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超CSⅣ福岡:メタゲームブレイクダウン

ライター:伊藤 敦(まつがん)

 「メタゲーム」とは、個々人が定義した平均的な環境に対してそれぞれが個々人なりの対応を行った結果生じる、新たな平均としての環境の総体と考えられる。

 当然ながら「何回対応すれば十分と考えるか」やその「対応の道筋」は人によって異なる。「JO退化が多そうだから、受けるデッキが多そうだ。ということは、水タッチ闇スコーラーだな」と論理立てて考えようとする人もいれば、「じゃあ《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》だな」と飛躍する人もいるし、「よくわからないけど流行ってるしガイアハザード退化を使おう」という風に逆に一切考えない人もいる。

 今回の超CSⅣ福岡に参加した600名以上のプレイヤーたちも、各人が各人なりに勝算の立つロジックをもって各々のデッキを選択し、参加していたはずだ。

 それらのロジックの紐が600名以上分も縒り合うと、遠くから見たときにはまるで一本の太いロープに見える。そのロープを便宜的に「メタゲーム」と呼んだとき、ロープには紐の密度が濃い強靭な部分と、紐の密度が薄い脆弱な部分がそれぞれ存在していることだろう。その濃淡や強弱に意味を読み取り、解釈する試みが「ブレイクダウン」であると言うことができる。

 では、前週に発売した「マスター・ファイナル・メモリアル・パック」が初めて使用可能ともなったこの大会では、はたしてどのようなロープが顕現したのか。

 決勝ラウンドに進出した128名のデッキタイプから読み取る、超CSⅣ福岡のメタゲームブレイクダウンをお届けしよう。


静岡からのJO退化の増加は「勝率による増加」か「母数による増加」か?

デッキ名 使用者数 割合
JO退化 21 16.4%
墓地退化 (光水闇が14、4Cが2) 16 12.5%
水闇自然ハンデス 10 7.8%
ガイアハザード退化 10 7.8%
アポロヌス・ドラゲリオン 8 6.3%
グルメ墓地ソース 5 3.9%
光水火鬼羅.Star 5 3.9%
ライオネル.Star 4 3.1%
キリコ・グラスパー 4 3.1%
水タッチ闇スコーラー 4 3.1%
火自然RX 4 3.1%
水闇自然デッドダムド 3 2.3%
ハンデスギャラクシールド 3 2.3%
ゼーロビッグバン 3 2.3%
5Cザーディクリカ 3 2.3%
水魔導具 3 2.3%
4Cガイアッシュ覇道 2 1.6%
ジョーカーズ 2 1.6%
4C邪王門 2 1.6%
ハチ公ワンショット 2 1.6%
マッド・デッド・ウッド 2 1.6%
火単ブランド 2 1.6%
5Cヴォルゼオス 1 0.8%
5Cガイアッシュディスペクター 1 0.8%
4Cディスペクター天門 1 0.8%
ボルシャック 1 0.8%
水闇コンチェルトハンデス 1 0.8%
ライオネルギャラクシールド 1 0.8%
ケンジ・キングダム 1 0.8%
水闇火メタビート 1 0.8%
水闇自然イザナミジャオウガ 1 0.8%
巨大ネバー天門 1 0.8%
合計 128 100.0%
 超CSⅣ静岡のメタゲームと比較すると、まず増加面で顕著な変化は「JO退化 (11→21)」「水闇自然ハンデス (5→10)」「ライオネル.Star (0 or 1→4)」、続いて減少面で顕著なのは「アポロヌス・ドラゲリオン (13→8)」「光水火鬼羅.Star (11→5)」「火単ブランド (9→2)」「水タッチ闇スコーラー (8→4)」と言える。

 ここでまず生まれる疑問は、「どうしてJO退化の決勝ラウンド通過数がここまで増加したのか?」だろう。これについては、2つの仮説が考えられる。1つ目は、「JO退化にとって有利なデッキが多かったため、静岡よりも勝率が向上した (一周してフィールドに合った選択だった)」というもの。2つ目は、「単純にJO退化の母数が多かった」というものだ。
 45人しかいなかったが勝率66%でそのうちの30人を決勝ラウンドに送り込めたのと、60人もいたのが勝率50%でそのうちの30人だけ決勝に勝ち進んだのとでは、同じ「30人通過」という結果でもまるで意味合いが異なってくる。そして今回に限っては、「なんだ、メタゲームが一周してJO退化が強いメタに戻ったんだな」と安易に解釈するのは危険というのが私の意見だ。

 なぜなら静岡以降、環境の主要アーキタイプたちは明らかにJO退化を苦にしない方向へと進化している。墓地退化は《白騎士の精霊HEAVEN・キッド》だけでなく《影世界のシクミ》《オリオティス・ジャッジ》で粘り強く受けることが可能だし、静岡時点では新興勢力と呼べたJO退化と同速の《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》も、既にすっかりトップメタの一員として定着した。他にも、キリコ・グラスパーは《バイケンの海幻》を搭載した形が一般的となりつつある。

 また、特に個人的な白眉はトップ16まで勝ち上がった堕天が選択したガイアッシュハザード退化 (!) で、ガイアハザード退化に混ぜ込んだガイアッシュ覇道部分がJO退化などに対して「G・ストライク」を当てた後に意識外からの強烈なカウンターとなりそうなことはもちろん、《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》を運良く止められた場合などにも、後続に対する蓋をしつつ速やかに切り返しが狙えそうな鮮やかな構築だ。

堕天
デュエル・マスターズ 超CSⅣ福岡
オリジナル構築
 26 クリーチャー
4 《禁断英雄 モモキングダムX》
4 《天災 デドダム》
4 《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》
4 《流星のガイアッシュ・カイザー》
3 《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》
3 《自然の四君子 ガイアハザード》
2 《Disジルコン》
1 《蒼き団長 ドギラゴン剣》
1 《超神龍バイラス・カースド》
 14 呪文その他
4 《生魂転霊》
4 《地龍神の魔陣》
4 《新世界王の破壊》
2 《闘争と成長の決断》


 こうした新たな情勢を見るに、「フィールドの変化によってJO退化の勝率が前週よりも向上した」というよりは、「静岡で明らかとなった『雑多なデッキが意外と多い環境』に対して、予選ラウンドの当たり運や先手後手差による上ブレ下ブレを嫌ったプレイヤーの多くが、優勝という実績に後押しされて半ばやむをえず選択した結果、相対的に母数が多くなった」と評価するのが妥当な線ではないかと思う。

デッキ名 使用者数 割合
JO退化 2 12.5%
ガイアハザード退化 2 12.5%
墓地退化 (光水闇が14、4Cが2) 1 6.3%
水闇自然ハンデス 1 6.3%
アポロヌス・ドラゲリオン 1 6.3%
光水火鬼羅.Star 1 6.3%
水タッチ闇スコーラー 1 6.3%
火自然RX 1 6.3%
水闇自然デッドダムド 1 6.3%
ゼーロビッグバン 1 6.3%
水魔導具 1 6.3%
ジョーカーズ 1 6.3%
ボルシャック 1 6.3%
ケンジ・キングダム 1 6.3%
合計 16 100.0%
 現に、トップ128からトップ16まで3-0して生き抜いたデッキの数を見ても、JO退化がその他の現状の環境デッキに対して特に有意に顕著な勝率を保持し続けられているとは思えない。

@大豆
デュエル・マスターズ 超CSⅣ福岡
オリジナル構築
 22 クリーチャー
4 《禁断英雄 モモキングダムX》
4 《キャンベロ <レッゾ.Star>》
4 《未来王龍 モモキングJO》
3 《禁断のモモキングダム》
3 《アルカディアス・モモキング》
3 《無双龍騎 ボルバル・モモキング》
1 《怒りの影ブラック・フェザー》
 4 ツインパクト
4 《雪溶の鎖/堕牛の一撃》
 14 呪文その他
4 《バッドドッグ・マニアクス》
4 《進化設計図》
3 《新世界王の闘気》
3 《クリティカル・ラブ》


 JO退化が現環境随一のデッキパワーを誇ることは明らかではあり、《クリティカル・ラブ》という工夫もあって結果として今回もトップ8に1人を送り込んだものの、「じゃあいざ自分がこのたくさんのJO退化使用者の中でそのたった1人になれるのか?」と問われれば、よほどの自信がない限りYesとは言えないだろう。

 「一番強いデッキ」ではあるものの、他にもJO退化を意識したS・トリガーなどをすり抜けられる「退化」デッキとしてガイアハザード退化なども台頭し、既に「一強」とまでは呼べなくなってきている現状、見かけ上は決勝ラウンドへの最多通過アーキタイプとはなったものの、デッキパワーの高さによる一見したときのリスクの少なさが実は最も多くのリスクのある選択を招いていたというのが、今大会におけるJO退化というデッキが持っていたポジションに対する適切な評価だったのではないだろうか。

手札コンボ環境にマッチしたベスト「曲通風」デッキ:水闇自然ハンデス

 「JO退化というデッキ選択のリスクの高さ」を裏面から補強していたのが、今回大躍進を遂げた水闇自然ハンデスだ。

KSG
デュエル・マスターズ 超CSⅣ福岡
オリジナル構築
 30 クリーチャー
4 《天災 デドダム》
4 《悪魔妖精ベラドンナ》
4 《飛ベル津バサ「曲通風」》
4 《特攻人形ジェニー》
3 《Disジルコン》
3 《若き大長老 アプル》
2 《アクア・ベララー》
2 《SSS級天災 デッドダムド》
1 《虹速 ザ・ヴェルデ》
1 《樹界の守護車 アイオン・ユピテル》
1 《コオニ弁天》
1 《堕魔 ドゥポイズ》
 2 ツインパクト
2 《》
 8 呪文その他
4 《有象夢造》
3 《絶望と反魂と滅殺の決断》
1 《生命と大地と轟破の決断》


 現環境では実は主要なデッキのうちの多くが、「手札に特定の2種 or 3種のカードを揃えて始動する」というシークエンスを踏む。3種の「退化」をはじめとして、アポロヌス・ドラゲリオンや水タッチ闇スコーラーなどもそうした類だ。

 そこにきて「手札を増やさせないことでコンボパーツを揃えさせない《飛ベル津バサ「曲通風」》」と「手札を削ることで揃ったコンボパーツを引きはがすハンデス」との組み合わせは、先手が強い《飛ベル津バサ「曲通風」》と後手が強いハンデスという補完関係もあり、環境のニーズに実は合致していたということなのだろう。

 また、ガイアハザード退化の《闘争と成長の決断》の影響で《卍 新世壊 卍》が数を減らしていたり、「環境トップのJO退化を相手にするためには限られた適切なS・トリガーを足さないとそもそも返せない」という理由でどのデッキも最大限まで多色化する傾向にあるのも追い風となっているのかもしれない。
 その意味で、光水火鬼羅.Starに代わる「環境に最も適応した《飛ベル津バサ「曲通風」》デッキ」として、今後も見る機会が増えていきそうだ。

 ただし無論、大型大会で使用するからには常に時間切れのリスクと戦わなければならない類のデッキでもあることにはやはり注意が必要だろう。

新弾からの刺客:ジョーカーズと火自然RX

 最後に、新弾である「マスター・ファイナル・メモリアル・パック」の影響についても触れておきたい。

 JO退化を受けるための多色化の傾向については上で述べたとおりだが、こうした多色化の傾向に対して恐るべき方向から咎めにいったのが、《ガヨウ神》の殿堂解除に加えて新弾から2種のカードを獲得したことで誰もが予想しない角度からメタゲームに食い込んできたジョーカーズである。

たいち
デュエル・マスターズ 超CSⅣ福岡
オリジナル構築
 28 クリーチャー
4 《ヤッタレマン》
4 《ガヨウ神》
4 《ジョギラゴン&ジョニー ~Jの旅路~》
4 《ジョリー・ザ・ジョニー Final》
3 《パーリ騎士》
3 《ポクチンちん》
3 《アイアン・マンハッタン》
2 《燃えるデット・ソード》
1 《ジョット・ガン・ジョラゴン》
 4 ツインパクト
4 《》
 8 呪文その他
4 《ジョジョジョ・ジョーカーズ》
3 《勝熱と弾丸と自由の決断》
1 《ゼロの裏技ニヤリー・ゲット》


 このデッキの復権に関してはやはり《ガヨウ神》の影響も大きいが、何よりも注目すべきは《ジョリー・ザ・ジョニー Final》だ。
 実はこのカード、環境に跋扈する「G・ストライク」持ちの万能アンタップイン多色こと「新世界王の~」に対するメタになっているのである。

 JO退化をはじめとして、多くのデッキは「新世界王の~」の3種のマナすべてがピッタリかみ合うわけではない。だが、そうしてかみ合わない文明のマナが4文明目としてついでにチャージされてしまっていることで、《ジョリー・ザ・ジョニー Final》が最速2ターン目に着地する裏目が生まれる事態にもなってしまうのだ。

 それだけでなく3文明のデッキ相手でも《ヤッタレマン》からなら3ターン目に普通に着地するので、見た目以上にパンチのあるカードである。《ジョギラゴン&ジョニー ~Jの旅路~》との組み合わせは、今後も要注目だ。

あーちゃんTV
デュエル・マスターズ 超CSⅣ福岡
オリジナル構築
 28 クリーチャー
4 《ボルシャック・栄光・ルピア》
4 《王来英雄 モモキングRX》
4 《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》
4 《ボルシャック・モモキングNEX》
4 《ブランド <NEXT.Star>》
3 《禁断竜王 Vol-Val-8》
2 《超竜バジュラズテラ》
1 《メガ・マナロック・ドラゴン》
1 《燃える革命 ドギラゴン》
1 《蒼き団長 ドギラゴン剣》
 8 ツインパクト
4 《》
2 《ボルシャック・ドラゴン / 決闘者・チャージャー》
2 《ボルシャック・スーパーヒーロー / 超英雄タイム》
 4 呪文その他
4 《メンデルスゾーン》


 また、優勝したボルシャックの陰に隠れて《ブランド <NEXT.Star>》も、惜しくもトップ8入賞こそ逃したものの128名中3名が使用するなどして結果を残しており、さらなる研究が待たれる逸材だ。


 次回の超CSは2週間後、8月13日 (土) に宮城で殿堂施行前最後の大型大会として行われる。

 今回の結果を受けた上に2種のクロニクルデッキがカードプールに追加された状態で、どのようなロープ……すなわちメタゲームが繰り広げられるのか。

 さらに研ぎ澄まされた参加者たちのロジックがもたらすであろう、環境最終盤に相応しいさらなるカオスな結果に期待して、筆をおくこととしたい。

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