デュエル・マスターズ

メニュー
商品情報

リモートデュエマスペシャルトーナメント 第3回戦:L vs. イヌ科

ライター:伊藤 敦 (まつがん)



リモート2ブロックという未知の環境。

 それが意味するところは、互いにデッキの予測が全く付かないという部分にある。

 もちろん序盤のマナチャージを見れば、大雑把なコンセプトの予測だけは立てられるだろう。だが具体的に採用されているS・トリガーは?メインプランが封じられたときのサブプランは?

 知力を尽くした互いの構成は、実際に食らってみるまではわからない。それがデュエル・マスターズの面白さであり、同時にままならない部分でもある。

 しかし、その予測不可能性を乗り越えてメタがきちんとハマったときの快感は、デッキビルダーたちにとっては何物にも代えがたいのだ。


 テキストカバレージのフィーチャーマッチに選ばれたのは、イヌ科の対戦テーブル。言わずと知れたGP9thの優勝者にして、カリヤドネループというデッキと「マラかっち」というコミュニティの名の双方を日本全国に知らしめたプレイヤーだ。


 それに対し、対戦相手となるLGP8th (2ブロック)でバラギアラループを使用し、赤白轟轟轟の海を渡りきった猛者である。

イヌ科「お久しぶり……ですかね?」

L「話したことは……ないかもですね。自分が遠くから見てただけなんで」

イヌ科「確かに、GPのときは話しかけられる雰囲気じゃなかったですからね。例の事件で……」

L「……(苦笑)」

 ともにループデッキで実績を持つ者同士だが、GRが使えず、ループがほぼ存在しないであろうリモート2ブロックに、はたしてどんなデッキを持ち込んできたのか。


Game



 先攻のLが《蒼龍の大地》をチャージしてターンを終えると、早くも半ば明らかとなったアーキタイプの情報を見てイヌ科が反応する。

イヌ科「蒼龍コントロール……オッケー」

 そしてそのまま2ターン目も《襲来、鬼札王国!》チャージのみでターンを終えるゆっくりとした立ち上がりのLに対し、イヌ科は《ウマキン☆プロジェクト》《イニシャッフチブ》チャージからの2ターン目《フェアリー・ライフ》という順調な初動。

 だが、そこでマナゾーンに落ちたのが……《爆龍皇 ダイナボルト》???



 2ブロックでは、たとえば水自然ベースのデッキに《勝熱英雄 モモキング》をタッチする構築はよく見られる。だが、それは自然という色が共通しており、他に火マナだけ捻出すれば問題なく回るからだ。

 しかしイヌ科は水自然と火光という、重なりのない2色カード同士を同時に運用しようとしている。それは常識外のソリューションか、はたまた無謀なる挑戦か……少なくともこの時点では測りかねた。

 ともあれゲームに視点を戻すと、返すターンにLが《電脳鎧冑アナリス》チャージから1ターン遅れで《フェアリー・ライフ》につなげたところ。イヌ科も《ドラゴンズ・サイン》チャージからの《ウマキン☆プロジェクト》で2→4の動きを完遂するが、なおもLは《フェアリー・シャワー》チャージからの《獅子王の遺跡》で一気に3ブーストし、序盤のタップイン祭りによるもたつきを一瞬にして解消する。

イヌ科「今8マナですか?」

L「8マナです」

イヌ科「マナゾーンにあるクリーチャーを見せてもらえますか?」

L《電脳鎧冑アナリス》2枚と《大樹王 ギガンディダノス》だけです」

イヌ科「……だけ、かー」

 伸びたマナによるプレッシャーに晒されるイヌ科。マナゾーンを見る限り、《蒼龍の大地》からの大型クリーチャー踏み倒しの予告はひとまずない。ならばもう1ターンあるとみていいのか……だが手札から《悪魔龍 ダークマスターズ》などを出されてしまう可能性もありうる。

 悩んだ末に意を決したイヌ科は、チャージなしで5マナをタップすると《U・S・A・CAPTEEEN》を召喚。そして《ウマキン☆プロジェクト》で攻撃、1点だけ刻んでトリガーがないのを確認すると、続けて《U・S・A・CAPTEEEN》攻撃時にマジボンバーを発動。

 ここでデッキの上から舞い降りたのは《正義の煌き オーリリア》


 そのまま通ったW・ブレイクにもトリガーはなく、Lは一転して窮地に立たされる。

L《U・S・A・CAPTEEEN》のパワーっていくつですか?」

イヌ科「8000です」

 だが、既に高マナ域に到達していたLがそのまま大人しくやられてしまうはずもなかった。



 《ブレイン・タッチ》チャージ、《リュウセイ・天下五剣カイザー》マッハファイターで《正義の煌き オーリリア》に向けて攻撃、そのままバトルに勝利し、次の自分のターンまで敗北しない効果を得る。

 突如出現したパワー14000という圧倒的な暴力。それも当然だ、Lは8マナも払っている。対してイヌ科はまだ5マナ。この《リュウセイ・天下五剣カイザー》を対処する手段を、イヌ科は持ち合わせていない……。

 と、そう思われていた。だが、イヌ科はきっちりと解答を持っていたのだ。8マナのクリーチャーであろうともわずか5マナで処理できる、そんな魔法のような解答を。



 《電龍 ヴェヴェロキラー》をチャージしてからイヌ科が送り出したのは、《イッスン・スモールワールド》

 一時的にパワー15000と化した若武者が《リュウセイ・天下五剣カイザー》を一寸違いの紙一重で華麗に倒すと、続けてイヌ科は《U・S・A・CAPTEEEN》を攻撃に向かわせ、マジボンバーで手札から再度《正義の煌き オーリリア》を着地させる。

 そしてそのままW・ブレイク。S・トリガーは《フェアリー・ライフ》2枚……だが、《正義の煌き オーリリア》がいるため唱えることができない。ダイレクトアタックで勝利することこそできないものの、イヌ科はLをシールドのない丸裸の状態にまで追い込んでターンを返す。

 一方、敗北回避効果のおかげでどうにか生き延びたLだったが、5マナ以下の呪文が封じられた状態で、《イッスン・スモールワールド》《U・S・A・CAPTEEEN》《ウマキン☆プロジェクト》《正義の煌き オーリリア》という盤面を返すことはさすがに不可能に等しい。

L《電脳鎧冑アナリス》破壊で1ドロー……ターンエンドで」

 そのままイヌ科がダイレクトアタックで、Lを介錯したのだった。

Winner:イヌ科


 まるでビックリ箱のように次々と予想外のカードが飛び出してくるイヌ科のデッキだが、このデッキを選択した経緯について聞いてみよう。

--「なんというか、すごいデッキですね」

イヌ科4色ダイナボルトですね。このデッキは北のあーさんにもらいました。《正義の煌き オーリリア》の環境への通りが結構良いんですよね。今のゲームも、たまたま《蒼龍の大地》が脅威になってなかったこともあって、安心してどつけましたし。2枚目の《リュウセイ・天下五剣カイザー》があったとしても、《イッスン・スモールワールド》への解答が結局ないですしね」

--「《イニシャッフチブ》の採用が目を引きますね」

イヌ科「環境のS・トリガーが呪文に寄ってるので強いですね。《襲来、鬼札王国!》もケアできますし。全体として、使いやすくて良いリストだと思います。それほど《爆龍皇 ダイナボルト》頼みというわけでもなく、《U・S・A・CAPTEEEN》かどっちかを引ければ押せ押せでゲームが作れます。あとこのリストは《雷龍 ヴァリヴァリウス》が入ってないのが合理的ですね。あいつ自分がマジボンバーで出てこれないのが弱いんですよ」

--「1枚差しの《タケノコ道中ヒアウィ号》は、どういった理由で入ってるんでしょうか?」

イヌ科《タケノコ道中ヒアウィ号》《ドラグ変怪》に対して強いですね。このデッキ、《爆龍皇 ダイナボルト》で踏み倒しまくるんで山札が20枚くらい削れちゃうんですよ。北のあーさん曰く『ギャラクシールドだけ見れてない』っていう話だったんですけど、ギャラクシールドは《ドラグ変怪》に弱いからそこで何とか……っていう目論見だったので、逆に《ドラグ変怪》だけは無視するわけにいかない。『みんな《ドラグ変怪》練ってそう』っていうのが頭の中にあって、《ドラグ変怪》と蒼龍コントロールあたりが主要なメタゲームになるんじゃないかなと思ってました」

イヌ科「この環境って1ブロックという下地があったんで、そこに対して本気で考えた人はZweiLanceみたいに《零》コントロールみたいな離れ業になるんでしょうけど、みんながみんなそこまでやってはこないだろうということで……今回は北のあーさんが頑張ってくれたんで、とても助かりました。ただ、マナベースがやばそうだから回るのかだけ心配です。ここまで3回連続で《フェアリー・ライフ》《ウマキン☆プロジェクト》の動きができてるので、もしできなかったら何が起きるかわからないですねw」

 対戦相手の予測が覆せるのは、その環境において共有されている前提を深くまで知っていればこそ。その精度をハイレベルなチーム調整によって極限まで高めることができるイヌ科と「マラかっち」には、今年もデュエマ界のトップランナーとしての活躍が期待できそうだ。
PAGE TOP

TM and © 2024, Wizards of the Coast, Shogakukan, WHC, ShoPro, TV TOKYO © TOMY