全国大会2024 準々決勝:あーるん。 vs. Chatty
ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影:坂井 郁弥
57名いた強豪も、予選6回戦を終えてついに8名にまで絞られた。ここからのオリジナル・フォーマットでの2本先取で行われるトーナメント3回戦で、ついに今年度の日本一が決まる。
その8名のデッキの内訳は、「ジャイアント」が3名。「ファイアー・バード」が2名。「火水闇覇覇覇」、「水闇自然マルル(インターステラ型)」、「火光自然ボルシャック」がそれぞれ1名ずつというもの。前週の入賞結果が上から「ファイアー・バード」「水闇自然マルル」「ドリームメイト」という状態だったことを考えると、前週の段階で4番手にはつけていたとはいえ「ファイアー・バード」を押しのけての「ジャイアント」の躍進はかなり特筆すべきトピックと言えるだろう。
関東エリア予選を突破して出場権を獲得したChattyは、そんな「ジャイアント」をアドバンス・オリジナルの両方で使用し、オリジナルでは見事三連勝してトップ8にまで勝ち進んだ。エリア予選で決勝カバレージを担当した筆者に「お久しぶりです、関東エリア予選以来ですね」と笑顔で声をかけてくれるなど、大舞台でも余裕が窺える。
一方、対するあーるん。はDMGP2024-1st Day1(アドバンス)で「火水マジック」を使用しGP初出場ながら準優勝したという実績の持ち主。今回はつい2週間前に発売したばかりの「異次元の超獣使い」で登場した新カード《偽りの月 インターステラ》をフィーチャーした話題の新デッキ「水闇自然マルル(インターステラ型)」を使用し、アドバンスの「モルトDREAM」で開幕3-0を飾った勢いもあってトップ8入りを果たした。
かたや大型大会での華々しい活躍、かたや大型大会での実績はなくエリア予選からの叩き上げ。さらにデュエマ歴もおそらく2年に満たないであろうあーるん。に対してChattyは5年以上と対照的だが、DMPランキングの登録はあーるん。は群馬、Chattyは茨城と、ともに北関東を主戦場とする点だけは共通している。そして今回のトップ8にはデデンネ、にわか、Rikky、ユウキング/わいきんといった、精力的に都市部のCSに参加することでDMPランキングで権利を獲得した強豪が名を連ねている一方で、北海道エリア予選を抜けたリノグレ、中国・四国エリア予選を抜けた3can/えもとも、そしてこの2人と、ランキング勢と地方勢とがトップ8の席を二分した格好となっている。その点において、今回の結果を踏まえて今後の競技シーンの中核を担っていくことになるかもしれない期待の若手同士の対決と見ることもできよう。
57名分の熱気で密度が濃かった部屋も49名が既に退出し、さらにフィーチャーエリアにRikkyとリノグレの2名が向かったことで、6名で広々と使用できている。グランプリやエリア予選のトップ8などでも見られる少し寒々しい光景はしかし、その場に居合わせることができたというだけで名誉あることだ。
だが、何のためにここまで勝ち上がったのか。
予選を突破するためだけではない。深夜に及ぶ調整や友人との議論……そのすべては、日本一という称号を得るため。ならば、足りない。トップ8では、まだまだ足りないのだ。

Game 1
予選2位通過で先攻となったあーるん。が《偽りの月 インターステラ》《フェアリー・Re:ライフ》に《配球の超人 / 記録的剛球》が3枚というバランスの悪い手札を見て「えー……」とあからさまに悩みつつ《偽りの月 インターステラ》をマナチャージしてターンを返すと、返すChattyのマナチャージは《銀河竜 ゴルファンタジスタ》。互いにデッキの顔とも言えるカードを見せたことで、デッキの自己紹介が済んだ形となった立ち上がり。そのままあーるん。は《フェアリー・Re:ライフ》チャージから《配球の超人 / 記録的剛球》、Chattyは《とこしえの超人》チャージから《同期の妖精 / ド浮きの動悸》を送り出して双方ベストムーブ、デッキの温まり具合は十分だ。そのままあーるん。が《天災 デドダム》を送り出して《ブレイン・スラッシュ》を墓地に置きつつマナ加速を続けるが、返すChattyは《キャディ・ビートル》をチャージすると、《同期の妖精 / ド浮きの動悸》でプレイヤーに攻撃時《チアスペース アカネ》へと「革命チェンジ」!。「メガ・ラスト・バースト」使用で《天災 デドダム》を手札に戻しつつ、自身は手札とマナを拡充してからシールドを1枚ブレイク。《偽りの月 インターステラ》と《ブレイン・スラッシュ》が見えたことで《流星のガイアッシュ・カイザー》はないだろう、さらに《天災 デドダム》がいなければ《ブレイン・スラッシュ》も大した脅威にならないだろうという的確なプレイで、序盤から積極的に攻める姿勢を見せる。

Chatty「なるほどー……確認します」
これにより、あーるん。のデッキ内容だけが一方的にほぼすべて公開情報となってしまう。それだけでなく、Chattyの視点でも残る4枚のシールドの中に《天災 デドダム》が1枚以上含まれていることまで確定したのだ。
あーるん。「いやー……《ティンパニ=シンバリー》が出て……」
Chatty「……(破壊できるのは)2体目が出たときですよね」
あーるん。「……何も効果がないので、このままターン終了します」

そしてなおも前のターンから残っていた《チアスペース アカネ》でプレイヤーへの攻撃時、《銀河竜 ゴルファンタジスタ》へと「革命チェンジ」してT・ブレイク!

Chatty「いないです」
「G・ストライク」も、ターンを分割して攻撃してくる「ジャイアント」軍団相手には機能しない。
Chattyの盤面は、「ジャストダイバー」の《五番龍 レイクポーチャー ParZero》に加え、《銀河竜 ゴルファンタジスタ》と2体の《超重竜 ゴルファンタジスタ》。4体横並びでありながらどれもがパワー6000以上であり、《飛翔龍 5000VT》が全く効かないという状況。
あーるん。「(《銀河竜 ゴルファンタジスタ》は)出たとき殴れないんでしたっけ?」」
Chatty「そうですね」
あーるん。の残るシールドはわずかに1枚。前のターンにマナ加速に失敗したことで、このターンにマナチャージしたとしても7マナ。だが7マナといえばの頼みの綱の《偽りの月 インターステラ》も、攻撃できなければ呪文を1回唱えただけで終わってしまう。もはやあーるん。に、反撃の手段は残されていないように思われた。
だが、あーるん。の目はまだ死んではいなかった。繰り出したのは、《フェアリー・ギフト》からの《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》!

それでも、Chattyが《銀河竜 ゴルファンタジスタ》をバトルゾーンに残す選択をしたことで攻撃には向かえない。再び、Chattyにターンが返ってくる。
ここでChattyは即座に《五番龍 レイクポーチャー ParZero》をチャージすると、《チアスカーレット アカネ》を召喚。そしてマナ召喚の能力でマナから《とこしえの超人》を出してから、「マッハファイター」攻撃時に《超重竜 ゴルファンタジスタ》!《五番龍 レイクポーチャー ParZero》をマナから呼び出しつつ《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》を打ち取ると、なおも《銀河竜 ゴルファンタジスタ》で最後のシールドをブレイク……通る!
気づけばあーるん。にとっての状況は、前のターンとほとんど変わっていない。変わったことといえば《超重竜 ゴルファンタジスタ》が1体減ったことと、シールドが0枚になったことくらいだ。
熱い粘りは見せたものの、結局あーるん。にできることは、《天災 デドダム》《修羅の死神フミシュナ / 「この先は修羅の道ぞ」》と召喚してから《配球の超人 / 記録的剛球》を唱え、下駄を預けることくらいだった。
Chatty「終極宣言(ファイナル・エンド)なしで……《同期の妖精 / ド浮きの動悸》召喚、ダイレクトアタックで」
あーるん。「通ります」
Chatty「ありがとうございました」
あーるん。 0-1 Chatty
Chatty「……すごいことが起きましたね」
あーるん。「いやーきついっすね……全部デッキ公開するとは」
Chatty「今のはすごいなー……」
順位先攻から2ターン目加速、3ターン目《天災 デドダム》までは完璧な動きだった。それがなぜ多色3枚で一手詰まった上に「ヨビニオン」失敗という、この大一番で最も起きて欲しくない事象につながったのか。あーるん。としては不服で仕方がないだろう……だがそれでも幸運なのは、これが準々決勝であること。2本先取は、1ゲーム取られたとしてもまだ負けではない。
だから、いま必要なのは冷静さだ……あーるん。は即座に気持ちを切り替えた様子で、次のゲームに臨む。
Game 2
《ブレイン・スラッシュ》チャージからの2ターン目のドローを見たあーるん。が思わず息を飲む。引き込んだのは初手5枚になかった加速札、《フェアリー・Re:ライフ》。まだ風は死んでいない……《ヨビニオン・マルル》を埋めながら唱え、ターンを返す。するとChattyは《キャディ・ビートル》を召喚してターンエンド。マナ加速ベースの「水闇自然マルル」には効かないが、「革命チェンジ」元としては必要だ。だが3ターン目、《飛翔龍 5000VT》をチャージしたあーるん。が早くも送り出したのは《ヨビニオン・マルル》!

あーるん。「……いやーさすがに……」
Chatty「ないと思いますよ、どうぞ(笑)」
はたして、11枚というちょっと多い枚数をめくりながらも無事《天災 デドダム》がめくれ、「ヨビニオン」成功。
あーるん。「一安心……」
一方、返すChattyの後攻3ターン目のアクションは《豊潤フォージュン》のみ。
そしてこれを見たあーるん。は、マナチャージからノータイムで《CRYMAX ジャオウガ》を送り出す!

あーるん。 1-1 Chatty
Chatty「……それはつえー」
あーるん。「いやーでもさっきが下ブレすぎた……」
Chatty「いやー……ようやく先攻か」
ここまででわかったことは、「ジャイアント」が「水闇自然マルル」の動きを抑制できるのは登場ターンの攻撃を封じられる《銀河竜 ゴルファンタジスタ》の存在が大きい、ということだ。それゆえにその着地が間に合わない先攻でのブン回りは、Chattyとしてはどの道仕方ないと割り切らざるをえない。そう考えると2連勝で決めたかったとはいえ、本来3ゲーム目を後攻でまくらざるをえないところを1ゲーム目で拾えていたのは、Chattyにとってはそれでも僥倖と言えるだろう。
あとは次のゲーム、どちらが上を行くか。ラストゲームが、Chattyの先攻で始まる。
Game 3
《チアスカーレット アカネ》《同期の妖精 / ド浮きの動悸》《とこしえの超人》とチャージしての3ターン目の《豊潤フォージュン》が初動となったChattyに対し、あーるん。は順調に2ターン目《配球の超人 / 記録的剛球》からの3ターン目《ヨビニオン・マルル》で(またしてもめくれたのが14枚目で「やばい……」と呟きながらも)《天災 デドダム》を呼び出し、「2→4→7」の構えを見せる。だが、それこそChattyが狙った通りの展開だった。《チアスペース アカネ》を送り出すと、《天災 デドダム》へ攻撃時に《超重竜 ゴルファンタジスタ》へと「革命チェンジ」。さらに登場時に《チアスカーレット アカネ》をマナから呼び出すと、続けて《チアスカーレット アカネ》で《ヨビニオン・マルル》へと攻撃時に2体目の《超重竜 ゴルファンタジスタ》へと「革命チェンジ」。今度は攻撃キャンセルして「メクレイド」で《アシステスト・シネラリア》を着地させつつ、待機していた効果でマナから《チアスペース アカネ》を呼び出す。相手のクリーチャーを踏み台にしての大連鎖……これが「ジャイアント」の剛流振の真骨頂だ。
そしてさらに《チアスカーレット アカネ》で再び《ヨビニオン・マルル》へと攻撃時、「革命チェンジ」《銀河竜 ゴルファンタジスタ》!

Chatty「6枚あります」
他方、あーるん。は苦し気に悩みながら「いやどっち……」と小さく呟く。それでも意を決して《ティンパニ=シンバリー》を送り出すと、《天災 デドダム》でマナを伸ばしつつ《飛翔龍 5000VT》でこれ以上の展開を抑制する。
だがそれは、《超重竜 ゴルファンタジスタ》の「終極宣言」を許すということでもある。マナ加速のみだが6マナブースト、うち2枚タップインとはいえ一気にリソース差が開いていく。あーるん。は両手を合わせ、ターンが返ってくることをひたすら祈る。
とはいえ、このターン《飛翔龍 5000VT》の効果がかかってしまったChattyもできることが限られている。《チアスカーレット アカネ》を召喚しつつ、《同期の妖精 / ド浮きの動悸》の呪文側で《ティンパニ=シンバリー》を手札に戻し、「マッハファイター」で《天災 デドダム》を処理するのみ。
はたして、無事ターンが返ってきたあーるん。は7マナをタップする……そして召喚したのは、《偽りの月 インターステラ》!

一方、手札はあるのにできる動きが少ないChattyはここで《五番龍 レイクポーチャー ParZero》を召喚。そろそろ山札は一周しているはずだが、目当ての何かが見つからないのか……やむなく効果で《覚醒連結 XXDDZ》の「EXライフ」だけは剥がしつつ、さらに《チアスカーレット アカネ》を出して「マッハファイター」で《覚醒連結 XXDDZ》へと攻撃時に《銀河竜 ゴルファンタジスタ》へと「革命チェンジ」、攻撃キャンセルして「メクレイド」で《五番龍 レイクポーチャー ParZero》の2体目を立てる。
だが返すターン、広がりきった盤面に突き刺さる《ブレイン・スラッシュ》からの《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》!
《五番龍 レイクポーチャー ParZero》、手札2枚、シールド3枚を残して、Chattyがここまで積み上げてきたすべてが奪われてしまう。さらにみたび召喚された《飛翔龍 5000VT》が、万に一つの逆転可能性をもしっかりとケアをする。
あーるん。「アタックに入ります」
Chattyに残されたたった3枚のシールドでは、あーるん。のクリーチャーの総攻撃を受け止めきれるはずもないのだった。
あーるん。 2-1 Chatty

あーるん。「こっちはひたすら《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》を探す試合だったんで……ジャイアント初めて当たったんで、いちいちカード確認しちゃってすみません」
今年度のChattyの日本一決定戦は終わった。だが、的確なデッキ選択と、ギリギリの戦いの中でも勝ち筋を見失わない精妙なプレイングを見ても、何か一つ歯車が違えば日本一に十分届きえたことは言うまでもない。
今回の敗戦を糧に今度はより大物(ジャイアント)になって、さらに上のステージでの活躍を見せてくれるに違いない。
Chatty「悔しい……!」
Winner: あーるん。

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