デュエル・マスターズ

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DMGP2023-1st Day1(アドバンス)準々決勝:るるる vs. TJM

ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影者:後長 京介

 3825名いたプレイヤーも、ついに8名へ。

 予選ラウンド9回戦、決勝ラウンド4回戦にわたる激闘を経て、トップ8がいよいよ出揃った。

 長い道のりの果てに、今回グランプリに参加したほとんどのプレイヤーたちの第一の目標であろう《流星のガイアッシュ・カイザー》のGPプロモを手にした8名。ここからは追加の目標である、全国大会の出場権がもらえる3位以内を目指す戦いが始まる。

 だが、そんな準々決勝で小さな奇跡が起こっていた。

るるる「フィーチャーが良かったなー」

TJM「フィーチャーが良かった、マジでフィーチャーが良い!こんなにフィーチャーが良いマッチないよ!

 全国大会2019の出場経験を持つるるる超CSⅣ静岡トップ8のTJM。ともに実績十分というだけでなく、神奈川の競技シーンで日頃から切磋琢磨してきた強豪同士である2人が、よりにもよってこの準々決勝で激突したのだ。

 しかもこの直前、トップ8をかけたトップ16マッチでは、かたや「モルトNEXT」のるるるが、すわの駆る「サガループ」を下し、かたや「サガループ」のTJMがErishionの「モルトNEXT」を下してトップ8入りを決めるという運命のいたずらぶり。トップ8に入賞した「モルトNEXT」も「サガループ」も他にいないため、「今日最強のモルトNEXT」と「今日最強のサガループ」との対決であることはもはや疑いようもないだろう。

るるる「でもそっちはここに来れてるってことはツイてるのは間違いないだろうけど、こっちも相当ですよ。このデッキ (モルトNEXT) って普通3キルできないじゃないですか」

TJM「そうね」

るるる……今日3回してる

TJM「なんで?何起き?」

るるる《メンデルスゾーン》《炎龍覇 グレンアイラ / 「助けて!モルト!!」》で」

TJM「あーね。いやーでも今回はさすがにこっちのデッキかそっちのデッキの二択だったわ」

るるる「そう?こっちはキャンセルしようか迷ってたくらいだけど……」

 気心知れた間柄での戦いともあって、トラッシュトークが止まらない。トップ8という1つの到達点に至ったことによる、張り詰めた緊張感からの解放があるのだろう……だが、それにしても。

TJM「さっきトップ8かかった試合で勝って大号泣したから大分すっきりしてるわ」

るるる「ならこれで満足して帰ってくれん?w」

TJM「無理無理無理!だって俺これ勝てないと全国行けんもん。王手決めてはるるとmonokuroくん煽りたいもん!にしても、ここでるるるくんかー……」

るるる「嫌でしょ」

TJM「いや!俺は嬉しいよ」

 繰り返すが、これはグランプリの準々決勝だ。他の3卓からは余計な会話は何も聞こえてこない。ここまで騒がしく試合の準備ができるのは、2人が既に大舞台を経験したプレイヤーであることと、何よりも会話を聞けばすぐにでもわかるほどの仲の良さがあるからに違いない。

るるる「……勝ちたいねー」

TJM「申し訳ないけど負ける気はないよ」

 そう言いながらTJMは、るるるのプレイマットに目を留める。度重なる延期の果てに昨年6月にようやく開催された、全国大会2019の参加賞である《蒼き団長 ドギラゴン剣》が描かれた黒いプレイマットだ。

TJM「……いいなー」

るるる「でしょ。オレこれがいっちゃん格好良いと思うわ」

 全国大会への憧れ。強豪揃いのコミュニティに所属するTJMだからこそ、全国という舞台を一足先に経験した身近な友人たちの姿が余計に羨ましく映るのだろう。

 だが、そのチケットはもうすぐ手の届くところにある。あとたったの2勝。そしてその超えるべき最後の壁の1つが、まさに目の前のるるるなのだ。

※撮影時のみマスクを外しています。  やがて準々決勝の開始がアナウンスされると、TJMはさすがに少しは緊張を戻すかとばかりに仕切り直す。

TJM「……やるか!」

るるる先攻もらいます!……最初はグー!」

 それに対しるるるはお茶目にも謎の唐突な「先攻もらいます」宣言でTJMの虚を突き、じゃんけんの呼吸をズラしにかかる……が特に意味はなく、じゃんけんに勝ったTJMの先攻で1ゲーム目が開始する。

Game 1

 先攻1ターン目にマナチャージされたTJMの《ブラッディ・タイフーン》を見て、るるるが悲鳴を漏らす。

るるるやめてよー!

TJM「そうだよね、誰よりもオレの引きが強いの知ってるもんね」

 初動札を埋める余裕がある≒強い手札と考えられるからだ。しかも返すターン、ただでさえ後手番が厳しいるるるのマナチャージは《メンデルスゾーン》の受け入れが狭い《革命の絆》

 一方、2ターン目を迎えたTJMは《冥界の不死帝 ブルース /「迷いはない。俺の成すことは決まった」》チャージから《ブラッディ・タイフーン》を唱えると、《蒼狼の大王 イザナギテラス》《蒼神龍ヴェール・バビロニア》を墓地に落とす。

 そして《ボルシャック・栄光・ルピア》をチャージしたのみでターンを返したるるるに対し、《蒼神龍ヴェール・バビロニア》をマナチャージしたTJMのアクションは……《絶望神サガ》 TJM「申し訳ないねー」

 言いながら《蒼狼の大王 イザナギテラス》を捨てたその口ぶりから、少なくとも5枚見た後の《冥界の不死帝 ブルース /「迷いはない。俺の成すことは決まった」》まではどうやら確定している様子。

 はたして《蒼狼の大王 イザナギテラス》で5枚を見たTJMは、淀みのない手つきで1枚を手札に加えると、続けて《冥界の不死帝 ブルース /「迷いはない。俺の成すことは決まった」》を唱え、《絶望神サガ》を蘇生。

 そして捨てたのは……?

TJM「……これ、さっき引いたカードですw」  2枚目の《絶望神サガ》

るるる「……このカード面白いかー???」

TJM「もっと大きい声で言ってく?w」

 そう言いつつこちらをチラ見するTJM。カバレージの限界に挑戦しようとするのはやめていただきたい。

TJM「ちなみにボトムに《黙示賢者ソルハバキ》《一なる部隊 イワシン》見えてるから、日本語喋れれば勝てるw」

 言いながらもTJMは「1枚引いて1枚捨てる」を繰り返すと、残り山札1枚の状態で蘇生先を《黙示賢者ソルハバキ》に切り替えて闇のアンタップマナを作り、《超神星DOOM・ドラゲリオン》を召喚して攻撃時に《一なる部隊 イワシン》を「メテオバーン」で墓地に置きながら《水上第九院 シャコガイル》を蘇生、《一なる部隊 イワシン》効果を先に解決して特殊勝利する。

るるる「先3じゃねこれ?」

TJM「そうだよ?さっき泣いたからねー」

 謎の論理と剛腕で、TJMがまずは1本を先取したのだった。

るるる 0-1 TJM

るるる「ちょっとGRシャッフルするわ。風水的に」

 先手3ターンキルを受けて恨み節をこぼすくらいしかできなかった直後だというのに、るるるの軽口は止まらない。「このGR、こぼしケアでオービーのやつなんで」「あー、こっちは4C邪王門だわ」とTJMも相槌を返し、まるで地元のCSの0-2卓にでもいるかのようだ。

TJM「こんなにくっちゃべってる卓、他にねーぞw」

るるる「そうだよ、全国かかってますよー……ぶっちゃけ楽しいw

TJM「でも負けたら絶対飲み屋で愚痴言うやんw」

るるる「『あの人引き強すぎだろー!』ってね」

TJM「明日 (オリジナルで開かれるDAY2) は出るの?」

るるる「出るよ」

TJM「あーじゃあ頑張ってね。こっちは優先受付捨てたからさ」

るるる「足りてなくない???やる気。おいオレ、こんなやつにサガ引かせるなー!

 負ければひとまず今日のところは全国には手が届かないだけでなく、今日という最高の一日が終わってしまう。

 そんな状況でも、るるるはこの瞬間をこの上なく楽しんでいる。絶対勝ちたいのは前提だ。だがそれでも、手に入れたかったものはもう既に手に入れているのかもしれない。

るるる「ねー、《滅亡の起源 零無》入れてよー」

TJM「いやー正直めっちゃデメリットだと思うけどなー。メタカードめっちゃ引かれやすくなるし」

 どこまでも彼ららしい態様で、2ゲーム目が始まる。

Game 2

るるる「ねー、ひどくないさっきから!もう《メンデルスゾーン》トップに賭けるわ」

 早速初手に不満を漏らしたるるるは1ターン目に《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》を、一方のTJMは《「敬虔なる警官」》を置いてターンを終える。

 そして2ターン目、気合を入れたるるるのドロー。

るるる「はい!……う゛っ!

 ドローを見たるるるは思わず胸を押さえる仕草。そのリアクションを見て即座にTJMが意図を解する。

TJM「メンデ、ツモったやん!」  予告通りの《メンデルスゾーン》2ブースト!

 だがTJMも《氷牙レオポル・ディーネ公 / エマージェンシー・タイフーン》で応え、るるるが「えー、勘弁してよー」と嫌そうに言う。

るるる「いやあれサガ持ってる顔だな。顔つきがちげー」

 《蒼神龍ヴェール・バビロニア》が捨てられ、TJMの手札内容次第では一刻の猶予もないかもしれないるるる。だが、ここぞという場面でドローは芳しくない様子。 るるる「本当に下げ●ン。本当によくない」

TJM「大丈夫、責任持って全国行くから」

るるる「3サガだけやめてお願い!」

 言いながら送り出したのは《インフェル星樹》で、《禁断 ~封印されしX~》の封印を利用しての2ブースト2ドローで4ターン目が回ってくることに賭ける。

るるる「俺の見せ場、メンデルツモだけだったか……」

TJM「発狂しとけ!ドロー!」

 そして後手3ターン目、気合を入れたTJMのドローは《コダマダンス・チャージャー》で……即座にマナチャージ!

るるる「え、黒マナ?」

 まさか闇単色待ち?そこまで揃っているのか、と驚きの声を漏らするるる。

 そのまま送り出されたのは、言わずもがな《絶望神サガ》。だが捨てられたのは《蒼狼の大王 イザナギテラス》で、まだ《絶望神サガ》の2枚目までは持っていない様子。ひとまずそのまま蘇生する。 るるる「一緒に見よ!一緒に見よ!」

TJM「一緒には見れないだろw」

るるる「ガニサス?《冥界の不死帝 ブルース /「迷いはない。俺の成すことは決まった」》ない?」

TJM「ブルースはありますw……こっちもメンタルきついんだよw」

 5枚から1枚を手札に加えた後、《冥界の不死帝 ブルース /「迷いはない。俺の成すことは決まった」》《絶望神サガ》を再び蘇生する。

 だが、言葉のとおりTJMにとってもこれが事実上のラストチャンスとなる。この登場時の1ドローが2枚目の《絶望神サガ》でなければ、おそらく《蒼神龍ヴェール・バビロニア》を蘇生だけしてるるるにターンを返さざるをえない。そして次ターン8マナまで伸びる「モルトNEXT」の大攻勢は、さすがにしのぎきれる自信はないからだ。

 緊張の一瞬。その1ドローを、るるるは今度こそ一緒に見ようとTJMに促す。

 そして。

るるる「せーの!」  まさかのドボン。またしても、2枚目の《絶望神サガ》

るるるあんたさー!あんたさー!!

TJM「ごめん、ライン超えたわ!w」

 あまりにも呆気ない幕切れに、るるるも「このゲーム大丈夫?w」「引き強かったんだけどなー……」とTJMがループの手順を踏む間ただ野次ることしかできない。

TJM「ごめんね、責任持って全国行くよ」

 言いながらも、コンボパーツの楯落ちの可能性があったために万が一がないよう一応丁寧に手順を繰り返していたTJMだったが。

TJM「あ、《一なる部隊 イワシン》引いた。で、《蒼狼の大王 イザナギテラス》で見たからここに《水上第九院 シャコガイル》います」

るるる「うるさいなー!さっきと一緒だからいい!負けです!あーした!!

るるる 0-2 TJM

るるる「全国行ってよ!」

TJM「申し訳ねー!オレ、上行くよ!」

 先攻3キル、後攻3キル。結果だけ見ればそれだけの準々決勝だ。だがそれでも2人にとっては、何よりも濃密な時間だったに違いない。

るるる「マジで頑張って。応援してます」

TJM「良い酒飲んで!」

るるるぶっ飛ばすぞマジで!w……あんた踏んだのが運の尽きだわ」

TJM「そうだね。この8人の中だったら一番オレが引き強いと思う」

 対戦中の会話量があまりにも多かったので2人の仲が良いことは明白だったが、それでも一応試合後に仲良くなったきっかけについて聞いてみると、以下のような答えが返ってきた。

るるる「2019年のランキングを走ってるとき、普段のCSでめちゃめちゃ当たって。その前からも活動地域が被ってて、2018年、自分がデュエマ始めた段階からすごく仲良くさせてもらってました。YDM杯でひたすらね。それでぺちゃくちゃ喋るようになりました」

TJM「CSの決勝2回とか?1-1だっけ?」

るるる「両方俺負けてるよ!w」

 だが夢のような時間も、いつかは終わりを告げる。

TJM「今期はCS回るの?」

るるる「いやー平日がきついかなー。制度変わったらって感じ。レーティング制になったらやるわ」

TJM「そっかー。まあ飛梅あるしね……」

 全国大会の調整は、一人きりでは厳しいものがある。

 もし今回TJMが全国の権利を勝ちえたとして、同じモチベーションで一緒に調整してくれるプレイヤーが現れるのか。その不安を解消するには、同じコミュニティからの全国出場者が他にいる方が互いに都合が良い。

 夢見るのは、神奈川勢同士の決勝だ。

 そして、もし叶うことならば。このマッチアップを、全国大会の決勝戦で再現することができたなら、それ以上望むべくはないだろう。

 だからTJMは本当は口に出したかったであろう、「お前もあとからちゃんと来いよ!」という勝者としては少し身勝手かもしれない言葉だけは飲み込んで、友人の屍を越え準決勝に進む。

 全国大会までは、あと一勝。

Winner: TJM

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