全国大会2024 決勝戦:デデンネ vs. リノグレ
ライター:原田 武(たけじょー)
撮影:瀬尾 亜沙子
2002年・第3弾「超戦士襲撃」での初登場以降、デュエマの歴史と共に歩んできた古参種族たるジャイアントは、2023年度の「アビス・レボリューション」篇において幾度目かのフィーチャーを受け環境へと進出。
豊富な妨害クリーチャー。マッハファイターによる地上戦。一足飛びの展開を可能にするメクレイドと革命チェンジ。定期的に新カードで強化されたことや新殿堂レギュレーション施行による追い風も受け、今大会でも多大な存在感を発揮した。
そして、迎えた決勝での同型戦。伸ばした腕は時間を超えて、最高峰の決戦にまで届いたのである。
そんな【ジャイアント】に対し、人一倍の想いを持つのがリノグレ。57名の参加者の中から、決勝戦に駒を進めた片割れだ。
リノグレ「ここまで連れてきてもらったので、勝たせてあげたいんですよ」
リノグレは北海道エリア予選を優勝し、今大会への出場権を獲得したプレイヤーだ。店舗予選、エリア予選ともに使用は【ジャイアント】。今日この日の使用デッキもアドバンス・オリジナル共に【ジャイアント】。正しく一蓮托生と言える。
リノグレ「その後出たCSとかでは実は勝ちきれなくて、(本戦)一没一没みたいな感じではあったんですけど」
デデンネ「わかるー。そういうとこありますよね」
リノグレ「でも、全国って滅多に出れないじゃないですか。好きなもの使おうって……」
デデンネ「めっちゃわかる。同じです同じです」
3位決定戦の決着を待つ即席の控室で、にこにこと相槌を打つデデンネ。彼こそが、ここまで勝ち抜いてきたもう一人の選手にして、もう一人の【ジャイアント】使用者である。
デデンネ「このデッキ、のすけさんに教わって。凄い自信あったのに、さっき外出たらありえん怒られました(笑)プレイミスってたみたいです」
DMGP8thDAY2、優勝。そして時空を超えてのデュエプレグランプリ2024優勝。既に輝かしい二つのタイトルを持つデデンネは、目前に3冠を見据えながらも自分のペースを崩さない。大舞台には慣れている。
一方のリノグレはやはりまだ落ち着かないのか、会話の合間で時折左手に目を落とす。軽く握りこみ、また開く。それを二度、三度繰り返す。何かを確かめるかのように。
デデンネ「いやでも、カード(《悪魔世界ワルドバロム》)貰えるのは嬉しいな……そうか、これで2枚目か」
かつて勝ち取ったGP版《超戦龍覇 モルトNEXT》を思い出したのだろう。そうデデンネが漏らすと、向き合って座るリノグレが呟いた。
リノグレ「雲の上の話って感じですね……」
いやいやもうすぐそこですよ、と声をかけようとして、はたと気づく。そう、もうすぐだ。
もうすぐ、決まるのだ。最強が。
程なくして3位決定戦が終わり、両者は席を立った。

願いを込めて、シャッフルをする。
祈りとともに、シールドを展開。
魂を託して、カードを5枚引く。
幾千幾万、否、何億何兆と繰り返されてきた手順が終わる。全ての準備は整った。
これが2024年度デュエル・マスターズの終極地点。
思いを果たすのは、デデンネか、リノグレか。
Game1
先攻:デデンネ【ジャイアント】ミラーマッチのカギを握るのは、《キャディ・ビートル》と《銀河竜 ゴルファンタジスタ》という2種類のクリーチャーだ。


いずれも相手より先に設置できれば大きなリードとなる。そしてこの試合で先んじたのはリノグレだった。2ターン目までチャージのみのデデンネに対し、リノグレは《キャディ・ビートル》を最速で着地させる。
この時、デデンネが取るべき対処法は3つ。除去するか、《キャディ・ビートル》を出し返すか、マナ加速で能力を実質無効化することだ。手札を減らさずマナを伸ばす手段として、デデンネは《豊潤フォージュン》を採用していた。
だが、いずれも引けていない。3ターン目もチャージのみでターンを終える、デデンネとしてはかなり厳しい展開だ。
一方のリノグレは“持って”いる。2枚目の《キャディ・ビートル》を投下し、召喚酔いの解けた1体目を攻撃させて《チアスペース アカネ》に革命チェンジ。1点を通す。
デデンネは遅まきながらも《とこしえの超人》を立ててターンを終えるが、順調に飛ばすリノグレにはもはや的でしかない。《アシステスト・シネラリア》→《爆翠月 アカネ》と繋ぎ、《とこしえの超人》を攻撃。《チアスペース アカネ》にチェンジしながら討ち取る。

これにて《キャディ・ビートル》+《銀河竜 ゴルファンタジスタ》with《アシステスト・シネラリア》の布陣がリノグレの元に完成。
デデンネとしては、なんとしてもここで《蒼神龍トライクラブ・トライショット》をトリガーさせなくてはならない。

こうした場面を想定して、デデンネは《蒼神龍トライクラブ・トライショット》を3枚と多めに採用している。人事は尽くしているのだ。だからあとは、踏むか踏まないか。
デデンネ「……ないです」
果たして天命は訪れず。ターンは返ってきたものの、動けない《チアスペース アカネ》を出すのみに留まる。
再度リノグレにターンが渡ると、最早彼はためらわない。《アシステスト・シネラリア》で最後のシールドをブレイクし、《銀河竜 ゴルファンタジスタ》でまずは一本先制。
デデンネ 0-1 リノグレ
デデンネの動きが芳しくなかった。リノグレはきちんとやりたい動きを通せた。結果だけを見れば、そうも捉えられるかもしれない。
だが、違う。偶然に生まれた一手分の有利を勝ちへと昇華させたのは、リノグレの技術と意志だからだ。
【ジャイアント】というデッキはとかく選択肢が多い。それは時に、甘美な誘惑となって使用者を惑わせる。
《同期の妖精 / ド浮きの動悸》を添えた方が安心かもしれない。《アシステスト・シネラリア》は1体で足りるだろうか。《完璧妖精マリニャンX》なら、《蒼神龍トライクラブ・トライショット》もケアできるのでは?―――と。
無論、その囁きに従う選択肢もある。そしてそのために勝ちを拾うこともあるだろう。だが、その僅かな一手の差が逆転を生むことも往々にしてある。それがデュエル・マスターズなのだ。
だからこそ、状況を見極める技術と、自身の選択に賭ける意志が必要となる。
リノグレは、それらを身に着けたからこそここに立っている。勝負師にとって不可欠な才を、おそらくは【ジャイアント】と歩んできた道程によって。
GAME2
先攻:デデンネまたしても先に動いたのはリノグレ、それも後手2ターン目《キャディ・ビートル》という最上に近い形のものだ。

何が何でもマナを伸ばす。そんな意思が漏れ聞こえる執念のプレイである。これもまた、一朝一夕に身につく判断ではない。これに対しリノグレは自らも《学識妖精サイクリル》でマナを増やし追いすがる。
なんとか5マナ域に先んじたデデンネは《五番龍 レイクポーチャー ParZero》を召喚、リソースの回復を図る。《爆翠月 アカネ》と《アシステスト・シネラリア》を拾い、リノグレのクリーチャーには触らずターンを渡す。
リノグレ「いや、どうするか……」
ここでリノグレは長考。着地済みの《五番龍 レイクポーチャー ParZero》には触れられない。マナが伸びるか《キャディ・ビートル》がどけば革命チェンジが飛んでくるだろう。既にデデンネのマナは5枚、危険水域である。
今一度、手札に目を落とす。鋭い目線が盤面を駆ける。足りないのは、わずかに1枚のピース。進むか、退くか。
―――であれば、前へ行く。それが彼の選択であり、意志だった。
まずは《チアスペース アカネ》をチャージ。これは多色カードなのでタップして置かれ、使用可能なマナは4。3コスト《アシステスト・シネラリア》。残るマナは1。右手を山札に伸ばす。
デックトップは《同期の妖精 / ド浮きの動悸》。リノグレが求めていた最後のピース……「2コストのジャイアント」に他ならない!
デッキが、応えた。《アシステスト・シネラリア》によって1コストで≪同期の妖精≫。これで場にジャイアントが4枚。序盤から懐に抱えておいた《終の怒流牙 ドルゲユキムラ》が躍り出る。

今度は《キャディ・ビートル》《アシステスト・シネラリア》のみならず≪同期の妖精≫まで添えてのT・ブレイク。起点を失う訳にはいかないデデンネはブロックせず、逆転のトリガーは……なし。
ここでリノグレはターン終了。デデンネにターンが渡る。ほぼ完璧に近い状態のリノグレの手勢を前に、それでも彼は諦めない。首をかしげて考える、考える、考える。負けられないのだ。

これは《キャディ・ビートル》効果でマナに送還されてしまうが、それこそがデデンネの狙い。これでマナゾーンのカードは7枚。《五番龍 レイクポーチャー ParZero》で《銀河竜 ゴルファンタジスタ》に攻撃、革命チェンジ《銀河竜 ゴルファンタジスタ》!
《銀河竜 ゴルファンタジスタ》同士の正面衝突。これでデデンネはリノグレに《アシステスト・シネラリア》のウルトラ・セイバー使用を半ば強制させた形だ。無論、デデンネも《アシステスト・シネラリア》で守る。
これで、ターン終了。《キャディ・ビートル》は越えた。《銀河竜 ゴルファンタジスタ》は出した。《アシステスト・シネラリア》は排除した。デデンネはこの上なく的確なプレイで、考え得る限りの手は尽くした。
だから、あとはGAME 1と同じ。踏むか踏まないか、だ。
デデンネのシールドを守るブロッカーはいない。残り枚数は2枚。《銀河竜 ゴルファンタジスタ》が健在であれば、《終の怒流牙 ドルゲユキムラ》で打点を増やすことはできない。
リノグレのクリーチャーは《銀河竜 ゴルファンタジスタ》《キャディ・ビートル》≪同期の妖精≫の3体。見かけ上は致死打点が揃っている。≪ド浮きの動悸≫とG・ストライクは余程のことがなければ≪同期の妖精≫が引き受けてくれる。
唯一ひっくり返り得るのは……《蒼神龍トライクラブ・トライショット》。これも、先刻と変わらない。だが仮にこれを踏み抜いた場合、リノグレの盤面は壊滅する。デデンネの《銀河竜 ゴルファンタジスタ》を超えるチャンスが、果たして来るかどうか。
S・トリガーの有無は神の領域である。人の手では変えられない。なにかが変わり得るとしたら、あとはリノグレの選択だけだ。たっぷりと時間をとって考える。進むか、退くか。
GAME1では、相手の機先を制して《銀河竜 ゴルファンタジスタ》を通し、寄り切った。
GAME2では、デックトップとS・トリガーの2つの関門を潜り抜け、主導権を握った。
いずれも己の技術を信じ、意志を貫いたからこその選択だった。ならば。

リノグレ「アタック入ります」
左へ90°、傾けて……
リノグレ「プレイヤー行きます」
デデンネ「通ります」
2枚のシールドをデデンネが開く。そして。

リノグレの意志が、栄冠に届いた瞬間だった。

Champion:リノグレ
にわか「握手、しとこうと思って」
撤収が進む会場で、3位に入賞したにわかがデデンネの下を訪れていた。
にわか「ほんとはもっと上でするつもりだったんやけどな」
デデンネ「な」
笑って、二人は手を差し出した。互いの健闘を称えるために。
デデンネ「まだ3冠は早かったですね」
そう言うデデンネの瞳は、決勝に臨む前よりも輝きを増していた。
また戦おう。また強くなろう。その澄み切った意志は、彼をさらに強くしてくれるに違いない。

リノグレ「やっと現実味が出てきました。勝ったんだなって」
トロフィーと楯を受けとったリノグレはそう言ってはにかんだ。
彼は終始謙虚な姿勢を崩さなかった。【ジャイアント】に連れてきてもらった―――その言葉は、きっと本心なのだろう。
だが、今はどうか誇ってほしい。この結果は、リノグレと【ジャイアント】のどちらが欠けても成し得なかったものなのだから。

彼の名はリノグレ。復活したエリア予選を勝ち上がり、北の大地に最強の称号を持ち帰った。その内に卓越した技能と強靭な意思を備え、その傍らには豪放かつ熟達の巨人たちの姿があった。
戦いは栄光となる。栄光は歴史に刻まれる。歴史はやがて、未来を導く。
そして今、2025年度が始まる。
最高の舞台が―――デュエル・マスターズが、君たちを待っている。
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