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DMGP2024-1st Day2(オリジナル) 決勝戦A席:極限バンバン辿異 vs. あーくん/WiNG

ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影者:後長 京介、瀬尾 亜沙子

 友と一緒だからこそ、成し遂げられることがある。

 オリジナル・フォーマットの3人チーム戦で4500名が参加したDMGP2024-1st Day2。その決勝戦にまで勝ち残った2つのチームには、奇しくも2023年度下期DMPランキングにまつわる因縁がそれぞれ存在していた。

 チーム「みんなと戦えてよかった。」の3人……「かい」こと極限バンバン辿異、関西最強との呼び声も高い紅蓮、デュエチューブリーグ「魔王軍」所属のRikkyは、2023年度下期DMPランキングにおいて日本一決定戦の招待確定日における順位が、17位まで招待だったところをそれぞれ19位、20位、23位、前者ふたりに至ってはわずか600pts以内の差で出場権を逃すという、極限の辛酸を舐めた経験をたった3ヶ月前に共有したばかりであり、そしてそれゆえに今回結成に至った……というチームである。

 対するチーム「朝は太極拳」あーくん/WiNGも、同じ2023年度下期DMPランキングにおいて24位止まりで出場権を逃していた。今回は調整コミュニティ仲間であるという北海道勢のふたり、takiえむつーとともに、最上の結果を期して今大会に参加した。

 だが、そんな彼らの願いはつい1時間ほど前に既に叶っていた。晴れた日に畑を耕し続けて、蒔かれた種がついにいま実ったのだ。

 全国大会2024 日本一決定戦の出場権利は、今回のグランプリにおいては3位以上に与えられる。つまり決勝戦に進出した時点で、出場が1年後にズレこんでしまったとはいえ、彼らは必死に追い求めていたものを3ヶ月遅れで手に入れることができたのである。

あーくん/WiNG「(極限バンバン辿異がデッキを左側に置くのを見て)左利きなんだね。握手どうしようか?」

極限バンバン辿異「うーん……こう?(左腕を捻ってあーくん/WiNGの右手と無理矢理握手しようとする)」

あーくん/WiNG「……J・ガイル?」

極限バンバン辿異「ぷっ(笑)」

 今期からは制度が変わったため事情が変わっているが、2023年度のランキングを走るということは、その日で最もポイント倍率の高いCSを選んで出場するということ。実質的には、三大首都圏を行脚することになる。当然とっくの昔に顔見知りであろうふたりは、ヘッドジャッジの説明を聞くことや対戦の準備を和やかに談笑しながら進める。

 一番欲しいものを、既に手に入れていることからくる余裕がある。選ばれた者しか出場できない全国大会こそが最高峰の場であり、グランプリはあくまで通過点というのが、競技シーンに身を置くプレイヤーたちの共通認識だ。

 しかしそれでも、この一戦を譲れない理由がある。

 デュエマの公式大型大会におけるチーム戦の歴史は短く、ちょうど6年前にどてら・Z・夕のチーム「卍陸の孤島卍」が優勝したDMGP6thが開催されて以来だ。彼らをモデルにした名前を持つサイキック・クリーチャーである《頂上の王龍 ヴィル・ド・テラ》《頂上の精霊 ミラクルスZ》《頂上龍素 サイクリタ》は、アドバンス・フォーマットのDay1で《復活の祈祷師ザビ・ミラ》とともに暴れまわった。ならば今回優勝できれば、いずれそうしたカードにもなれるかもしれない。

 けれどもそんなことは、今フィーチャーテーブルに座っている6人は考えてもいないだろう。

 なぜなら優勝と準優勝とでは、そもそも得られる感覚に天と地ほどの差がある。最後まで勝って終わること、その日一番強かったと証明すること。トロフィーを掲げて、人々の記憶に残ること。

 すべてを出し尽くした末に頂点に立ったという、最高級の生の実感が得られること。

 一番欲しかったものは手に入れている。しかしだからといって、二番目に欲しかったものの価値がなくなるわけではない。否、今この瞬間は目の前の勝利こそが一番なのだ。

 だから。  競技シーンの最先端に立つことでしか得られないものがある。

 「優勝」の二文字をかけて、2023年度の全国大会に僅差で届かなかった者同士が激突した。

Game 1

 予選通過順位が高かった「朝は太陽拳」のあーくん/WiNGが先攻で《S・S・S》をマナに埋めたのに対し、極限バンバン辿異は金色に輝く《芸魔王将 カクメイジン》をマナチャージする立ち上がり。 あーくん/WiNG「金ピカじゃん。塗った?」

極限バンバン辿異「ああ、塗った。いや、消した。消しゴムでめっちゃ擦ったら下から金ピカが出てきた」

あーくん/WiNG「なるほど。それは出てくるわ」

 脳死会話を繰り広げながらもあーくん/WiNGは《終末縫合王 ザ=キラー・キーナリー》を埋め、極限バンバン辿異は《同期の妖精 / ド浮きの動悸》チャージから《AQvibrato》を送り出す。 あーくん/WiNG「うわー引きつえー」

 そう言いながらあーくん/WiNGは3ターン目も《蒼龍の大地》をチャージするのみ。対して極限バンバン辿異は《AQvibrato》チャージから《氷柱と炎弧の決断》を唱える。 極限バンバン辿異「ドロー2回……終了」

 手札に《芸魔隠狐 カラクリバーシ》はあったが、まだ走らない。刻んだ1点で《獅子王の遺跡》でも踏み抜こうものなら大惨事につながる。仮にターンを返してもあーくん/WiNGは4マナ、まだ致命傷になることはない……ならば、最大限待つ。「5C蒼龍」というニッチなデッキ相手にも対面の要点を的確に見抜いた冷静なプレイだ。

あーくん/WiNG「あ、でか。引きが強すぎるッピ」

 それでも、ここで先攻4ターン目を迎えたあーくん/WiNGは《終末の監視者 ジ・ウォッチ》をチャージすると《獅子王の遺跡》  「単色で!」という極限バンバン辿異の願いは届かず、《Disアイ・チョイス》が落ちて「多色マナ武装」を達成し追加2マナブースト。しかもその2枚には《ブレイン・スラッシュ》も含まれており、こうなると極限バンバン辿異に残された猶予はもはや全くなくなったと言っていい状況。

 はたして後攻4ターン目、これが極限バンバン辿異の事実上のラストターン。《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》チャージから唱えたのは《氷柱と炎弧の決断》。そしてドローモード2回で極限バンバン辿異は、ついに求めていたカードにたどり着く。

 すなわち《AQvibrato》で攻撃時、《芸魔隠狐 カラクリバーシ》へと「革命チェンジ」。1ドローから《瞬閃と疾駆と双撃の決断》で「出し」+「アンタップ」……着地したのは、《単騎連射 マグナム》 あーくん/WiNG「……ッスゥー……」  《芸魔隠狐 カラクリバーシ》のブレイク……通る。アンタップ。さらに攻撃時、《芸魔王将 カクメイジン》へと「革命チェンジ」!

 1枚目、《氷柱と炎弧の決断》でドローしながら《AQvibrato》を出す。2枚目、《瞬閃と疾駆と双撃の決断》《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》を出しながら《芸魔王将 カクメイジン》に「アンタップ」効果付与。

 そしてW・ブレイク……S・トリガーは、残念ながら見当たらない。

 再び《芸魔王将 カクメイジン》の攻撃。唱えられた呪文は。 あーくん/WiNGウィー!⤵

極限バンバン辿異ウィー!⤵

紅蓮ナイスゥー!⤴ 4-0して!」

 チームメイトからのヤジを受けながらも、極限バンバン辿異はダメ押しの《瞬閃と疾駆と双撃の決断》も唱えつつ残るシールド2枚をブレイク。

あーくん/WiNG「うわ、そもノートリ」

 後攻4ターン目の完全封殺攻撃で、極限バンバン辿異がまずは一勝を先取した。

極限バンバン辿異 1-0 あーくん/WiNG あーくん/WiNG「(チームメイトに対して)負けたー。4T単騎ストップお疲れ!しゃーないけど」

極限バンバン辿異「ここが勝てないとまず勝てないからね、チームが」

 「みんなと戦えてよかった。」の側が「水火マジック」「水闇COMPLEX」「闇自然アビス」と3人ともデッキが異なるのに対し、「朝は太陽拳」は3面「5C蒼龍」という異色の構成となっている。

 ここでRikkyの「闇自然アビス」は「5C蒼龍」相手に相当不利だと想定されるため、「みんなと戦えてよかった。」が勝つためには「水火マジック」「水闇COMPLEX」がどちらも勝たなければならない。極限バンバン辿異の背中にのしかかる責任は重大だ。

 一方で「朝は太陽拳」の側も、この時点で隣のtakiも紅蓮相手に1ゲーム目で相当な苦戦を強いられており、あーくん/WiNGのマッチ勝敗がチームの勝敗にかかる部分が大きくなっていた。

あーくん/WiNG「あー、先攻で落としたのしょーもな……」

 だがどちらもそんな重圧をおくびにも出さず、すぐさま2ゲーム目が始まる。

Game 2

 初手を見るなり軽く噴き出したあーくん/WiNGが、少考ののち《蒼龍の大地》を置く立ち上がり。対する極限バンバン辿異は《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》マナチャージでターンエンド。

 そしてあーくん/WiNGが2ターン目もデッキの構造上《砕慄接続 グレイトフル・ベン》チャージのみでエンドすることしかできないのに対し、返す極限バンバン辿異は《瞬閃と疾駆と双撃の決断》チャージから1ゲーム目同様《AQvibrato》をしっかりと送り出す。それを見て「つえー!」と鳴くあーくん/WiNG。

 それでもどうにか3ターン目に《ホーガン・ブラスター》チャージから《天災 デドダム》で足を伸ばすのだが、極限バンバン辿異がこちらも再び《氷柱と炎弧の決断》のドローモード2回で手札内容を整えるのを見ると、あーくん/WiNGの口から苦笑が漏れる。

 とはいえ、できることをやるしかない。《S・S・S》をチャージしたあーくん/WiNGは《獅子王の遺跡》で確定3マナブーストし、8マナを揃えた状態で極限バンバン辿異の後攻4ターン目を迎え撃つ姿勢をとる。

 だが、ここで極限バンバン辿異が召喚したのは4マナ域において最大バリューの《楽識神官 プレジール》
 さらに「ハイパー化」してから攻撃時《芸魔隠狐 カラクリバーシ》へと「革命チェンジ」を宣言。そして《楽識神官 プレジール》効果で唱えた《氷柱と炎弧の決断》で山札を最大限掘り進めてから、《芸魔隠狐 カラクリバーシ》《瞬閃と疾駆と双撃の決断》を唱える。

極限バンバン辿異「出し、アンタップ」

 ここで着地したのは、再びの《単騎連射 マグナム》!!

あーくん/WiNG「……うえー?」

 《芸魔隠狐 カラクリバーシ》のシールドブレイク……通る。アンタップ。なおも攻撃時、《芸魔王将 カクメイジン》!このままでは1ゲーム目の完全再現だ。

 1枚目、《氷柱と炎弧の決断》でドローから《AQvibrato》を出す。2枚目、《瞬閃と疾駆と双撃の決断》《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》を出しながら《芸魔王将 カクメイジン》にアンタップ効果付与。W・ブレイク。まだ呪文は止まっていない。S・トリガーは……ない。 taki「死んだ?」

あーくん/WiNG「たぶん」

 極限バンバン辿異は続けて《芸魔王将 カクメイジン》の効果でスピードアタッカーとなった《AQvibrato》で攻撃時、《芸魔隠狐 カラクリバーシ》に「革命チェンジ」して《瞬閃と疾駆と双撃の決断》《AQvibrato》を出し直しながら《芸魔隠狐 カラクリバーシ》にアンタップ付与。残るシールドは2枚。ブレイク。

あーくん/WiNG「マグナム……はい」

 一瞬手が止まったが、そのまま手札に重ねられる。そのシールドは、どうやら《蒼龍の大地》だったか。唱えることは可能だが、残念ながら意味がない。

 攻撃はまだ止まらない。再び《AQvibrato》で攻撃時、またも《芸魔隠狐 カラクリバーシ》に「革命チェンジ」。そして「4枚目⁉」というあーくん/WiNGの言葉のとおり、《瞬閃と疾駆と双撃の決断》《同期の妖精 / ド浮きの動悸》を出しながら攻撃中の《芸魔隠狐 カラクリバーシ》にアンタップ効果を付与。  最後にブレイクされたシールドを表向きにしながら、あーくん/WiNGは笑顔を見せた。  シールドトリガー、《S・S・S》。それは、このゲームの終わりを意味していた。

 最後の2枚のシールドに関しては《S・S・S》がトリガーしてもいいように、両方のブレイクタイミングで攻撃クリーチャーが最高パワーにも最小パワーにもならず、かつ攻撃後にアンタップするよう、極限バンバン辿異がプレイングでしっかりとケアしていたからだ。

 《AQvibrato》が破壊され、《芸魔王将 カクメイジン》が手札に戻り、極限バンバン辿異のすべてのクリーチャーがタップする。……その後に、《芸魔隠狐 カラクリバーシ》がアンタップする。

 「さすが、やるな」という笑顔のまま、「革命チェンジ」した《芸魔王将 カクメイジン》のダイレクトアタックを受けたあーくん/WiNGが握手のための左手を差し出すと、極限バンバン辿異もまた、左手でその手をとったのだった。 極限バンバン辿異 2-0 あーくん/WiNG

あーくん/WiNG「ごめん!信じられんほど強かった!!」  ふたりの戦いは決着したが、チームの戦いはまだ終わっていない。チームメイトに結果を報告したあーくん/WiNGは、すぐ横で試合中のtakiとえむつーのサポートにまわる。  そして極限バンバン辿異も勝利の喜びもそこそこに、特に盤面が複雑になりがちな「水闇COMPLEX」を使用する紅蓮のサポートにまわった。

 これで「みんなと戦えてよかった。」が一歩リードする形となり、チームの決着は残る2卓の勝敗に委ねられた。

Winner: 極限バンバン辿異

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