DMGP2025-2nd Day2(オリジナル) 決勝戦C席:ペリュ vs. うなたろす/彩色硝子
ライター:高橋 穂(北白河)
撮影:後長 京介
ペリュ「これ決勝?」その通り。ここは(驚いたような顔でおどけて見せるペリュ自身も知ってのとおり)、『DMGP2025-2nd Day2』の決勝フィーチャー席。
1000を超えるチームが参加した、この大会の最終決戦の場だ。
……しかし。そんな究極の地であるにもかかわらず、6人の表情には笑顔と安堵の表情が見える。ここまでの成績ですでに両チームとも全国大会への出場が確定しており、この大会に出た目的の半分ほどはすでに達成されている……という要素は確かにあるだろう。
しかし、まだもう半分は満たされていない。そう、GP優勝という最高の栄誉を、チームで分かち合えるか否か、だ。
やゆよっ!---三音の妖精のC席でシャッフルを進めるのは、【光水闇ゼーロ】を駆るペリュ。
《闇王ゼーロ》を使うだけで始動できる最速3ターンキルの破壊力と高い構築自由度から、会場でも多くのプレイヤーが使用する環境最強クラスのコンボデッキ……というのは周知の事実だが、ペリュの構築は一味違う。
相手への妨害は最小限に留めて軽量ドローで前のめりにパーツを探しつつ、相手のメタ(妨害)はトリガー兼用の除去で直接取り除いて乗り越える……という、「絶対に《闇王ゼーロ》を通して勝つ」という殺意に満ちたチューンが施された構成なのだ。
実際にペリュは予選含めてここまで個人成績10-3という好成績を残しており、このチューンナップはこの大会環境にもハマっていたと言えるだろう。
しかし、環境への適応と今大会での実績ならばsnameriサーカス団のうなたろす/彩色硝子も負けていない。
多彩なメタクリーチャーとハンデス(手札破壊)によるコントロール性能が売りの【水闇COMPLEX】をベースに、《流星のガイアッシュ・カイザー》→《超暴淵 ボウダン=ロウ》という必殺技を搭載した【水闇ボウダン=ロウ】が彼の愛機だ。
もとより多彩な局面に対応できる【水闇COMPLEX】の基盤に加え、そちらの強さが環境で知れ渡ったことで《流星のガイアッシュ・カイザー》をケアされずに「受けて切り返す」動きが成就しやすくなったのは非常に大きなファクター。
もともとこのカラーリングのデッキを長く使い続けていたという練度に加え、苦手とする【アルファディオス】等のデッキが減っていたというメタゲーム読みも的中させ、決勝ラウンド全勝を含めた個人成績12-1という好成績でチームを支えつつここまで登ってきた形となった。
「コンボを通す」という意志と、「受けて切り返す」という意志。その意志を貫き通し、チームに勝ち星をもたらすのはどちらか。
最終決戦の火蓋が、切って落とされる。
Game 1
先攻:ペリュ
このゲームのファーストムーブは、先攻2ターン目の《氷牙レオポル・ディーネ公 / エマージェンシー・タイフーン》の呪文面。ドローを重視するペリュのチューンの【ゼーロ】における、2ターン目の理想と言える動きだ。しかも手札入れ替えにより大量リソース確保、ひいてはコンボ始動の鍵になる《DARK MEMORY CONTAINER》を捨てることに成功。まさに最高の初動を決めた形になる。
当然、うなたろす/彩色硝子としてはその動きを通させるわけにはいかない。《異端流し オニカマス》を召喚して踏み倒しを制限しつつ、選ばれないクリーチャーの頭数としてのちのハイパーエナジーやハイパー化への布石とする。
もちろん、ここでペリュがリソース稼ぎのためにいったん「見切り発車」をしてくれたならしめたもの。《DARK MEMORY CONTAINER》の蘇生に対応して《流星のガイアッシュ・カイザー》を叩きつけ、さらなるリソースを稼ぎつつビッグムーブに繋げることも可能だ。
本来致命的となるメタクリーチャーの登場だが、ペリュは怯まない。3コストから放たれたのは、このデッキで唯一《異端流し オニカマス》を除去する手段である《オリオティス・ジャッジ》!
これまた普通の【ゼーロ】には採用されないカードが突き刺さり、妨害への対処をしつつうなたろす/彩色硝子の初動をくじくことに成功する。
ならばと放たれたうなたろす/彩色硝子の二の矢は、《冥土人形ヴァミリア・バレル》。先ほどの除去によりハイパー化によるドローロックこそ決まらないが、それでもペリュのバトルゾーンが空であることから手札破壊が発動。お互い悔いが残らないよう「ペリュはテーブルの下で手札をシャッフルし、それを重ねたままテーブルの上に置く」「うなたろす/彩色硝子は上から何枚目を落とすかを指定する」という厳重なランダム化を経て墓地に置かれるカードを決定する。
……だが、ここで落ちたのはコンボの本筋には絡まない《秩序の意志》。意志は意志でも、ペリュの勝利への意志を挫くことはできなかった。ターンが返ってくるや否や手札から登場したのは、《ティンパニ=シンバリー》!そして、大量のカードが公開された末に出てくるのは《~地獄帰りの騎士~》!
手札入れ替えにより《DARK MEMORY CONTAINER》と《Dの天災 海底研究所》が捨てられたことで、先に捨てたものと合わせて《DARK MEMORY CONTAINER》2体の蘇生、ひいては4ドローまでが確定する。そして、バトルゾーンと手札に闇が満ちたなら……
《闇王ゼーロ》の支配する時間が始まる。バトルゾーンの《DARK MEMORY CONTAINER》2体と《~地獄帰りの騎士~》と手札3枚を生贄にすることで、4枚墓地を肥やしつつ(手札から捨てた)《戦国接続 ギャラクテスト・シデンシーザー》を蘇生すると、EXライフのシールド追加ですぐさま《DARK MEMORY CONTAINER》2体が蘇って4ドローをもたらす。
そして《戦国接続 ギャラクテスト・シデンシーザー》の効果で《闇王ゼーロ》含む3枚のカードを墓地・マナから回収すると、また《闇王ゼーロ》の生贄が揃う……という、有限ループの完成だ。
効果未処理のカードを上下逆にするなど、ミスのないように慎重に1枚ずつ効果を処理していくペリュ。すべての効果の処理が終わったのちに放たれた2回目の《闇王ゼーロ》からは《不死鳥縫合 ブラック・ビッグバン》が蘇生され、山札切れの軛からも解放される。
ここまでの過程で墓地にさらに《DARK MEMORY CONTAINER》が落ちていたこともあり、それらが蘇生すると山札は引き切られて無限の蘇生が始まる。
ドローが置換されて墓地から《~地獄帰りの騎士~》が蘇生され、そのドローでさらに蘇生を行いつつ手札のカードを墓地に送り蘇生先を用意する……という連鎖に突入すると、もはや終幕は目前。
最後に《ガンナー=パトローラー》がシールドをすべて墓地に送りこみデッキ内の全カードの掌握に成功すると、ほどなくして≪サイバー・J・イレブン≫が他10体の水のクリーチャーとともに「みんなと戦えてよかった。」と勝利を宣言した。
ペリュ 1-0 うなたろす/彩色硝子最短手順で妨害を剥がしてコンボを決める……という、設計思想通りの意志を貫いたペリュが1本を先取する形となった。
しかし、うなたろす/彩色硝子にとっても【ゼーロ】は仮想敵。「メタ効果で遅らせつつ、ハンデスでキーパーツや《闇王ゼーロ》のための闇のカードを落とす」という対処は十分可能であるのに加え、まだ必殺技の《流星のガイアッシュ・カイザー》の存在は割れていない。
ならば、どちらもやることは変わらない。自分の意志を貫くだけだ。
Game 2
先攻:うなたろす/彩色硝子
2ターン目から動きのあったGame 1と違い、《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》や《不死鳥縫合 ブラック・ビッグバン》といった現時点での不要牌をお互いチャージしていく立ち上がり。うなたろす/彩色硝子の先攻3ターン目の《冥土人形ヴァミリア・バレル》がファーストムーブとなる。この手札破壊でコンボ始動のための《~地獄帰りの騎士~》などを打ち抜ければ大きく時間が稼げる局面だ。
先ほどと同じく、テーブルの下で5枚の手札を念入りにシャッフルするペリュ。テーブルの上に手札を置き、うなたろす/彩色硝子の選択を待つ。
うなたろす/彩色硝子「……上から2枚目で」
重大すぎるこの選択で捨てられたのは……《ガンナー=パトローラー》。この状況では勝負に直結しないカードだ。
そしてターンが返ってきたペリュは、満を持して勝利への意志を通しにかかる。《~地獄帰りの騎士~》を召喚し、ドローののち《DARK MEMORY CONTAINER》2枚を捨てて即蘇生、4ドロー確保……という、最速かつ理想のルートを過たず辿っていく!
こうして確保した大量の手札の中には、《闇王ゼーロ》ひいては《戦国接続 ギャラクテスト・シデンシーザー》まで集っている。こうなれば、もはやGame 1と同じくその動きが止まることはない。
Game 1と違ったのは、《ガンナー=パトローラー》でシールドを把握するまでもなく11体の水のクリーチャーが揃ったことだけだった。
ペリュ 2-0 うなたろす/彩色硝子
うなたろす/彩色硝子がコントロール体制からの「必殺技」に繋げる前に、完璧な対処と最速なループを叩きつけたペリュ。【ゼーロ】というコンボデッキのポテンシャルを、この決勝という場で極限まで引き出した形となった。
この土壇場で理想的なムーブを実現できたペリュも、こちらの本領を発揮する前に動かれたうなたろす/彩色硝子も、その思いを爆発させたいところだろうが……
だが、これはチーム戦。まだA席とB席では試合が続いており、ペリュとうなたろす/彩色硝子はすぐに切り替えてB席の観戦と助言の構えに入った。
彼らがその感情を真に爆発させるのは、もう少しだけ先となる。
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