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山形超CSⅢ 準決勝:ヤルカ!ポケカ! vs. 志乃

 2019年、7月中ごろ。
 このころプレイヤーにとって最も衝撃的なニュースと言えば、『ジョー星ミッツァイル』が世に放たれたことであろう。

 だいぶつーによって基盤が公開され、あーくんらの手によって改良が加わったこのデッキは、過去の凶悪デッキに共通する特徴を持っていた。
 それは、「安定して4ターン目にトリガーをケアしながらゲームを終わらせる」という…《ベイB ジャック》在りし日の『緑単猿ループ』『白緑メタリカ』、《セイレーン・コンチェルト》在りし日の『青単ムートピア』と全く同じ特徴である。

 《BAKUOOON・ミッツァイル》から《ゴッド・ガヨンダム》などのリソースを拡充するGRクリーチャーを並べていき、4ターン目に《ジョジョジョ・マキシマム》の条件達成、余裕があれば《単騎連射 マグナム》を出しつつ過剰打点を形成する…従来の『ジョーカーズ』とは一線を画したこのデッキ。
 それが決まらずとも《BAKUOOON・ミッツァイル》を1回出せば6打点、盤面に《BAKUOOON・ミッツァイル》を2体並べて過剰打点…と、とにかく4ターン目に出せる出力が尋常じゃなく高い。
 このデッキの隆盛に多くのプレイヤーが湧き、様々な構築が試されていった……

 が、多くのプレイヤーの予想に反してそれは長くは続かなかった。
 直後にメタデッキ…いや、それを超えたアグロデッキとして隆盛した『赤白サンマックス』の存在が最たる原因である。
 自分と同速の4ターンキル、『ジョー星ミッツァイル』自体の防御性能の低さ、さらに≪奇石 ミクセル≫による《BAKUOOON・ミッツァイル》のメタ性能。
 デッキパワーの高さからそのまま『赤白サンマックス』はトップメタに食い込み、『ジョー星ミッツァイル』は冬の時代が続き、ジョーカーズたちは雪解けを待つ日々を過ごす……

 しかし冬が明けることはなく…吹雪はより強まっていく。『アナカラーダムド』の登場である。
 あらかじめ盤面にカードを並べておく必要があるこのデッキにとって、《虹速 ザ・ヴェルデ》《SSS級天災 デッドダムド》のパッケージは最悪の相性。
 リカバリーをしようにも《無修羅デジルムカデ》に盤面を支配され続け、マウントを取り返すのは至難の業。相性としては『赤白サンマックス』以上に絶望的。
 『青魔導具』や『ロマノフワンショット』のような有利対面はいるものの、環境での立ち位置は最悪。この状況で、『ジョー星ミッツァイル』が勝ち上がるのは不可能と思われた……

 ……が、準決勝に座るヤルカ!ポケカ!の使用デッキ。
 それは彼独自のオリジナリティを加えた、『ジョー星ミッツァイル』であった。

 彼が勝ち上がった理由は様々あるだろうが、最たるものは『アナカラーダムド』を取り巻く環境変化だろう。
 『アナカラーダムド』に相性がいいとして勝ち上がってきたデッキは『青魔導具』や『ロマノフワンショット』など『ジョー星ミッツァイル』に相性がいいものばかり。
 事実、ヤルカ!ポケカ!も『アナカラーダムド』に強いデッキは『ジョー星ミッツァイル』で倒せる自信があったということ。これは彼も想定していた部分であろう。

 ……が、ヤルカ!ポケカ!が想定していなかったかもしれない要素がもう1つある。
 それは、上位に進出した『アナカラーダムド』の構築がミラーマッチに寄せられたこと。
 それだけならまだ想定できた範囲内なのだが……

 その結果、初動の枚数と《Dの博才 サイバーダイス・ベガス》の枚数が減少していたのだ。

 《Dの博才 サイバーダイス・ベガス》の減少に関しては《ジョジョジョ・マキシマム》の通りがよくなった程度の恩恵なのだが…問題は初動枚数の方である。
 特に2コストの《フェアリー・ライフ》《霞み妖精ジャスミン》の枚数が抑えられた構築が目立っており、結果として《虹速 ザ・ヴェルデ》を絡めた展開が後攻4ターン目に遅れてしまうことが頻発。
 多色の《悪魔妖精ベラドンナ》が多く採用されていたこともあり、色不足で初動に失敗することもままあった。

 そして『ジョー星ミッツァイル』にとっての先攻4ターン目とは《夢のジョー星》《BAKUOOON・ミッツァイル》を絡めてゲームを終わらせるターン。
 つまり、「先攻を取って」「2コストブーストを持たれない」という2つのハードルを乗り越えさえすれば、有利に立ち回ることができる。
 構築の変化によってそのうち一つのハードルが非常に低くなり、勝率が大幅に改善したのだ。

 そんな外的要因に後押しされながらも、ヤルカ!ポケカ!はベスト4に進出。
 対戦相手の志乃が操るのは……『アナカラーダムド』。

 準決勝はマッチ戦。2本目以降は負けたプレイヤーが先攻となるが、1本目はじゃんけんで先攻を決める。
 先述した通り先手後手が重要なこのマッチにおいて、1本目のじゃんけんは非常に重要。
 それに勝利したのは……

 ヤルカ!ポケカ!。準決勝は、ここから始まった。

Game 1

先攻:ヤルカ!ポケカ!

 ヤルカ!ポケカ!は《》をチャージ。見慣れないカードに志乃は首を傾げつつ、《天災 デドダム》をチャージ。
 ヤルカ!ポケカ!は《タイク・タイソンズ》を置いて《花美師ハナコ》。『アナカラーダムド』相手には《タイク・タイソンズ》で初動を行いたいところだったが、ここはあえなく緑マナとしてチャージ。

 そして、両者にとって2つ目のハードルとなる「2コストブーストの有無」。
 《天災 デドダム》を置いている以上色マナには苦労しない。ここでの選択は……

 チャージ、エンド。
 この瞬間、天秤はヤルカ!ポケカ!側に傾いた。

 3ターン目も《花美師ハナコ》でリソースを稼ぐヤルカ!ポケカ!側に対して、《天災 デドダム》で初動を行う志乃。
 だが…眼前のヤルカ!ポケカ!を相手取るにとって、後攻3ターン目《天災 デドダム》ではもう遅いのだ。

 先攻4ターン目を迎えたヤルカ!ポケカ!は、まず3マナで《ウォッシャ幾三》。横に《The ジョラゴン・ガンマスター》を立て…盤面4体。
 それらを火薬とし、ヤルカ!ポケカ!の手札に眠る、赤い核弾頭が発射される。


 《BAKUOOON・ミッツァイル》を召喚!!
 そこから《ツタンメカーネン》2枚、《パッパラパーリ騎士》《The ジョラゴン・ガンマスター》の捲り。リソースを広げる上で非常に強力な4枚にアクセスを成功させる。

 ……が、その2ドローで必要だった《夢のジョー星》《BAKUOOON・ミッツァイル》は…ない。
 つまり、たった1マナではこのターン中にこれ以上の展開は望めないということだ。
 『アナカラーダムド』相手には《ジョジョジョ・マキシマム》まで到達したいところ。ターンエンドも考えただろうが…それを許してくれる相手ではない。

 ヤルカ!ポケカ!が動く。超天フィーバー達成前の《The ジョラゴン・ガンマスター》が攻撃に向かった。
 ヤルカ!ポケカ!の打点は6打点だけ。いわゆる「ジャスキル」打点である。

 となると、ペースは志乃側に傾いていた。その理由は彼の構築にある。
 《ドンドン水撒くナウ》を採用している彼の構築には、《テック団の波壊Go!》《Dの博才 サイバーダイス・ベガス》を含めて10枚のトリガーが採用されていた。
 前日のリシアCSで強豪が使用していたデッキを見て《超奇天烈 ギャブル》《蒼き団長 ドギラゴン剣》などを採用したと言うが、そこで志乃は防御札を削ることはしなかった。従って『赤白サンマックス』等には強く出られる構築となっている。
 そして、本来『ジョー星ミッツァイル』相手には役に立たないはずが、期せずして訪れた防御札の活躍機会。
 準決勝という大舞台で訪れたチャンスに、祈りを込めてシールドを捲りあげ……

 「マージか………」


 落胆した声の主は………なんと志乃の方から。
 確率の女神は残酷にほほ笑む。そのシールドにトリガーは1枚も入っていない!!

 となれば、あとはダイレクトアタックを宣言するだけ。
 それが通り、1本目をヤルカ!ポケカ!が制したのだった。


ヤルカ!ポケカ! 1-0 志乃


Game 2

先攻:志乃

 マッチ戦では直前のゲームに負けた側が先攻となる。
 つまり、ヤルカ!ポケカ!はこのゲームにおいて先述した1つ目のハードル…「先攻を取ること」ができない。
 そのため志乃が2コストブーストを撃てず、ヤルカ!ポケカ!の《タイク・タイソンズ》からゲームが始まったとしても。

 志乃の3ターン目に《天災 デドダム》
 これによりマナブースト、そして《タイク・タイソンズ》のアタックを強烈に牽制するコマンドの配置に成功する。
 ここで下手に《タイク・タイソンズ》のJチェンジを使おうとすると《虹速 ザ・ヴェルデ》がなくとも《天災 デドダム》のアタックだけでゲームが崩壊しかねない。

 だからといって待っていてもやられるのみ。ヤルカ!ポケカ!にとっての最善策は、引かれていない可能性に賭けて動くこと。
 3マナを支払い《ウォッシャ幾三》から《ゴッド・ガヨンダム》、そして《タイク・タイソンズ》《ウォッシャ幾三》にチェンジ、《パッパラパーリ騎士》をGR召喚。
 この盤面であれば《虹速 ザ・ヴェルデ》が来ようが《勝利のガイアール・カイザー》が来ようが《SSS級天災 デッドダムド》さえなければ受け切れる。祈りを込めてターンを返すが……


 志乃が用意していた解答は《虹速 ザ・ヴェルデ》《超奇天烈 ギャブル》、そして《SSS級天災 デッドダムド》!!
 さらに横にいた《天災 デドダム》の攻撃時に《SSS級天災 デッドダムド》を移し替えすることで、4体のクリーチャーを並べたヤルカ!ポケカ!のバトルゾーンを更地にする。
 この光景はおそらく今大会でも多く見られたもの。志乃操る『アナカラーダムド』が先攻及び初動を引いてしまえば、このようなゲーム展開になるのが一般的なのだ。

 そこからはあっという間。《BAKUOOON・ミッツァイル》を展開するほどバトルゾーンに余裕のないヤルカ!ポケカ!に対して志乃は《禁断機関 VV-8》で詰めに向かう。
 途中《ヤッタレマン》《ヤッタレマン》《ポクチンちん》という難しい盤面が訪れたが《超次元ガロウズ・ホール》で難なく突破し、そのまま次ターンに《禁断機関 VV-8》が禁断機動。
 防御トリガーの入っていないヤルカ!ポケカ!のデッキには追加ターンすら必要なく、志乃が最終戦へと持ち込む。


ヤルカ!ポケカ! 1-1 志乃


Game 3

先攻:ヤルカ!ポケカ!

 ヤルカ!ポケカ!はGame1を制した時点で、Game3において先攻が確約されている状態だ。
 1つ目のハードルである「先攻を取る」ことクリア。大事なのは志乃が初動を持っているか、何より自らの引きが噛み合っているか。
 そして迎えたお互いの2ターン目は……

 ヤルカ!ポケカ!はチャージ、エンド。
 そして志乃は…マッチ通じて初めての《悪魔妖精ベラドンナ》をブーストモードでプレイ!!

 ヤルカ!ポケカ!にとっては最悪の展開だろう…この瞬間2つ目のハードルを乗り越えられるかどうかの勝負は志乃に軍配が上がった。
 さらに志乃のマナには《虹速 ザ・ヴェルデ》があり、このままいけば後攻3ターン目で盤面処理を行うことで自分のペースとなるロングゲームに持ち込むことが可能。
 ここに《SSS級天災 デッドダムド》が1枚絡めばゲームセット。志乃にとっては願ってもいないビッグチャンスが訪れた。

 しかし…直後、ヤルカ!ポケカ!がバトルゾーンに投げ入れたカード。
 Game2で姿を見せてはいたが、ここで出てくることは想像だにしていなかったカードだった。


 《ポクチンちん》
 『ジョー星ミッツァイル』の洗練化に伴い、テンプレート構築から抜けていったこのカードが単騎でバトルゾーンに降り立つ。

 そして得てしてテンプレートに入っていないカードは、対戦相手のプレイを迷わせる。
 それは、準決勝まで勝ち上がった志乃も例外ではない。

 志乃にとってこの《ポクチンちん》には《虹速 ザ・ヴェルデ》で簡単に対処できる。問題はそのあとだ。
 《虹速 ザ・ヴェルデ》は現状志乃が2ターン目に置いた1枚しかなく、この1枚を使用すると次のターンに4マナしか使うことができない。
 そうすると続く《ガチャダマン》などの多面展開を処理することが難しくなり、余計に戦況が悪化してしまう。

 《ポクチンちん》の処理は後半でも構わない。
 志乃は手札と相談した結果……その手札からは《奇天烈 シャッフ》《夢のジョー星》を止める5を宣言。
 5マナ以降でヤルカ!ポケカ!の盤面を弾けば楽な展開が見えてくる。そこからが勝負……



 志乃「完全に頭から抜けてたんですよね、この展開が……」


 ヤルカ!ポケカ!の手札からは…《ウォッシャ幾三》
 GRクリーチャーを横に携えながら出されたこのカードのもう1つの能力…それは、「パワー6000のガードマン」。

 そう、これが《ポクチンちん》と合わさることによって。
 《虹速 ザ・ヴェルデ》1枚では全く触ることのできない、鉄壁の牙城が完成する!!

 《SSS級天災 デッドダムド》と合わせれば確かに《ポクチンちん》だけなら処理できる。しかしそのために志乃が支払う対価はカード2枚、マナ1枚、そして1ターン。あまりの多くの犠牲を支払ったリターンに見合う行動ではないことは誰の目から見ても明らか。
 2つ目のハードルを越えられなかったヤルカ!ポケカ!だったが、それができなければ変化球で勝負を挑むまで。たった3マナのクリーチャー2体が、環境最強デッキ、大幅不利対面である志乃に大きなプレッシャーを与えていく。

 とはいえ《虹速 ザ・ヴェルデ》が潰されてもさすがの志乃、苦い顔をしながらもプランBは用意してある。
 それは《悪魔妖精ベラドンナ》のハンデスモード。2枚まで減った志乃の手札から《ガチャダマン》を引き抜き、ターンを返す。

 ……結果から言うと、このハンデスによる二分の一。これが勝負の趨勢を分けたといっても過言ではない。
 なぜならヤルカ!ポケカ!のもう1枚の手札、それは……


 超天篇が生み出した、赤い悪魔だったから。

 トップデックからは《タイク・タイソンズ》。発射準備は万端。
 ここでヤルカ!ポケカ!はジャッジの許可を取って水を飲む。緊張が喉を、心を渇かせる。

 さあ、準決勝もここが最終局面。意を決して1マナをタップ、盤面を4体破壊…《BAKUOOON・ミッツァイル》!!効果で4体のGRクリーチャーが撃ち出される。
 さあここから…といったところだが、なんとその中身は《ヤッタレロボ》《The ジョラゴン・ガンマスター》ばかり。0枚の手札を増やすカードは1枚もない。

 となれば、Game1の再来。この6打点と志乃のトリガー10枚の正面衝突。
 先ほどはヤルカ!ポケカ!に軍配が上がったこの勝負だが、本来は志乃の土俵。《ポクチンちん》がバトルゾーンから消え、盤面にはコマンドが1体。ここを凌いで《虹速 ザ・ヴェルデ》《SSS級天災 デッドダムド》を決めれば返すのは容易。
 とはいえヤルカ!ポケカ!も《ポクチンちん》を失っているからこそ、ここで勝負を仕掛けなければいけない。

 いざ、尋常に。
 まず1点。トリガーはない。

 続く1点。ここでもトリガーはない。
 万が一のSSTケアで《BAKUOOON・ミッツァイル》2点。
 トリガーは…ない。

 最後の1点。志乃は手を合わせる。
 そして、力強く捲られたシールドの中には……

 何も、ない。
 苦笑いを零しながら自らの夢を、志乃がヤルカ!ポケカ!に託し。
 本来不利対面である『アナカラーダムド』を下し、ヤルカ!ポケカ!が決勝に進出した瞬間であった。

Winner:ヤルカ!ポケカ!
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