DMGP2023-2nd プレイヤーインタビュー:~準備と選択の信念~
ライター:河野 真成(神結)
撮影者:後長 京介
この考えについては、特に今も変わってはいない。
半年に一度行われるGPという大舞台では、参加者の大半は相応の意図を持ってデッキを選択している筈。それは「そのデッキが好きだから」でも「一番練習したデッキだから」でも「友達が勧めてくれたから」でも、なんだっていい。
プレイヤーにはそれぞれの背景があり、それ、即ち物語こそが面白いからだ。
その物語の中は、誰かにとっては新しい視点かもしれないし、何か気付きがあるかもしれない。
中にはみみみのように「オレが一番アナカラー(水闇自然ジャオウガ)使うのが上手いから」みたいなことを公言するプレイヤーもいるが、それもまた面白い。
そういうわけで、今回も何人かのプレイヤーをピックアップして、インタビューを行った。
今後大会に参加する上で、参考になるなら幸いだ。
最初に話を聞いたのはブラック会社。
デュエプレことデュエル・マスターズプレイスで実績を残し、“紙”でも今年7月29日に開催された超CSⅤ大阪で見事に優勝。全国大会の出場も決めた。
少し特殊な経歴なだけに、彼の選択や考えには興味があった。
ブラック会社「今回使用したのは【水闇自然ジャオウガ】です」 ブラック会社自身が、超CSⅤ大阪で優勝しているデッキでもある。本人も「使い慣れている」とのことだった。
ではどういった基準で、今回のデッキを選択したのだろうか。
ブラック会社「自分はそもそも一番好きなデッキを使うタイプなんですけど、その上で1枚1枚に拘りを持つようにしています」
拘り、というとどういうことなのだろうか?
ブラック会社「今回のリストは所謂“テンプレ”というものから少し変わっていて、《とこしえの超人》と《Disメイデン》を完全に抜いていますね。代わりに《Disジルコン》を4枚に増やし、また《キャディ・ビートル》を採用しました」 彼の指す“テンプレ”というのは、《とこしえの超人》を1~2枚、そして《Disメイデン》を3枚積んだ構築のことだ。
ブラック会社「現在の環境を考えたとき上位5つを挙げると、アナカラー(水闇自然ジャオウガ)、魔導具、アビス、アポロにマジックとなると思っていますが、そのうち《とこしえの超人》がメタとして刺さるのはアビスくらいです。5つのうち1つしか使えないんですよね。ですが《キャディ・ビートル》は広く刺さりますし、特にマジックなどから出てくる《飛翔龍 5000VT》に強いです」
ブラック会社の言葉からは、1枚のカードをたりとも無駄にしたくない、という拘りが伝わってきた。
また話をしていく中で、彼は面白い練習法について言及もしてくれた。
ブラック会社「GPで一番多いと思っていたのはアナカラーだったので、今回一番練習したミラーマッチです。特に後手を想定した練習を多く行っていました。他には環境外との対戦も想定して、ファンデッキ愛好家の友人たちと色んなデッキで対戦してもらいました」
環境で多く発生する相手には後手番までしっかり詰め、そしてGP特有の環境に合わせた練習もする。こうしておくことで、いざ本番を迎えても慌てずに済むということだろう。
ブラック会社は、決して数多くの大会に出続けている訳では無い。X(旧Twitter)のプロフィールにもあるが、「基本はデュエプレメイン」だ。
しかしその上で超CSでは結果を残しており、今回も惜しくも予選抜けには至らなかったものの、予選は完走しているだけに参考になることも多いだろう。
続いてインタビューに応じてくれたのはいっぺこ。GP2023-1stのオリジナル部門の王者である。
そして彼が使用していたのは、いまの環境ではやや珍しい【闇単アビス】であった。 その理由について、いっぺこは次のように語る。
いっぺこ「まず自分が2byeを持っているんですよね。だから3回戦からの試合となるので、ある程度環境外のデッキとの対戦は避けられると考えていました」
byeは上位入賞者・優勝者ならではの特権である。
いっぺこ「それで環境デッキについて考えると、黒緑(闇自然)アビスは出力は大きいけどもかなりブレるので、数は減るだろうと。そしてマジックには有利で、アナカラーにはプレイと慣れで戦えると考えて【闇単アビス】を選択しました」
プレイと慣れというのは面白い要素である。これはやや環境から外れたデッキを使う理由であって、要するに「自分はそちらのデッキをよく知っているけど、そちらは私のデッキを知っていますか?」を押し付けられる訳だ。
いっぺこ「環境デッキで言えば他にも【水闇魔導具】【水魔導具】という2種類の魔導具デッキがありますが、前者は《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》で《堕∞魔 ヴォゲンム》を落とせばゲームになって、後者については2コストを多めに採用しているので、殴り勝てます。あとは意識していたものとしては【ブレスラチェイン】のような受けの固いデッキもありますが、こちらも《単騎連射 マグナム》を採用しているので、なんとか出来るだろうと」
また、闇単ならではの強みもあるという。
いっぺこ「いまの環境が《ブルーム=プルーフ》が強いというのも、選択した理由になります。革命チェンジが増えていますからね」 いっぺこもCSなどに足繁く通う、というタイプではない。どちらかと言えば仲間内のサーバー等で練習してきたという。
環境を広く見渡して、いけそうなデッキを探し出す。
そういった判断でデッキを選ぶのも、悪くないだろう。
続いてのインタビューは、ミノミーだ。
ご存じの方も多いだろうが、2023年前期ランキングで圧倒的なポイントを重ね、1位に輝いた。夏の超CSⅤでは、50スタンプを溜めて神戸牛を獲得したことでもお馴染みである。
そして上記二人とは変わって、激戦区の関東で文字通り毎日CSに通い詰めたプレイヤーでもある。
そんな彼の使用デッキは【闇自然アビス】。自身の代名詞となっている【水魔導具】ではなかった。 その理由について尋ねてみると、彼とアビスの出会いから始まる壮大な?物語を教えてくれた。
そもそも、話は《絶望神サガ》の殿堂に遡る。
ミノミー「《絶望神サガ》の殿堂後は比較的『何でも勝てる』みたいな環境になったじゃないですか。自分は【4c邪王門】とかが好きで使ってもいましたけど、【光火サムライ】が強くて……。新弾が出てからは、今度はジャオウガ強い。自分はというと、ずっとデッキに困っていたんです」
そんな時にたまたま触ったのが【闇自然アビス】だった、とのことだ。
ミノミー「闇自然アビスの凄いところは、出始めだったのに出力が高かったことです。普通、デッキって徐々に洗練されていって強くなると思うんですけど、闇自然アビスは最初から強かった。それでちょっと気になって、最初は遊びのつもりで使いながらCSに出たんですよ」
デッキを試す・楽しむということをミノミーはCSの中でやっているようだった。
ミノミー「闇自然アビスを使うにあたって、ある程度不利な対面ってあると思うんです。例えば、【5cザーディクリカ】みたいなのはキツそうだと思っていたんですよ。でもいざ試合をしてみたら、《ア:エヌ:マクア》で墓地をリセットして《ブレイン・スラッシュ》をケアして、みたいな戦いをしていると、意外をイケることがわかったんです。それは大きな収穫でした」
不利対面というのはどんなデッキにもあると思うが、それが2:8で不利なのか、4:6で不利なのか、或いは49:51で不利なのかで、話は大きく違ってくる。だがその辺の感覚というのは、やってみないとわかりにくいものだ。
ミノミーはCSの実戦に出続ける中、そうした感覚を理解していったのだろう。
ミノミー「あとこのデッキは先攻が強すぎるんです。3ターン目の≪「力が欲しいか?」≫から《邪幽 ジャガイスト》とかがメクレイド出来ると、そのまま勝てます。一定確率でワンサイドゲームが出来るというのも魅力的でしたね」 ……と、長くはなったが、こういった経緯から得た理解の上で、ミノミーは最終的に【闇自然アビス】を使い始めた。
そして「意外といける」を繰り返した結果、GPまで持ち込むことになったという。
ミノミー「CSに出ても、4-2とか5-2とかで結構安定していたんですよ。だから自分のbyeも含めて、予選は抜けられるかな、と」
そして実際、彼は見事に予選を突破した。
デッキの選択の妙や、構築の妙で勝つというよりも、日々CSに出続けている中で磨かれた感性や練度・経験値が何よりの武器になった、と言えるだろうか。
実際彼よりCSに出ているプレイヤーは1%にも満たないし、彼よりポイントを持ったプレイヤーは0%である。
こうした観点も、CSな盛んな地域のプレイヤーであるならば持っておいて損はないだろう。
さて、最後にはなるがこの男にも話を聞くことが出来た。
2019年全国王者で、GP8th準優勝の実績も持つセキボンだ。
彼が使用したのは、【水闇魔導具】。《卍 新世壊 卍》ではなく《堕∞魔 ヴォゲンム》からゲームをする方の魔導具だ。 彼の地元は北海道。関東のように毎日CSに開催されるわけではないが、それでも週末のCSには欠かさず参加し、時に遠征も交えながら100位以内でフィニッシュした。
セキボン「【水闇魔導具】は使い続けていたデッキで、自分のアベレージも高かったんです。ただ安定はするけど、飛び抜けもしないデッキではあると思っていました」
セキボンは一時期の【白単絶十】など、どちらかと言えば気に入ったデッキを使い続けるタイプだ。「一番強いデッキを使うべきとは思っています」とは言っており、全国大会では【JO退化】を使用したりもしたが、今回は安定感を選択したようだった。
そしてその言葉通り、予選を7-2でまとめ上げてギリギリで決勝トーナメント進出を果たしている。
一方で、安定デッキではあるものの、構築の中に爆発力になり得るカードも求めていた。
セキボン「まず前提として、このデッキは魔導具の枚数が多ければ多いほどいいと思っているんですよ」
実際、セキボンの構築には《飛翔龍 5000VT》や《流星のガイアッシュ・カイザー》といったカードは採用されていなかった。
セキボン「このデッキで《堕∞魔 ヴォゲンム》から《「無月」の頂 $スザーク$》を作るとき、2体目や《ガル・ラガンザーク》のための魔導具も欲しいんです。でも2回起動は出来ないし、そもそもデッキが残っていないと、ドローして手札を抱えたり出来ないじゃないですか。だったら、《堕∞魔 ヴォゲンム》1回から必要な魔導具を揃えるしかないんです」
だからセキボンは、デッキの上振れ要素を入れるにしても魔導具であることを条件とした。そして、そこで見付けてきたのが《堕魔 ザンバリー》だ。 セキボン「《堕魔 ザンバリー》はマジックなんかにブロッカーとして有用なのは勿論ですが、1コストで墓地の魔導具の枚数を増やせる点が凄いところです。例えば、今日実戦で1回あったんですけど、2,3ターン目に《堕呪 バレッドゥ》を撃って、《堕魔 ザンバリー》を出すことで、3ターン目に《「無月」の頂 $スザーク$》が出来ます」
【水闇魔導具】と対峙して、まさか3ターン目に《「無月」の頂 $スザーク$》が飛んで来ることを想定する筈もない。
GPの長い予選ラウンドで、こうした勝ち方が出来るのは大きな武器だ。この辺りは、ミノミーの言っていた「一定確率でワンサイドゲームがある」と似たようなそういった印象を受ける。
こうしてセキボンは予選順位が低かったものの、【水闇魔導具】という後攻がかなり苦しいデッキで最終的にベスト32まで登り詰めた。
全国王者の面目躍如と言えるだろう。
今回はやや立場・使用デッキの異なる4人のプレイヤーに話を聞かせて貰うことが出来た。
それぞれのプレイヤーの話から、何か新しい観点を見出して貰えたならば幸いである。
仮にそうでなかったとしても……もし、彼らのデッキ選択という物語を楽しんでいただけるのなら、それもまた幸いである。
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