全国大会2024 準々決勝:Rikky vs. リノグレ
ライター:川﨑 大輔
撮影:瀬尾 亜沙子

僕にとって、この全国大会がはじまったのはDMGP2024-1stだった。
DMGP2024-1stの決勝戦が終わった後に、今はFTGに所属しているあーくんが「今度勝ったら(カバレージを)書いてくれると言ってたのでGPの決勝じゃ足らないんですか?」と僕に言ってきた。その時、僕はあーくんに「今回全国の権利取ったんだから、全国大会でトップ8に入ったら書くよ」と答えた。最近じゃ自分でマッチカバレージを書くことはあまりないので、トップ8で自分がマッチカバレージを書く段取りを始める、というのが僕にとってのこの全国大会の始まりだった。そういうわけで、僕は今ここに座っている。
Round 3が終わったころ、あーくんからLINEが来た。
あーくん「1-2でした、すみません」
それは仕方ない。勝負はどれだけ本気で臨んで勝ちたいと思っても、誰かが負ける。だから勝負は美しいし、だから、みんな勝負に本気になれるのだ。勝ちの価値が勝ちにないなら、戦いに意味を見出すことなんてできない。
そもそも、戦うことの価値なんて、どこまで行っても戦っている本人以外にはわからないものなのだ。
Rikkyにとってのこの全国大会のはじまりも、奇しくもDMGP2024-1stだったと思う。
「みんなとたたかえてよかった」
なんてすばらしいチーム名なんだろう。
Game 1

対するリノグレは《蒼神龍トライクラブ・トライショット》をチャージ。Rikkyが《冥土人形ヴァミリア・バレル》チャージで2ターン目をパスするのに対して、リノグレは《同期の妖精 / ド浮きの動悸》をプレイと絶好の2ターン目。
しかし、ここでRikkyはマッハファイターを戦略の中核に置くジャイアントにとって目の上のタンコブとなる《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》を実行……プレイする。これにはリノグレも「うわー」と一言。
とにかく≪ボン・キゴマイム≫が邪魔ではあり、自身のターンになっても「苦しいな……」とつぶやくリノグレだったが、《アシステスト・シネラリア》を召喚してターンエンド。≪ボン・キゴマイム≫は当然厳しいが、逆にそれさえどうにかなるならばむしろベストと言っていい展開。
その認識はRikkyにとっても同じ事。≪ボン・キゴマイム≫で押さえつけている間にジャオウガの得意とするリソース勝負からの終盤に繋げたいところ。《修羅の死神フミシュナ / 「この先は修羅の道ぞ」》を召喚してリノグレの手札を攻撃しつつ自身は手札を増やす。
ゲームは中盤戦に突入し、リノグレは《チアスペース アカネ》を召喚する。マッハファイターでの即時攻撃は≪ボン・キゴマイム≫で封じているものの、次のターンには《チアスペース アカネ》が何かしらのアクションをしてくる可能性があるので、その対応を問われる形となったRikky。このゲーム、最初の山場が訪れた。
リノグレのバトルゾーンには単体指定を吸い込む≪同期の妖精≫と、ウルトラ・セイバーを持つ《アシステスト・シネラリア》が並んでいるため、完全に盤面を処理しきることは難しい。また《飛翔龍 5000VT》を召喚したとしても≪同期の妖精≫がメガ・ラスト・バーストで≪ド浮きの動悸≫を使用し、楔となっている≪ボン・キゴマイム≫を手札に戻されてしまってむしろ相手が有利な展開を始めるきっかけとなってしまう可能性がある。
そこでRikkyが選択したのはやはり《飛翔龍 5000VT》。ただし《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》を先に追加しておくことで最低限のメタ(妨害)クリーチャーをキープした状態でターンを返すことに成功する。リノグレは《アシステスト・シネラリア》で《チアスペース アカネ》を守り、そして《同期の妖精 / ド浮きの動悸》によって≪ボン・キゴマイム≫を手札へと戻す。Rikkyとしてはできることをやり切った形であり、あとは、返しのリノグレのターンにビッグアクションがあるのかどうかを祈るのみ。
手札とマナを見て長考した結果、リノグレはマナゾーンから《完璧妖精マリニャンX》を召喚し、そのまま《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》へとマッハファイターでアタックする。Rikkyはこれを≪修羅の死神フミシュナ≫でブロックすると、リノグレからは続くアクションは無し。最低限の盤面を維持できたままターンが帰ってきたRikkyだったのだが……ここでRikkyも≪ボン・キゴマイム≫を召喚しつつ《完璧妖精マリニャンX》へと《飛翔龍 5000VT》で殴り返すだけという見た目以上のことは起こっていないターンとなる。互いにビッグアクションを決めたいターンに大きなアクションを起せないというもどかしい展開となる。
とはいえ≪ボン・キゴマイム≫をどうにかしなければ本領を発揮できないのはジャイアントを使用するリノグレの方。≪ボン・キゴマイム≫がいる限りは突然プレッシャーをかけてくるような動きをするのは難しく、ゆっくりとリソースを稼いで《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》につなぐという自分のゲームプランを維持できているRikkyの方が有利に見える盤面ではある。
「やはり、ジャイアントには≪ボン・キゴマイム≫が効く」と皆が思っていたところでチャージ後に6枚のマナを数えていたリノグレがプレイしたのは予想外のカード。

軽減されたマナから召喚されたのは《超重竜 ゴルファンタジスタ》。ギフトでコストのショートカットをしているものの、まともに表玄関を叩いて入ってきた《超重竜 ゴルファンタジスタ》に対して、真面目な《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》は迎え入れるしかない。
そして、突然ゴロリと盤面に置かれた《超重竜 ゴルファンタジスタ》が、「超重」の名に恥じない重圧をRikkyにかけてくる。
Rikkyのターンに《超重竜 ゴルファンタジスタ》に対応できなければ、終極宣言が発動し、無限に近いリソースがリノグレにもたらされてしまう。そうなっては、細かいリソースのやりとりで有利をつくるRikkyにとっては≪ボン・キゴマイム≫がいてもいなくても事実上の勝利宣言だ。追い詰められた形となったRikky。
だが、やられたらやりかえすべきだ。追い詰められたら、追い詰め返すしかない。

《学識妖精サイクリル》と《キャディ・ビートル》を墓地に送りつつ3枚となったシールドへと《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》がアタックする。墓地からは先ほどブロックした≪修羅の死神フミシュナ≫が復活してくる。
ここで≪ド浮きの動悸≫がトリガーしたリノグレは《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》を手札に戻すが、≪修羅の死神フミシュナ≫が最後のシールドをブレイクする。
祈る間もなくめくったシールドにトリガーはなく、《飛翔龍 5000VT》がダイレクトアタックを決める。
Rikky 1-0 リノグレ
Rikky「片目、コンタクトが外れそうなので、外してもいいですか?試合中に見えなくなると嫌なので」
急いでシャッフルするRikkyと対称的にリノグレはゆっくりとカードを並べ、シャッフルをする。
リノグレ「これ、今日最後のシャッフルになるかもしれないので」
シャッフルとは祈りだ。
全国大会までの数週間、内容を吟味し、自分にとって最高のデッキを持ち込んできているであろう両者。この40枚に関してできることはすべてやっている。全国大会はデッキ構築の段階ですでに始まっているのだ。
だが、大会の会場についた後はこの40枚に関してできることはすべて終わっている。
あとは、最高の手札が来てくれることを祈りながらシャッフルすることしかプレイヤーにはできない。
デュエル・マスターズとは対話と運のゲームだ。
できる限りのことをやり切ったデッキが最高の動きをしてくれるようにシャッフルしながら祈り、最善のプレイをした後に相手がそれ以上の選択肢を持っていないことを祈り、そして、最後にシールド・トリガーに祈る。
自分のできることをやり切っているからこそ、プレイヤーたちはゲーム中に何度も祈る。
ふたりはかみしめるようにデッキをシャッフルする。
Game 2

リノグレは《とこしえの超人》をチャージ、一方のRikkyは≪修羅の死神フミシュナ≫をチャージする。リノグレは再び2ターン目に《同期の妖精 / ド浮きの動悸》を召喚するが、今度はRikkyも2ターン目に《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》を召喚し、手を遅らせない。
《フェアリー・ギフト》チャージからの《アシステスト・シネラリア》召喚とGame 1に続いて最高の3ターン目の展開を見せるリノグレだったが、一方のRikkyは≪ボン・キゴマイム≫召喚とはいかず、《冥土人形ヴァミリア・バレル》を召喚する。

このターンに動くしかないリノグレだったが、ここでベストといえる《チアスペース アカネ》が召喚される。アカネの応援を防ぐ≪ボン・キゴマイム≫は存在しない。この盤面の季語はマッハファイターだ。
《チアスペース アカネ》で《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》や《飛翔龍 5000VT》を防ぐ《キャディ・ビートル》を追加すると、《冥土人形ヴァミリア・バレル》へとマッハファイターでアタックする。
《飛ベル津バサ「曲通風」》と《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》という2体のメタクリーチャーを盤面に送り出したRikkyだったが、わずかに首をひねる。手札の選択肢で出来ることは全てやり切った以上は、あとはここで出したメタクリーチャーが相手の手札と噛み合うことを祈るしかない。
しかし、祈りは届かず、リノグレが召喚したのは《チアスカーレット アカネ》。さらにマナゾーンから≪同期の妖精≫が召喚され、2体目の《キャディ・ビートル》が追加される。そして《チアスカーレット アカネ》が《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》にアタックしつつ《キャディ・ビートル》をマナゾーンに戻してメクレイド。《飛ベル津バサ「曲通風」》の効果で見れるのは山札の一番上だけだが、そこにいたのは《輝跡!シャイニングロード・マンティス / 輝跡の大地》。単純にこの盤面では打点の圧が強い。ことごとくRikkyのメタクリーチャーは機能させてもらえてない。
そして《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》が居なくなった状態で《チアスカーレット アカネ》がアタックし、《銀河竜 ゴルファンタジスタ》へと革命チェンジする。このブレイクで≪「この先は修羅の道ぞ」≫がトリガーするが、《アシステスト・シネラリア》のウルトラ・セイバーがあるので≪同期の妖精≫を2回選ぶしかない。
ターンが帰って来たものの、次のターンには過剰打点で詰められてしまう状況のRikky。しかし《キャディ・ビートル》がビッグアクションを防いでくる。
《アーテル・ゴルギーニ》を召喚し、《冥土人形ヴァミリア・バレル》と《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》を墓地から復活させるRikky。《冥土人形ヴァミリア・バレル》で《チアスペース アカネ》を手札に戻し捨てさせることに成功する。ギリギリの状況でRikkyはターンを返す。あとは祈るしかない。
《同期の妖精 / ド浮きの動悸》を召喚し、さらに《チアスカーレット アカネ》を追加するリノグレ。《チアスペース アカネ》のアタック時の効果で《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》へとアタックすると≪同期の妖精≫をマナゾーンに戻してメクレイド。《飛ベル津バサ「曲通風」》で1枚のみ見た山札のトップは《奇天烈 シャッフ》だったので、バトルゾーンに出すことはできない。
《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》を守るべくRikkyは《アーテル・ゴルギーニ》でブロック。
そして、《銀河竜 ゴルファンタジスタ》が最後の2枚のシールドをブレイク。あとはトリガー頼みとなるRikky。
Rikky「今度はさっきと逆ですね」
そして、Game 1と同じく最後のブレイクにトリガーはなかった。
リノグレ「まだシャッフルができる」
Rikky「どっちかにとっては今度こそラストシャッフルですね」
Rikky 1-1 リノグレ
再びシャッフルする権利を得たリノグレだったが、緊張からかシャッフルを失敗してしまう。
リノグレにとってのこの全国大会のはじまりは、全国大会の店舗予選であり、そしてエリア予選だった。
その決勝戦でリノグレが戦った相手は、Rikkyと同じく魔王軍所属の「北の覇王」セキボン。当時2ブロック最先端だった水晶マジックを使用するセキボン相手に、今日と同じようにジャイアントを使って、そして見事全国大会の権利を獲得した。リノグレはエリアも店舗もジャイアントで抜けている。リノグレにとってのこの全国大会はジャイアントとともにある。
ラウンドの合間に、実況のデッドマンが語る。
デッドマン「うわさによると、魔王軍はもう一人全国王者をチームメイトで欲しいらしいですよ」
僕も噂で魔王軍は「全員全国参加」を目標にしていたと聞いたことがあった。
Game 3

《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》をチャージするRikkyに対してリノグレは《とこしえの超人》をチャージ。そして、2ターン目にアクションが無かったRikkyに対してリノグレは三度2ターン目に≪同期の妖精≫を召喚する。
Rikky「手札、何枚ですか?」
このデッキで手札の枚数を確認するのならば出てくるクリーチャーは《冥土人形ヴァミリア・バレル》に決まっている。≪同期の妖精≫が手札に戻され、またもジャッジによるシャッフルが行われる。
Rikky「本日、2回目ですね」
ここで≪同期の妖精≫は落とされないが、Game 1で強烈なインパクトを与えた《フェアリー・ギフト》がディスカードされる。
Rikky「で、(≪ド浮きの動悸≫は)使いますか?」
リノグレ「(今のディスカードで)ちょっと、プランが……使いません」
《冥土人形ヴァミリア・バレル》を出され続けることを嫌ったのか……いや、それにしては不穏な様子で≪ド浮きの動悸≫を使用しないことを宣言したリノグレ。
リノグレ「先手後手ひっくり返す予定だったのに」
たしかに2マナのジャンプアップは先手後手をひっくり返すのに十分なパワーカードだ。だからこその殿堂カードなのである。
しかし、ここでリノグレ選手が召喚したカードは、十分に先手後手をひっくり返すカードだった。

スノー・フェアリー愛が生んだカードが、なぜかジャイアントだったことで、この《学識妖精サイクリル》は墓地から《フェアリー・ギフト》を回収しながら《チアスカーレット アカネ》へとチェンジし、併せて2枚のマナ加速でマナを5枚まで伸ばす。この攻撃先のために《冥土人形ヴァミリア・バレル》は残されていたのだ。
Rikkyは≪ボン・キゴマイム≫を召喚するが、一度ビッグアクションが決まってしまった後だけに一歩遅い感は否めない。
そして、リノグレにはマッハファイターを止められていてもビッグアクションを起こす秘密兵器がすでに手札にあることを観ている全員が知っている。
Game1に続いて《フェアリー・ギフト》からの《超重竜 ゴルファンタジスタ》。
そして今回は《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》がいないので、マナゾーンから《アシステスト・シネラリア》が呼び出され、そして残った1マナで≪同期の妖精≫が召喚されてしまう。
あと1ターン≪ボン・キゴマイム≫が早ければ……そんなことを言っても始まらない。目の前の選択肢で最善の行動をとるしかない。分身である《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》を召喚するには1マナ足りない。かなり追い詰められた格好となったRikkyは《アーテル・ゴルギーニ》を召喚すると、≪同期の妖精≫を除去しつつ墓地から《冥土人形ヴァミリア・バレル》を復活させる。
《冥土人形ヴァミリア・バレル》は《超重竜 ゴルファンタジスタ》を対象とするが、これは当然《アシステスト・シネラリア》に守られ盤面に残り、手札からは《チアスカーレット アカネ》が捨てられる。そして、≪ボン・キゴマイム≫がメガ・ラスト・バーストの≪ド浮きの動悸≫で手札に戻される。
そしてついに発動する終極宣言。リノグレのマナと手札が二倍となる。
≪同期の妖精≫《キャディ・ビートル》《学識妖精サイクリル》と召喚した上で、≪同期の妖精≫をタップし本日3種類目のアカネである《爆翠月 アカネ》を召喚したリノグレ。マナと手札が二倍なら、それは文字通りのやりたい放題チャンネルだ。
《爆翠月 アカネ》が《アーテル・ゴルギーニ》にアタックしつつ《超重竜 ゴルファンタジスタ》に革命チェンジ、Rikkyは《アーテル・ゴルギーニ》を保持するために《冥土人形ヴァミリア・バレル》を破壊する。
続いてリノグレは《チアスカーレット アカネ》でアタックしつつ《学識妖精サイクリル》をマナゾーンに戻し、メクレイドで《五番龍 レイクポーチャー ParZero》をバトルゾーンに。さらに《学識妖精サイクリル》の効果で≪同期の妖精≫を手札に戻すと、Rikkyの盤面を空にしてターンを終える。
絶望的な盤面をじっと見据えるRikky。だが、祈るにはまだ早い。祈れるのは自分のやれることを全てやったあとだけ。リソース差のゲームにならなくてもこのデッキは《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》から一気にゲームを終わらせることができる。リソース差が無限になったのならば、そのリソース差がゲームに影響が出ないうちに勝負を決めてしまえばいいのだ。
その逆転の盤面をどうやれば作れるか、そのあまりにも細いストーリーを見つけるために盤面をにらみ、そして実行する。
まずは《偽りの希望 鬼丸「終斗」》を召喚。バトルで≪同期の妖精≫を破壊すると、出しなおすマナが残っているのでリノグレがメガ・ラスト・バーストを宣言せず。バトルに勝ったのでドローすると、残った3マナで《冥土人形ヴァミリア・バレル》を召喚するともっとも目障りな《キャディ・ビートル》を手札に戻し、ランダムディスカード。捨てられたのは《キャディ・ビートル》。
そして《偽りの希望 鬼丸「終斗」》で《チアスカーレット アカネ》にアタックすると《五番龍 レイクポーチャー ParZero》がブロックして、《偽りの希望 鬼丸「終斗」》がまたもドローをRikkyにもたらす。無限に近いリノグレとのリソース差が縮まっているとは言えないが、でもこのドローはRikkyに確実に選択肢を与えてくれている。
リノグレは《アシステスト・シネラリア》を2体だすと、≪同期の妖精≫を追加。さらにマナゾーンから《完璧妖精マリニャンX》を召喚したことで、Rikkyのクリーチャーのバトルゾーンに出た時の効果は発動しなくなる。
さらに、《チアスカーレット アカネ》の上に《終の怒流牙 ドルゲユキムラ》がG(グラビティ)・ゼロで召喚される。ここで、強制のマナブーストを忘れていたことのジャッジからの指摘が入り、リノグレのマナが増える。無限のリソースと引き換えにリノグレの山札はかなり薄くなっている。
《終の怒流牙 ドルゲユキムラ》がアタックし、《銀河竜 ゴルファンタジスタ》へと革命チェンジでトリプル・ブレイク。
いよいよ、こうなったらRikkyにも祈るしかできることは残っていない。3枚のシールド・ブレイクから2枚の≪「この先は修羅の道ぞ」≫がトリガーする。理想に近いトリガーだが、それでもこの盤面を返すには足りない。
1枚目の≪「この先は修羅の道ぞ」≫は≪同期の妖精≫に2回吸い込まれ、それは《アシステスト・シネラリア》で守られる。そして、2枚目の≪修羅の死神フミシュナ≫が≪同期の妖精≫2枚を手札に戻す。
ここでRikkyはリノグレに残る山札の枚数を聞く。残る山札は4枚。
《完璧妖精マリニャンX》が《冥土人形ヴァミリア・バレル》へとアタックし、《超重竜 ゴルファンタジスタ》に革命チェンジする流れを挟んだところで、《チアスペース アカネ》が残る2枚のうちの1枚のシールドをブレイクする。
シールドを見て、じっと動きを止め、そしてリノグレの殴れるクリーチャーの数を聞くと……それを手札に加えて静かに天を仰ぐ。

そして、ついにタップされる《超重竜 ゴルファンタジスタ》。
Rikky「(ターンが)帰ってきたら、(逆転が)ある」
Rikkyが手札から見せたのは《空奏力 ナイン》と《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》。
最後のシールドは《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》だった。
Rikky 1-2 リノグレ
準決勝でのシャッフルをする前に、リノグレは勝利者インタビューのために実況席へと向かっていった。
席に残ったRikkyに最後の、その1枚前のブレイクのシールドの内容を聞いた。それは《空奏力 ナイン》だったようで「それで逆転の目ができたというリアクションだったんですか?」と追加で質問した。
Rikky「それもありますけど……まぁ、ブラフでもありますね」
それだけ言うと、もうこれ以上語ることはないとばかりにRikkyは席を立った。僕にはそれを追いかけることはできなかった。
「祈るのは、できるだけのことをやった後だ」と書いていたが、僕がRikkyは祈っていると思っていた時に、Rikkyは勝つために他にできることはないかとまだ考えてやり続けていたのだ。まるで「魔王」dottoのようだ。dottoは勝つためにできることを常に限界まで考えている。元々のRikkyの負けず嫌いの性格もあるだろうが、この1年間dottoとともに「魔王軍」と戦ってきた影響も少なくないはずだ。
だからといって今年のRikkyの全国大会が「みんなとたたかえてよかった」ではじまり「魔王軍と戦えてよかった」で終わった、なんていうつもりはない。結局、勝ちの価値なんで「勝ち」以外にないのだ。
そして、最初に言ったように、勝ちの価値が「勝ち」以外ない中で戦い続ける価値なんて、本人にとっての価値なんて外から見ている人からは絶対にわからないのだ。
でも、戦い続ける姿をみて、そこから自分にとってだけの価値を見出して受け取ることは誰にだってできるし、それは許されているはずだ。そして、多くの人がそこに価値を見出した時に、本人が思う以上の価値が生まれる事だってある。本人の向こう側により大きな価値がうまれた時、人はそれを物語と呼ぶのだと思う。
望む望まないと関わらず、戦い始めてしまったら、そこに物語は生まれてしまい、それは背負わされてしまい、そして巻き込まれていく。ただ戦うのではなく、よりよく戦おうとするのならそれは避けられない日々で、もう、そういうものなのだ。
デュエルをすることと物語を紡ぐことは同じだ。
せめてその物語だけ伝われと僕は横からそっと祈っている

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