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全国大会2023事前メタゲーム総括記事:オリジナル編

ライター:高橋 穂(北白河)

「日本一デュエマが強いのは誰か?」

 ともすれば不毛なものにもなりかねないこの問いに明確な答えをもたらすのが、今回の「全国大会2023」だ。

 日々熾烈な争いが繰り広げられたDMPランキングのトップランカー達に加え、各大型大会の上位入賞者。そして何より、前年度の優勝者たちが一堂に会して勝負を決める…いわばこの一年の総決算となるイベントが、ついに始まろうとしているのだ。

 当記事は、来たる全国大会2023を観戦する読者諸賢に向けて、現在のオリジナル環境におけるメタゲームと注目すべきデッキに向けて簡単に解説したものとなる。

 このゲームが生まれた時と同じ、いわゆるメインデッキ40枚のみで繰り広げられるこのオリジナルというフォーマット。

 大波乱を巻き起こした殿堂改定を経て、新たな環境が形作られつつあるオリジナルの現在のあらましを、手短ではあるが紐解いていきたい。

殿堂改定前後のメタゲーム総括

 3/11の殿堂改定前のメタゲームは、環境最強のビートダウン【水火マジック】と超CS2連覇の実績を持つ【フィオナアカシック】を筆頭とし、それを準上位層となる多数のデッキが追いかける……という形だった。

 しかし、殿堂施行により最上位層から【フィオナアカシック】が、準上位層から【水闇ヴォゲンム】【火自然アポロヌス】【水闇自然ジャオウガ】という合計4デッキが大打撃を受ける。

 加えて残った最上位層の【水火マジック】も《機術士ディール / 「本日のラッキーナンバー!」》のプレミアム殿堂で上振れパターンを失い一歩後退した形となる。

 これにより最上層が消滅し、もともと多数存在していた上位層同士の競争が激化。加えて、【光水火ゴスペル】【マトリクスループ】などの新デッキの登場もあり、メタゲームはさらに混沌としたものへと変貌することとなった。

 また、生き残ったデッキも【火自然アポロヌス】に半ば強要されていた特定の受け札をよりデッキと噛み合ったパーツに変更するなど、細かな変化が生まれている。

 前提の確認が済んだところで、ここからは殿堂改定を経て生き残ったデッキたちを紹介していきたい。

デッキ紹介



水火マジック

 まず最初に紹介するのが、間違いなく前環境の覇者の一角と言えるビートダウンデッキ【水火マジック】。

 軽量の「マジック」クリーチャーから、3ターン目の《芸魔隠狐 カラクリバーシ》&《瞬閃と疾駆と双撃の決断》そして《芸魔王将 カクメイジン》への流れるような連続チェンジに繋げ、怒涛の連撃と多彩な封殺札で即座にゲームを終わらせる…という、超攻撃型デッキである。

 3〜4ターンキルのスピードと押し付け性能はもとより、高い山札掘削性能による再現性・柔軟性の高さやロングゲームにも堪えうるアドバンテージ性能など、各方面においてビートダウンデッキの最高峰と言えるだろう。  殿堂改定を経ても基盤は変わらず、デッキそのものの完成度を見れば未だに最強格の座を譲らない……のだが、殿堂改定以降複数の点で逆風が吹いている。

 まず、前述の通り封殺の要となる《機術士ディール / 「本日のラッキーナンバー!」》をプレミアム殿堂で失ったのは明確な弱体化。呪文ロックそのものは《ファイナル・ストップ》などで代用可能なのだが、最速パターンである3ターン目にトリガー呪文の封殺が行えなくなり理不尽なまでの突破力は抑えられた形となる。

 また、殿堂改定で退場したデッキにもともと有利だった相手が多く、逆に苦手とする各種【アビス】や【水闇COMPLEX】といった対抗馬がノーダメージ……というのも辛いところ。

 《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》等のこれまで姿を消していたメタカードを再び採用するなどして、新環境への適応が求められているといえそうだ。

闇単アビス

 対【水火マジック】包囲網の筆頭となるのが、根強い活躍を見せる主人公デッキこと【闇単アビス】。

 登場当初から変わらない《アビスベル=ジャシン帝》からの一斉アビスラッシュという勝ち筋はそのままに、カードプールの増加により除去・踏み倒しメタ・墓地対策・ピーピングハンデス(手札を確認する手札破壊)・耐性付与などなど多角的な妨害手段を身に着けて環境の一角として君臨している。  また、受けに《忍蛇の聖沌 c0br4》《秩序の意志》が加わって以降は【水火マジック】をはじめとするビートダウンキラーとしての立ち位置も得つつある。

 特に《忍蛇の聖沌 c0br4》は前述の多彩な妨害札を相手ターンに蘇生させてプランを崩せるなど、「妨害と攻めを両立するデッキ」としての完成度をさらに上げた一枚と言えるだろう。

 後述のデッキともども殿堂入りでノーダメージだったこともあり、その器用さを活かして環境の台風の目となるか。

闇自然アビス

 同じく主人公デッキたる【闇自然アビス】も、【水火マジック】に優位を持てるデッキとしてその立ち位置を上昇させている。

 こちらの売りは、《邪幽 ジャガイスト》《アビスベル=覇=ロード》による爆発的な展開力と制圧力。それらのバックアップのもと、ハンデスをはじめとするアビスならではの妨害を次々送り込む決定力は絶大だ。

 スピード自体はやや遅めとはいえ、盤面処理を的確にこなしたうえで多方面の相手に対応可能なのは随一のセールスポイントと言えるだろう。  また、環境に墓地利用デッキが複数存在することから「どんな状況でも腐らない墓地対策」こと《ア:エヌ:マクア》の価値が上がっているのも見逃せない。

 デッキとして自然な動きを崩さずに応手を打てることは、高速化し一手一手が重要になる現代デュエマにおいて大きな武器となるだろう。

水闇COMPLEX

 【水火マジック】包囲網の最後の一角にして対ビートダウンの極致となるのが、【水闇COMPLEX】。

 とにかく大量の受け札とメタカードを搭載して相手の動き全てを捌ききり、《DARK MATERIAL COMPLEX》が動き出すまでの時間を稼ぎ出す……という、トリガーデッキの最新版というべき超防御型デッキだ。

 対ビートダウンではほぼ無敵と言わんばかりの防御力に加え、それこそ《秩序の意志》による封印か《∞龍 ゲンムエンペラー》による無視くらいでしか止まらない《DARK MATERIAL COMPLEX》の決定力も抜群……と、特異なデッキ構成による強みを押し付けられる構成になっている。

 その分、プレイング難度は引きにも左右されかなり高め。安定して勝率を上げるためには、「どの相手に対して何で刺していく」という環境知識や、一定のアドリブ力も要求されることになるだろう。  ビートダウンに強い反面、キルターンの遅さからシールドを殴らず勝ちに向かうコンボデッキ全般に弱い……という得意不得意がはっきりしたデッキだが、殿堂改定によりコンボデッキである【フィオナアカシック】【水闇ヴォゲンム】が環境から退いたのは追い風。

 昨今では《アクア忍者 ライヤ》を出し入れすることで強引に《DARK MATERIAL COMPLEX》のカウント進行速度を高めた構築も登場し、まだまだ多くのデッキを手こずらせてくれそうだ。

水闇自然DOOM

 超CSⅥ群馬にて華々しいデビューを飾った、新進気鋭のビッグマナ系コンボデッキとなるのが【水闇自然DOOM】だ。

 安定感でおなじみ水闇自然の基盤から墓地とマナという二大リソースを同時に稼ぎまくり、《超神星DOOM・ドラゲリオン》降臨まで辿り着けばもはや概ねゲームセット。更なる展開を確約しつつロックをもたらす《終末縫合王 ザ=キラー・キーナリー》が出てきて、まず返せない盤面が成立するという寸法だ。

 墓地とマナのどちらが伸びても《超神星DOOM・ドラゲリオン》が近付くため、墓地利用デッキでありながら墓地対策にある程度耐性があるのは見逃せないところ。《アーテル・ゴルギーニ》からの大量墓地肥やしで即座にリカバリーしたり、事前に落ちたメタクリーチャーを蘇生して時間を稼いだりと動きの柔軟性も抜群なのも嬉しい。  そしてこのデッキに最大の特異性をもたらしているのが、《流星のガイアッシュ・カイザー》だ。

 相手のムーブに乗じて踏み倒すのはもちろん、マナが伸びるこのデッキであれば素出しも簡単。こうして出てくれば、「ドローでリソース供給」「攻撃ロックで時間稼ぎ」そして「大量軽減で《超神星DOOM・ドラゲリオン》《終末縫合王 ザ=キラー・キーナリー》を高速展開」といった莫大な利益を余すところなく享受できる。デュエマ史上でも、ここまで上手くこのカードを運用できるデッキはそうそうないのではないだろうか?

 ややスピードが遅く受けが薄めという明確な弱点こそあれど、その実力は十分。殿堂改定後のコンボデッキの代表格として、その存在を常に意識する必要はありそうだ。

光水火ゴスペル

 同じく新環境のコンボデッキの代表となるのが、『邪神と水晶の華』の新カードで成立した【光水火ゴスペル】。こちらは速度重視の「純正コンボデッキ」といった趣だ。

 多数採用された手札入れ替えでキーパーツを掘りつつ墓地に呪文を落とし、コスト軽減された《水晶の王 ゴスペル》《キリモミ・ヤマアラシ》でスピードアタッカーを付与して巨大呪文を叩き付ける……というシンプルな動きながら、その決定力は絶大。

 何より強いのが、大量の手札入れ替え呪文が「コンボパーツを引き入れる」「《水晶の王 ゴスペル》の軽減を進める」というふたつの役割を両立できること。これにより、2ターン目と3ターン目に手札入れ替え呪文を使うだけで4ターン目《水晶の王 ゴスペル》+《キリモミ・ヤマアラシ》に手が届くという安定感と再現性をもたらしている。  踏み倒す呪文には大きく分けてゼニス・アンノウンを呼ぶ《水晶の祈り / クリスタル・ドゥーム》の呪文側とドルスザクを呼ぶ《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》の2パターンがあるが、現在では確実な追加ターン&《頂上混成 ガリュディアス・モモミーズ’22》による詰めと99コストカードを絡めた《ゴゴゴ・Cho絶・ラッシュ》による受けを実現できる後者がやや優勢。

 墓地対策や呪文メタなど多数のメタが刺さるという弱点こそあれ、殿堂入りカードの《ラッキー・ダーツ》《ドリル・スコール》等を絡めた上振れも存在するなど唯一性のある立ち位置を確保していると言えるだろう。

その他有力デッキ

 ここまで主要なデッキを紹介してきたが、もちろんオリジナル環境で活躍するデッキはこれだけにとどまらない。

 ここからは、手短ではあるがこれらのデッキにも劣らない実力を持つデッキを紹介していきたい。  ビートダウンデッキ=【水火マジック】という構図に待ったをかけるのが、【水闇火バイク】。

 【バイク】といえば侵略による速攻…というイメージ通り、《覇帝なき侵略 レッドゾーンF》《禁断の轟速 ブラックゾーン》の多重侵略に《龍装者 バルチュリス》を絡めての受け封殺&致死打点形成ギミックを得意とするデッキだが、もちろんそれだけではない。

 《影速 ザ・トリッパー》《異端流し オニカマス》といったメタクリーチャーや《終末の時計 ザ・クロック》《忍蛇の聖沌 c0br4》といった受け札により、ゲームレンジを引き延ばしても十分に戦えるのも大きな魅力だ。

 アドバンスと違って《禁断 ~封印されしX~》こそないものの、「序盤から攻めつつ、シールドで受けて切り返す」というムーブはそのままこちらでも通用する。

 (バイクと言いつつ4輪の)《アーテル・ゴルギーニ》によるリソース勝負や《奇天烈 シャッフ》によるロックなどの搦め手も豊富に持つ器用さも見逃せないところだ。  アドバンスでも活躍する【光自然巨大天門】だが、オリジナルにおいても独自の強みを持って活躍中だ。

 《巨大設計図》《支配の精霊ペルフェクト / ギャラクシー・チャージャー》の呪文側という超強力なドローソースから、4ターン目の《星門の精霊アケルナル / スターゲイズ・ゲート》の呪文側→《闘門の精霊ウェルキウス》からの妨害持ちブロッカー連打ムーブは、それだけで多くのデッキを完全否定し得る。

 もちろん《ヘブンズ・ゲート》《水雲の聖沌 5u170n》という「踏ませたら勝つ」トリガーの存在により、ビートダウンに対しても強い圧力をかけていけるのも見逃せない。

 また、現環境においては《闘門の精霊ウェルキウス》から出てくる《∞龍 ゲンムエンペラー》の威力は絶大。高速展開に成功すれば5コスト以下のカードをカギとする【水火マジック】や各種【アビス】はもちろん、殆どのデッキが機能不全に陥るだろう。  最後に紹介するのは、新たに登場した無限ループデッキこと【マトリクスループ】。

 《アーテル・ゴルギーニ》《叡智の聖騎士 スクアーロ/エナジー・ライト》のクリーチャー側、《終斗の閃き マトリクス》《緊急再誕》などを絡めた複雑なループの果てに《終斗の閃き マトリクス》の呪文踏み倒し効果を無限にストックし、≪水晶の祈り≫を相手に無限に使って勝利に繋げるこのデッキ。

 それぞれのパーツが手札補充や墓地肥やし、呪文踏み倒しなどを兼ねていることから見た目以上に安定性が高く、おおむね5ターン目にはあらゆる受けやメタの誘発を無視してフィニッシュできる……というのは他にはない利点だ。

 最大の難点は、やはりそのスピード。こちらが動き出す5ターン目までに容易に勝負を決め得るビートダウンにはどうしても分が悪く、それ以外の相手にもデッキタイプがバレたとたんに決着を急がれて敗北……というパターンも想像し得る。

 得意不得意がはっきりしているデッキであるので、使用するには環境読みが重要になりそうだ。

おわりに

 殿堂改定を経て、現在のオリジナル環境はさらに混迷を深めている。

 強いて纏めるならば、【水火マジック】のようなビートダウンを【アビス】や【水闇COMPLEX】のような受けの強いデッキが狩り、それらの受けを突破して勝ちうるコンボデッキをまたビートダウンが狩る……という三すくみが発生していると言えるだろうか。

 また、打撃を受けたはずの【フィオナアカシック】や【水闇自然ジャオウガ】などについてもリペア構築の研究が進んでおり、環境への適応次第では復活の可能性も十分考えられる。加えて、【キリコグラスパー】などの一時環境を引いていたデッキが再び姿を現しつつあるなど、メタ外からの刺客の登場も否定できない。

 さらに、環境を読み切った末に誰も知らない秘蔵のソリューションデッキを持ち込むプレイヤーがいるパターンすら考えられる。環境に堪えうる新デッキの開発は困難ではあるが、少人数で特定のデッキに固まりがちな全国大会環境において、一般的なメタゲームを完全に破壊し得るメリットは絶大だ。

 こういった群雄割拠の環境だからこそ、強豪プレイヤーがどのデッキを相棒に選ぶか、またどんなチューンを施すかが気になるところだ。



 一年に一度しか見られない、強者のみの手で形作られる小さく煮詰まった環境。それが、全国大会という場なのだ。

 それぞれのプレイヤーが何を考えてそのデッキを選んだか、そのカードを採用したかなど、今から開催を楽しみにしつつ、筆を置かせていただきたい。

 この記事が、読者諸賢が日本一決定戦当日の生配信やテキストカバレージをご覧になる際の一助となれば幸いである。

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