超CSⅣ宮城 Round 5:ドラ焼き vs. ウエショー
ライター:河野 真成
撮影者:堀川 優一
これは超CSⅣで生まれてしまった、カバレージ班内で伝わる悲しきジンクスであり、そして事実である。
超CSⅣ静岡でこそ優勝を果たした『JO退化』だったが、会場が福岡に移ると突如暗雲が立ち込めた。TOP4に残れなかったのはともかくとして、フィーチャー卓では通算1勝3敗と惨敗だった。
そして勝敗数以上に、その負け方が散々だった。
《禁断英雄 モモキングダムX》がないのは当たり前として、ゲルネウスも以央も、5ターン目の《未来王龍 モモキングJO》すら引かせて貰えなかった。
そして今回の宮城ではどうかというと、残念ながらその流れは変わっていない。ここまでRound1からRound3まで全試合でフィーチャーされているJOだが、まさかの全敗。流れはむしろ、より悪くなっていた。
Round4で遂にJOは勝利をするが……マッチアップはJOミラー。勝ったとも言えるが、負けたとも言える。
もしも殿堂がフィーチャー卓の勝敗だけを元に決めるとしたら、JOは許されてしまう……かもしれない。
であれば、気付いた人もいるだろう。
そう、『JO退化』は緊張に弱い。
特に《進化設計図》や《禁断英雄 モモキングダムX》といったデッキの初動となりうるカードたちにこの傾向はよく見られ、フィーチャー卓というプレッシャーの掛かる場面ではすぐにデッキの下に引き籠ってしまう。
また彼らは仲間といると多少緊張が緩和されるらしく、呪文は呪文同士、進化は進化同士、JOはJO同士でまとまっていることが多い。
加えて一度事故ってしまうとショックを受けてしまうのか、その予選の間ずっと拗ねている、なんてことも日常だ。
故にいかにJOをリラックスさせ、デレさせ、その気にさせられるか……。これが『JO退化』を使いこなす上で、求められる技量である。たぶん。
さて、Round5にフィーチャーされたのは◆ドラ焼きだった。
2019年度ランキング1位、全国大会4位など、その実績を挙げればキリがない。過度な誇張は好みでないが、彼に関しては最強のプレイヤーの一角と言い切ってしまっていいだろう。
豊富な知識量と練習量、その積み重ねから生まれる正確無比なプレイング。人は彼を「DMロボット」と呼ぶ……こともあるが、割と「ドラちゃん」呼びの方が定着している。
そんな◆ドラ焼きの使用デッキだが、彼もまた『JO退化』である。
緊張に弱く、デッキの下に引き籠りがちで、逆にやる気のあるJOくんばかりが手札に来て、一度拗ねると中々機嫌を直してくれない、あの『JO退化』である。
しかし◆ドラ焼きはこのデッキを使って、全国大会で4位を獲得している。
であれば、何かコツがあるのだろう。
最強のプレイヤーは、如何にしてJOをリラックスさせるのか。如何にしてその気にさせているのか。
その方法を、学んでいこう。
先攻:◆ドラ焼き
先攻の◆ドラ焼きは、《》を埋めてゲームスタート。
対してウエショーのマナチャージは、《天災 デドダム》。この時点では、まだデッキは判別出来ない。
◆ドラ焼きは続くターンに《進化設計図》唱えた。回収は2枚とまずまず程度だが、《禁断英雄 モモキングダムX》が手に加わった。
このJOは、やはり緊張していない。これが、◆ドラ焼きのスキルなのだろう。
ウエショーの2ターン目のマナチャージは《ドンドン火噴くナウ》だった。となるとこれは、『5cネバー』系統のデッキだろう。
そうであれば、相手の強力な動きは5マナ以降からになる。◆ドラ焼きもここで急ぐ必要がないと、多色を埋めて《禁断英雄 モモキングダムX》を召喚。《未来王龍 モモキングJO》の下敷きを用意して、ターンを終了する。
対5cの鉄則は「ギリギリまで手札に進化クリーチャーを溜め込んで、勝ちにいくターンに惜しみなく使う」というもの。待てるならば、待つに越したことはない。
ウエショーも3ターン目に《天災 デドダム》をプレイし、墓地に《絶望と反魂と滅殺の決断》を落としてターンを終了。ひとまず人事は尽くしたので、ターンが返ってくることを待つ。
5cには、5マナの《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》の呪文面からの強烈なアクションがある。
そういうわけで、◆ドラ焼きはこのターンに走り切ることを決めたようだ。
まずは《進化設計図》を唱えて、《禁断のモモキングダム》を含む3枚進化クリーチャーの回収に成功すると、≪堕牛の一撃≫を唱えていよいよ《未来王龍 モモキングJO》が場に登場。
まずは《禁断のモモキングダム》でW・ブレイク。この攻撃が通ると、続けて《キャンベロ <レッゾ.Star>》の侵略宣言、および《禁断のモモキングダム》を乗せて追加のW・ブレイク。
シンカパワーで《禁断のモモキングダム》を剥がし、《キャンベロ <レッゾ.Star>》が場に残る。
ウエショーの残るシールドは1枚。
「嫌な記憶だな……」
ふと、◆ドラ焼きはそんなことを呟いた。
思い出すのは、全国大会の準決勝、その3戦目だ。最後のシールドから≪ナウ・オア・ネバー≫が現れて、◆ドラ焼きの全国制覇の夢が敗れた試合だ。
しかし、嫌な記憶が頭を過ったとしても……やることは変わらない。変える必要がない。
練習通りのプレイを実行する、それがDMロボット。
◆ドラ焼きは、最後の1枚のシールドをブレイクする。
シールドを見たウエショーは、トリガーを宣言。それは≪ナウ・オア・ネバー≫! ……ではなく、《大地門ライフ・ゲート》。
◆ドラ焼きの場にいるのは《キャンベロ <レッゾ.Star>》。《大地門ライフ・ゲート》は、意味を為さない。
それはつまり、実質的な投了宣言だった。
WINNER:◆ドラ焼き
いかがだっただろうか?
◆ドラ焼きはこれまでのジンクスを破り、フィーチャー卓で見事『JO退化』を動かし、勝利させたのだ。
では彼は如何にして、JOをリラックスさせたのだろうか。
その方法は……筆者にはまるでわからないが、一つわかったこともある。
それは彼の対5cのゲームプランが正確で、その背景には幾重にも積み重ねられた練習の存在があったことだ。
やはり地道な練習こそ、勝ちへの近道。
ぜひ、参考にして欲しい。
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