超CSⅣ福岡 決勝Round 1:arupa vs. 制作部
ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影者:後長 京介
ここからは1勝ごとに着実に頂上に近づく代わり、たった1度の敗北も許されないトーナメント形式。見事4連勝すれば、トップ8への入賞を果たすことになる。
まずは頂上までのその1合目。トップ64をかけた戦いでフィーチャーマッチエリアに現れたのは、地元福岡県のプレイヤー。しかも福岡県ランキングでここまで2位に3000pts以上の差をつけて1位、全国ランキングでも20位 (※2022年7月30日時点) につけている暫定福岡最強、arupa。
これはRound 3と同様、県外プレイヤーに対して地元プレイヤーがトロフィーを防衛しにいく構図になるか……と、思いきや。
制作部「自分も福岡です」
arupa「え?そんなことあります?」
なんと対戦相手の制作部も福岡のプレイヤーとのこと。しかし全国ランキングに顔を出すほど福岡近辺の大会に精力的に参加しているarupaが知らないことから、制作部の側はあまり頻繁にCSに参加するタイプのプレイヤーではないようだ。
制作部「今回、知り合い同士3人で参加したんですけど、全員本戦上がりしたんですよ」
arupa「すごいですね」
制作部「にしてもカバレージに載るのか……自分YouTubeやってるんですけど、別のカードゲームのチャンネルなんですよね (笑)」
arupa「もしかして自分、負けられないやつですかね (笑)」
思わぬ相手と思わぬ場所で実現した地元対決。勝って故郷に錦を飾るための資格を得るのは、はたしてどちらか。
Game
予選ラウンドの順位で先攻となった制作部が《エボリューション・エッグ》をチャージしてターンを終える立ち上がり。環境内でこのカードが入っているデッキならば《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》か、あるいは少なくとも次点でJO退化であろうことは、全国レベルのプレイヤーであるarupaの視点からは自明だろう。しかもJO退化の場合、《進化設計図》を3枚などの偏った引きをしない限り1ターン目のマナチャージが自然マナとは考えづらいので、ほぼほぼ《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》であろうというところまで想像がつく。
対し、arupaは《堕呪 カージグリ》チャージから《ア・ストラ・センサー》を唱える。この時点でarupaのデッキが水タッチ闇スコーラーであることが、制作部の視点からもほぼ明らかとなる。
arupa「……回収なしで。そのままボトムに送ります」
が、ここで《ア・ストラ・センサー》がまさかのハズレ。仮にテンプレートどおりの水タッチ闇スコーラーのリストなら、呪文ではないハズレのカードは《超宮兵 マノミ》4枚・《次元の嵐 スコーラー》3枚・《神出鬼没 ピットデル》1枚・《I am》1枚の計9枚しかない。そこから3枚がめくれてしまうとは、ただでさえ「順位差 (5勝2敗同士のオポネント差) で後手となった」上に「そもそも不利なアポロヌスに当たってしまった」というのに、arupaは相当不運な立ち上がりだ。
一方の制作部は2ターン目に《進化設計図》を唱え、《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》《轟く侵略 レッドゾーン》《ダイナボルト <ドギラ.Star>》を回収。
ただまだしもarupaにとって唯一の救いは、制作部がタマシードを設置できていないこと。後攻4ターン目さえまわってくるならば、水タッチ闇スコーラーにも勝機がある。制作部がタマシードを引けないことを願いながら、《I am》をチャージしてターンを終える。
だが、返す制作部の動きは《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》チャージからの《ヘルコプ太の心絵》!見るなりarupaは思わず天を見上げ、それを尻目に《超轟速 マッハ55》が制作部の手札に加わる。
しかも《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》をチャージしたということは、2枚目の《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》を抱えていることは確実である。さらに公開情報で《轟く侵略 レッドゾーン》も拾っている以上、勝利へのわずかな可能性はたった一つ。《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》を引けていないパターンだけだ。
それでもarupaはターンが戻ってくるその限りなく薄い可能性を信じて、《超宮兵 マノミ》チャージから《堕呪 バレッドゥ》を唱え、《堕魔 ヴァイプシュ》を墓地に落としてターンを返す。
はたして、運命の4ターン目。《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》をチャージした制作部は、まずは《ストリエ雷鬼の巻》を設置する。
そして、《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》をタマシードの上に進化させ……攻撃時に「侵略」を宣言。
制作部「《轟く侵略 レッドゾーン》と……」
制作部「《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》で」
持たれていた。arupaの願い届かず、《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》の「メテオバーン」が発動して《轟く侵略 レッドゾーン》の能力を待機した状態でのワールド・ブレイクが走る。どうにか《堕呪 カージグリ》をトリガーしてダイレクトアタックだけは防ぐものの、《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》を対象に選んだことでマナゾーンの《超宮兵 マノミ》《I am》が墓地に置かれてしまい、もはや《月下旋壊 ド・リュミーズ》どころではない。
やむなく《堕呪 ゴンパドゥ》を唱えるのみでターンを返すarupaに対し、制作部が公開情報である《ダイナボルト <ドギラ.Star>》を《ストリエ雷鬼の巻》の上に「スター進化」させ、ダイレクトアタックを宣言する。
arupa「通ります」
制作部「ありがとうございました!」
Winner: 制作部
一つだけ、気になっていることがあった。3ターン目に《ヘルコプ太の心絵》で《超轟速 マッハ55》を拾ったターンに手札を後ろから確認した時、制作部は確かに《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》を持っていなかったはずなのだ。
しかも、それで制作部の4ターン目のドローを目の端で追ったら《ストリエ雷鬼の巻》だったような気がする。と、いうことはつまり……?
制作部「はい、《ストリエ雷鬼の巻》で引いたトップです。持っていなかったので、めくるカードをガンガン使って探しにいきました」
それを聞いた瞬間、arupaが己の運の悪さを嘆くように、またしても思わず天を仰いだ。そして、悔しそうに一言だけ漏らす。
arupa「トップかー……」
一発勝負のトーナメントでは、どれだけ的確なプレイングをしたとしてもある程度は運が絡むことは避けられない……それはarupaほどの強豪であればもちろん了解していることだ。
それでも、たった1枚の際どい差だったと知ってしまえば、逃した魚を惜しがってしまうのが人情というもの。arupaの不運か、制作部の豪運か……はたまた両方が作用したのか、ともあれ強豪と新鋭との地元対決は、文字通りの紙一重で新鋭の側に軍配が上がったのだった。
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