。仮に自分に当てた場合≪堕呪 ブラッドゥ≫自体は回復するが、相手の墓地リセットを目指すこのミラーにおいては大きなテンポロスとなる。
 
 おなかいたいの手札は、3枚だった。
 そして彼の残る≪堕呪 ブラッドゥ≫は1枚。
 
「この状況なら、残る3枚の手札にあるかもしれない《神の試練》を、落としにいった方がいいと思ったんです」
 
 そう、あれはハンデスの意図だったのだ。3分の2のハンデスに成功すればいい。それ故の《「無月」の頂 $スザーク$》2体だった。
 そしてその狙い通り、おなかいたいの手札にあった《神の試練》は墓地へと消えた。
 
 互いに《堕∞魔 ヴォゲンム》を召喚した次のターンだ。マナは4しかない。
 
 おなかいたいもまた決断する。
 最後の1枚の≪堕呪 ブラッドゥ≫を当てた先は、monokuroの墓地だった。
 
 だがここで一つ致命的なミスがあった。
 
「≪堕呪 ブラッドゥ≫の1ドロー分の換算を忘れていましたね……」

 残り制限時間による焦りもあっただろう。おなかいたいとしては、優勝のためにはこの1本を取り返した後に、更に3本目をやるゲーム時間が必要だった。
 
 だが結果として、これによっておなかいたいの山札は残り2枚となってしまった。そして、もう≪堕呪 ブラッドゥ≫はない。

 残る勝ち筋は、《「無月」の頂 $スザーク$》によるビートダウンの敢行だ。2体の《「無月」の頂 $スザーク$》が、シールドを割る。

 そしてmonokuroは宣言する。
 
《秩序の意志》、対象は《「無月」の頂 $スザーク$》で」 おなかいたい 0-2 monokuro CHAMPION:monokuro


 最後の戦いは、呆気ない幕切れだった。

 そんなこともあるのか、と思わずにはいられない。経験の差、というのはこうした舞台でこそ如実に出るものなのだろう。

 monokuroの方も、この瞬間は優勝の実感がなかったかもしれない。
 
 しかしこの結果を手にした所以というのは、非常に的確だった彼のゲーム観とそれを大舞台でも冷静に実行したこと――いわば、彼の努力による積み重だった、と言っていい。

 彼がそうした積み重ねをしてきたのは、試合の中で垣間見ることが出来た。

差し迫る時間がプレッシャーとなる中でも、マナ置きの速さ、プランの切り替え、そして観察力は秀逸だった。
monokuroに備わっていたそれらが、この日の長い戦いを終わらせたのだ。

 こうして、デュエル・マスターズの歴史にまた1人、王者の名が刻まれた。

 頂上に立ったのは、【水闇魔導具】のミラーマッチで格の違いを見せてくれたmonokuroだった。
 
 おめでとうmonokuro

 その卓越したプレイスキルは、まさに王者の風格だったと言えるだろう。

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