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DMGP2023-1st Day1(アドバンス) Round 1:ナツメ/はっちCS vs. ホロウ

ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影者:後長 京介


 帰ってきた舞台。帰ってきた熱量。

 春の訪れとともに、またこの大型大会が戻ってきた。

 2日間ともに4000人規模、それぞれアドバンス・フォーマットとオリジナル・フォーマットで開催される競技の祭典。

 千葉県は幕張メッセに全国から集う猛者たち。その頂点に立つ資格を持つのは、真の強者のみ。

 そしてその頂点に6年前に一度、既に立った経験を持つ者がいた。

 2017年のDMGP5thで優勝したナツメ/はっちCS。デュエチューバーFESでのプレイヤー紹介用の二つ名「サイケデリック・ガチプレイヤー」の由来にもなった、「モルトNEXT」が猛威を振るう中を駆け抜けた《Dの楽園 サイケデリック・ガーデン》入りの「ロージアダンテ」は、当時見た者に鮮烈な印象を残した。

 現在はYouTubeチャンネル「紅茶派閥」でデュエチューバーとしても活躍中のナツメ/はっちCSが目指すのは、前人未到のグランプリ二冠。その偉業が可能なのは、論理的に一度優勝したことがある者だけだ。

 一方、対するホロウは精力的にCSに出るようになったのは2022年度からだが、それでも既に3度の優勝経験を持ち、その活躍ぶりは茨城でも10指に入る強豪。  そんな2人が戦うのは、《禁断 ~封印されしX~》《》《零龍》に加えて超次元・超GRも使用可能なアドバンス・フォーマット。互いの超次元を見ると、ブラフかは不明だが「モルトNEXT」系のドラグハート・ウエポンをぞろりと並べるナツメ/はっちCSに対し、ホロウの側は《13番目の計画》を2枚採用……つまりは50枚デッキというキナ臭さ。他には《時空の禁断 レッドゾーンX》3枚に《轟く覚醒 レッドゾーン・バスター》2枚、《超時空ストームG・XX》と並んでおり、デッキ構成が全く読めない。

 それでも両者ともに《禁断 ~封印されしX~》を設置しているところを見ると、少なくともホロウの側は《インフェル星樹》を採用していそうといったところか。

 やがてシャッフルが終わり、対戦準備が整う。自分のデッキのシャッフル方法を相手に指定させるのではなく、相手のデッキを直接にシャッフルするのも久しぶりの光景だ。

※撮影時のみマスクを外しています。  頂点までの長い長い道のり、まずはその第一歩。勝って足取りに弾みをつけることができるのは、どちらのプレイヤーか。

Game

 じゃんけんで先攻を勝ち取ったのはホロウ。互いのデッキが明らかになる1ターン目のマナチャージは……なんと《終末縫合王 ミカドレオ》《13番目の計画》で予感はしていたが、いきなりの環境外宣言にさすがのナツメ/はっちCSもわずかに瞠目する。

 それでも動揺したような様子までは見せずに平然とターンをもらったナツメ/はっちCSは、場慣れした落ち着いた手つきで《ボルシャック・栄光・ルピア》をマナチャージ。どうやら超次元での宣言通り、6年前の宿敵《超戦龍覇 モルトNEXT》を今度は相棒に据えての意趣返し……というわけでもないだろうから、単純に高い爆発力と対応力を見込んでの選択なのだろう。

 そしてそのまま2ターン目を迎えたホロウが《零獄接続王 ロマノグリラ0世》をチャージしてターンを返したのに対し、ナツメ/はっちCSは《爆炎龍覇 モルトSAGA》チャージから《メンデルスゾーン》《ボルシャック・栄光・ルピア》《R.S.F.K. / オールイン・チャージャー》をめくって2マナ加速をきっちり決める。  一方、返すホロウも《闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー / お清めシャラップ》チャージからの《天災 デドダム》。1手遅れた格好だが墓地に《絶望と反魂と滅殺の決断》を落とし、野放図な振る舞いだけは許さない。

 だが3ターン目を迎えたナツメ/はっちCSはなおも《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》チャージからの《メンデルスゾーン》でまたも2マナ加速。既に7マナにまで到達し、あとは切り札の発進を待つばかりという状態にまで漕ぎつける。
ホロウ「ハンドは3枚ですよね?」

ナツメ/はっちCS「3枚です」

 ここでホロウは墓地からの《絶望と反魂と滅殺の決断》でナツメ/はっちCSの手札を縛りにいくことを選択。7コストの《超戦龍覇 モルトNEXT》なら仕方ないが、8コストの《爆炎龍覇 モルトSAGA》なら8マナ目は単色カードのトップデッキ要求となる。見えている多色カードの割合からしても、それほど分の悪い賭けではないはずだ。

 そしてやはり多色がかさばっていたか、《革命の絆》《蒼き団長 ドギラゴン剣》の2枚を悩まず捨てて1枚の手札を残したナツメ/はっちCSのターン。  ナツメ/はっちCSはドローと合わせて2枚になった手札を伏せ、超次元のドラグハートたちを吟味する。

 《超戦龍覇 モルトNEXT》か。《爆炎龍覇 モルトSAGA》か。対戦相手のホロウからすればたまらない一瞬だ。

 ……だがマナチャージなしでタップされたのは6マナで、何かと思えば《炎龍覇 グレンアイラ / 「助けて!モルト!!」》《天災 デドダム》とバトルして《爆炎大剣 ガイサーガ》を付け、攻撃時に《ボルシャック・栄光・ルピア》を手札に入れつつ1点ブレイク。これが通り、ターンエンドに≪爆炎覇龍 ガイフレア≫へと「龍解」させる。

 そう、ナツメ/はっちCSは2ターン目に《メンデルスゾーン》を唱えるためにやむなく《爆炎龍覇 モルトSAGA》を埋めたきり、切り札となるべきドラグナーを引けていなかったのだ。 ホロウ「確認していいですか?」

ナツメ/はっちCS「はいどうぞ」

ホロウ「このタイミングで《流星のガイアッシュ・カイザー》って出せましたっけ?」

ナツメ/はっちCS「出せないと思います。何も踏み倒してないですね」

ホロウ「コストを払わないで出したときに3倍のパワーでバトル……で合ってます?」

ナツメ/はっちCS「はい」

 一方ひとまず危機は去ったとはいえ、2022年末発売のレジェンドスーパーデッキ「龍覇爆炎」で登場したばかりの新たなドラグハートだけに対面経験もそう多くはなく、まして一手たりとも間違えたくない大舞台ということもあり、ホロウは慎重に局面を把握しようとする。

 そして。

 自ターンを迎えて意を決した様子のホロウが唱えたのは、《ヘブンズ・ゲート》  降臨したのは2体の《砕慄接続 グレイトフル・ベン》《爆炎大剣 ガイサーガ》とのバトルでどちらも「EXライフ」は剥がされるものの、なおもマナゾーンから《霊宝 ヒャクメ-4》までもがノーコストで召喚され、ナツメ/はっちCSの手札から《ボルシャック・栄光・ルピア》が奪い去られる。

 そして、なおも立ちはだかるブロッカー3体。皮肉にも、6年前にナツメ/はっちCSの窮地を幾度となく救ったであろう天界への門扉が、今度はナツメ/はっちCS自身の《超戦龍覇 モルトNEXT》への最大の壁になろうとしている。

 しかもこの局面で、返すナツメ/はっちCSは《禁断竜王 Vol-Val-8》をマナチャージしてターンを返すことしかできない。《超戦龍覇 モルトNEXT》《爆炎龍覇 モルトSAGA》も、ここぞという場面でナツメ/はっちCSの想いに応えない。

 やがてホロウが《砕慄接続 グレイトフル・ベン》効果と《霊宝 ヒャクメ-4》の「ササゲール」を合わせてマナから《零獄接続王 ロマノグリラ0世》を召喚すると、≪爆炎覇龍 ガイフレア≫に対してマッハファイターで攻撃時、マナゾーンから1ターン目のマナチャージの伏線を回収するかのごとく《終末縫合王 ミカドレオ》が降臨する。 ナツメ/はっちCS「ミカドレオの条件見ていいですか?……このままターン返ったら終わり、ってことですよね?」

ホロウ「そうですね、《一王二命三眼槍》とかがない限りは」

 8コスト以上の大型ディスペクターが4体も並んでしまった絶望的な盤面を前にして、ナツメ/はっちCSは引き込んだ《インフェル星樹》や超次元の《轟く覚醒 レッドゾーン・バスター》を繰り返し見ながら、できることはないか必死に模索する。超次元。デッキ内のカード。禁断解放。

 そして、導き出された結論は。

ナツメ/はっちCS……負けですね。ありがとうございました」

 かくして《終末縫合王 ミカドレオ》のマナチャージによって幕を開けたゲームは、「終末縫合王」の手によって文字通り終末がもたらされたのだった。

Winner: ホロウ

 切り札を引けない不運があったとはいえ、グランプリ王者であるナツメ/はっちCSを見事手玉にとったホロウ。採用カードからしてデッキ分類的には「4cディスペクター天門」の亜種にあたるであろう、その異端の50枚デッキの着想はどこから来たのか。

--「このデッキはご自身で考えられたものでしょうか?」

ホロウてのりんさんという方が、リモートのVDuelCSでこういったデッキをアドバンスで使用してかなり勝たれていたんです。それで案外いけるんじゃないかということで、正確なリストは知らないんですけど、その方の構築を動画で見つつある程度は自分でも考えてみて、このデッキを作ってみた感じです」

--「《13番目の計画》で50枚にしている部分がこのデッキの肝なんでしょうか?」

ホロウ「てのりんさんは55枚にしていたほどで、《禁断 ~封印されしX~》もあってこのデッキはとにかく山札切れが激しいので。それなら《禁断 ~封印されしX~》を抜くというのも考えましたが、《インフェル星樹》との組み合わせは特定のカードを引きづらくなるリスクの上でも採用する価値があるということで、枠を広げるためにも50枚で構築しました」

--「このデッキのどういった部分が環境に対して有効と考えられたのでしょうか?」 ホロウ《空間型無限収納ストラトバッグ》が、まずメタカードとして『サガループ』と『4C邪王門』の両方に対して有効なんですよね。さらに《砕慄接続 グレイトフル・ベン》《ドンドン水撒くナウ》と嚙み合わせが良く、能動的にも使えるようになっているのが強いです。相手のクリーチャーを除去する際にもマナ送りにできるので、《終末の監視者 ジ・ウォッチ》が強く使えたり《ドンドン水撒くナウ》が2マナ加速になったりと、細かい部分で恩恵があります。また《流星のガイアッシュ・カイザー》《インフェル星樹》も採用できているので、4cでもリソースが枯れずに戦い抜ける部分が魅力です」

 リモートCS発のアイデアが、グランプリのフィーチャーマッチでGP王者を相手に花開いた。通常のCS結果を追っていただけでは見えてこないものもある……地方を問わず全国各地のプレイヤーが交差するリモートCSは、規模こそ違えど同様の混沌が広がる大型大会のメタゲームのモデルとして、実は参考にできる部分が多いのかもしれない。

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