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超CSV新潟 3位決定戦:レコード vs. そん

ライター:金子 幹(鐘子)
撮影者:堀川 優一(アノアデザイン)

 2000名を超える選手がここ新潟に集い、そして熱き戦いの火花を散らした。

 今自分の目の前に、惜しくも先の試合で破れ、3位決定戦、この舞台に2名の選手がやって来る。

 1名はレコード、そしてもう一方はそんだ。

「あー全国行きたかった!」

「いやー、そうっすよね」

 卓上に着くやいなや、そんとレコードの会話。

 そう、彼らは惜しくも決勝卓へは進めなかった2人の選手。悔しいのも無理はないだろう。

 ………さて、ここで、超CSの3位決定戦の意味を考えてみよう。

 本年度の全国へ出場権の獲得という意味であれば、言ってしまえば超CSは2名の選手が言うように1位以外にその権利は与えらない。

 とはいえ、だ。
 だとすればこれまで繰り広げられた超CSの3位決定戦に意味はないのか、といわれれば、そうとは言い切れないはずだ。

 超CS熊本ではモルドラと激闘を繰り広げたウスラトンカチが、超CS金沢ではダイヤマンXを制したはらのおとが、超CS山形でかつんを下した志乃が、これら以外にも多くの名勝負を残した超CS3位決定戦という舞台。その中で彼らが勝ち取った3位の称号に意味などないといえるのか?あの激闘は蛇足だったのだろうか?

 否、これらの戦いが無為なものなどでは断じてないはずだ。

……なぜなら誰しもが、その日の激闘を勝利で締めくくりたいのだから。

 彼ら2人のこの日この場所における、最後の試合が今、幕を開ける。

Game 1

先攻:レコード 「先攻もらいます。ブレイズ」
 もはや呪文の詠唱か、と言わんばかりの言い馴れた口上で、【火単我我我】を用いるレコードの手札から急襲したのは《凶戦士ブレイズ・クロー》

 数ある1コストクリーチャーの中でも、今回は【火単】最古参が一番槍を担うようだ。

「うわ、赤単や…!」

 相手は環境最速の【火単我我我】であることを察したそんは呟く。
 しかし、その眼差しに焦りは見えつつも諦念している様子はない。

 それはそんの次ターンで分かることになる。

 さて、返す2ターン目にレコードは《クミタテ・チュリス》を盤面に送り出し、《凶戦士ブレイズ・クロー》で1点が通ると
 続く2ターン目のそんのマナセットは……《“乱振”舞神 G・W・D》。そして《龍装者“JET”レミング/ローレンツ・タイフーン》の呪文面が唱えられた。

 これを見るや否やレコードは「クローシスかよ!」と声を漏らす。

 そう、そんの用いるデッキは【水闇火サガ】

 一般的な【水闇サガ】を更に《百鬼の邪王門》《ボルシャック・スーパーヒーロー / 超英雄タイム》《“乱振”舞神 G・W・D》など多くのビートメタパーツを積むことにより防御力、対応力を上げたデッキタイプだ。

 そんのデッキタイプの判明により一般的には【火単我我我】が有利な対面だと確信していたレコード表情にやや焦りが見えた。

 レコードは続く3ターン目に《カンゴク入道》を盤面に置き、4ターン目を攻め込むターンに見据えたようだ。
 《凶戦士ブレイズ・クロー》《クミタテ・チュリス》がシールドを割り、残りのそんのシールドは2枚。

 だが、そんの4ターン目にゲームは動く。

 《絶望神サガ》の登場だ。  その効果で、墓地に置いた《蒼狼の大王 イザナギテラス》が蘇生されると、更にそこから《冥界の不死帝 ブルース /「迷いはない。俺の成すことは決まった」》の呪文面を唱える。

 更にサガが蘇生され、2体目の《蒼狼の大王 イザナギテラス》が登場。もう1度≪「迷いはない。俺の成すことは決まった」≫から《絶望神サガ》が出された所で、2体目の《絶望神サガ》が墓地に置かれた。

「今からサガのみのループの証明に入ります」

 この会場で幾度となく宣言されたであろう、その台詞にレコードは息を飲み、「省略大丈夫です」と返す。

 【水闇火サガ】や後期の《蝕王の晩餐》を用いる【水闇サガ】は、初期の《超神星DOOM・ドラゲリオン》を用いた【水闇サガ】とは違い、フィニッシュ手段が《蝕王の晩餐》《蒼狼の大王 イザナギテラス》《龍素記号wD サイクルペディア》《サイバー・K・ウォズレック / ウォズレックの審問》を用いたかなり手順が複雑なループだ。

 2枚の《絶望神サガ》のループにより山札を掘り進める過程で、具体的な手順は割愛するが、上記4枚を中心としたループ解説とその結果の証明が淡々となされていく。

・「《龍素記号wD サイクルペディア》の効果の永久的なストック」
・「《蝕王の晩餐》による永久的なCIPのストック」
・「《サイバー・K・ウォズレック / ウォズレックの審問》によるループ中に山札が0にならない証明」……etcetc

 1つ1つの理由を細かにそんは説明・証明し、レコードもうなずく。

 ここで、大まかなループを把握した時点でレコードはそんのマナと墓地の確認をはじめる。

 もちろんこのループに入った時点でこのゲームはそんの勝利は半ば確定している。

 しかし、今回はマッチ戦。Game 2以降は受け札や全体の色バランスを確認しながら、攻撃のタイミングやプレイを変えることもできるのだ。レコードはループ中に30枚以上公開情報となったそんのデッキリストを脳裏に焼き付け、次のゲームの準備を始めたようだ。

 ……最終的にそんの盤面には《蝕王の晩餐》による蘇生でほぼ全ての墓地にあるクリーチャーが並び立ち、《勝熱と弾丸と自由の決断》によりそれらが疑似的な「スピード・アタッカー」を得た。
 最後に《機術士ディール / 「本日のラッキーナンバー!」》の呪文面で全てのカードのコストを宣言し、そんは自らの【サガループ】を十全に使いこなし初戦の勝利を収めたのだった。

レコード 0-1 そん

 そんはGame 1終了後こう呟く。

「勝って終わりてー…」

 それは自分も同じだとばかりにうなずくレコード。

 ここまでくればもはや欲するは勝利のみ。自分たちにとって、この最後のマッチを勝って締めくくりたいのだ。


Game 2

先攻:レコード


 先攻はGame 1を落としたレコードから。

「負け先もらいます。ブレイズ」

 Game 1と同じくよどみない宣言。レコードの立ち上がりは上々のようだ。

 2ターン目、レコードの《斬斬人形コダマンマ GS》を出した返しに、そんは《氷牙レオポル・ディーネ公 / エマージェンシー・タイフーン》の呪文面を唱えて手札を整える。墓地にクリーチャーが2枚落ちたため、最速なら次のターン《絶望神サガ》のループが完成することになる。

 猶予がないことを察したレコードは、ここで勝負を決めにかかる。

 《ブンブン・チュリス》からの《我我我ガイアール・ブランド》!  《凶戦士ブレイズ・クロー》で1点、《我我我ガイアール・ブランド》で2点と刻み、全てのクリーチャーがアンタップ。

 シールドが0枚のそんにレコードの《凶戦士ブレイズ・クロー》が襲い掛かる。

 ……そして、そんのマナには火文明はなく《百鬼の邪王門》の「鬼エンド」は使用できない!

「投了です」

レコード 1-1 そん

 最速の動きで有無を言わさず走り切ったレコード。

 しかし、最後のゲームの先攻はそん。【火単我我我】側のレコードにとっては、1試合目を落としてしまったことがここになって響いてくる。

 緊張の一瞬。互いの入念なシャッフルの後、最後のゲームが始まった。


Game 3

先攻:そん 「「お願いします」」

 お互いにとって本日最後の試合、不思議と対戦開始の挨拶が重なったのも偶然ではないだろう。

 そして、この試合の運びもまた両者同様にやや異質な立ち上がりとなる。

 なんとGame 1、Game 2と《凶戦士ブレイズ・クロー》を初手で出してたレコード、1ターン目に動くことが出来ない。

 そして一方のそんもまた、2ターン目にプレイしたのは《冥界の不死帝 ブルース /「迷いはない。俺の成すことは決まった」》のクリーチャー面。

 お互いの序盤はどうやら"理想の動き"には遠い動きを強いられたようだ。

 とはいえ、2ターン目のレコードは繰り出したのは《カンゴク入道》。順調に盤面とリソースを整える。

 そして、そんの3ターン目、《邪神M・ロマノフ》をマナに置き、マナゾーンに火と闇を揃えるものの…なんとプレイするカードがない!?
 《冥界の不死帝 ブルース /「迷いはない。俺の成すことは決まった」》で墓地を肥やすだけにとどまった。

 この隙を見逃さないレコード。3ターン目のプレイは《U・S・A・BRELLA》。一般的にサガループには重いメタカードだ。

 《疾封怒闘 キューブリック》などが絡まなければ、基本的には次のターンにそんのループは始まらない。

 順調に打点を伸ばすレコード。さすがのそんも焦りを隠せないようだ。

 そして続く4ターン目、そんは《蒼狼の大王 イザナギテラス》《サイバー・K・ウォズレック / ウォズレックの審問》の呪文面を唱えると……レコードの手札には《“罰怒“ブランド》《“轟轟轟”ブランド》!?

 およそ次のターン走りきる最大パーツがあることを知りながら、《クミタテ・チュリス》を落とすにとどまる。

 そしてレコードの3ターン目。
 手札から《クミタテ・チュリス》《ブンブン・チュリス》が繋がり……《“罰怒“ブランド》《“轟轟轟”ブランド》と一挙に怒濤の6打点が並ぶと、そんへ最後の攻撃を仕掛ける。

 1点また1点と、レコードのシールドをブレイクしていき、最後のシールドまで破り切ったレコード。

 そして《“轟轟轟”ブランド》のダイレクトアタックの瞬間、そんの最後の砦《百鬼の邪王門》が開かれる。  レコードの残り攻撃可能クリーチャーは現在攻撃中の《“轟轟轟”ブランド》《“罰怒“ブランド》のみ。

「えー、てことは……この《百鬼の邪王門》《勝熱と弾丸と自由の決断》《龍素記号wD サイクルペディア》が捲れれば……」

 そう、そんの望み通りカードが上手く墓地に落ちたなら、《龍素記号wD サイクルペディア》のブロックと《勝熱と弾丸と自由の決断》の能力無効で受けきることが可能だ。

 確かにまだその芽があったか、と一瞬うろたえるレコード。
 だが、既に後には退くことはできない。後は祈るだけだ。

 《百鬼の邪王門》の効果で1枚、2枚とそんの山札がめくられ、

 互いにめくられるカードを凝視する。


 そして、4枚目をめくった瞬間……


「ありがとうございました!」

 そんは、潔くレコードのダイレクトアタックを受け入れた。

レコード 2-1 そん

Winner:レコード


 この日最後の試合の勝利を収めたレコード。
 やりきった、という晴れやかな彼の表情が、彼にとって景品や栄誉以上の何かをきっと掴めたはずなのだろうと確信できた。

 ……さて、こうしてレコードとそんの激闘は、超CSの歴史に刻まれる。

 無為な勝負など1つとしてなく、またその1つ1つの勝負にプレイヤー各々の手に汗握るドラマがあることを感じていただけたらなによりだ。

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