デュエル・マスターズ

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全国大会2018 決勝戦:ギラサキ(滋賀) vs. ゴリえもん(千葉)

 そこに座っていたのは、2人だけじゃなかった。

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 全国大会、1番輝くトロフィーがしばらく関西から遠ざかっていたころ。
 最後にそれを持ち帰ったあばばばが見つけ出したのは、『赤青バスター』の《Dの牢閣 メメント守神宮》
 それは数多の《異端流し オニカマス》をねじ伏せ、"魔王"の道を切り拓き、頂点へと導いた。

 だからこそだろう。昨年度日本一の"魔王"dottoは大会前からこう語っていた。

dotto「関西勢で、連覇を成し遂げたいんです」

 当然1番に狙うは自身の連覇。しかしその夢は叶わなかった。
 "魔王"だろうが昨年度王者だろうがどうしても運否天賦が絡むのがカードゲーム。ツキに見放され、予選3回戦でその姿を消してしまった。

 それでも彼にはもう1つの夢……今大会への準備を共にした、関西勢連覇の夢があった。
 あばばばの力なくして辿り着けなかった頂点へ……今度は自分が、皆を導かなければならない。

 2ブロックのデッキを託したランディーは予選3回戦を2-1でまとめている。まだここからだ。
 まだ、まだ夢は終わっていない。



 予選6回戦が終わった。果たして、トップ8に進出したのは関東のプレイヤーばかり。
 ランディーもユーリZweiLanceの前に倒れ、関西勢から決勝に進んだのはたった1人。望みがあるとはいえ、常識的に考えればdottoの夢が叶う可能性は限りなく低い。

 だけれど、不思議と不安は少なかった。
 最後の希望を託した彼には、そんなありふれた常識なんて通用しないのだから。

 準々決勝いわなが殴ってきた《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》に対し4枚目の《》から、いわなのデッキに眠る最後の《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を捲る豪運を見せつけた。
 準決勝、決勝で相対する男の盟友であるシュウを光の速さでなぎ倒していった。

 dottoが全国に向け練り上げてきた、渾身の『緑ジョーカーズ』が決勝に辿り着いた。
 それを託したのは、dottoが「最大のライバル」と公言する男。

 関西が誇る"鬼才"、ギラサキだった。

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 GP6thで準優勝を収めたチーム、「ゴリドリル」は全員緑色のパーカーを身に纏った集団。
 その左胸にはでかでかと「モブ一族」という彼らの名が書かれていた。

 モブという言葉は英語で「群衆」を意味する。砕けて言うなら「そこらへんにいるヤツ」。
 リーダーであるモブトのHNもそこから由来しているのだが、モブト個人でも「モブ一族」というチーム単位でも、どう見ても「モブ」という名は不相応。
 モブトは今年度あまり精力的に活動していなかったにも関わらずCS優勝2回、直近で言えばメンバーのkenshiは2月にCS3連続優勝という偉業を成し遂げている。
 関東を代表するチームの1つにまで成長した、最強のモブたちだ。

 そんなチームにあって、彼は勝ち頭とも呼べる存在だ。
 GP6thで早々と全国の権利を獲得しながらもコンスタントにCSに出続け、3回の優勝を重ねている。
 もちろんその裏には「モブ一族」というハイレベルな環境での研鑽あってこそだ。

 その手に握られている『無色ジョーカーズ』は、GPのチームメイトであるヤザワから託されたもの。
 テンプレートの自由枠である《ワイルド・シールド・クライマックス》に疑問を抱き、いくつもの選択肢の中から辿り着いた答えは……《シャダンQ》
 会場内にある《シャダンQ》は彼らが使った6枚だけ。この『ジョーカーズ』は、彼らだけのものだ。

 同じリストを使用したシュウと共に準決勝までやってきた。
 だけれどシュウはギラサキに敗れた。ワンツーフィニッシュの夢はもう叶わない。
 でも「モブ一族」が日本一であることを証明するための挑戦はまだ終わっていない。

 「モブ一族」の期待を背負い……ゴリえもんは落ち着いた表情で、ただその時を待っていた。

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 そう。彼らは決して1人でここまで来たわけではない。

 ギラサキには、dottoに託された夢がある。
 あばばばからdottoへ繋がったバトンを、自らの手でもう1度関西まで持ち帰るために。

 ゴリえもんには、共に駆け上がってきた「モブ一族」のメンバーがいる。
 GPで共に駆け上がった仲間と共に、もう1度喜びを分かち合うため。

 さあ、始めよう。彼らの戦いを。
 これが2018年度のデュエル・マスターズ、最後の戦いだ。


Game 1

先攻:ギラサキ

 ギラサキは「どうしよっかな……」と呟いた2秒後に《》をセット。
 ゴリえもんは表情一つ崩さず《パーリ騎士》をセットし《ジョジョジョ・ジョーカーズ》《ガヨウ神》を回収。

 ギラサキは《ヤッタレマン》を出し初動に成功。
 対するゴリえもんは《アイアン・マンハッタン》をチャージして再度《ジョジョジョ・ジョーカーズ》。その効果で《ジョット・ガン・ジョラゴン》が手札に加わる。
 次のターン《パーリ騎士》を出して《ガヨウ神》の撃ち合いに縺れ込めばトリガーで逆転が狙える……

 しかし、『ジョーカーズ』ミラーにおいて後攻《パーリ騎士》初動はあまりに致命的だ。
 先攻3ターン目を迎えた側に、それを咎める簡単な手段があるから。
ギラサキ《ポクチンちん》、対象相手で」

 ギラサキは、概ねゴリえもんの手札にあるであろう《パーリ騎士》を腐らせる《ポクチンちん》のプレイ
 ゴリえもんが《ヤッタレマン》を引けていないことにより先手後手の差が確たるものとなる。
 ゴリえもんも同じく《ポクチンちん》をプレイするが、《パーリ騎士》を止める以外ではミラーマッチにおいて障壁になりにくいこのカードではその速度差は埋まらない。
 続いてギラサキの手から繰り出されたのはジョーカーズの強さの要、《ガヨウ神》!一挙3枚の手札を獲得し、リソース差までつけ始める。
 ゴリえもんは≪7777777≫でギラサキの《ヤッタレマン》に対処するものの未だ後手後手。
 しかしこの除去が影響したか、ギラサキのプレイは《ジョジョジョ・ジョーカーズ》《メイプル超もみ人》を加えてそのまま召喚するのみ。《ジョット・ガン・ジョラゴン》はまだ出てこない。
 この隙にゴリえもんも《ガヨウ神》をプレイし、手札と盤面が整えられる。
 人事は尽くした。あとはギラサキのプレイ、己のシールド次第。

 ギラサキのターン。7マナがタップされる。
 そこから現れたのは……何も戻さずに7マナで降り立つ、《ジョット・ガン・ジョラゴン》!!

 《ガヨウ神》を挟んだその手札は完璧だった。
 《ジョット・ガン・ジョラゴン》の攻撃時効果で捨てられたのは《アイアン・マンハッタン》
 速度差を生かし、敢えて1ターン溜めに回ったギラサキ《アイアン・マンハッタン》のブレイクでトリガーを踏み《ジョット・ガン・ジョラゴン》が飛ばされても、残った3打点でそのまま詰めに向かうことができる体制を整えたのだ。
 ゴリえもんが逆転するにはまずここで《ジョット・ガン・ジョラゴン》に対処するトリガーが必要だが…

 何もない。ギラサキが小さく「よし」と声を上げる。
 追加で捨てられた《燃えるデット・ソード》でアドバンテージを稼ぎつつ、残り2枚のシールドをブレイク。
 ゴリえもんが残り3体のアタッカーを処理するためには≪7777777≫が必須だが…その中身は《バイナラドア》のみ。3打点を止めるには至らない。
 先攻の利を生かし、まずギラサキが王手をかける。

ギラサキ 1-0 ゴリえもん

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 準決勝で勝利したギラサキは生放送で、「決勝もいつも通りやります」と話していた。
 それを見ていた私はというと、「いやいや、口で言うだけなら簡単だぞ」と内心鼻で笑っていた。

 次に控えているのは日本一を決める戦いだ。いつも通りなんて夢のまた夢、絶対どこかで緊張してるに違いない。
 とはいえ、それはライターの私とて例外ではない。多少緊張しながらも決勝戦を見届けるため、フィーチャーテーブルに向かうと…

ギラサキ「おい! (決勝のカバレージのため)大役やんけ!w」

 ……有言実行とはこのことか。旧知の間柄である私にいつも通りのテンションで声をかけてきた。
 緊張なんてどこ吹く風、一瞬デュエ祭りの決勝戦かと錯覚するほど。逆に鼻で笑われた気分だ。
 お前の方が大役なんだが……と内心ツッコミを入れつつ、このメンタルの強さも彼の武器と再認識。
 試合が始まっても「いつも通り」。少し厳しい顔をしてはすぐにプレイし、ターンを返せばゴリえもんの動きを注意深く観察する。

 そんなギラサキの視線を受けるゴリえもんはというと……眉一つ動かさない。
 緊張なのか……その割に、目はしっかりと盤面を見据えている。

 GP6thでチームメイトだったシュウはこう語っている。
 「ゴリえもんは普段はもっとリアクションが大きかったりするんですけど……駆け引きや真剣勝負の場だといつもポーカーフェイスを貫くんです。
 決勝も普段通りのポーカーフェイスでしたね」

 彼にしてみても、これが「いつも通り」だった。
 GP6thの決勝、何度も経験したCSの決勝。
 積み重ねた経験が揺らぐことはない。例えそれが日本一を決める最後の戦いだったとしても。

 互いに強者たるメンタルが垣間見えたGame1を終え、後がないゴリえもんの先攻でゲームが始まる。

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Game 2

先攻:ゴリえもん

 1ターン目はお互いに《ジョジョジョ・ジョーカーズ》。ゴリえもんは《パーリ騎士》を、ギラサキは《タイク・タイソンズ》を回収する。
 2ターン目もお互いに《ヤッタレマン》とまさしくミラーマッチらしい展開だ。

 この勝負の流れは先手を取ったゴリえもんにあった。
 《ヤッタレマン》チャージから《パーリ騎士》《ポクチンちん》、小型を一気に並べる上々の3ターン目。
 ギラサキが手札枚数を確認。3枚のカードをプレイしたゴリえもんは「1枚」と返す。
 真っ先に予想される「《ガヨウ神》……」と呟きながら今後の展開を考えるギラサキ。
 ギラサキの3ターン目はゴリえもんほど早くは動けず、《ポクチンちん》のみでターン終了。

 果たして、ゴリえもんの手札にあったのはギラサキが予想した《ガヨウ神》ではなかった。
 そのアクションは……ノーチャージから《パーリ騎士》《ポクチンちん》を戻して《ジョット・ガン・ジョラゴン》!!

 とはいえその手札はこのターンに引いた1枚のみ。
 《ジョット・ガン・ジョラゴン》の早出しに成功したとはいえ、下手に動くと返されないが…

 ゴリえもんは迷わずアタック。
 つまり、そのトップドローが最強である証。
 《ジョット・ガン・ジョラゴン》から撃ち出されたのは……《燃えるデット・ソード》!!
 ぎらさきの《ポクチンちん》、マナ、手札を一気に刈り取って3ドロー。

 ギラサキにとっては特にマナ破壊が重くのしかかり、返しのターンに《ガヨウ神》をプレイすることすら許されない状況に追い込まれてしまった。
 シールドにトリガーはなく、返しターンにも《メイプル超もみ人》しかプレイできない。

 万全の体制で迎えたゴリえもんのターン。《パーリ騎士》からの《ガヨウ神》《バイナラドア》が捨てられ《ヤッタレマン》が除去される。
 横には《シャダンQ》が添えられ、《ジョット・ガン・ジョラゴン》が攻撃に向かう。
 捨てられるのは……これまで幾度となくゲームを決めてきた《アイアン・マンハッタン》
 後続の≪キング・ザ・スロットン7≫こそヒットしなかったものの、前ターン《燃えるデット・ソード》でマナを削り、《アイアン・マンハッタン》の召喚制限、そしてトリガーがなければこのまま致死打点。
 いくらギラサキだろうとミラーでここまでの超展開をぶつけられてはどうしようもない。チェックされたシールドはそのまま手札へ。

 《ヤッタレマン》のダイレクトアタックにより、ゴリえもんも王手へ。
 決勝戦、互いに譲らず。この日最後のデュエルに突入する。

ギラサキ 1-1 ゴリえもん

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 『ジョーカーズ』はその見た目に反して、非常に繊細なプレイを求められるデッキだ。
 《ヤッタレマン》+《ガヨウ神》の強ムーブに加え、《ポクチンちん》《》による対応力の高さもある。
 しかし、その対応力が時としてプレイのブレを生じさせる。《ガヨウ神》が引けなければリソース管理に非常に苦しむデッキであるが故に、《》《ポクチンちん》の切り方1つでゲームの勝敗に影響を及ぼすことも珍しくない。

 だからこそ、比較的単純なミラーマッチだろうとゴリえもんは常に慎重だった。
 1ターン目も、2ターン目も、マナチャージからしっかり考える。手なりで埋めそうな《バイナラドア》でさえも《ジョット・ガン・ジョラゴン》の弾として考え、熟考の末にマナチャージの結論へと至る。

 それなりの場数を踏んだプレイヤーは、どんなプレイをするにせよ一旦立ち止まって考える。
 考えなしのプレイは往々にして敗着の大きな原因となる。それを身をもって経験しているからこそ、一見簡単に見える手でも立ち止まって考えなければならない。
 表情から悟らせず、常に落ち着いて考える。ゴリえもんのプレイスタイルはまさしく、全てのプレイヤーのお手本とも言える。

 だが、ギラサキは逆だ。ほぼ全ての手において、思考時間平均5秒で即決即断。
 その理由は「最初に見えた選択肢が大抵正解だから」。
 瞬時に盤面に対する最適解を見出せるが故に、制限時間の節約に加えて迷いすぎることによるプレイのブレを嫌っているのだ。制限時間がなくてもそのスタイルは「いつも通り」。
 その速さで自信を持って繰り出された妙手は、時として相手のリズムを狂わせることだってある。GP7thのときはあのZweiLanceに迷いを生じさせたほどだ。

 表情は対照的。顔に出しながら考えるギラサキと、ポーカーフェイスを貫くゴリえもん。
 プレイスタイルも対照的。嵐のように高速でプレイするギラサキを前に、自分のペースでしっかり考えるゴリえもん。

 でも、仲間たちの想いを背負っているのは2人とも同じ。

 1-1。最後の戦い。
 

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Game 3

先攻:ギラサキ

 後手ゴリえもんの《ジョジョジョ・ジョーカーズ》から《パーリ騎士》回収でゲームスタート。
 ギラサキはついに緑ジョーカーズの特徴の1つ、《タイク・タイソンズ》をプレイ。
 ……ここで、今回ギラサキが使っているdotto謹製『緑ジョーカーズ』について少し話す必要がある。

 『緑ジョーカーズ』はリリースされて半年ほど経つが、実はまだテンプレートが確立されていない。
 その理由は主に色配分の難しさにある。
 例えば緑を多くするために《ニルバーナー》を採用すると、《バイナラドア》を採用したときに比べてトリガーの威力を落とさざるを得なくなる。
 それならばと緑を減らすと、今度は初動の《タイク・タイソンズ》《メイプル超もみ人》をプレイするマナベースを確立することが難しい。
 《ソーナンデス》は確かに魅力的だが、そこに至るまでの構築は12月から触り始めたdottoでさえも困難を極めた。

 でも、ひとたび最適な配分さえ発見できれば。
 8枚の2コスト初動、《ソーナンデス》《名犬機 ワンコピー/ 101匹コピット大冒険》による無色型にない展開力を手にする。

 そして何よりも同型で圧倒的な速度差をつける……
 《タイク・タイソンズ》Jチェンジ《メイプル超もみ人》による、実質2マナ2ブーストの動き。

 《タイク・タイソンズ》で初動を行ったギラサキのマナには……《メイプル超もみ人》!!
 ジョーカーズ界の《メンデルスゾーン》が確約。ギラサキは最終戦にして最強の初動を決めてみせる。
 これを目の前にしたゴリえもんの2ターン目の行動は……

 チャージ、エンド。
 この時点で速度差は圧倒的。《ポクチンちん》さえ出されなければ《パーリ騎士》は確約しているが、目の前の《タイク・タイソンズ》がどうしようもない。

 3ターン目を迎えたギラサキ、この試合初めて「ちょっと考えます」と断りを入れる。
 とはいえ彼の思考速度はすさまじい。15秒ほど考えただけで《ソーナンデス》チャージからの《メイプル超もみ人》プレイを選択。
 そこから先述の《タイク・タイソンズ》攻撃、Jチェンジ《メイプル超もみ人》
 さらなるブーストを重ね、次ターンには7マナに到達する。≪キング・ザ・スロットン7≫でさえも出せる状況だ。

 ゴリえもんは遅れて《パーリ騎士》から、無色ジョーカーズの強みである《ゼロの裏技ニヤリー・ゲット》
 これが《》《ジョジョジョ・ジョーカーズ》を回収し、余った1マナで《ジョジョジョ・ジョーカーズ》をそのままプレイ。
 ヤザワたちに託されたシークレットテク、《シャダンQ》を回収する。
 圧倒的なリソース差がついたとしても、相手の手札に《ジョット・ガン・ジョラゴン》がなければ……



 私がよく知るこの"鬼才"について、ひとつだけ話していなかったことがある。
 思い出してほしい。いわなを4枚目の《》で4枚目の《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を捲ったことで下した試合を。
 一見奇跡的な勝利にも見えるが、彼を近くで見てきたプレイヤーなら口を揃えてこう言うだろう。

 「いつも通り」。
 ギラサキのここ一番での勝負運は、とんでもなく強いのだ

 驚異的な速度で溜め込んだ7マナを全て捻る。
 「いつも通り」、持っていないわけがなかった。3回戦から何度も言い続けたこの言葉も、これが最後。
ギラサキ《ジョット・ガン・ジョラゴン》召喚」。
 そのままアタックしワンドロー……。

 ……ギラサキ、急に頭を抱え始める。

ギラサキ「あーっ、マジか…マジか……」

 なぜかこの試合で1番の厳しい表情。
 《ジョット・ガン・ジョラゴン》の弾丸がないのか、トップで2択が発生したのか……

 そんなことを推測する暇もないうちに、「あ、そっか」と何事もなかったかのように呟く。
 ここまできても「いつも通り」、手札で突然発生した2択の正解を瞬時に導き出す。

 その答えは……このドローで引いた《アイアン・マンハッタン》
 《タイク・タイソンズ》の攻撃で1枚減った4枚のシールドから、2枚がブレイクされる。
 ここのトリガーが勝負の分かれ目。
 驚異的な速度で敗北が近づいてくるゴリえもん。
 だが相手の手札はたった1枚。≪7777777≫《ジョット・ガン・ジョラゴン》を消せば、逆転のチャンスは十分に存在する。
 シールドを見て……

 「よし!!」

 声の主はギラサキ。その中に行く手を阻むトリガーは0。
 追い討ちでもともと捨てる予定だった《燃えるデット・ソード》が捨てられ、3枚のカードを奪い去る。
 そして、《ジョット・ガン・ジョラゴン》のWブレイク。

 ……まだだ。
 まだゴリえもんは、まだ「モブ一族」は負けていない。

 2枚のシールドから≪7777777≫で3を捲り、《バイナラドア》《ジョット・ガン・ジョラゴン》を飛ばし、《燃えるデット・ソード》のドローは振るわない。
 勝ち筋はたったそれだけ。しかし光がある限り、チームの想いを乗せたゴリえもんの目は死なない。まだ死ねない。
 まだ何か、まだ……

 祈るように、力を込めて拾い上げられた2枚のシールドは……。

 そのまま、手札に加わった。


 新たな歴史が刻まれる。
 昨年度王者であるdottoが託した『緑ジョーカーズ』は、そのライバルである天才がゴールまで導いた。
 たった数秒の思考時間から繰り出されるそのプレイに迷いはない。なのにそのプレイにミスはほとんどない。
 だからこそ相手を翻弄し、だからこそ相手を圧倒せしめる。

 "鬼才"、ギラサキ。
 2018年度の栄冠は、この男が掴み取った。
ギラサキ 2-1 ゴリえもん



 表彰式で世界に1枚の《勝利宣言 鬼丸「覇」》を受け取り、インタビューに答えるギラサキ。
 まず口から出てきたのは…周りへの感謝の想いだった。

ギラサキ「1番感謝したいのは……やっぱり普段から調整とか付き合ってくれてる周りの人がいてこその結果だと思うんで。」

 ……そして、次世代への想い。

ギラサキ「周りの人を大切にしながらデュエルマスターズを楽しんでくれたらな、と思います」

 過去も、そして未来も。この決勝の舞台に来るのが2人だけ……そんなわけがない。
 今日この場に、「モブ一族」たちとゴリえもんは駆け上がってきたように。
 そして、dottoたちの想いを受け継いだギラサキが頂点へと登り詰めたように。

 来年のこの席には、何人分の想いがここまでたどり着くのか。
 それを楽しみにしつつ、まずは顔を綻ばせた王者を祝福したいと思う。
CHAMPION:ギラサキ!!
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