全国大会2019:メタゲームブレイクダウン~オリジナル~
ライター:清水 勇貴
本大会において、オリジナルフォーマットの構築戦は予選3ラウンドに加えて決勝トーナメントでも行われる。ただ予選を勝ち抜くためではなく、日本一の座まで戦い抜くことを想定した「相棒」として、各選手はどのデッキを見出したのか。まずは各デッキの使用者数から確認していこう。
■【モモキングダム退化】:19名
■【火単ブランド】:8名
■【墓地退化】:4名
(自然型:3名 光型:1名)
■【マッド・デッド・ウッド】:3名
■【5cザーディクリカ】:2名
■【巨大墓地ソース】:2名
■その他(使用者1名)
【4c邪王門】
【4cガイアッシュ覇道】
【キリコグラスパー】
【デフォーマーロック】
【光水火マナ退化】
【水魔導具】
【ゼーロビッグバン】
計45名
アドバンスほど極端ではないものの、【モモキングダム退化】が圧倒的な1位、次いで【火単ブランド】という大枠はほとんど変わらない結果だ。
《未来王龍 モモキングJO》と《我我我ガイアール・ブランド》。2枚のキングマスターがどれほど強大かを示す、いい証左だと言えるだろう。
上記のようなメタゲームで繰り広げられた予選オリジナルラウンド3回戦ののち、決勝トーナメントへと駒を進めた8名のデッキが以下の通りだ。
■【モモキングダム退化】:5名
■【4c邪王門】:1名
■【5cザーディクリカ】:1名
■【水闇自然墓地退化】:1名
下馬評では環境の大本命と目された【火単ブランド】はまさかの全滅。
現地にて圧倒的な存在感を放っていた【モモキングダム退化】は結果として3名が準々決勝で脱落したものの、ベスト8に過半数の5名を送り出す明確な「勝ち組」デッキとなった。
いずれにせよ、強豪プレイヤーの間で共通認識となっていたのは「【モモキングダム退化】が最も強いデッキだ」という事実だ。
本記事では台風の目となった【モモキングダム退化】ではなく、あえて【モモキングダム退化】ではないデッキへと目を向けてみたい。
【5cザーディクリカ】
NJ デュエル・マスターズ 全国大会2019 日本一決定戦 オリジナル構築 |
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見事準優勝に輝いたNJは、≪ナウ・オア・ネバー≫と《ドラゴンズ・サイン》を計7枚採用した意欲的な【5cザーディクリカ】を本大会に持ち込んだ。
NJ「【モモキングダム退化】か【5cザーディクリカ】で悩んだんですが、結局ミラーと【火単速攻】のマッチアップが難しかったので、全部を受け切れる可能性のある【5cザーディクリカ】を選びました。元々コントロールデッキが好きなので、手に馴染んでいたのもありますね」
CSで主流な≪ナウ・オア・ネバー≫主軸の構築をベースに《ドラゴンズ・サイン》をさらに3枚採用しているのは、【モモキングダム退化】の《アルカディアス・モモキング》下でも動けることを重要視しているからに他ならない。
《灰燼と天門の儀式》と合わせた光文明の踏み倒しトリガー2種は、フィーチャーマッチでも幾度となく彼を絶体絶命の危機から救ってみせた。
決勝戦では惜しくも敗れてしまったが、今回の日本一決定戦におけるひとつの「解答」であったことに間違いはないだろう。
【4c邪王門】
おんそく デュエル・マスターズ 全国大会2019 日本一決定戦 オリジナル構築 |
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おんそく「アドバンスはだいたい想定通りだったんですけど、オリジナルはもうちょっと【火単ブランド】がいると思ってたんですよね……」
第3位のおんそくが使用した【4c邪王門】は、【火単ブランド】を確実に受け潰すための最終兵器だった。
準々決勝の勝利後、おんそくは使用デッキについてこのように語ってくれた。
おんそく「日本一決定戦で使うデッキの最低ラインとして『【火単ブランド】に勝てるデッキ』というのがあって、その中でも一番色んな対面とやり合えるのが【4c邪王門】だったんです」
カウンターデッキとしての強さが取り沙汰されやすい【4c邪王門】だが、その本領はむしろ豊富な攻め手のバリエーションだ。
《鬼ヶ大王 ジャオウガ》で鬼エンドや《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》の革命0を能動的に機能させて一気呵成に攻め込んだり、《奇天烈 シャッフ》や《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》+《》で呪文を妨害してコンボやコントロールに優位に立ち回ったりと、相手に応じて変幻自在の立ち回りを見せてくれる。
そんな中、特に重要な役割を担うのが、《生命と大地と轟破の決断》。
マッハファイター付与や《奇天烈 シャッフ》・《単騎連射 マグナム》の踏み倒しといった小技はもちろんのこと、スピードアタッカーを2体同時に踏み倒す動きは鋭角なフィニッシュに大きく貢献する。
特に、《鬼ヶ大王 ジャオウガ》と《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》を同時に踏み倒して一挙に5打点を作り上げながら大量のリソースを抱え込むムーブは、まさに「必殺」と呼ぶべき破壊力だ。
最小限のテンポロスで《生命と大地と轟破の決断》をマナに埋めるべく採用された《ダンディ・ナスオ》からも、《生命と大地と轟破の決断》のカードパワーに対するおんそくの信頼が窺える。
《一王二命三眼槍》と《百鬼の邪王門》による二段構えの防御手段と鋭角なフィニッシュ打点を兼ね備えることから、渦中の【モモキングダム退化】に対して有利ではないにせよ、決して大きく不利なわけではない。
事実、3位決定戦では◆ドラ焼きの駆る【モモキングダム退化】と激闘を繰り広げ、勝利を手にしている。
【マッド・デッド・ウッド】
ぐってぃ デュエル・マスターズ 全国大会2019 日本一決定戦 オリジナル構築 |
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惜しくも決勝トーナメント進出を逃したものの、今回のメタゲームで最も輝いていたデッキについて、触れないわけにはいかないだろう。
予選第9位のぐってぃをはじめ、関西圏で活動する一部の選手がシェアして持ち込んだのが【マッド・デッド・ウッド】だ。
「シールドをブレイクして勝利するデッキ」すべてに対するアンチデッキとして開発されたこのデッキは、言うまでもなく【火単ブランド】や【モモキングダム退化】に対しても極めて有効。
《ヘブンズ・ゲート》と《砕慄接続 グレイトフル・ベン》のパッケージを採用した、いわゆる「【ベン天門】型」を基盤とした構築だが、《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》の2枚採用が特徴的だ。
《ヘブンズ・ゲート》から飛び出す追加の弾丸として優秀で、《我我我ガイアール・ブランド》や《未来王龍 モモキングJO》といったキーカードをピンポイントに封殺できるために安易な突貫を許さない。
《龍風混成 ザーディクリカ》を指定すれば【5cザーディクリカ】系のデッキに対しても立ち回りを制限できたりと、完全に腐る対面がほぼ存在しないのも強みのうちだろう。
シールドブレイクに頼らない勝ち筋を有する【水闇スコーラー】や【光闇火ライオネル.Star】の存在によってCSレベルでは立ち位置を落としているものの、日本一決定戦という舞台はその例に当てはまらない。
それを証明するかのように、ぐってぃは予選オリジナルラウンドにおいて3-0。全勝を記録している。
総括
セキボン デュエル・マスターズ 全国大会2019 日本一決定戦 オリジナル構築 |
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【モモキングダム退化】が環境を蹂躙し、王座を手に入れた本大会。
本記事で紹介したように【モモキングダム退化】へと抗ったデッキも存在したが、その中でも最終的に【モモキングダム退化】が勝ち切ったのは、ひとえにデッキの強靭さゆえだろう。
時に《進化設計図》のもたらす莫大なリソースで強引にコンボを進め、時に《禁断英雄 モモキングダムX》を土台に5マナで《キャンベロ <レッゾ.Star>》を召喚し、時には2ターン目に《禁断英雄 モモキングダムX》を設置して対戦相手を絶望させる。
考えうる限りのあらゆるハードルを乗り越え勝利を掴み取る【モモキングダム退化】の底力は、紛れもなく「現環境最強」たるに相応しいものだ。
王来MAXはまもなく最終弾の発売を迎える。情報は出揃っていないが、全てが周知のものとなる日はおそらくそう遠くない。
2019年の残滓ではなく、2022年6月、今この時の環境の結末として。本大会の記録は、デュエル・マスターズの新たな歴史を刻んだことだろう。
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