超CSⅣ宮城 Round 1:フンババ♪ vs. セキボン
ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影者:堀川 優一
仙台港にほど近い会場、ここ「夢メッセみやぎ」に集った600名以上ものプレイヤーによる、頂点を目指す旅が。
しかもこの旅は単なる大型大会というにとどまらず、既に開催済みの超CSⅣ静岡や超CSⅣ福岡とはまた違った意味をも持っている。
すなわち、既に発表されている新殿堂、その施行前の最後の大会となるからだ。「JO退化」や「墓地退化」、「グルメ墓地ソース」「水タッチ闇スコーラー」などの直近の大会を彩ってきた強力なアーキタイプたちにとっては、フルパワーを発揮できる最後の機会となる。
そんな大会において、各人はそれぞれどんなデッキを旅の相棒とし、己の命運を託したのか。
フィーチャーマッチエリアに現れたのは、名実ともに現在の日本最強プレイヤーと呼んで差し支えない存在だった。
GP8thDay2や超CSでの準優勝という華々しい戦績を経て、2ヶ月前ついに開催された全国大会2019 日本一決定戦で見事全国王者の座を勝ち取ったセキボンだ。
一方、かくのごとき押しも押されぬ強豪といきなりマッチアップしてしまったフンババ♪は、しかし慌てたり緊張したりする様子もなく、むしろ落ち着いた佇まいの中に「食ってやるぞ」という秘めたる闘志すら感じられる。 そんな彼らの相棒たるデッキが明らかになる初戦。今日という1日の行く末を占う、大事な1回戦目が始まった。
Game
先攻はジャンケンで勝利したフンババ♪。まずはアーキタイプが判別しづらい《天災 デドダム》をチャージしてターンを終える。メタゲーム上位のアーキタイプでこのカードを採用しているとするならば、「ガイアハザード退化」だろうか?セキボンもフンババ♪のデッキと先のゲーム展開をおぼろげに想像しながらチャージを考えている様子だったが、結局悩んでも仕方ないとばかりに意を決して名刺代わりの《未来王龍 モモキングJO》をチャージする。 これはアーキタイプを間違えようがないだろう。セキボンの日本一の立役者となったデッキであり、「《禁断英雄 モモキングダムX》と《未来王龍 モモキングJO》のコンビ殿堂」という新殿堂の施行によりコンセプトが消滅することが決まっているアーキタイプ……期待通りの「JO退化」だ。やはり王者には、王者のデッキが良く似合う。
だが、返すフンババ♪の先攻2ターン目のアクションは《コオニ童子》チャージからの《悪魔妖精ベラドンナ》。手札破壊のモードで、しっかりとシャッフルしたセキボンの手札から《キャンベロ <レッゾ.Star>》を抜き去る。 「水闇自然ハンデス」。2週間前の超CSⅣ福岡のメタゲームブレイクダウンを見ても増加傾向があった今が旬のアーキタイプを、フンババ♪は選択した。当然想定済みであろう「JO退化」とのマッチアップで、はたしてその選択が吉と出るか凶と出るか……?
……といったところだったが、その天秤がいきなり凶に傾き始める。
すなわち、後攻2ターン目に《クリティカル・ラブ》をチャージしたセキボンが送り出したのは《禁断英雄 モモキングダムX》!《未来王龍 モモキングJO》もしっかりと下に収まり、フンババ♪にとっては猶予のない状況。
この局面でフンババ♪は返すターン、《アクア・ベララー》をチャージしてから手札3枚のセキボンに対して《悪魔妖精ベラドンナ》で手札破壊を選択する。
一方のセキボンはあらかじめそれを予期していたのか、扇のように広げていた手札を、先ほどとは違いシャッフルはせずにそのままフンババ♪に対して突き出す。
セキボン「このままで、どうぞ」
その様はまるでババ抜きだ。ただし、ジョーカー以外を抜けば一発即死の。
すなわち、ここで抜き去りたいのは当然《禁断英雄 モモキングダムX》を自壊できるパーツなのだが、この時セキボンの手札には1枚だけそれがあったからだ。
確率は3分の1。だがその確率すらも知らないフンババ♪は己の運命がかかった選択を、まるで通い慣れた通学路を歩くかのように、あくまでも平然としてのける。
そして。 零れ落ちたのは、《》!返すセキボンは自壊カードをトップデッキできず、やむなく《アルカディアス・モモキング》チャージのみでターンを終えるしかない。
さらにフンババ♪は《飛ベル津バサ「曲通風」》チャージから2枚の《コオニ弁天》で《禁断英雄 モモキングダムX》《未来王龍 モモキングJO》ごと破壊。手札0枚にはなりつつも、ゲームを実質的に初期状態にリセットすることに成功する。 セキボンも引き込んだ《進化設計図》で《禁断英雄 モモキングダムX》を探しにいくのだが、なおも運の悪いことにめくれたのは《キャンベロ <レッゾ.Star>》1枚のみで首をひねる始末。
それでも、続くターンはフンババ♪が引き込んだ《樹界の守護車 アイオン・ユピテル》をそのままチャージしてターンを終え、返すセキボンもドローゴー。しばらくはこのままじりじりとした展開が続くものと、そう思われた。
だが、返しでドローしたフンババ♪が4マナを手にかけると、セキボンは察したように天を仰ぐ。 すなわち、ここでフンババ♪が引き込んだのは値千金の《有象夢造》!
セキボン「うあー、きつー!」
《絶望と反魂と滅殺の決断》を墓地に落としながらの《悪魔妖精ベラドンナ》2体蘇生でセキボンの手札から《キャンベロ <レッゾ.Star>》と《未来王龍 モモキングJO》が落とされ、リソース量でいよいよ差がつきはじめる。
さらに《》チャージのみでターンを終えたセキボンに対し、フンババ♪は墓地からの《絶望と反魂と滅殺の決断》で《悪魔妖精ベラドンナ》2体を蘇生、マナ加速しながらセキボンの唯一の手札だった《禁断のモモキングダム》を刈り取る。
そして返すターンもドローゴーのセキボンに、ついに絶望が突きつけられる。 返しでフンババ♪がチャージしたのは《生命と大地と轟破の決断》!マナから《アクア・ベララー》と《天災 デドダム》が呼び出され、セキボンのドローを検閲しはじめる。
こうなるとセキボンは、フンババ♪が続くターンに《有象夢造》で《悪魔妖精ベラドンナ》と《飛ベル津バサ「曲通風」》を蘇生するのを見守りながら、有効札が10枚くらい連続しているという億に一つの可能性を祈ることくらいしかできない。
……が、そんな希望すらもフンババ♪の続く言葉によって打ち砕かれる。
フンババ♪「そのままで」 やがて《》までもが着地する一方で、セキボンの手札は度重なる検閲の果てに、もはや山札を1枚すらも公開できなくなった《進化設計図》と進化元のいない《キャンベロ <レッゾ.Star>》になってしまい。
セキボン「……勝ち筋がないのでここで投了します。ありがとうございました」
Winner: フンババ♪
--「セキボンさんは今回、『JO退化』というデッキ選択に関して迷いとかはありましたか?」
セキボン「いえ、他の特定のアーキタイプを使うと有利不利が付きやすい環境だと思っていたので。その点『JO退化』は不利なデッキ相手にもチャンスがあるし、有利なデッキ相手もきっちり取れるので、大型の大会にもかなり向いてるのかなと思って選択しました。まあ初戦は苦い形になっちゃいましたが……」
--「『水闇自然ハンデス』というマッチアップは、あまり当たりたくない感じなのでしょうか?」
セキボン「そんなことはないですね。実際3分の1を通されての結果ですし、《進化設計図》が1ヒットだったことも含めて2回の不運……いや、それに加えて《コオニ弁天》もマナチャージ含めて3枚引かれたというのもあるので、まあ仕方ないですね。マッチアップ自体は想定していましたし、特に不利だとは感じていません」
日本一を取ったがゆえの情の「JO退化」というわけではなく、大型大会という事情を加味すれば状況は上々、という判断のようだ。
ただ、勝負の行方は常に定石通りというわけにはいかないものだ。
--「フンババ♪さんの方は、『水闇自然ハンデス』は結構使い込んできたのでしょうか?」
フンババ♪「『JO退化』と『水闇自然ハンデス』の2つを使い込んできました。前日までは『JO退化』を使おうと思っていましたが、大型大会で色々なデッキと当たることを想定した時に判断ミスとか選択ミスなどのミスを誘発しやすいと思い直しまして。それであれば『JO退化』相手にうまく立ち回れたり、5Cなどのコントロール系統もいそうだなと思ったので、それらに有利なデッキということで『水闇自然ハンデス』を使用しました」
かくしてフンババ♪が、開幕から見事ジャイアントキリングを果たしたのだった。
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