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全国大会2023 Round 6:はやと vs.おなかいたい

ライター:河野 真成(神結)
撮影者:後長 京介

 覚悟を決めた瞬間が、たまらなく好きだ。
 2023年度前期ランキング、はやとは全国大会への出場を志し、覚悟を決めると毎日CSへと通い続けた。

 偉業を達成した瞬間が、たまらなく好きだ。
 おなかいたいは、CSにすら出たことがなかった。だが初参加のDMGP2023-2ndにて瞬く間に勝ち上がり、準優勝という偉業を成した。「競技大会初参加でGP準優勝」というこの記録は、もしかしたら永劫破られることはないだろう。
 
 粘りを見せる瞬間が、たまらなく好きだ。
 はやとのランキング争いは最終盤まで及んだ。9月中盤まではそもそも圏外にいた。しかしここで2回の優勝を飾ると、ライバルたちをギリギリで差し切った。諦めなかったことによる、粘り勝ちだった。
 
 強者を認める瞬間が、たまらなく好きだ。
 おなかいたいの偉業は、その決勝とどうしてもセットで語らねばならない。彼の相手はmonokuro。関東で活動している、歴戦のプレイヤーだった。その決勝では、どうしても力量差があった。行動の選択や、それに掛ける時間の長短とは、大局観に基づくものだ。monokuroに見えていておなかいたいに見えていないものは、確かにそこにあった。
 
 全国大会2023予選最終戦。
 はやとおなかいたいも、全国大会への道のりは違えど互いに4勝1敗。勝てば決勝ラウンド。負ければ突破は厳しい。
 おなかいたいは右に、はやとは左に、互いのデッキを置き、勝負の開始を待つ。

 本戦を懸けた戦いを見る瞬間が、たまらなく好きだ。 先攻:おなかいたい  先攻のおなかいたいは、初手埋めが《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》。ご存じ、【水火マジック】である。

 対してはやとのマナには《終末縫合王 ザ=キラー・キーナリー》。こちらは【水闇自然DOOM】と呼ばれるデッキだ。序盤からマナと墓地を作りつつ《アーテル・ゴルギーニ》に繋げ、《超神星DOOM・ドラゲリオン》からの《終末縫合王 ザ=キラー・キーナリー》を繰り出して勝つ、といったコンセプトになる。

 2ターン目。おなかいたい《AQvibrato》の召喚に対して、はやと《デスマッチ・ビートル》が姿を現す。

 革命チェンジを防ぐこの1枚。先攻のおなかいたいはマナに《同期の妖精 / ド浮きの動悸》を埋めているが、どうなるか。

 一旦ここは《氷柱と炎弧の決断》で手札を稼いでくるおなかいたい。次に《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》からのバウンスも見える。  はやとは悩む。
 ほぼ1ターンを確実に取れる《奇天烈 シャッフ》には、まだ届かない。
 だがはやとの手札の選択肢は豊富だった。《ハニー=マーガニー / 「こっちは甘いぞー」》で墓地を増やすか、《天災 デドダム》でマナを伸ばすか、或いは《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》を通すか。

 選択したのは、最後の択。≪ボン・キゴマイム≫を召喚し、ターンを終了。
 
 おなかいたいはここで時間を使うと、《AQvibrato》を召喚。残る2マナで≪歌舞音愛 ヒメカット≫は……召喚されることはなく、ここはターンを終了。
 
 《超神星DOOM・ドラゲリオン》の着地までは、もう少し時間がかかる。
 はやとはここで《ハニー=マーガニー / 「こっちは甘いぞー」》を使うと、墓地に落ちていった《天災 デドダム》を拾ってターン終了。

 おなかいたいの手札を確認すると、《飛翔龍 5000VT》や≪歌舞音愛 ヒメカット≫、それに《瞬閃と疾駆と双撃の決断》といったパーツまで揃っているものの、まだ《芸魔王将 カクメイジン》が見えない。

 もう猶予はないと見れば、見切り発車も選択せざるを得ないこともある。彼は何を選ぶのか。

 こうして決断したのは、《氷柱と炎弧の決断》だった。
 ここはあくまでドローを優先。だが引けども引けども、《芸魔王将 カクメイジン》はやってこなかった。必死に耐える。
 ここは待つ、その覚悟を決めたのだ。

 はやとはここで《奇天烈 シャッフ》を召喚し、「3」を宣言。《瞬閃と疾駆と双撃の決断》などが止まった格好だが、これはおなかいたいの想定通りか。ギリギリまで抱えたVTがあった。
 
 ターンが帰ってきたおなかいたい。まずは《Napo獅子-Vi無粋 / ♪オレの歌 聞けよ聞かなきゃ 殴り合い》のクリーチャー側から入りドローを進めると、切り札となる《飛翔龍 5000VT》を召喚する。はやとの盤面は《デスマッチ・ビートル》のみとなった。
 
 そして何より、盤面に「5」と「8」を用意したことで≪♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり≫1枚では止まらない。
 
 この《飛翔龍 5000VT》は、はやとにとってもわかっているカードだった。そしてその上で、直撃したら苦しいのも重々承知していた。
 
 だからこそ、ここで粘りを見せる。
 
 帰ってきた≪ボン・キゴマイム≫と、手札に抱えていた計2枚の≪♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり≫で、宣言は「5」と「8」。
 こうした粘りこそが、彼がここまでやって来た要因なのだと思う。長いランキング生活の中では、こうした粘りがその日の2-4を3-3に変え、60ptsとなり、それが積み重なってライバルとの差になる。
 
 先攻ならば、《アーテル・ゴルギーニ》さえ手にあれば。そうしたことも考えたくなる中で、「このターンさえ凌げれば」というところまで漕ぎ着けたのだ。
 
 しかし一度《飛翔龍 5000VT》の通った跡。
 そこは、マジックが走るために舗装された道だ。
 
 ここまで頑張ってきたのは、おなかいたいも同じ。ギリギリまで引っ張り、直撃させたら勝てる状況に持ち込んだ上で《飛翔龍 5000VT》を送り込んだ。
 
 おなかいたいに、待望の時間がやってきた。
 
 まずは≪歌舞音愛 ヒメカット≫召喚からマジック・フレンド・バーストが炸裂。止まっている≪Napo獅子-Vi無粋≫を寝かせて、《デスマッチ・ビートル》を退ける。
 
 そして続けて《芸魔隠狐 カラクリバーシ》を5マナで召喚。《瞬閃と疾駆と双撃の決断》を唱えると手札から≪ボン・キゴマイム≫を投下し、返しの《超神星DOOM・ドラゲリオン》を防ぎつついよいよ《芸魔王将 カクメイジン》が姿を見せる。
 
 1枚動けば、2枚目の着地も容易。おなかいたいの手札からは2枚目の《芸魔隠狐 カラクリバーシ》が、≪ボン・キゴマイム≫が、そして《芸魔王将 カクメイジン》が次々とバトルゾーンへと駆け付けてくる。
 
 そして最後に添えられたのは、≪同期の妖精≫。
 
 半年前、DMGP-2ndの舞台では、monokuroにプレイヤーとしての差を見せ付けられた。決勝戦を戦う中で、何処か自信のないような、そんな表情も見えていた。

 だがこの日のおなかいたいに、そんな素振りは一切なかった。恐らく、相当の練習を積んできたのだろう。そう思えるプレイングや自信を感じることが出来た。

 この日の選択は、アドバンスが【光水火ゴスペル】。これは、自分が認める強者たちから勝ちを奪うため。
 そしてオリジナルは、【水火マジック】。これは、覚悟を決めたため。

 ミラーだろうが、不利対面だろうが、倒す。マジックなら、やれる。  そして最後にダイレクトアタックを決めると、大きくガッツポーズを取ってみせた。
 
WINNER:おなかいたい


 レンジの広がったゲームを制し、おなかいたいは予選トータル5勝とし、見事に決勝ラウンド進出を決めた。
 
 対してはやとは、オポネントが僅かに届かず11位での敗退となった。試合直後は内容を振り返りもしたが、結果が発表されると涙を堪えているようにも見えた。
 
 この後おなかいたいは、決勝ラウンドの初戦でにわかと激突し、惜しくも敗れた。
 
 だがこの日のおなかいたいの選択やプレイというのは、それを見ていた人――少なくとも筆者はそうだ――を充分に魅了してくれた。覚悟を決めたプレイヤーの見せる表情は、美しいのだ。
 
 そしてそれは、はやとも同じだ。彼はこれまでのランキングやこの日の勝負は、その涙に説得力を与えていた。
 
 この日のおなかいたいの覚悟も、そして結果発表後に涙を堪えたはやとの様子も、全国大会という大舞台こそが生んだ光景だった
 だからこそ誰しも、この大会を見ている瞬間が、たまらなく好きなのだ。

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