デュエル・マスターズ

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全国大会2023 準々決勝:シムレイ vs.ブラック会社@プレ

ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影者:後長 京介

 確率上起こりうることは実際に起こるものだ。

 ついに出揃ったトップ8。その8人が使用する8つのデッキのうち、何と半分が「水火マジック」という偏った結果となった。

 ということは、「水火マジック」同型対決も発生しうるということだ。

ブラック会社@プレ「緊張しすぎて……予選のアドバンスのときチャック全開でプレイしてました」

シムレイ「wwwそんなことあります?まあ楽しみましょう。程よく、ね。さすがに重要な場なんで」

 ブラック会社@プレは最終戦のフィーチャーマッチでZweiLanceとの激闘を制し、唯一の予選6戦全勝で1位通過を果たしたプレイヤー。スマートフォンアプリ「デュエル・マスターズ プレイス」での活躍で既に有名だったが、超CSⅤ大阪での優勝により、現実だろうと電脳空間だろうと遊び場を問わない実力の持ち主であることは既に証明されている。

 対するシムレイも超CSⅣ静岡でベスト16にまで勝ち残った実力の持ち主。カバレージライターの神結によれば、以前は《天使と悪魔の墳墓》などを使ったオリジナリティのあるデッキを使用する傾向が強かったが、ランキングを走るためにTier上位デッキを握るようになったプレイヤーとのこと。

 《アビスベル=覇=ロード》のプロモカードが手に入る3位以内までは、あと2勝。ここからはオリジナルフォーマット、2本先取にて雌雄を決する形となる。  オリジナル・フォーマットにおいて環境最強デッキとも目されているデッキ同士のミラーマッチ。明暗を分けるものは、はたして何になるのか。

Game 1

 予選全勝のブラック会社@プレが先攻で《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》をチャージすると、シムレイは《芸魔王将 カクメイジン》をチャージして自己紹介は済んだも同然。

 だが、ブラック会社@プレが2ターン目も《芸魔隠狐 カラクリバーシ》チャージのみでパスなのに対し、シムレイは《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》チャージからの《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》で3ターン目の《氷柱と炎弧の決断》を強烈に咎めにいく。

 これを見てブラック会社@プレも《氷柱と炎弧の決断》を埋めて《AQvibrato》を出す……の、だが。

シムレイ「1ドローもらいます」

 シムレイは追加ドローをしっかり忘れずに宣言。さらに返すターン、自分だけ《氷柱と炎弧の決断》を唱えてリソース差をどんどんと拡充しにいく。

シムレイ「終わりです」

 とはいえ《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》だけの盤面から走れるほどには手札が揃わなかったか、一旦ターンを返す形となる。 ブラック会社@プレ「少し考えます」

 返すブラック会社@プレは《芸魔王将 カクメイジン》チャージから《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》を召喚、さらに《AQvibrato》攻撃時に《芸魔隠狐 カラクリバーシ》へと「革命チェンジ」!

 そこから《瞬閃と疾駆と双撃の決断》を唱え、《芸魔隠狐 カラクリバーシ》アンタップと《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》を手札から出す効果を選択する。

 このターンマナに《芸魔王将 カクメイジン》を置いている以上、何もなければ確定で《芸魔王将 カクメイジン》へとつながる形。シムレイが何かできるとすれば、《芸魔隠狐 カラクリバーシ》のシールドブレイク次第。

 そしてその、シールドは。  《芸魔隠狐 カラクリバーシ》「G・ストライク!」

シムレイ「……っし!」

 ブラック会社@プレの《芸魔隠狐 カラクリバーシ》は、残念ながら無為にアンタップしただけで終わる。

 そしてこれで勢いづいたシムレイは返すターン、4マナ軽減の《飛翔龍 5000VT》  同型対決においてはほぼ追加ターン獲得に等しいこのカードを通したことで、シムレイは満を持して攻勢にうって出る。

 すなわち、《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》のプレイヤーへの攻撃時に《芸魔隠狐 カラクリバーシ》へ「革命チェンジ」、そのまま《瞬閃と疾駆と双撃の決断》《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》を出しながら《芸魔隠狐 カラクリバーシ》にアンタップ効果付与。

 そしてこのブレイクが通るや、続けて《芸魔隠狐 カラクリバーシ》《芸魔王将 カクメイジン》へと「革命チェンジ」!  《氷柱と炎弧の決断》による1捨て2ドロー×2を挟んでから2枚目の呪文で《瞬閃と疾駆と双撃の決断》を選ぶことで、《芸魔王将 カクメイジン》にアンタップ効果を付与しながら《イシカワ・ハンドシーカー / ♪聞くだけで 才能バレる このチューン》を送り出す。

 それでもブラック会社@プレもお返しとばかりにここで《芸魔隠狐 カラクリバーシ》の「G・ストライク」《芸魔王将 カクメイジン》の再度の攻撃だけは止めたものの、既に好き放題やられてしまった後であり、あまりにもタイミングが違い過ぎる。

 結局そのまま《芸魔王将 カクメイジン》の効果でスピードアタッカーを得たシムレイの大量のマジック軍が、ブラック会社@プレにダイレクトアタックまで叩きこんだのだった。

シムレイ 1-0 ブラック会社@プレ

ブラック会社@プレ「はー、手札がちょっと……」

シムレイ「そうっぽかったですね……いやーこれ熱いな、3戦目先攻なのが」

ブラック会社@プレワンパン《芸魔隠狐 カラクリバーシ》が強すぎました……

シムレイ「ですねー。しかもあそこの1ドローでちょうど《飛翔龍 5000VT》がひっついてきて、あちーってなりましたw」

 たかが1枚、されど1枚。デュエル・マスターズにおいてシールドブレイクは、勝利に近づく行動であると同時に避けられないリスクも孕んでいる。

 確率上起こりうることは実際に起こるものだ。ゆえに競技としてのデュエマに向き合う者は、そのことを超越した精神性を当然備えている。

 ブラック会社@プレも、一度の不運は気にしない。むしろそうした下ブレを緩和するための、トップ8以降の2本先取なのだ。気を取り直して、2ゲーム目に向き合う。

Game 2

 《芸魔隠狐 カラクリバーシ》《同期の妖精 / ド浮きの動悸》とチャージして《AQvibrato》を送り出す先攻のベストな立ち上がりを見せたブラック会社@プレに対し、シムレイは《AQvibrato》《Napo獅子-Vi無粋 / ♪オレの歌 聞けよ聞かなきゃ 殴り合い》というマナチャージから《イシカワ・ハンドシーカー / ♪聞くだけで 才能バレる このチューン》をブロッカーに立てる後攻らしい立ち上がり。

ブラック会社@プレ「手札今4枚?」

シムレイ「4枚ですね」

ブラック会社@プレ「少し考えます」

 同型戦は押し引きのバランスがある。不用意に攻撃して手札を与えすぎると、思いもよらない手段で切り返されるかもしれない。ただそれでも最終的に殴りきらなければならない以上は、唯一ほぼフリーで攻められる先攻3ターン目には回せるところまで手札を回したい。

 意を決したブラック会社@プレは《Napo獅子-Vi無粋 / ♪オレの歌 聞けよ聞かなきゃ 殴り合い》チャージから《AQvibrato》での攻撃時に《芸魔隠狐 カラクリバーシ》へと「革命チェンジ」!《瞬閃と疾駆と双撃の決断》まで唱え《AQvibrato》を出しつつ1枚ブレイク……通る!

 さらに《芸魔隠狐 カラクリバーシ》アタック時、《芸魔王将 カクメイジン》  ただこれはシムレイも想定の範囲内。あらかじめ出してあった《イシカワ・ハンドシーカー / ♪聞くだけで 才能バレる このチューン》でブロックし、そのまま「メガ・ラスト・バースト」で《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》を捨てることで、楯に眠っているかもしれない《氷柱と炎弧の決断》を有効トリガーとする。

ブラック会社@プレ「終了です」

 ここで不用意に踏み込み過ぎると手痛いしっぺ返しを食らいかねないブラック会社@プレもしっかりと踏みとどまる。

 2ターン目に出された《イシカワ・ハンドシーカー / ♪聞くだけで 才能バレる このチューン》は実質《エマージェンシー・タイフーン》になったのと同義なので、《芸魔王将 カクメイジン》着地のために与えた手札は《芸魔隠狐 カラクリバーシ》のブレイク1枚分のみ。シムレイのバトルゾーンには何もないので、カウンターを決めるなら《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》《瞬閃と疾駆と双撃の決断》から入るしかない。

 むしろ下手に詰めて1ゲーム目のように「G・ストライク」で止まったら相手の手札にナッツ(完成札)が揃ってしまうかもしれない。それならばあえて一度止まって相手の手札の要求値を上げる……まさしく達人の間合いだ。  だがシムレイもさるもの、《飛翔龍 5000VT》チャージから《氷柱と炎弧の決断》で2体出すモードを選択、《AQvibrato》《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》、「フレンド・バースト」で《AQvibrato》《芸魔王将 カクメイジン》を2体バウンス!自分のバトルゾーンに2体クリーチャーを残しつつ、相手の盤面を空にすることに成功する。「水火マジック」同型の後攻側を相当にやり込んでいそうだ。

 ここで4ターン目を迎えたブラック会社@プレの視点では、《飛翔龍 5000VT》マナチャージで2枚目を抱えている可能性が高いため、走れないのであれば《AQvibrato》《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》のハッピーセットでお返ししたいところ……なのだが、ここでのアクションは《AQvibrato》チャージからの《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》手打ちとチグハグ。どうも手札が相当多色に偏っている様子だ。

 この隙にシムレイは《芸魔隠狐 カラクリバーシ》チャージから《瞬閃と疾駆と双撃の決断》《AQvibrato》《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》と並び直し、手札を効率的に回転させる。

 対しリソースが補充できていないブラック会社@プレはそれでもどうにか《Napo獅子-Vi無粋 / ♪オレの歌 聞けよ聞かなきゃ 殴り合い》をチャージすると、素出し《芸魔隠狐 カラクリバーシ》から《瞬閃と疾駆と双撃の決断》へとつなげ《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》を出して「フレンド・バースト」で《飛翔龍 5000VT》を徹底的にケアしにいく。  だが、シムレイはさらにその上を行った。

 《AQvibrato》をチャージして5マナに達すると、《芸魔隠狐 カラクリバーシ》素出しから《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》の呪文側を唱えつつ、プレイヤーアタック時に《芸魔王将 カクメイジン》へと「革命チェンジ」!

 《氷柱と炎弧の決断》《AQvibrato》《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》を出しつつ、《瞬閃と疾駆と双撃の決断》《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》を出しながら《芸魔王将 カクメイジン》にアンタップを付与。さらに「フレンド・バースト」でブラック会社@プレの盤面を再びリセット。

 そして《芸魔王将 カクメイジン》のW・ブレイク。トリガー、G・ストライク……は、ない。

 再び《芸魔王将 カクメイジン》の攻撃。《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》でブラック会社@プレの墓地をリセットして《氷柱と炎弧の決断》をケアしつつ、《瞬閃と疾駆と双撃の決断》《同期の妖精 / ド浮きの動悸》まで並べる。

 《同期の妖精 / ド浮きの動悸》がトリガーするが、バウンスはシムレイの《同期の妖精 / ド浮きの動悸》に吸われ、すべてスピードアタッカーとなった大量のマジック軍団がブラック会社@プレの最後のシールドを割ろうと待ち構えている。

 その最後のシールドを見る前に、ブラック会社@プレは確定した未来を一足早く現実にすることを選んだ。

ブラック会社@プレ「サレンダーでお願いします」

シムレイ 2-0 ブラック会社@プレ

ブラック会社@プレ「おーい……!」

シムレイ「引き強いだけーw」

ブラック会社@プレ「最後の楯2枚、コルフレコルフレ(《氷柱と炎弧の決断》2枚)っすよ……なんですかそれ!」

シムレイ「すみません今日マジで引き強いんですよ……」

ブラック会社@プレ「1回目も2回目もかなり手札悪くて……」

シムレイ「そうですよね……《芸魔隠狐 カラクリバーシ》置かれてるからかなり強いのかなーと」

ブラック会社@プレ「バーシバーシバーシは弱いです……」

シムレイ「あー……こっちが全部持ってて申し訳なかったです」

ブラック会社@プレ「どっちも単色1枚でもあれば何とかなったかもしれないのに……」

 確率上起こりうることは実際に起こるものだ。ゆえに競技としてのデュエマに向き合う者は、そのことを超越した精神性を当然備えている……だが。

 互いに手管を使い尽くした先の結末ならばいざ知らず、豊富な手札交換がある「水火マジック」を使って全国大会の準々決勝で2本とも事故る可能性はいかほどかと考えると……不完全燃焼で燻った様子のブラック会社@プレの胸中は、痛いほどに察せられたのだった。

Winner: シムレイ

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