デュエル・マスターズ

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DMGP2025-1st Day1(アドバンス)決勝戦:ネバー vs. みるえめ

ライター:林 直幸(イヌ科)
撮影:後長 京介

 5月24日、幕張メッセ。
 この日の"最強"を目指すためには、いったいどの"最強"に身を委ねるべきだっただろうか。

 例えば、ここ1年でリリースされた中で"最強"のカードを使えばよかったのだろうか。
 《真気楼と誠偽感の決断》。普通にマナを支払ってプレイしても強いカードに、相手依存かつ比較的条件が軽い踏み倒し効果が設定されている。

 存在を仄めかすだけで強烈な行動制限を強いるこのカード、衝撃度合いで言えば間違いなく《飛翔龍 5000VT》以来のものであり、ここ1年にリリースされた中で"最強"と言っても過言ではない。
 そして、元々アドバンストップTierのデッキにそれが無理なく入ったとしたら……それは間違いなく"最強"のデッキと呼ぶにふさわしい。

 あるいは──この1年で構築された中で"最強"のデッキを選ぶべきだったのか。
 多くのプレイヤーが《真気楼と誠偽感の決断》の使い方や対策に頭を悩ませていた。

 そんないたちごっこが1ヶ月続いた末に迎えたDMGP。しかし、殿堂入りにより一度は弱体化したそのデッキは、気がつけば誰の警戒からも外れていた。

 だが、その構築が殿堂前よりも洗練され、かつて以上に凶悪な力を秘めていたとしたら……。
 誰の目にも止まらず、ノーマークのまま持ち込まれたそれこそが、"最強"のデッキだったのかもしれない。

 もしあの日、もう1度デッキシートを書くならば……
 《支配の精霊ペルフェクト / ギャラクシー・チャージャー》から始めるべきだったのか。
 《マジシャン・ルピア》から始めるべきだったのか。

 【光水ヘブンズ・ゲート】を操るネバー
 【火光闇ファイアー・バード】を操るみるえめ

 この問いの答えは、最後の1戦をもって証明される。

Game1

先攻:みるえめ  最強デッキ2つによる頂上決戦、その立ち上がりはお互いにゆったりとしたものになった。
 みるえめは先攻3ターン目《ハッター・ルピア》スタート、ネバー《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》で準備を進めていく。

 速度で優位を築いていきたいみるえめにとってはやや苦しい展開。攻めないことには何も始まらないみるえめは、《ポッピ・冠・ラッキー》を立てて《ハッター・ルピア》からの展開を試みるが……。

「マジぃ……?」

 メクレイドで捲った3枚からは……何も出すことはできない!!
 痛恨のスカに対し、ネバーはすかさず《理想と平和の決断》。シールドへの除去を2回行いみるえめの盤面は空に。
 攻め手を失ったみるえめは仕方なく《ハンプティ・ルピア》で時間を稼ぐ。手札の《理想と平和の決断》をハンデスし、《ヘブンズ・ゲート》を撃たれるまでの1ターンを………

 ……生み出せなかった。天門の鍵が仕込まれていたのは、《ハンプティ・ルピア》の力が及ばぬデッキの上。

 引き当てた≪スターゲイズ・ゲート≫が開き、《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》降臨!
 《邪帝斧 ボアロアックス》装備、マナから《音感の精霊龍 エメラルーダ》……かつてDMGP1stの玉座を争った「ミルザムエメラルーダ」と同じ一撃がみるえめを襲う。

 その中身は完璧。《光開の精霊サイフォゲート》《ヘブンズ・ゲート》《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》が呼び出され、≪「真実を見極めよ、ジョニー!」≫で先に出したブロッカーたちが手札に戻され―――
 ≪次元のスカイ・ジェット≫でスピードアタッカーを得た《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》攻撃時、《暴発秘宝ベンゾ / 星龍の暴発》の呪文側で6枚重なったシールドが大爆発。ネバーのデッキがみるみるうちに掘削されていく。
 
 当然のごとく≪♪必殺で つわものどもが 夢の跡≫に到達。ループ証明こそされていないものの、やろうと思えば無限のターンさえ獲得できたはず。
 もちろん2、3ターンの追加ターンと大量のブロッカーさえあれば何の問題もない。勝ち目のないみるえめはすぐに投了を宣言した。

みるえめ 0-1 ネバー

「投了するんですけど……公開領域の確認大丈夫ですか」

 決勝の1本目を落としてしまった。そんな場面でも、みるえめは浮足立つことなく、冷静にネバーの墓地を確認していた。

 関東圏を中心に精力的に活動してきたみるえめは、2023年度からDMPランキングを通じて全国大会出場を目指してきた実力者。
 加えて、認定ジャッジとしても活動しており、実は今大会にひそかにこんな想いを抱いていたという。

「ジャッジとしてフィーチャーテーブルに来たことはあるんですけど、今回はプレイヤーとしても呼ばれたいなって」

 果たして、本日最強の【ファイアー・バード】使いとしてフィーチャーテーブルへと座ったみるえめ
 Game2、その実力、想いに呼応するように、"最強"のデッキが火を噴く。

Game2

先攻:みるえめ

 Game1の揺り戻しと言わんばかりに…ネバーの手札が弱すぎる。3ターン目、《ハンプティ・ルピア》で覗いた中には序盤に使えるカードが1枚もない。

 その想定外の弱さに、逆に唸るみるえめ。トリガーから出た際に処理に困る《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》を的確に抜き取る。

 この隙を見逃すわけにいかない。みるえめは4ターン目、《ハッター・ルピア》をハイパー化させ即座に攻撃。
 捲られたのは《アリスの突撃インタビュー》から……殿堂カード、《雷炎翔鎧バルピアレスク》
 その攻撃時、手札から《アリス・ルピア》ーーーここから、【ファイアー・バード】による怒涛の超展開が幕を開ける。

 《アリス・ルピア》の効果で《マジシャン・ルピア》《ポッピ・冠・ラッキー》《ハンプティ・ルピア》を一挙展開し、さらに2枚目の《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》を抜き取って《ヘブンズ・ゲート》の当たり枠を削っていく。

 《雷炎翔鎧バルピアレスク》の効果で得た追加ターンの攻撃では、《アリス・ルピア》からのデッキトップから《凰翔竜機マーチ・ルピア》
 どんな鉄壁をも貫く矛、「バルピアマーチ」が完成。みるえめが完全に盤面を掌握しにかかる。

 シールドを削りながら、《ハンプティ・ルピア》を何度も出し入れしてハンデスを繰り返し、ネバー《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》をすべて奪取。
 残った手札は《ポッピ・冠・ラッキー》によって機能不全に陥った《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》4枚のみ。こうなっては、さしもの【ヘブンズ・ゲート】といえども成す術なし。

 ≪星龍の暴発≫によってシールド1枚がトリガー化されるも、もはや焼け石に水。
 みるえめの猛攻を止めることはできず、ゲームは最終3本目へ。

みるえめ 1-1 ネバー

 Game3が始まる直前、3位決定戦が終わり、大きな拍手が湧き起こった。
 そのマッチアップは──【ファイアー・バード】同士のミラーマッチだった。

 もしもこの大会がトップ4の時点で幕を下ろしていたならば──
 この日の「正解」は、間違いなく【ファイアー・バード】だったと言えるだろう。
 それほどまでに、警戒の緩んだ【ファイアー・バード】は圧倒的な強さを誇っていた。

 トップ4のうち、実に3人が【ファイアー・バード】。
 半年前のジンジャーに続いて、DMGP史上初の“同一アーキタイプによる連覇”という偉業が、いよいよ現実味を帯びてきたところだった。

 だが──その中にあっても、【ヘブンズ・ゲート】を操るネバーは決して倒れなかった。
 ベスト8から【ファイアー・バード】を2連破し、堂々の決勝進出。

 一般的な正解が何であろうと関係ない。今日、自らが持ち込んだ【ヘブンズ・ゲート】こそが最強である──そう確信し、ここまで勝ち上がってきた。

 対するみるえめもまた、この日を最強を目指すためには【ファイアー・バード】と心中するしかないと、準備の段階で信じていたはずだ。

 これまで積み重ねてきた努力を、自らの選択を肯定するために──あと1勝。
 ネバー《ブルー・インパルス / 「真実を見極めよ、ジョニー!」》をチャージ。
 決勝最終戦、その幕が切って落とされた。

Game3

先攻:ネバー  みるえめは後攻ながら、ついに2ターン目《ルピア&ガ:ナテハ》での初動に成功。
 3ターン目に《ハンプティ・ルピア》ネバーの手札をチェックすると……その中身はまたも芳しくなく、《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》を抜いた手札はまたも5t以内の初動なし。

 さらなる《ハンプティ・ルピア》によってトップから引いた≪スターゲイズ・ゲート≫まで抜き去る。
 みるえめも攻め手を欠くものの、何事もなければ5ターン目の攻め手が突き刺さるーーー。

 しかし、何事かを起こすのがここまで来た【ヘブンズ・ゲート】。ここで引き当てたのが《真気楼と誠偽感の決断》
 とはいえ残る手札は《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》1枚、墓地にトリガーはない。

 ネバーに残されたタイムリミットも考慮すると……やるしかない、2ドロー1捨て、トリガー実行を宣言。
 2ドローの先に墓地に置かれたのはーーー  《光開の精霊サイフォゲート》!!
 値千金のドローが天門を開き、手札の《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》を射出する。
 さらに《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》、さらに《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》までくっついて、眼前には《ルピア&ガ:ナテハ》の食べ残しである2枚のシールド。

 急転直下、チェックメイト。事実上のラストターンを突きつけられたみるえめは、眼前のブロッカー3面を前に無理矢理にでもゲームを畳まなければならなくなった。

 当然できることは多くない。《瞬閃と疾駆と双撃の決断》から《ハッター・ルピア》を出し、2回攻撃を付与。
 ハイパー化し、1回目の攻撃……《龍后凰翔クイーン・ルピア》
 2回目の《ハッター・ルピア》は許さない。《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》でブロックして戦闘破壊。

 ……この瞬間、ほんの少し、ネバーに隙ができた。
 そこを突く手段はデッキの中に1枚しか入っていない。でも、それさえ捲れば。
 《龍后凰翔クイーン・ルピア》自壊、果たして3枚の中には……

 あった!殿堂カード、《雷炎翔鎧バルピアレスク》!!
 かつて【ファイアー・バード】を相手取るときは容易に作ってはならなかったーーーパワー5001以上の的に向かって、《雷炎翔鎧バルピアレスク》が突撃する。
 このために手札に抱えておいた《アリス・ルピア》が射出されーーー

 デッキトップの3枚は、《ルピア&ガ:ナテハ》《アリスの突撃インタビュー》《アリス・ルピア》
 痛恨の1ヒット。EXターンこそ取れるもののこのターンの攻め手が途切れる。
 《凰翔竜機マーチ・ルピア》を伴わない5体破壊によって、盤面には《ルピア&ガ:ナテハ》のみ。これでは追加ターンがあっても心許ない。
 
 当たり前だが追加ターンの前にはターンを終了しなければならない。であれば、《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》が回収したこのカードが突き刺さる。
 3体以上のクリーチャーが出たことによる……《真気楼と誠偽感の決断》。最後の最後に残った《ルピア&ガ:ナテハ》すらシールドに送還された。

 追加ターン。5マナから出てきたのは……もはや眼前の盤面に全くの影響を及ぼさない、《ハンプティ・ルピア》
 シールドは実質1枚。ターンを明け渡し、≪天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン≫は、王者の名を冠した≪天命讃華 ネバーラスト≫へ裏返る。

 それが意味するところが、この大会の結末であった。

ネバー 2-1 みるえめ

「あー………やるべきだったんか……」

 ゲームが決着するその刹那、みるえめの口から思わずこぼれた一言。
 それは、4ターン目の《ハンプティ・ルピア》プレイ時に生じていた、わずかな分岐を悔やむ声だった。
 このターン、すでに《瞬閃と疾駆と双撃の決断》《ハッター・ルピア》は手札に揃っていた。
 もしかすると、それらを《ハンプティ・ルピア》と同時に繰り出しておくべきだったのかもしれない……。

 ネバーにしてもそうだ。2回攻撃の《ハッター・ルピア》をブロックするべきだったのか。
 もし最後の《アリス・ルピア》がヒットしていれば《雷炎翔鎧バルピアレスク》が何度も殴り続け、勝敗は逆だったかもしれない。

 数えきれないほど重ねられてきた、小さな選択のひとつひとつ。
 その積み重ねの果てに、ほんのちょっとの差で辿り着いた……今日この日の"最強"。

 カメラの前で、王者は少し照れくさそうに、それでも誇らしげに笑っていた。

CHAMPION:ネバー!!
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