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超CSⅥ福岡 決勝戦:ツムツム vs. やっすー

ライター:金子 幹(鐘子)
撮影者:瀬尾 亜沙子

 夕方にさしかかり、ここ博多の天気も荒れてきた。
 「ザーー」と響く雨音が外から聞こえるほどだ。本降りになって来たのだろうか。

 雨の激しさが増す中で、決勝のフィーチャーテーブルに今宵最後まで勝ち進んだ選手が2人。

 千葉の強豪デデンネらとともに調整したというツムツム
 彼自体もまたDMPランキング全国区で100位代前半にいる実力派ではあるが、聞けば公式大会で決勝トーナメントに上がること自体初だというから驚きだ。

 一方で、ここ福岡が地元のやっすー
 公式の大型大会を中心に出ているものの、やはりこういった舞台はツムツム同様初らしく、表情にも緊張が見える。

 まずは、ここで2人のデッキを確認しておこう。

 ツムツムの使用デッキ【水闇魔導具】に対して
 やっすーの使用デッキは【フィオナアカシック】

 どちらも最速4ターン目にビッグアクションを取るデッキではあるものの、いわゆるループ系のアンフェアデッキである【フィオナアカシック】に対し、【水闇魔導具】はメタカードに割く枠が少ない関係で、下馬評では【水闇魔導具】側が不利になることは必至と言える。

 だが、勝負は終わるまで何が起きるか分からないのも確か。
 今日の超CSもきっと大小含め様々な番狂わせが起きたことだろう。
 そういった通常予想できないことが起きるのもまた、デュエル・マスターズの恐ろしさでもあり、面白さでもあるのだから。

 さて、前置きはここまで。

 準備が整った両者。
 ヘッドジャッジのコールとともにこの日、最後の試合がはじまる。

Game 1

先攻:ツムツム  先攻は予選順位の高いツムツムから。

 だが、先に動いたのはやっすーだ。

 《巨大設計図》を唱え、2枚の手札を獲得すると、マナの《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》と表向きにされたカードを確認し、やっすーのデッキが【フィオナアカシック】と判明。

 不利な対面であることを即座に理解し、表情がこわばる3ターン目のツムツム《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》のクリーチャー面を場に出した。

 一般的に≪凶鬼98号 ガシャゴン≫のプレイは、【水火マジック】や【アポロヌス】など緊急時の壁として使うイメージではあるが、対面が【フィオナアカシック】であると判明した以上はもはや一刻の猶予もないと判断し、即席の1体の殴り手として盤面に送り出したツムツム  続くやっすー《八頭竜 ACE-Yamata / 神秘の宝剣》の呪文面を唱え、綿密にデッキ内容を確認すると、マナゾーンに《完全水中要塞 アカシック3》をを置く。

 先に紹介した通り、本大会のループ系アンフェアデッキの筆頭である【フィオナアカシック】

 《完全水中要塞 アカシック3》の能力により、あらゆる呪文をコストを支払わずに唱えることができるようになることで、手札補充呪文を、《魔刻の斬将オルゼキア / 訪れる魔の時刻》の呪文面を2枚使うことでループする。
 そして《ラルド・ワースピーダ/H.D.2.》を手札に加えた後は、≪H.D.2.≫を繰り返し使うことで相手のライブラリアウトによる特殊勝利を目指す至極単純なデッキである。

 この最速のパターンこそ、今まさにやっすーが行っている≪神秘の宝剣≫から≪ナウ・オア・ネバー≫をプレイし、《森夢龍 フィオナ・フォレスト》から《完全水中要塞 アカシック3》を踏み倒すパターンだ。

――つまり、ツムツムに残されたターンは次の4ターンのみという可能性もあるということ。

 【フィオナアカシック】は踏み倒しメタ、呪文メタに弱い反面、「決まれば勝ち」を地で行くデッキタイプである。
 しかしながら、一方で【水闇魔導具】の踏み倒しメタは、殿堂入りの《ガル・ラガンザーク》のみ。

 ツムツムは意を決し、デッキの核である《堕∞魔 ヴォゲンム》を場に出すと、あくまで「コンボパーツが揃っていない」という前提で≪凶鬼98号 ガシャゴン≫でシールドをブレイク。

 そしてターン終了時、ツムツム《「無月」の頂 $スザーク$》を宣言し、《堕∞魔 ヴォゲンム》の能力で大量のカードが山札から墓地に置かれるやいなや、宣言済みの《「無月」の頂 $スザーク$》が場に出ることで、やっすーの手札を奪いに行く。

 目的は当然《森夢龍 フィオナ・フォレスト》ないしは《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》

 「上から2枚目で」と宣言した手札が公開される緊張の一瞬――捨てられたのは《卍月 ガ・リュザーク 卍 / 「すべて見えているぞ!」》

 後は「コンボパーツが揃っていない」というわずかな望みを神に祈るしかなかったツムツムだが…

「≪ナウ・オア・ネバー≫、《森夢龍 フィオナ・フォレスト》を場に出します」

 神はやっすーの手に宿っていた。

 慣れた手つきで山札を掘り進め、≪訪れる魔の時刻≫と≪H.D.2.≫のループを証明。

 そして、ツムツムの山札は消し飛んだ。

ツムツム 0-1 やっすー 

Game 2

先攻:ツムツム  先攻はGame1で敗北したツムツム
 2ターン目に《堕呪 バレッドゥ》を唱えるものの、なんと3ターン目のアクションはなく、やや焦りの表情が見える。

 ひるがえって、やっすーは2ターン目に《巨大設計図》を唱え、順調な滑り出しを見せたものの、3ターン目も《超七極 Gio / 巨大設計図》の呪文面を唱えるにとどまり、マナ加速を絡めた最速の動きを繰り出すには至らなかったようだ。

 そして、4ターン目、《堕∞魔 ヴォゲンム》をプレイしたツムツムは、ターン終了時に2枚の《「無月」の頂 $スザーク$》を宣言。
 《「無月」の頂 $スザーク$》の手札破壊によりコンボパーツを落とすことを試みるツムツムだったが、やっすーの手札から落とされたのは《卍月 ガ・リュザーク 卍 / 「すべて見えているぞ!」》《黒豆だんしゃく / 白米男しゃく》の2枚。

 先ほどと同様悔しい表情を浮かべるツムツムだが、しかしGame1とは違いまだ猶予があるのは確かだ。

 なぜなら返しのターンでもやっすーのマナは4枚。実際にやっすーのプレイも《レレディ・バ・グーバ / ツインパクト・マップ》《「根性」の頂 メチャデ塊ゾウ / 「大親分、ここにあり!」》の呪文面のみにとどまり、手札とマナを伸ばすも、このターンで決めきることはない。

 この間、ツムツムの2体の《「無月」の頂 $スザーク$》それぞれがやっすーの呪文墓地に置かれるたびにドローをする。
 単純なリソース獲得行為になることはもちろん、《神の試練》の条件達成の布石にもなるからだ。

 5ターン目開始時、見れば両者の手札の枚数差が異様なほど開いていた。

 盤面をさらに盤石にせんと≪堕呪 ブラッドゥ≫、《堕呪 バレッドゥ》をプレイし、《ガル・ラガンザーク》を出すことまで成功したツムツムは、あることに気づいた。

「…あ、そういうことか」

 自身のした致命傷になりかねないプレイミスに気付いてしまったツムツム

――そう、気づけば山札の枚数は残り3枚

 つまり返しのターンに≪H.D.2.≫をやっすーが唱え、山札が1枚になってしまえば、次のターンツムツムの山札切れにより敗北となってしまう。

 「やってしまった」とばかりに、一気に焦りの表情に変わるツムツムは、先のターンに出した《「無月」の頂 $スザーク$》2体では、このターンで攻めきれない以上、やっすーにターンを回すしかないと判断。

 またもや神に祈るしかないツムツム

 果たして、次ターンの開始時、やっすーの手札に《ラルド・ワースピーダ/H.D.2.》があったか、というと――なかったのだ。

 今度は勝負運をしかと手繰りよせたツムツム  続くターン《神の試練》を唱えて、ライブラリアウトでの敗北を回避したツムツムは、2体の《「無月」の頂 $スザーク$》《ガル・ラガンザーク》で万全を期しての攻撃。

 やっすーのシールドには1枚の≪「すべて見えているぞ!」≫のみ。
 《神の試練》の効果により追加ターンを獲得したツムツムの攻撃はやっすーの喉元に食らいついた。

ツムツム 1-1 やっすー


 下馬評では圧倒的に不利と言われるマッチアップ。ツムツムの勝負運とプレイングにより勝負は最終戦にもつれこんだ。

「ミラクルに近い1本だったな…でも次は後攻なんだよなー…」

 そう、当然ながら次の先攻はやっすー
 とはいえ、ツムツムも勝負を諦めるわけにはいかない。

「最終戦です。お互い悔いの残らないようお願いします」

 ヘッドジャッジの激励が掛けられ、この日最後の試合が始まった。


Game 3

先攻:やっすー


 先に動いたのは先攻のやっすー  Game 1、Game 2ともに《巨大設計図》をプレイした彼だったが、今回の彼の2ターン目のプレイも、《巨大設計図》  「マジかよ」と言いたげな表情のツムツムの心情は察するに余りあるだろう。  そして何より、今回手札に加わったのは《森夢龍 フィオナ・フォレスト》《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》
 コンボカード2枚が既に手中に集めきられてしまったのだ。

 ツムツムは≪堕呪 ブラッドゥ≫からのスタート。

 墓地の《巨大設計図》を山札に戻すことで、≪神秘の宝剣≫をはじめとする、マナブーストカードを少しでも遅らせようとする算段のようだが――

 しかして、3ターン目。  やっすーがプレイしたのは≪神秘の宝剣≫。

 まるでGame1のリプレイかのごとくシールドを綿密にチェックし《完全水中要塞 アカシック3》をマナへ。

 3ターン目のツムツムは、《堕呪 バレッドゥ》を唱えるものの、もはや打つ手なし。

 神は最後の最後まで、この福岡が地元のやっすーに味方したようだ。

 次ターンに≪ナウ・オア・ネバー≫を唱え、《森夢龍 フィオナ・フォレスト》から《完全水中要塞 アカシック3》が場に出ると、数多の呪文が飛び交う中、たどり着いた《魔刻の斬将オルゼキア / 訪れる魔の時刻》《ラルド・ワースピーダ/H.D.2.》

――最後に≪H.D.2.≫のループ証明が完了したところで、今宵の勝者が決まったのだった。 ツムツム 1-2 やっすー

CHAMPION:やっすー


 決勝戦はどんな時も劇的なドラマがあって、熾烈な攻防が繰り広げられるか、といわれれば、必ずしもそうではないかもしれない。

 実際、ツムツムは対戦後に負けるべくして負けた、と述懐。

 それほどまでに【フィオナアカシック】と【水闇魔導具】のマッチアップは相性差が出るといえるだろう。

 しかしながら、それでもなおここまで勝ち進んだやっすーの勝負運、そして、今日までにデッキ選択を選ぶに至った大局観は、やはり今日の勝者にふさわしいものに他ならない。

 この福岡という地元で、勝利の女神がほほ笑んだやっすーに最大限の賛辞を贈らせていただき、このカバレージを締めさせていただこう!

 おめでとうやっすー

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