全国大会2019 準々決勝:ナツメ(岡山県) vs.◆ドラ焼き(京都府)
ライター:津乗 新
撮影者:瀬尾 亜沙子
ここからは2本先取の戦いとなるため、予選とはまた違った緊張感が漂う。
準決勝進出を賭けて、奇しくも所謂「DMYouTuber」同士の戦いが繰り広げられることとなった。
ガチ対戦動画を売りにするYouTubeチャンネル「紅茶派閥」のナツメと、ガチからカジュアルまで幅広く取り扱うYouTubeチャンネル「フェアリーch」の◆ドラ焼きが席に着いた。
ナツメはシオン、◆ドラ焼きは フェアリーと、それぞれ相方からのアツい応援を受けてこの場に立っている。
ただでさえ輝かしい戦績を持つ二人だが、チャンネルの看板をもっとデカくするためにも、共に活動する相方のためにも、お互いなんとしても勝ちたい一戦だ。
対戦準備を進めつつ、早くも他のプレイヤーのデッキ内容の話をする二人。
お互い目指すは優勝なだけあって、既に先の対戦を見据えているようだ。
『この勝負は勝たせてもらう』というお互いの気持ちがぶつかり合っているのがひしひしと伝わってくる。
カバレージ用の写真撮影を終え、いよいよ対戦が始まろうとしているなか...
ナツメ「この3人が集まっちゃったら、もうフリー対戦みたいなもんじゃん!w」
と口にする。
その様子はさながら 全国大会2018の決勝戦のようで、ナツメらしい『いつも通り』の雰囲気が作り出されていた。
おそらく、初のカバレージライターで緊張している私への気遣いという一面もあるだろう。
さりげない気遣いができるという一面も含めて、ナツメの『いつも通り』を感じた瞬間だった。
3人で談笑する中、「ナツメ君はヒリついた試合の経験がGP5thであるけど、僕は今日が初めてなんだよね...」と、◆ドラ焼き選手はやや緊張した様子。
それに対してナツメは、「なんかいつも大事なところで当たるよね」と、緊張はとっくにほぐれていると言わんばかりの、◆ドラ焼きとは対照的な様子だ。
ここまでの様子を見る限り、ナツメは緊張感がなさすぎると感じた読者もいるかもしれない。
しかし、これがナツメというプレイヤーの強さの一部だ。
こんな調子でも程よい緊張感を持っていて、いざ対戦が始まるとスイッチが切り替わって、一気に競技プレイヤーの顔になる。
今日に至るまで幾度となく修羅場を乗り越えてきた。膨大な練習を積んできた。だからこそ、自信を持ってどっしり構えられるのだ。
対する◆ドラ焼きも、緊張こそしているものの、決して弱気になっているわけではない。
DMPランキングポイント暫定1位という輝かしい戦績に加えて、記事の執筆や動画の作成も欠かさずに行ってきた。
積み重ねてきた努力と経験、そしてなによりもDMPランキングポイントが、彼の強さを実証している。
「”暫定”の文字を消しに来ました。」と、口で言うだけなら簡単だ。
しかし、その言葉を裏切ることなくトップ8まで駆け上がってきた。
対戦席の空気づくりこそナツメが一歩リードしたような様子だが、この対戦に賭ける思いはどちらも譲らないだろう。
勝てばトップ4。
GP王者とDMPランキング王者の戦いがはじまる。
Game1
先攻:◆ドラ焼き先攻となった◆ドラ焼きは、《神帝英雄 ゴッド・モモキング》をマナチャージしてターンを終える。
珍しく採用されている《神帝英雄 ゴッド・モモキング》は、おそらく今大会に【モモキングダム退化】が多いと踏んで、ミラーマッチを対策した1枚だろう。
仮にミラーマッチで先に《キャンベロ <レッゾ.Star>》の召喚制限をかけられた状態だとしても、《未来王龍 モモキングJO》の攻撃時に《神帝英雄 ゴッド・モモキング》に進化することで、《神帝英雄 ゴッド・モモキング》自身のアンタップ効果を活かして攻め切ることができるというわけだ。
しかし、それが1ターン目にマナに置かれるということは、他の手札がもっと強いということの裏返しとも読み取れるため、素早いゲーム展開が予想される。
返しのナツメは《禁断のモモキングダム》をマナチャージしてターン終了。きっちり《禁断英雄 モモキングダムX》召喚のためのマナを整え、後手を捲りに行く。
続く◆ドラ焼きは、《新世界王の闘気》をマナチャージして《禁断英雄 モモキングダムX》を召喚。進化元に《未来王龍 モモキングJO》をセットすることに成功する。
今後のゲーム展開において重要な、《キャンベロ <レッゾ.Star>》2枚、《禁断のモモキングダム》、《新世界王の闘気》という内容をお互いによく確認して、◆ドラ焼きはターンを返す。
ナツメの後攻2ターン目。同じく《新世界王の闘気》をマナチャージして《禁断英雄 モモキングダムX》を召喚し、進化元に《未来王龍 モモキングJO》をセット。
《キャンベロ <レッゾ.Star>》2枚、《アルカディアス・モモキング》、《無双龍騎 ボルバル・モモキング》、《新世界王の闘気》が表向きにされ、先ほどと同じようにお互いで内容を確認した後にターンを終了する。
相手が追い付いてきた以上、ここでコンボを決めたい◆ドラ焼き。
《怒りの影ブラック・フェザー》をマナチャージし、火文明のマナを残して《進化設計図》を発動。
しかしここは《禁断のモモキングダム》と《禁断英雄 モモキングダムX》というあまり芳しくない内容で、◆ドラ焼きは思わず「やべ」と声を漏らす。
「これはいくしかないな...」と一言残し、《未来王龍 モモキングJO》の攻撃時に《禁断のモモキングダム》に進化してナツメのシールドを安全に2枚削っていく。
シンカパワーで《未来王龍 モモキングJO》をアンタップした後に、《キャンベロ <レッゾ.Star>》に進化して召喚制限をかけつつW・ブレイクに向かう。
このブレイクで《エボリューション・エッグ》をトリガーさせたナツメは、残る1枚のシールドを確認しつつ逆転のプランを熟考する。
「奇跡起きるならこれしかない!」と口に出しながら《無双龍騎 ボルバル・モモキング》を手札に加え、残る◆ドラ焼きの手札が弱いことを祈る。
果たして、シンカパワーによってアンタップした《未来王龍 モモキングJO》の上に進化されるカードは...
「よし。」
声の主は◆ドラ焼き。
《禁断のモモキングダム》に進化しつつナツメの最後のシールドをブレイクし、大事な一本目の勝利を収めた。
抗いようのない先攻3ターンキルを喰らってしまったナツメは、「...引き強くね?」と一言残し、すぐさま二本目の対戦準備に向かう。
Game2
先攻:ナツメ先攻のナツメは《怒りの影ブラック・フェザー》をマナチャージ。
この動きは、多色のカードが多く採用されている【モモキングダム退化】にとっては、決して望ましいマナチャージではないだろう。
あまり手札が芳しくない様子を浮かべるも、先攻の利を活かした攻めを期待してターンを渡す。
返しの◆ドラ焼きは、《禁断のモモキングダム》をマナチャージしてターン終了。
ナツメとは対照的に、理想のマナチャージに成功する。
《バッドドッグ・マニアクス》、《怒りの影ブラック・フェザー》、《》といった自壊カードを使う都合上、火と闇の多色カードは一番都合がいいと言える。
続くナツメのターン、ドローの内容に首をかしげつつ、少考した後に《エボリューション・エッグ》チャージから《進化設計図》を発動する。
《禁断英雄 モモキングダムX》、《禁断のモモキングダム》、《アルカディアス・モモキング》を回収するも、理想の動きはできていないナツメ。
本来、《進化設計図》から動くのであれば、このターンは《新世界王の闘気》をマナチャージして、次のターンに《禁断英雄 モモキングダムX》+《》などの動きをチラつかせたいところだった。
しかしここのマナチャージが《エボリューション・エッグ》だったばかりに、次のターンに退化コンボを決めることができない状態だ。
やや厳しい表情を浮かべつつターンを返すこととなる。
◆ドラ焼きの後攻2ターン目、《新世界王の闘気》をマナチャージして《進化設計図》発動と、一本目と同レベルの強力な動きを通す。
回収こそ《禁断英雄 モモキングダムX》1枚のみだったが、序盤の動きのために一番回収したいカードを手札に加えられたため、最低限の仕事は果たした格好だ。
返すナツメのターンに入ろうとしたところ、先ほど◆ドラ焼きが発動した《進化設計図》が、墓地ではなく誤って手札に加わってしまっているとジャッジより指摘が入る。
◆ドラ焼きもすぐに気が付き、ジャッジの指導のもと正しい状態に復元したものの、やはり◆ドラ焼きは緊張が隠せない様子で、一度深呼吸を挟んでゲームを再開する。
改めてナツメのターンがはじまり、《バッドドッグ・マニアクス》をチャージ。
先ほど回収した《禁断英雄 モモキングダムX》を召喚し、次のターンの勝利を見据えた『チェック』をかける。
ナツメは目に見えた緊張が見られない、いつも通りの雰囲気だ。
ただひたすら勝ちに一番近いルートを選択し、正着を辿り続ける。
ターンさえ返ってくればコンボを決められる。当たり前のことを当たり前にやるのみだ。
そう、ターンさえ返ってくれば。
続く◆ドラ焼きの後攻3ターン目。《新世界王の破壊》をマナチャージし、《禁断英雄 モモキングダムX》を召喚。
2ターン目に唱えた《進化設計図》で山札の下に行った《未来王龍 モモキングJO》が表向きにされ、◆ドラ焼きの山札の内容がすべて表向きにされる。
ナツメほどの実力があるプレイヤーともなれば、公開領域の情報は見逃さない。
表向きになったカードをじっくりと確認した後に、ナツメが言葉を漏らす。
「絶対退化あんじゃん」
その言葉通り、◆ドラ焼きの手札から《怒りの影ブラック・フェザー》が召喚され、《禁断英雄 モモキングダムX》が《未来王龍 モモキングJO》に退化する。
まずは《キャンベロ <レッゾ.Star>》に進化してW・ブレイク。
次に《禁断のモモキングダム》に進化してW・ブレイク。
このまま決まってしまうかと思ったその時、ナツメの手が止まる。
残る◆ドラ焼きの手札は2枚。その内容に読みを入れ、「別にここで打つ必要ないな」と言葉にした後に、なにも処理せずに手札に加える。
おそらく、トリガーしたのは《バッドドッグ・マニアクス》だろう。
もし仮にここで《バッドドッグ・マニアクス》を発動してしまうと、ナツメのバトルゾーンの《禁断英雄 モモキングダムX》が《未来王龍 モモキングJO》に退化してしまうため、◆ドラ焼きの手札に《無双龍騎 ボルバル・モモキング》があった場合に《未来王龍 モモキングJO》が破壊されてしまう展開になる。
たとえ押されている状況でも、あくまで冷静なナツメ。
細い勝ち筋を探して手繰り寄せんとする、その目はまだ死んでいない。
◆ドラ焼きは《禁断のモモキングダム》をシンカパワーで剥がして《未来王龍 モモキングJO》をアンタップしたのち、少考を挟んでターンを返す。
返すナツメのターン。
《キャンベロ <レッゾ.Star>》の召喚制限を効かされている、かなり厳しい状況だ。
まずは《怒りの影ブラック・フェザー》マナチャージから《バッドドッグ・マニアクス》をプレイし、◆ドラ焼きの《怒りの影ブラック・フェザー》を討ち取りつつ《未来王龍 モモキングJO》に退化。
しかし、このターン中に◆ドラ焼きのシールド5枚を割り切りつつダイレクトアタックに向かうのは困難なため、『細い線通すしかないよな』と一言残し、◆ドラ焼きの手札がすべて腐り札であることに賭けてターンを終了する。
先ほどの◆ドラ焼きのターン、《未来王龍 モモキングJO》をアンタップするのみでターンが返ってきたのが、このプレイの明確な根拠だ。
追加の進化先はおおむね手札にないだろうというナツメの冷静な読みである。
先ほど通した『もう1ターン』の要求を、再び通しに行く格好となる。
続くターン、◆ドラ焼きはトップのドローを見るなり、思わず「お!」と声を漏らす。
そのまま唱えられた《進化設計図》から《禁断のモモキングダム》が手札に加わったのを見るなり、◆ドラ焼きが攻撃を宣言するよりも早く、普段の動画と同様に素早く投了を宣言するのであった。
Winner:◆ドラ焼き
『先攻が3ターン退化を通し、後攻が3ターン目を迎えて3ターン退化を通した。』
この2ゲームを簡潔に伝えるのであれば、この一行で収まる。
しかし、たった一行で収めるにはあまりにも勿体ない、かなり濃密なやり取りが行われているのは言うまでもないだろう。
ナツメの戦いはここで幕を閉じ、残された思いは◆ドラ焼きに託されることとなった。
『暫定』の文字を消すまで、あと2勝。
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