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全国大会2018 Round 5:ゆうせい(栃木) vs. 白梟(群馬)

 2018年の日本一決定戦は、北関東(+福島)勢の強さが際立った大会となった。

 ゆうせい(栃木)、白梟(群馬)、chaser(福島)、p-90(福島)、ぱんくろう(茨城) と、実に5名もの出場者を輩出したからだ。

 強者は強者の下に集う。普段、北関東のCSなどで切磋琢磨している彼らは、安定した上位入賞率で互いをライバルと認めつつも時に調整を共にするなどして高め合い、エリア予選で2人の突破者を出した上で、さらにDMPランキング上位10名という激戦区にも、3名を送り込むことに成功していた。

 そしてここまでの実力者揃いともなれば、激突は必然だったと言うべきだろう。

 殿堂ラウンドの2回戦目、最終ラウンドの一つ手前となる5回戦目という正念場でビデオフィーチャーに呼ばれたのは、DMPランキング上位勢のゆうせいと、甲信越エリアで『赤青覇道』を駆り見事に優勝した白梟という、二人の北関東勢だった。

ゆうせい「倒してやっからな、お前!」

 友人同士らしい声掛けとともに席に着くゆうせいに、しかし白梟は苦笑で応える。日本一決定戦という舞台で他の選手たちも集中して座っている中、奔放な振る舞いを返して周りに迷惑をかけるのは避けたいという大人の判断だろうか。

 だが、だとしても。ここでゆうせいを責めるのは酷というものだろう。

 なぜなら、たとえ自らを鼓舞するためにせよ。

 デュエリストたるもの、この大一番でのフィーチャーマッチで気持ちが熱く滾らないはずもないからだ。

 日本一に懸ける思いがある。

 そう、二人はこの時点で3勝1敗。この対戦に勝った方は、トップ8進出に向けて大きな一歩を踏み出すことになる。

 群馬で。栃木で。おそらく幾度となく顔を合わせ、そして対戦もしたであろうライバルが、今は自らの運命を切り開くための対戦相手なのだ。

 対戦準備の前に超次元を見せ合うも、互いにブラフであることは先刻承知とばかりに、ほとんど確認をすることはない。もちろん二人の表情も、既に真剣なものへと切り替わっている。

 そして、5枚ずつのシールドと手札を並び終えると。

 やがて対戦開始の合図とともに、二人の対戦が始まった。 

Game 1

先攻:白梟

 ジャンケンで先攻は白梟。《》チャージから《ジョジョジョ・ジョーカーズ》を唱える。

白梟《ヤッタレマン》拾って終わり」

 今大会のトップメタとなった『ジョラゴンジョーカーズ』としては理想的な立ち上がり。これに対してゆうせいは《Dの牢閣 メメント守神宮》をチャージしてターンを終えると、白梟が《ポクチンちん》チャージから見せていた《ヤッタレマン》を出したのに対し、《》チャージから《異端流し オニカマス》を送りだす。

 そう、ゆうせいのデッキは、『青白メタビート』……などではもちろんない。参加者40人の殿堂フォーマットのデッキの中で、おそらく最もスマートに"異質"だったのがゆうせいのデッキだ。
 その正体は、次のターンに明らかとなる。《》チャージからの《ポクチンちん》を受けて、ゆうせいが次からの動きを考える。

ゆうせい「ちょっと考えます。手札が2枚?」

白梟「手札が2枚」

 そして熟慮を重ねたのち、《》チャージから≪水晶の記録 ゼノシャーク≫を送り出す。

 『火水タッチ光の覇道』デッキ。それは『火水覇道』に《Dの牢閣 メメント守神宮》を足すという、さながら昨年dottoが『火水バスター』同型対決を見据えて《Dの牢閣 メメント守神宮》をタッチした形で優勝をもぎ取ったのと同様の進化とも言えるかもしれない。

 だが、それは『覇道』デッキの同型対決を見据えていればこそのものだ。ループもある『ジョーカーズ』に対しては、さしもの《Dの牢閣 メメント守神宮》も効果が薄い。

 さらに白梟は、《バイナラドア》チャージから早くも《ガヨウ神》《ジョット・ガン・ジョラゴン》こそ出なかったものの、《パーリ騎士》を切って一気に手札を補充する。

ゆうせい「ちょっと考えますね」

 この《ガヨウ神》を生かしたままターンを返してしまえば、《ジョット・ガン・ジョラゴン》からのワンショットも見える。

 しかしそんな局面でも、ゆうせいは活路を見出す。チャージなしで《光牙忍ハヤブサマル》を捨てつつ《“必駆”蛮触礼亞》をB・A・Dで唱えると、≪ゴリガン砕車 ゴルドーザ≫を出して効果で《ガヨウ神》とバトル、さらに相打ちで破壊されたときの「ラスト・バースト」≪ダイナマウス・スクラッパー≫《ポクチンちん》《ヤッタレマン》で処理。白梟の盤面を、綺麗に空っぽにする。

 さらに≪水晶の記録 ゼノシャーク≫で攻撃し、「スマッシュ・バースト」で≪クリスタル・メモリー≫。手札を2枚にまで補充してターンを終える。

 否、終えようとした。(・・・・・・・・・・)
 だが、≪水晶の記録 ゼノシャーク≫がブレイクしたシールドはよりにもよって《バイナラドア》これにより≪水晶の記録 ゼノシャーク≫が処理されてしまう。白梟も、一歩も譲らない。

 とはいえ、返す白梟のターンは《バイナラドア》を含めても6マナ分しかなく、まだ《ジョット・ガン・ジョラゴン》は出ない状況。《ジョジョジョ・ジョーカーズ》チャージからの《ジョジョジョ・ジョーカーズ》《ヤッタレマン》を回収すると、《ヤッタレマン》《ヤッタレマン》《ポクチンちん》と一気に展開してターンを終える。

ゆうせい「手札が残り2枚ですよね?」

 ゆうせいも《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》チャージ、再び≪水晶の記録 ゼノシャーク≫プレイからの《“轟轟轟”ブランド》。引き込んだ《Dの牢閣 メメント守神宮》をそのまま捨てることで、《“轟轟轟”ブランド》は山札の下へ送りつつもどうにか《ポクチンちん》だけは処理する。

 だが、なおも白梟は《アイアン・マンハッタン》チャージから2枚目の《ガヨウ神》、そして《ゼロの裏技ニヤリー・ゲット》と順調に手札を拡充すると、さらにそれだけではまだ《ジョット・ガン・ジョラゴン》に巡り会わなかったのか、3枚目の《ガヨウ神》

ゆうせい「ドローします」

 どうにかターンが返ってきたゆうせいだが、既に白梟の手札は溢れ返っており、もはや一刻も猶予もない状況。

 しかしこの局面でゆうせいのドローは1枚差しの《龍素記号Xf クローチェ・フオーコ》で、やむなくそのままチャージして《ジョット・ガン・ジョラゴン》がすべて楯落ちしていることを祈ってターンを返すしかない。

 そして白梟のターン。《ジョジョジョ・ジョーカーズ》をチャージすると、《ガヨウ神》を手札に戻してコストを軽減しながら満を持して《ジョット・ガン・ジョラゴン》を降臨させる。そのまま戻したばかりの《ガヨウ神》を出し直し、捨てた《バイナラドア》の能力を「ジョラゴン・ビッグ1」で使用して≪水晶の記録 ゼノシャーク≫を処理。

 だが、そのまま攻撃に行くかとも思われた白梟だったが、その状態でターンを返す。自分のシールドは4枚、ゆうせいのバトルゾーンには《異端流し オニカマス》だけがいる状態で。

 確かにここからの負け筋は《“轟轟轟”ブランド》を連続でトップされるくらいしかない。その程度ならば、2枚目の《ジョット・ガン・ジョラゴン》を探しにいく方が安全だと考えたのだろう。
 しかし、それがゆうせいに最後のチャンスを与えた。ドローをしたゆうせいは少し目を見開いて己の引いたカードを見つめ、それをそのままバトルゾーンに出す。

 すなわち、《“轟轟轟”ブランド》!!

 唯一の逆転の手筋、その条件の片方が揃った。ゆうせいはドローの前に両手を合わせる。《“轟轟轟”ブランド》はもちろん、《》でもいい。山札の中に、まだ枚数は十分にある。

 日本一への思いがこめられたドロー。

 そのドローは……しかし、《“轟轟轟”ブランド》でも《》でもなかった。

 《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》が力なく捨てられ、《“轟轟轟”ブランド》の効果でバトルゾーンの《ガヨウ神》が墓地へと送られる。

 白梟のターン。残り山札は7枚というところで、《パーリ騎士》チャージから《ジョジョジョ・ジョーカーズ》。2枚目の《ジョット・ガン・ジョラゴン》があるならそろそろたどり着いていておかしくないはずなのだが、回収は《ポクチンちん》。ほとんど山札を掘りつくした以上、この時点で白梟には非公開領域である自らのシールドの予想がついていた。《ポクチンちん》で山札を回復し、続けて《ガヨウ神》《バイナラドア》を切って《“轟轟轟”ブランド》を処理すると、さらに《ポクチンちん》を出す。
 そして、ついに《ジョット・ガン・ジョラゴン》が攻撃に向かう。捨てるのは、もちろん《アイアン・マンハッタン》。効果で《Dの牢閣 メメント守神宮》がトリガーするが、続けて《アイアン・マンハッタン》効果で白梟が《燃えるデット・ソード》を捨てると、ブロッカーを得たゆうせいの唯一のクリーチャーである《異端流し オニカマス》も、山札の下へと送られてしまう。

 さらにW・ブレイク。それを確認したゆうせいは、そのまま手札へと加え。

白梟《ヤッタレマン》で、プレイヤーにダイレクト」

ゆうせい「……はい、通ります」


Winner:白梟


 残ったシールドを確認した白梟は「やっぱりか」という納得の表情を見せた。おそらく実際に2枚か3枚、《ジョット・ガン・ジョラゴン》はシールドにいたのだろう。であるならば、最後の割り切った攻撃は正しい判断だったと言える。勝利者としてインタビューを受けるため、笑顔で生放送席に向かう。

 そしてそれとは対照的にゆうせいは、対戦が終わっても自らの内に溜まった熱を吐ききれておらず、燻っているようだった。

 DMPランキング上位勢は、文字通り1年のすべてを賭けて日本一決定戦に臨んでいる。ゆうせいのデュエマプレイヤーとしての2018年、その集大成がこの場だった。だからその思いは、勝利という形で結実するはずだった。それが、まだ最終ラウンドで勝ってオポネントでの滑り込みの可能性もあるとはいえ、最も栄光に漸近していたフィーチャーマッチで、あと一歩というところで、砕け散ったのだ。

 何をどうしていれば勝てたのか。≪水晶の記録 ゼノシャーク≫で割ったシールドから《バイナラドア》が出なかったなら。あるいは、あそこで2枚目の《“轟轟轟”ブランド》を引ける未来にたどり着けていたなら。

 何より、せめてトップ8にさえ進出することができたなら。

 体の中に燻り続ける熱を追い出すようにゆうせいが漏らした吐息はしかし、会場の虚空へと空しく消えていった。

 敗者には何も得る資格はない。その事実だけは変わらない。

 それでも、ゆうせいが対戦中も非常に丁寧なプレイかつ明朗な宣言で真摯にデュエル・マスターズに向き合っていた、その姿だけは。

 きっと放送を視聴していた全国のプレイヤーたちの目にも届き、そして印象に残ったに違いない。
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