超CSⅧ大阪 決勝戦C卓:Kαit0 vs. さくやま
ライター:鈴木 響太(ボルスズ)
撮影:瀬尾 亜沙子
"3本束ねた矢が折れぬのなら、束ねられた3つの力はどれほど強靭な力になるのだろうか?"かの有名な毛利元就の教訓、「三矢の訓」を踏まえた、デュエマらしい問いかけである。
奇しくも同じ 3本の結束となるデュエル・マスターズチーム戦だが、ことここにおいては結束の力そのものではなく、力の性質に対する疑問が発生する。この訓をチーム戦になぞらえた時、それぞれ違う輝きを持った力の結束か、はたまた同じ性質を持った力の結束か、果たしてより強固なものはどちらになるだろうか?
片や 3面別デッキ、【火光闇ファイアー・バード】、【水単サイバー】、【自然単キャベッジ】という今大会を物語るかのような構成で挑むのはDRIFTERS。環境を読み切り、メタゲームを完璧に体現したような非のつけ所がないチームビルドは、もはや完成系の風格すら感じさせる。
此方、3面同デッキ、【4cディスペクター】に分類されるデッキを独自チューンで持ち込んだのは特攻の卓。DRIFTERSとは対照的に、《逆転の影ガレック》の殿堂以降ほぼノーマークのアーキタイプを、ベースのコアカードは揃えつつも、それぞれ個性を散らした一点ものを持ち込んだ。その特異性が、ギャラリーに異様な興奮を与えていたことは言うまでもない。
それぞれ真逆の性質をいく2つの結束。環境の答えが時代を示すのか、はたまたチーム戦の答えをフロンティアスピリッツが切り拓くのか。
Kαit0:「ふーっ……。」
Kαit0:「こんな朝イチからこの時間まで来てしまった。」
昂る心を落ち着かせようと、言い聞かせるように吐露する。それもそのはず。超CSで全国大会への切符が得られるのは、優勝した1チームのみ。普段とは違い、横には頼もしい仲間がついているとはいえ、この状況で緊張しないものはいないと言っていいだろう。
時刻は19時を回り、静けさを取り戻した会場は撤退の準備も同時に進んでいた。フィーチャー席を囲っていた壁も取り払われ、開放感のある決勝卓に、パチン、と気合を入れ直すべく頬を叩くKαit0の音が響く。
数時間前まで響いていた歓声も、シャッフル音も今は遠い記憶。ただ、目の前の一試合が全てだ。
総勢1200チームが集った今大会。3600本の矢の中から、選りすぐりの6本が集う決勝戦。どちらの結束がより強固なものであるか、その答えに迫る対戦が今、始まる。
Game 1
順位先攻により、DRIFTERSのKαit0のターンから。のっけから《大長老 アプル / 「わたしが自然文明のプリンセス?」》の呪文面を放つと、様子見と言わんばかりに《クイーン&かぼちゃうちゃう》を手札に加える。
対するさくやまのマナチャージは《プリンセス・パーティ ~シラハの絆~》。このチョイスは絶妙だ。環境への理解があるものであれば、デッキ判定で真っ先に疑うのは【火光自然ドリームメイト】。特攻の卓が持ち込んだ【4cディスペクター】とは真逆の性質を持ったデッキだと誤認しかねない。事実、これを見たKαit0は少々訝しげな表情を浮かべつつも、隣席の賽盗に対面が暫定的に【ドリームメイト】であることを告げつつ、このゲームの方針を固めていた。
相談の結果、《クイーン&かぼちゃうちゃう》はキープ。次ターンに《コレンココ・タンク / ボント・プラントボ》とくっ付けて使う算段で、このターンは《イチゴッチ・タンク / レッツ・ゴイチゴ》をプレイしてターンを返すことに。
受けてさくやま。このターンのマナチャージは《終末縫合王 ミカドレオ》。明らかに【ドリームメイト】のそれではないカードの登場に、Kαit0も認識を改める。
マッチアップの都合、「分水嶺は《地封龍 ギャイア》の着地」。両者の認識が一致し、互いにマナ加速による準備を進める展開へと移行した。
迎えた5ターン目。ターンチャージでも8マナと、わずかに《地封龍 ギャイア》へ届かないKαit0の元に値千金の《キャベッジ・セッションズ / ソイルピンプ・キャベッジ》が手繰り寄せられる!
無事に着地した《地封龍 ギャイア》を前に、さくやまの纏う空気が一変する。───それは蜃気楼のごとき着地点、偽りの甘き罠に獲物をかけた、ペテン師の笑み。
待ち構えていたさくやまのプレイは、《真気楼と誠偽感の決断》。
一般的に、このマッチアップは【4cディスペクター】側が不利との見方も少なくない。クリーチャーコントロールが主軸となる資質上《地封龍 ギャイア》を退かす手段が少ないのは当然のこと、マナが潤沢であればトップ解決を許すことも少なくないからである。しかし、ことこの状況においてはその限りでない。伸び切らないマナ、抱えられていない手札、そして頼みの綱の撤退。その全てが叶う状況を、さくやまはゲーム開始から今か今かと待っていた。
ペテンは現実に。手札交換とシールド化の処理を済ませ、《天災 デドダム》の追加投入で次なる布石を打ち、ターンを終了。
こうなるとKαit0は相当に苦しい。今引きの《ジャンボ・ラパダイス》も《うららかもも&ミノマル ー献身のヒロインー》2枚のヒットに終わり、流石に頭を抱える。
Kαit0:「なにやってんだ……。」完全にゲームはさくやまのペースへ。《ブレイン・スラッシュ》から事前に墓地へ仕込んでおいた《砕慄接続 グレイトフル・ベン》を呼び出すと、続くターンではマナから《終末縫合王 ミカドレオ》が降臨!

ディスペクターの本領を前に、Kαit0は投了を選択した。
Kαit0 0-1 さくやま
Game 2
Kαit0:「トピアさんのデッキですか?」デッキの認識をすり合わせるかのように会話を挟みながら準備を進める。どうやら直近で開かれたCSの結果から推測を始めたようだ。
さくやま:「お知り合いなんですか?」
Kαit0:「実は身内なんですよね。」
さくやま:「あー。確かに中四国あたりで勝ってますよね。」
YesともNoとも取れる解答、情報の多くを煙に巻いたまま、2本目もKαit0先攻でスタートした。
この時点で、A卓は【ファイアー・バード】が一本目優勢、B卓は【サイバー】が王手の状況。チームメイトの奮闘に、Kαit0も追いつきたい。
今回も《大長老 アプル / 「わたしが自然文明のプリンセス?」》から入るが、一本目を踏まえてここは《キャベッジ・セッションズ / ソイルピンプ・キャベッジ》を回収。
多色を逃すさくやまを受けて、続く2ターン目もKαit0は≪「わたしが自然文明のプリンセス?」≫をプレイ。
それもそのはず。肝心要のマナ加速を引けていないのだ。高速コンボでも、リソース勝負でも、とにかく序盤からマナは伸ばしたい。公開された 3枚の中から、お目当ての《コレンココ・タンク / ボント・プラントボ》を見つけると、迷わず手札へと加え、 3ターン目もそのままプレイ。2マナブーストをしっかり決めていく。
さくやまのターン。ここまでほぼ相談なしで進んだC卓だったが、アクションへの確認が入る。《天災 デドダム》を出すための水単色が1枚しかないのだ。とはいえ、こちらも一刻も早いマナ加速が求められる。流石に《天災 デドダム》を優先するだろうと、マナへ置かれたカードは……《ホーガン・ブラスター》。
Kαit0:「ホーガンはやばすぎるな。」
あわや世紀の運ゲーが始まりかねないカードチョイスに、思わずKαit0も笑みをこぼす。《CRYMAX ジャオウガ》を手札に、マナと墓地へは《砕慄接続 グレイトフル・ベン》を送り込み、フィニッシュの手筈を整えた。
【自然単キャベッジ】を操るKαit0にとって、勝負の4ターン目。手札には《地封龍 ギャイア》と《クイーン・オブ・ネイチャー》。裏目の少ない選択肢はやはり《地封龍 ギャイア》なはずだが、どうしても脳裏に先の一戦がチラつく。
《真気楼と誠偽感の決断》。手札1枚分状況は違うとはいえ、もし単体着地を除去されてしまうと、一気に流れを持っていかれることは想像に難くない。
これこそが《真気楼と誠偽感の決断》の真骨頂。多種多様な選択肢で状況を選ばない利便性により、持っていようがいまいが、強く意識せざるを得ない。
持っていないことを祈って、《地封龍 ギャイア》を出すか。はたまた、除去を受けても継承で済むよう、盤面を広げられる《クイーン・オブ・ネイチャー》を出すのか。
Kαit0:「相手のデッキわかってるし、こっちでいくよ。」
方針の報告をB卓のじゃーまんへと行い、召喚されたのは《クイーン・オブ・ネイチャー》。
マッハファイターにより攻撃時能力が誘発する。≪コレンココ・タンク≫や《超時空罠 デンジャデオン / 「トラップ?ちがうわ、お願いしてるだけ!」》など、リソースに繋がるカードがヒットすればリターンは大きいが、現れたのは…… ≪大長老 アプル≫ 。
この捲りは単なるハズレにとどまらない。踏み倒しに呼応して、ターン終了時に宣言されたのは《流星のガイアッシュ・カイザー》!
いよいよリソースに差がつき始める。この対戦はもはや、さくやまの支配下にあると言っても過言ではない状況にあった。とはいえ、このターンのさくやまはまだ5マナ。《クイーン・オブ・ネイチャー》の的を作らないために、《流星のガイアッシュ・カイザー》をチャンプアタックさせてターンを返す。
このままでは終われないKαit0。祈りに応えたのか、デッキトップから駆け付けたのは追加の《キャベッジ・セッションズ / ソイルピンプ・キャベッジ》!満を持して《地封龍 ギャイア》を呼び出すと、さらなる展開力を求めて《クイーン・オブ・ネイチャー》でW・ブレイクへ。
いよいよ手札がない、マナも伸び切っていない。喉から手が出るほど欲しいリソースカードは……来なかった。
現れたのは《クイーン&かぼちゃうちゃう》。この局面ではほぼ機能しない1枚と言ってもいい。
Kαit0:「クイーンが、応えてくれないな……。」
S・トリガーこそ着地しない《霊宝 ヒャクメ-4》1枚で済んだとはいえ、この状況は壊滅的。この2ターンでさくやまに4枚分の手札補充を許してしまっている。
それが意味するのは、ペテン師の誘致に他ならない。
さくやまのターン。返す刀で放たれたのは、全てを奪うかのような《真気楼と誠偽感の決断》。大地を統べる王も、自然文明の女王も無力化され、必勝の展開は再現された。
トップドローをそのままマナへ送るKαit0に対し、さくやまのプレイしたカードはこのデッキの裏テーマカード、《ヘブンズ・ゲート》。
現れたのは2枚のオラクル、《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》と《Disコットン&Disケラサス》。さくやま:「今何マナですか?」
進捗を確認し、宣言されたのは≪超時空罠 デンジャデオン≫。この宣告はあまりにも痛手だ。
現時点でKαit0は7マナ。ビッグアクションにはまだ時間がかかる。マナの加速と実質的な手札確保を兼ね備えるこのカードの停止は、ほぼゲームエンドの宣告に等しい。
澱む。縋るようにプレイされた≪「わたしが自然文明のプリンセス?」≫によって拾った≪ボント・プラントボ≫が2マナブーストに失敗。
Kαit0:「もうやだ……。」
さくやまが、ゆっくりと引導を渡すかのように仕掛けに入る。
7コストでプレイされたのは《CRYMAX ジャオウガ》。強制的な鬼タイム化によって、最後の砦となる≪「トラップ?ちがうわ、お願いしてるだけ!」≫を叩き落とし、もはや“流れ”すら支配したかのような錯覚さえ覚える。
《CRYMAX ジャオウガ》の攻撃に、トリガーしたのは≪「トラップ?ちがうわ、お願いしてるだけ!」≫!まさかの2枚目の登場にも、さくやまは動じない。
そう、攻撃可能なクリーチャー、《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》は選べない。ぐったりとうなだれ、握手のために差し出されたKαit0の右手によってC卓は幕を下ろした。
Kαit0 0-2 さくやま
このタイミングでは、チーム戦績は0−1。A卓、B卓は共にDRIFTERSが1本先取している。ゲームはまだ終わらない。どちらに傾いてもまだまだおかしくない状況だ。
喜びも悔しさも押し殺し、両者は仲間の助力に切り替えた。
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Kαit0 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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さくやま 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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