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山形超CSⅢ 決勝第4回戦:クレンコ(埼玉) vs. ミノミー(東京)


 “デッドダムドの夏”とでも表現したらいいのだろうか。デッキブレイクダウンを見てわかる通り、予選通過者の4割近くがこのミッドレンジ界の王者を選択しており、実にその人数は『水闇自然デッドダムド』以下に続く4種のデッキの合計使用者数よりも多い。
 8月9日より新登場した《SSS級天災 デッドダムド》のカードパワーはもちろんのことだが、水闇自然、いわゆるアナカラーデッキがこれまで持ち合わせていた短所の克服によるところが大きいだろう。かつての『アナカラーデッドゾーン』に欠けていた部分、つまりはリソース回復手段とフィニッシャーを、《禁断機関 VV-8》《SSS級天災 デッドダムド》にて補い、まさに完全無欠の王者のデッキとなったのだ。

 だが、極端な強さは時として身を滅ぼしかねない。その強さから『水闇自然デッドダムド』の隆盛を見越し、ミラーマッチで優位を築くのではなく、同デッキに対して有利なデッキ自体を選択しているプレイヤーたちもいた。

 その最たる例が理論上最強と謳われる『青魔導具』だ。干渉手段の限られる《卍 新世壊 卍》を一度置いたものなら、後はデッキを掘り進み《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》とドルスザクを揃えるだけ。
 このデッキを理論上と形容するには理由がある。全てのデッキに対する解答を持ちながら、キーカードである《卍 新世壊 卍》を用意しないことにはゲーム自体が始まらないためだ。ドロー呪文は豊富にあるが、どのタイミングで《卍 新世壊 卍》を出せるかでその価値と勝ちへの道筋は異なってしまう。その不安定さとどこまで付き合えるか、プレイヤーの心の強さも試される。


 これより8つの椅子をかけ戦うのは、この大会を象徴する『水闇自然デッドダムド』クレンコとメタゲームの申し子『青魔導具』ミノミーの2人だ。


 先ずは『モブ一族』よりクレンコ。Magic:the Gatheringに存在する同名のカードを好んで使っていたことからついた愛称は、親分気質な彼の一面をも見事に表す。自身が所属するチームモブ一族のリーダーモブトを陰から支え、仲間たちを盛り上げ、時には舵取り役としてチームを率いている。


 今大会へ向けて『モブ一族』の練習場所として自宅、通称“モブのたまり場”を開放し、調整を重ねてきた。いち早く《SSS級天災 デッドダムド》へと着目すると、完成形を模索してスクラップ&ビルドを繰り返す毎日。大会結果を踏まえてデッキに変更を加え、モブトからの助言を経て完成へと至った。クレンコが握るのはチームの力を結集したモブ一族の集大成である。ここまでの成績をみるに、環境の一番強いデッキこそが勝利への近道と信じるクレンコの選球眼にも狂いはなかったといえるだろう。


 対するは現在の東京ランキング1位であり、今大会では『水闇自然デッドダムド』を使用する「くんさん」、そして神奈川ランキング1位のTIGHTと関東の強豪を続けて倒してきたミノミー。遠方に住む友人と情報交換こそすれど調整自体は頭の中だけで行っているらしく、彼にとって大会とは結果だけではなく自身の思考と現実のズレを認識し、次のステップへと進む過程でもあるようだ。

 ミノミーが使用する『青魔道具』は、彼自身の手によって広く知れ渡るようになった。トッププレイヤーたちですら懐疑的だったこのデッキのポテンシャルを、CSで好成績を残し続けることで証明してみせたのだ。ここ最近だけでも2日連続優勝に始まり、3回のトップ16を挟んでまた準優勝。本人曰く、「悪くても2敗」と非常に高い成績を残し続けている。

 更に彼は冒頭に書いた理論上最強説、「2ターン目《卍 新世壊 卍》以外許されない」についても異を唱える。ミノミー特有の表現である2ターン目に《卍 新世壊 卍》を貼る最強ムーブ“しっぽり新世壊”ができなくとも、ドロー呪文から掘り起こしトリガーで耐え、5ターン目以降に《卍 新世壊 卍》を貼る“ゆっくり新世壊”でも十分に環境デッキたちと渡り合うことが可能であるというのだ。

 単に《ゴゴゴ・Cho絶・ラッシュ》+《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》のコンボが効果的というだけではなく、環境にある速攻系デッキの大半が展開力重視のオールイン型のためリソース回復手段が乏しく、一度流されるとバトルゾーンの再構築が難しくなるためだと教えてくれた。

 またデッキの細部まで神経が張り巡らされており、4種類の1枚差しがある。《》《堕呪 ギャプドゥ》《光牙忍ハヤブサマル》に加えてミノミー自身が見つけたマスターピース、《H・センボン》だ。上記のコンボや手札のトリガーを仕込むだけではなく、このクリーチャーは一度ブレイクされきった状態ならば、シールドを0から1枚に増やすことができる。限定的とはいえシールドを増やす能力は水文明には珍しく、これによってトップデッキされるスピードアタッカーすらもケアすることができる。これにより相手のプランを瓦解させ、ミノミーはいくつもの勝利を重ねてきた。


 どうやら時間がきたようだ。ここまで勝ち進んできた両者はカメラに向かって微笑むと、次の瞬間、伏せていたカードを手に取った。


先攻:クレンコ

 それぞれ《SSS級天災 デッドダムド》《堕呪 エアヴォ》とデッキ同士の挨拶が済むと、2ターン目を迎える。クレンコは《悪魔妖精ベラドンナ》からマナを伸ばすが、問題はそこではない。

 ミノミーはマナゾーンのカード2枚をタップし、しっぽりとプレイする。


 本日10回目となる2ターン目《卍 新世壊 卍》が、しっぽりと着地。すると観戦者の間からから溜息と歓声が小さく、しかし確かに聞こえた。

 《卍 新世壊 卍》がフィールドインした以上、クレンコにできることは伸ばしたマナを有効に使うか、対『青魔導具』の秘儀《レアリティ・レジスタンス》を引き込み、効果的な場面で唱えるしかない。  だが、≪お清めシャラップ≫で伸ばしたマナは6となるも、その手に《禁断機関 VV-8》はない。4ターン目にしてクレンコ、無念のターンエンドである。

 対照的にミノミーのプレイは冴えわたる。《堕呪 バレッドゥ》《》を捨てつつ手札を回転させ、続くターンも魔導具を重ね《卍 新世壊 卍》のカウントを進めていく。


 ここまでマナブーストを活かせないクレンコ。7マナ目をチャージすると手札の《悪魔龍 ダークマスターズ》《テック団の波壊Go!》を見比べ、《卍 新世壊 卍》の下に置かれた魔導具が一緒に戻るのも厭わず《テック団の波壊Go!》をプレイし、無月の門へ通行禁止を言い渡す。

 ミノミーが《卍 新世壊 卍》のリキャストから《堕呪 バレッドゥ》で終えると、クレンコは先ほどの《悪魔龍 ダークマスターズ》を召喚する。しかし、そこには絶望が広がっていた。ミノミーの手には《凶鬼卍号 メラヴォルガル》×3と《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》、多数の魔導具呪文たちが溢れていたのだ。


 クレンコの『水闇自然デッドダムド』が《》ではなく《悪魔龍 ダークマスターズ》を採用しているには理由がある。それは《レアリティ・レジスタンス》以外にもう1つのメタカードを積んでいるためだ。『水闇自然デッドダムド』のミラーマッチの優劣が《禁断機関 VV-8》の着地タイミングによって決まることがわかると、後手番で先出しするために殿堂呪文《フェアリー・ギフト》を採用したのだ。


 ただ相方が《禁断機関 VV-8》だけでは汎用性が低いため、もう1種類高コストクリーチャーとスペースを確保する必要があった。このためにモブ一族は《》を諦め、《悪魔龍 ダークマスターズ》の採用へと至った。《フェアリー・ギフト》により相手の思考よりも1ターン早く着地するピーピングハンデスは、まさに意表を突くカードではあった。


 だが、ミノミーの手札が多いこの場面ではどうしても《》が欲しかった。ここで唱えたカードが≪ロスト・ソウル≫であったなら、状況は全く違ったものになっていただろう。

 クレンコは《堕呪 バレッドゥ》×2と《堕呪 ウキドゥ》を捨てさせるが、返すターンにミノミーは順次3枚の魔道具を《卍 新世壊 卍》へと重ね、ついに合言葉を詠唱す。


 卍 壊!

 開かれし門より現れしは《凶鬼卍号 メラヴォルガル》×3と《》。出た時の効果により、シールドがはじけ飛ぶ。

 その過程で《テック団の波壊Go!》がトリガーするも、それは本当にクレンコの細やかな抵抗に過ぎなかった。全てのシールドを手に取ると、勝負は締めくくられた。

Winner:ミノミー


 これまで大規模なイベントでの入賞はなかったというミノミーは、代名詞である『青魔導具』を手に遂にトップ8の座を射止めた。

 その快進撃は終わらない、いや終わるはずがない。なんせ得意相手とする『水闇自然デッドダムド』はトップ8の半数、4名が使用しているのだから。

 頂点を目指し、ミノミーは突き進む。
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