リモートデュエマスペシャルトーナメント 準々決勝 dotto vs. よしゆき
ライター:Daisuke Kawasaki
Discord上で開催されている今回のRDST。
大会参加者は、自身の試合が終わると、ロビーとされているボイスチャットに集まり、雑談をしたりして時間を過ごしていた。
そして、トップ8進出者が確定し、準々決勝の組み合わせが発表されるとよしゆきが声を上げた。
よしゆき 「DMGP9thの幻の準々決勝じゃん!!」
カリヤドネループを持ち込んだイヌ科が覇者となったDMGP9th。
その時、共にデッキを調整し、環境のソリューションとして持ち込んだ一団がいた。
競技デュエマ界で最強の調整チームは?と聞かれたらその名を挙げる人も多いであろう「まらかっち」だ。
今回もまらかっちのメンバーは、その多くが火光マジボンバーを持ち込んでいる。それはこの準々決勝の席に座るdottoとよしゆきもそうだ。
試合前に談笑する二人の会話はいつの間にか、今日の大会の話になっていた。
大会の台風の目となっていた《ドラグ変怪》と《父なる大地》のコンボデッキ、『ドラグ大地』についてや、YOSHIKI.Nが使っていたカリヤドネループに当たった話、そしてdottoがギャラクシールド相手にものすごい時間をかけて対戦をしていた話など、だ。
そして、なぜか亜藩士はお互いのデッキについての話になる。
よしゆき「俺がなに使ってるかしってます?」
dotto「わかんないけど、安いデッキ使ってそう」
よしゆき「安いとかじゃなくて、ちゃんとメタを読んで持ってきましたよ」
というわけで、二人のデッキは実は同じなのだが、そのことはまだdottoはしらない。
今回、まらかっちのメンバーは共に調整をした、というわけではないらしい。
Game 1
先攻のdottoは《U・S・A・ELEKI》をチャージ。対するよしゆきは《GOOOSOKU・ザボンバ》をチャージする。dotto「ザボンバ?」
それを見て、dottoは声を上げる。配信されているdottoのデッキをよしゆきは大体予測できているが、前述のようによしゆきのデッキが何かをdottoは全く知らない。
こういう時、dottoは最大限可能性の想像を広げる。それがdottoの強さのスタート地点だ。後のインタビューでも、この時点では同系ではない可能性も検討したという。
長考したのちに、《U・S・A・ELEKI》の2枚目をマナチャージしてターンを返す。一方のよしゆきは《U・S・A・NIKER》を召喚する。
それを見てdottoは安心したようにこう言った。
dotto「やっぱ、そう?」
基本的には同系であることを確信したdottoは《BIRIBIRIII・ビリー》を召喚する。対するよしゆきも《BIRIBIRIII・ビリー》を召喚してターンを返す。
続くターンにdottoは《GOOOSOKU・ザボンバ》を召喚すると、バトルゾーンに出た時の能力で山札の上を見ると少考し、山札の下に送り込む。そして、《GOOOSOKU・ザボンバ》でアタックし、今度はマジボンバーで山札の上を見ると「あー」と一言。
これに「なんのあー、ですか」と聞くよしゆきだが、答えはすぐにわかる。それは《U・S・A・BINTA》。これによってよしゆきの《U・S・A・NIKER》が破壊されたのみならず、《BIRIBIRIII・ビリー》の攻撃条件を満たす事となる。この《BIRIBIRIII・ビリー》のマジボンバーでは山札の上から2体目の《BIRIBIRIII・ビリー》を呼び出してターン終了。
よしゆきも4マナで《GOOOSOKU・ザボンバ》を出すと、山札の上を見て、こちらはキープ。dottoの《BIRIBIRIII・ビリー》へと殴り返しつつマジボンバーをするのだが、ここでは手札から2体目の《BIRIBIRIII・ビリー》を呼び出す。続く《BIRIBIRIII・ビリー》でのシールドへのアタックも、手札から《GOOOSOKU・ザボンバ》の2体目を呼び出し、山札の上はキープしたままだ。
2体目の《GOOOSOKU・ザボンバ》のアタックでついに山札のトップから《モモダチ キャンベロ》がついにバトルゾーンにでる。この《モモダチ キャンベロ》は2体目の《BIRIBIRIII・ビリー》にスピードアタッカーを与える。
一気に盤面を展開されつつダメージを押し込まれたdottoは、この《GOOOSOKU・ザボンバ》を《BIRIBIRIII・ビリー》とブロックする。
しかし、よしゆきは構わず2体目の《BIRIBIRIII・ビリー》でアタックすると、マジボンバーで《巡巡-スター》を呼び出し《GOOOSOKU・ザボンバ》をアンタップしながらシールドをブレイク。そして、起き上がった《GOOOSOKU・ザボンバ》で山札の上から《モモダチ キャンベロ》を追加しつつdottoの《GOOOSOKU・ザボンバ》と相打ちする。
まだアタックできるクリーチャーはいるものの、次のターンでも十分と考えよしゆきはターンを返す。
盤面をキレイに掃除され、《U・S・A・BINTA》をコントロールするのみとなったdotto。しかし、ここで何もしなければ次のターンに負けてしまうだけだし、なにより自分が勝てる可能性が無い。
《瞬閃と疾駆と双撃の決断》を使用すると、手札から《燦燦-ザサン》を呼び出しスピードアタッカーを与える。そして、この《燦燦-ザサン》のアタックでのマジボンバーでは手札から《U・S・A・BINTA》を呼び出し、よしゆきの《BIRIBIRIII・ビリー》を破壊する。
これでも、dottoのシールドが3枚に対して、よしゆきの攻撃できるクリーチャーは5体とすでに打点は足りている。
もはや、dottoのデッキを知らないよしゆきが何らかのトリガーをケアして《燦燦-ザサン》へと殴り返し、その上でさらに1枚《U・S・A・BINTA》がトリガーしなければダイレクトアタックは免れない。よしゆきが何もカードをプレイしていない現状でも、だ。
そして、よしゆきが《瞬閃と疾駆と双撃の決断》をプレイしさらなる過剰打点となったことでdottoのわずかな望みは絶たれたのだった。
よしゆき 1-0 dotto
競技デュエマの歴史上でまらかっちメンバーの名前が無い大会なんてない、というほどに彼らは話題を作っている。
前述のDMGP9thも最終的にイヌ科が覇者となり、まらかっちの物語として幕を閉じた。
だが、決勝ラウンドが始まって、準々決勝になるまで、話題の中心だったのはまらかっちではなかった。
話題の中心だったのは、中学生プレイヤー、「リアルボルツ」ことリヒッコチュリス。
決勝1回戦において、人気・実力の両方においてトッププロであること間違いなしの「天下二槍」ZweiLanceとの対戦でフィーチャー席に呼ばれたリヒッコチュリスは、まさにボルツを体現したかのような3ターンキルで勝利しDMGP9thの話題の中心となった。
そして、順調に勝ち上がったリヒッコチュリスは、トップ8のかかった決勝4回戦で再びフィーチャー席に呼ばれることとなる。
対戦席に座るのは、2017年全国王者にして「魔王」の二つ名を持つ、誰もが最強と認める男、dotto。
リヒッコチュリスはZweiLanceに続いてdotto相手にもジャイアントキリングを達成し、一躍時の人となった。
デュエマの未来を担っていくであろう若きヒーローの誕生を、誰もが称賛した。
だが、その勝利を素直に賞賛できなかったであろう男が一人いた。
それがよしゆきだ。
よしゆきが、リヒッコチュリスを賞賛していなかったわけではなかっただろう。だが、その賞賛の気持ちよりも悔しさが大きかったはずだ。
なぜなら、彼はともに戦ってきたdottoとの熱い戦いを準々決勝で世に伝えたい、そう、心から願っていたからだ。
Game 2
先手のdotto、後手のよしゆきは共に《U・S・A・ELEKI》をチャージしてターンを終える。そして、2ターン目も《U・S・A・NIKER》を召喚して終えた。同じ動きをしているならば、先に動ける先手の方が有利である。だが、ここでdottoは長考の末に《U・S・A・ELEKI》をプレイするのみでターンを終える。一方のよしゆきも3ターン目に用意したクリーチャーはdottoの攻勢に備えた《BIRIBIRIII・ビリー》。当然、アタックせずにターンエンド。
ここまで静かな展開を見せていたdottoだったが、《正義の煌き オーリリア》を召喚すると、ラビリンス達成も兼ねて《U・S・A・ELEKI》でアタックし、そしてマジボンバーで呼び出した《U・S・A・BINTA》で《BIRIBIRIII・ビリー》を破壊する。
ここまで順調に動けば、一気に攻め込みたくなってしまうのが人情だが、Game 1での経験からこのマッチアップが細かいアドバンテージの奪い合いが中心となる事を理解したdottoは、自身の手札がゼロなのも鑑みて無用によしゆきに手札を与えるのを嫌い、ここでターンを終える。ターンの終わりに《U・S・A・ELEKI》はアンタップし、よしゆきは何らかの仕掛けを用意しなければdottoの盤面に触る事ができない。
先手後手の展開さをひっくり返しうる《瞬閃と疾駆と双撃の決断》をも《正義の煌き オーリリア》のラビリンスで封じられているよしゆきは、まずは《GOOOSOKU・ザボンバ》を召喚、山札の上を確認するとそれを固定する。
そして、《GOOOSOKU・ザボンバ》のマジボンバーで固定した《BIRIBIRIII・ビリー》を展開し、ラビリンスを解除するとともに、次ターン以降の自身の展開に期待できる盤面状況を作り出す。
細かい打点とアドバンテージの奪い合いでひりつくような戦いの中、dottoは2体目の《正義の煌き オーリリア》を召喚し、《U・S・A・ELEKI》でアタックし、手札から続く《U・S・A・ELEKI》をマジボンバーする。よしゆきはこれをブロックしないがトリガーもない。
さらにスペアができた《正義の煌き オーリリア》で《GOOOSOKU・ザボンバ》アタックして相打ちしたのちに、よしゆきのマナゾーンに置かれたカードを確認し、長考する。結果、dottoはまだよしゆきに選択肢を与えたくないと考え、ターンを終了して《U・S・A・ELEKI》をアンタップする。
よしゆきは《音奏 プーンギ》を召喚した後に、《瞬閃と疾駆と双撃の決断》をプレイしようとするのだが……これは《正義の煌き オーリリア》のラビリンスによって封じられている。仕方なく《制御の翼 オリオティス》を召喚すると、マジボンバーで《正義の煌き オーリリア》を出してアタックするのも加えて一気に攻撃しdottoのシールドをゼロにするのだが……最後の一撃を決めるには、1枚足らない。
なんとかターンが帰ってきたdottoだが、《制御の翼 オリオティス》と《正義の煌き オーリリア》という攻撃を防げるクリーチャーが2体並んだ状態で、さらによしゆきにはシールドが3枚ある。
dottoはまず、《閃閃-ダセンゼ》と《U・S・A・NIKER》を召喚すると、《U・S・A・NIKER》のバトルゾーンに出た時の能力で《閃閃-ダセンゼ》をスピードアタッカーにすると、さらにすでにバトルゾーンにいた《U・S・A・NIKER》のアタックで《U・S・A・NIKER》をスピードアタッカーにすることで将来的に打点を増やす。
この《U・S・A・NIKER》の攻撃は《正義の煌き オーリリア》で止められるが、構わずdottoはマジボンバーで《U・S・A・ELEKI》を追加し、今度はこちらに《U・S・A・NIKER》でスピードアタックを与え、攻撃時のマジボンバーでは《巡巡-スター》を呼び出してアンタップと、とにかく打点を増やしていく。
こうして、限界まで打点を増やす作業をしていった結果、最後は《正義の煌き オーリリア》をタップする作業を残すのみだった。
dotto 「もう一枚なんかあったら、負けてるし、エンドするの怖かった」
よしゆき 1-1 dotto
試合開始前の会話の中に、当然DMGP9th準々決勝の話もあった。
座って最初に彼らがしたのはその話だったのだ。
よしゆき「いやぁ、GP9thで当たれなかったからなぁ」
dotto「かたきはとってもらったから」
よしゆき「ギリギリの戦いでしたけどね」
dotto「まぁ、かたきを取ってもらえただけで十分ですよ」
続いて、冒頭にあるように互いのデッキの話や今日当たった試合の話になった。
そして、互いのデッキをカットし、よしゆきのDiscordが開始前に落ちるなどのトラブルも含みつつ、試合開始を待った。
そこでdottoは口を開いた。
dotto「でも……」
Game 3
試合開始前に、dottoがつぶやく。dotto「運命の3本目」
先手のよしゆきは《巡巡-スター》をチャージ、対するdottoは《正義の煌き オーリリア》をチャージする。続くターンによしゆきは《制御の翼 オリオティス》を召喚し、dottoは《U・S・A・NIKER》を召喚する。
先手後手ではよしゆきが先手を取っているものの、盤面の攻めっ気としてはdottoの方が攻め手となっている盤面だが、この状況をひっくり返すためによしゆきがプレイしたのは《瞬閃と疾駆と双撃の決断》。《U・S・A・ELEKI》をバトルゾーンに出すと、これにスピードアタッカーを与え、即マジボンバーを発動させると、《BIRIBIRIII・ビリー》を手札からバトルゾーンに出し、ターンを終える。
枚数のアドバンテージも大事だが、この同系の対戦では盤面でのアドバンテージを取り合うのが何よりも大事だ。
そして、ここの席に座ってるのは、かつては火光轟轟轟ブランドで名をはせ、そして火光水ドギラゴン剣で日本王者となったdottoだ。
ミッドレンジ域での盤面の取り合いをさせたら文字通り日本一の男なのだ。
dottoは長考に長考を重ねた結果、こちらも《瞬閃と疾駆と双撃の決断》をプレイし、バトルゾーンに出すモードを2回宣言する。バトルゾーンに出したのは《U・S・A・ELEKI》と《閃閃-ダセンゼ》。次の自ターンの矛となる《U・S・A・ELEKI》と、次のよしゆきのターンを守り抜く楯となる《閃閃-ダセンゼ》、矛と盾も持ち主が同じなら矛盾しない、dottoはターンを返す。
ターンが帰ってきたよしゆきは、《U・S・A・NIKER》を召喚すると、さらに《U・S・A・ELEKI》でアタックしマジボンバーでさらに《U・S・A・ELEKI》を追加する。だが、これ以上の打点は《閃閃-ダセンゼ》の召喚制限によって形成できず、そもそもよしゆきの手札もゼロなので、ここで攻撃を終える。
dottoはマナチャージして4マナ。この4マナで《GOOOSOKU・ザボンバ》を召喚し、山札のトップを確認するとそれをキープ。《GOOOSOKU・ザボンバ》でアタックしてマジボンバーで明かされたそのトップは《巡巡-スター》であり、よしゆきの《U・S・A・NIKER》はタップされてしまう。そして、そのタップした《U・S・A・NIKER》へと今度は《閃閃-ダセンゼ》でアタックする。これに対してブロックはなし。
まだ殴れるクリーチャーのいるdotto。ここは踏み込むべきターンなのか。長考の末に意を決して《U・S・A・ELEKI》をタップする。そして、マジボンバーで確認した山札の上は《BIRIBIRIII・ビリー》。これにはよしゆきも「うわ、つえー」と思わず声を上げる。
これで互いにシールドが3枚になった所で、dottoはターンを終え、最後にアタックした《U・S・A・ELEKI》をアンタップする。
よしゆきも引き当てた《GOOOSOKU・ザボンバ》を召喚すると、山札の上のカードを下に送る。そしてそのまま《GOOOSOKU・ザボンバ》で《GOOOSOKU・ザボンバ》へと攻撃、マジボンバーで山札の上を見ると、これをそのままキープする。おそらく《GOOOSOKU・ザボンバ》のマジボンバーで出せないが強力なカードがトップに残っているのか。手札もないので、マジボンバーはなし。
続いて《BIRIBIRIII・ビリー》で本体へとアタック、今度のマジボンバーでは無事《GOOOSOKU・ザボンバ》がバトルゾーンにでる。そして、この《GOOOSOKU・ザボンバ》で《閃閃-ダセンゼ》へとアタックするのだが、dottoはこれを《BIRIBIRIII・ビリー》でブロックする。よしゆきはターンを終了するしかない。
ここからはdottoの詰めるターン。
まずは《正義の煌き オーリリア》を召喚。続いて《U・S・A・ELEKI》でアタックし、《巡巡-スター》をマジボンバーすると《U・S・A・ELEKI》をアンタップする。続いて《U・S・A・NIKER》でアタックし《正義の煌き オーリリア》へとスピードアタッカーを与える。この《U・S・A・NIKER》はブロックされるが、続く《U・S・A・ELEKI》は《音奏 プーンギ》をマジボンバーしつつ、よしゆきの最後のシールドをブレイクする。
「魔王」の行く先を止めるものは、もう何もなかった。
よしゆき 1-2 dotto
dotto「でも、かたきを討ってもらったのはうれしかったけど……やっぱ自分で勝ちたかったな」
試合開始前のdottoの言葉はよしゆきへの宣戦布告であったようにも感じられた。
可能性への視野の広さ、攻めたい時にブレーキを掛けられるが、いざ攻める時思い切りよく攻められる押し引きのうまさ。dottoの強さを表現するなら、いくらでも言葉を紡ぐ事はできるだろう。
試合終了後、dottoに対火光マジボンバー同系のプレイングについて聞いた所、経験数が少なかったので、試合中に少しづつ感覚を調整していたと語った。
その順応力だけでも、dottoの強さの理由と言っていいかもしれないが、でもdottoはこう言葉を続けた。
dotto「まぁ、でも勝てるようになるために1本落としてますからね。まだまだです」
勝利に対するストイックさ。
それこそがdottoの強さの源なのは間違いない。
TM and © 2024, Wizards of the Coast, Shogakukan, WHC, ShoPro, TV TOKYO © TOMY