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超CSⅦ横浜 決勝戦C席:かつん vs. あらすか

ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影者:瀬尾 亜沙子

 大会というのは、決勝戦に向けて収束するものだ。

 約3300人ものプレイヤーが参加したこの超CSでは、50種類以上のデッキがいたことだろう。彼らはそれぞれ自らが優勝するヴィジョンを夢想し、幾多の分岐を考え、困難を解決する手段を心の内に用意して会場にやってきたはずだ。だが、この決勝戦にはデッキは4種類しかない。すなわち、2人の「ヘブンズ・ゲート」(光自然と光水闇で違いはあるが)、2人の「火光水ゴスペル」と、1人ずつの「ファイアー・バード」「水闇COMPLEX」……その4つだけだ。

 では、この4つ以外を持ち込んだプレイヤーは間違いだったのだろうか?優勝する可能性の全くないデッキを持ち込んでいたのだろうか?そうは思わない。今回はこの結果に収束したというだけで、他の世界線だってありえたはずだ。どこかでたった一つでも歯車が違っていれば……たとえばおんそくの「ゲイル・ヴェスパー」や、あるいはみみみと紅蓮の「5Cスワン」のような奇抜なデッキが、この席に座っていた未来もあっただろう。

 しかし、それでも。この世界線、この私たちが生きるこの8月3日においては、チーム「3面三十路眼鏡」とチーム「おもちゃのアオキ2」との決勝戦に収束した。それだけは紛れもない事実なのである。

 ゆえに。このC席に座っているのも、超CSⅢ4位のほか関東エリア予選を優勝し2019年度の日本一決定戦に出場した経験を持つかつんと、対するあらすか以外にはありえないのだ。

 そしてそんな2人の対決は、奇しくもこのトーナメントにおいて最も頻発したであろうマッチアップの一つとなった。水闇COMPLEX vs. 火光闇ファイアー・バード……2週間前に発売した「超感謝祭 ファンタジーBEST」は、ここ半年間ずっと「マジック」と「アビス」の2強でほとんど動かなかったオリジナル環境のメタゲームを一瞬にして塗り替えた。ドラゴンのサポート種族として初期から存在する「ファイアー・バード」が、ここにきてその双方を鎧袖一触したのだ。

 そのあまりにも強力すぎるポテンシャルは発売直後からすぐに知れ渡り、各地のCSにおける上位を総なめした。発売週だけならばいざ知らず、その翌週もだ。だからこの超CSも、きっと多くのプレイヤーが打つ手なく「ファイアー・バード」に蹂躙されるばかりとなる……そう思われていた。けれども、そうはならなかった。「COMPLEX」が、「ヘブンズ・ゲート」が、「ゴスペル」が、それぞれの対策をもって肉薄した。トップ128時点での最多勢力は確かに「ファイアー・バード」だったが、決勝トーナメントが進むにつれてその割合は次第に減っていき、決勝の時点でついに使用者はあらすかただ一人となったのだ。

 したがって、あらすかは会場で最強の「ファイアー・バード」使いだ。そして対するかつんも、この時点で会場で最強の「COMPLEX」使いとなった。最強対最強。相性で言えば、100回やったら60回「COMPLEX」が勝つかもしれない。だがこの日、「ファイアー・バード」に負けた「COMPLEX」も会場内には無数にいたはずだ。試行回数を極限に増やせば、確率は収束する。だが、2本先取とはいえ決勝というただ一回、この瞬間、この刹那の一合で、相性などという言葉がどれほどの意味を持つだろうか?

 そして何より、これはチーム戦なのだ。かつんの隣にはtakiがいる。つい4ヶ月ほど前、同じチーム戦のGP2024-1st Day2で準優勝したばかりのtakiが真ん中のB席に座っていることがこの日の間中、精神的にも実際のプレイ相談の面でもどれだけ救いになっていたことだろうか。そんなtakiだけがこの席に座る6人の中で、日本一決定戦の出場権利を唯一獲得している。だからかつんは勝たなければならない。友の待つ舞台に追いつくために。

 それはあらすかの側も同じだ。3人とも群馬勢で、いつもの流れで結成したというチーム。A席のごんべえは2017年度の日本一決定戦に出場したばやし。の調整メンバーでもあった。東京や大阪のプレイヤーに、コミュニティの強さでは負けているかもしれない。それでも地元のCSで培った絆がある。だからあらすかは勝たなければならない。友とともにまだ見ぬ舞台に立つために。  縒り合い絡まり合った6つの運命の糸。それが決勝という舞台に収束し……ついに、最後の戦いが始まった。

Game 1

 予選順位の差で先攻はあらすか。まずは《龍后凰翔クイーン・ルピア》チャージでターンを終えるが、返すかつんは早くも《忍蛇の聖沌 c0br4》チャージから1ターン目《DARK MATERIAL COMPLEX》  だが、「ファイアー・バード」相手の《DARK MATERIAL COMPLEX》《雷炎翔鎧バルピアレスク》の安全な殴り先を作ってしまう諸刃の剣。ましてあらすかの先攻ともなればリスクはさらに高くなる。それでもかつんが迷わず1ターン目に送り出せたのはなぜか。

 その理由はすぐに明らかとなった。《ポッピ・冠・ラッキー》チャージから《ルピア&ガ:ナテハ》を送り出したあらすかに対し、かつんが《ブルー・インパルス / 「真実を見極めよ、ジョニー!」》チャージから送り出したのは《異端流し オニカマス》  対「ファイアー・バード」における完璧な布陣。かつんは自身がこの決勝という舞台に立てている理由を、後攻2ターン目にして早くも存分に見せつける。

 しかし、あらすかもこの程度の窮地は今日何度も乗り越えてきた。《アリス・ルピア》チャージから《ハッター・ルピア》を召喚して「ハイパーモード」に突入させると、攻撃時の「メクレイド」で《雷炎翔鎧バルピアレスク》を召喚!  そして《ハッター・ルピア》のブレイクが通ったのを確認すると、さらに《雷炎翔鎧バルピアレスク》で攻撃!《異端流し オニカマス》がいるため無駄な踏み倒しはせず、地上戦で対処を迫る形。そしてこの2枚目のブレイクも通る!

 こうなると対処を迫られるのはかつんの側……と、思われた。  だが、この日のかつんの勢いはあらすかを上回った。引き込んだのは《飛翔龍 5000VT》

 一応takiに相談するが、《ハンプティ・ルピア》の裏目もあるため返せる時に返すべきという判断に至ったのだろう。盤面ぴったり5体、後攻3ターン目の強烈な切り返しであらすかの布陣をリセットする!  しかもこの《飛翔龍 5000VT》《ハッター・ルピア》の効果で破壊されるとはいえ、それが逆に《DARK MATERIAL COMPLEX》のカウントを一気に6つにまで進めてしまう。そして返す先攻4ターン目にそう都合よく《アリスの突撃インタビュー》《龍后凰翔クイーン・ルピア》のセットを持ってはいなかったあらすかは、《アリス・ルピア》をチャージするのみでターンを返すことしかできない。

 さらにこれを見てかつんは《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》までをも戦線に追加する。《異端流し オニカマス》《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》。何よりカウントが7つにまで溜まった《DARK MATERIAL COMPLEX》。雁字搦めの状況で、あらすかにできることは《マジシャン・ルピア》《ポッピ・冠・ラッキー》と並べることくらいだ。

 やがて、ついに《DARK MATERIAL COMPLEX》が下に8枚目を敷いて起動する。《奇天烈 シャッフ》宣言「4」から残る3枚のシールドを全ブレイクしたのに対し、どうにか《ハンプティ・ルピア》の「G・ストライク」で食い下がってはみるものの、選ばれない《異端流し オニカマス》のダイレクトアタックを止める手段は、もはやあらすかには残されていないのだった。

かつん 1-0 あらすか

 この時点でA席のリルク対ごんべえはリルクが0-1。B席のtaki対月嶋はまだ1ゲーム目を対戦中だが、大量に並んだブロッカーを前にtakiが攻めあぐねており、雲行きが怪しい様子。つまり脇の2人が敗勢にある以上かつんとしては、1ゲームを先行したとはいえ絶対に負けられない状況である。

 そしてそれは、逆にあらすかにとっては絶好の好機を意味する。この不利マッチさえ覆すことができれば、脇の2人に対するこれ以上ない後押しとなる。

 互いに譲れないものを抱えたまま、2ゲーム目が開始する。

Game 2

 1ゲーム目と同様《龍后凰翔クイーン・ルピア》チャージからの立ち上がりを見せるあらすかに対し、かつんは《DARK MATERIAL COMPLEX》2枚という絶好の初手だが、今度は《DARK MATERIAL COMPLEX》をチャージのみでエンド。先ほどは《異端流し オニカマス》のバックアップがあったから出せたが、3ターン目の《ハッター・ルピア》の「メクレイド」を抑制できる材料がない状況では、《雷炎翔鎧バルピアレスク》から《アリス・ルピア》につながっての追加ターン獲得の材料になってしまう事態をケアしたのだろう……どこまでも「ファイアー・バード」というデッキを熟知している。さすがの練度だ。

 そしてそのままあらすかが《アリス・ルピア》チャージのみでターンを返したのに対し、かつんは《ブルー・インパルス / 「真実を見極めよ、ジョニー!」》チャージから《同期の妖精 / ド浮きの動悸》を送り出す。  とはいえ、それはすなわち「ファイアー・バード」側の動きを全く抑制できていないのと同義だ。

 返すあらすかはまず《ハンプティ・ルピア》を召喚して《DARK MATERIAL COMPLEX》2枚に《終止の時計 ザ・ミュート》《アーテル・ゴルギーニ》という手札から《アーテル・ゴルギーニ》を抜き去ると、さらにかつんが《終止の時計 ザ・ミュート》召喚のみでターンを返したところで《ハッター・ルピア》を送り出し、《ハンプティ・ルピア》をタップして「ハイパーモード」に突入してから攻撃に向かわせる!  だが、この「メクレイド」次第ではあわやそのまま決着というところで、めくれが芳しくなかったか登場したのは2枚目の《ハンプティ・ルピア》。それでも《DARK MATERIAL COMPLEX》《ブルー・インパルス / 「真実を見極めよ、ジョニー!」》《飛翔龍 5000VT》というラインナップから虎の子の《飛翔龍 5000VT》を奪い去ることに成功する……のだが、まだシールドブレイクが残っている。

 そしてこの《ハッター・ルピア》のブレイクが、皮肉にもすべてを真逆に覆すこととなってしまった。  踏み抜いたのは《忍蛇の聖沌 c0br4》

 これ自体は《ハッター・ルピア》の効果で即座に破壊されるものの、かつんは落ち着いて手札破壊で落とされていた《アーテル・ゴルギーニ》を蘇生すると、発動した《ハッター・ルピア》効果を逆用して《同期の妖精 / ド浮きの動悸》に置換することで、「メガ・ラスト・バースト」を能動的に誘発させる!

 さらに《アーテル・ゴルギーニ》の蘇生効果を先に解決して《異端流し オニカマス》《DARK MATERIAL COMPLEX》と蘇生してからの「メガ・ラスト・バースト」でアンタップ状態の《ハンプティ・ルピア》を手札に戻すと、気づけば盤面の状況はまるで1ゲーム目の再現だ。

 返すターンのかつんの追加クリーチャーこそ《電脳の女王 アリス / 不埒な再侵入》+2枚目の《DARK MATERIAL COMPLEX》と控えめなものの、そのまま《アーテル・ゴルギーニ》がタップ状態の《ハッター・ルピア》を処理しつつ《終止の時計 ザ・ミュート》がタップ状態の《ハンプティ・ルピア》に攻撃して自壊すると、《DARK MATERIAL COMPLEX》のカウントは早くも4つにまで達しているのに対し、気づけばあらすかの盤面は《ハンプティ・ルピア》1体のみとかなり厳しい状況に追い込まれてしまう。

 だが、そこで。

taki「負けました」

 唐突にかつんの耳に聞こえてきた報告は、B席のチームリーダー・takiからのまさかのマッチ敗北報告。とはいえまだ対戦は続いているようだが、1ゲーム目を落とした上で2ゲーム目に「ゴスペル」のtakiに対して月嶋が《聖霊超王 H・アルカディアス》を立てて「ハイパーモード」に突入したことで、事実上の詰みとなってしまったようなのである。

 一方、takiの敗北は月嶋の勝利を意味する。あらすかはこれを聞いて奮起したか、最後の抵抗を試みる。

 すなわち《雷炎翔鎧バルピアレスク》召喚、攻撃時《ボルシャック・モルナルク》踏み倒し!  ……だが、かつんは慌てずに《異端流し オニカマス》を指差す。破壊置換による耐性も、バウンス(手札戻し)に対しては効果がない。《ボルシャック・モルナルク》は無為に手札に戻っていき、《雷炎翔鎧バルピアレスク》がたった1枚シールドをブレイクしただけに終わる。

 そして、この一連で《DARK MATERIAL COMPLEX》のカウントが一つ多く進んだことで、すべての準備は整った。

 すなわち、《電脳の女王 アリス / 不埒な再侵入》《雷炎翔鎧バルピアレスク》に攻撃し、自壊。続けて《異端流し オニカマス》も自壊。これにより8枚目を吸い込んだ《DARK MATERIAL COMPLEX》が起動すると、《アリスの突撃インタビュー》をケアした完璧な殴り方で、そのままかつんがダイレクトアタックまで押し込んだのだった。

かつん 2-0 あらすか

Winner: かつん

 そこから程なくして、taki対月嶋もtakiの事前の報告通りの形で決着する。

 かつんは2-0で勝ち、takiは0-2で負けた。逆にあらすかは0-2で敗北し、月嶋は2-0で勝利したことになる。すなわち。

 リルク対ごんべえ。

 A席では1ゲーム目をごんべえが、2ゲーム目をリルクが勝利し、ちょうど3ゲーム目が始まるところだった。

リルク「いや、対戦相手の引きがめっちゃノッてるんだって!」 かつん「うん。今言うことじゃないかもしれないけど……頑張って

リルク「おかしいだろこのチーム!」

 そう。

 この決勝戦がどちらの結末に収束するのかは……A席の最終ゲームの結果に委ねられたのだ。

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