デュエル・マスターズ

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DMGP2022 Day1 決勝Round 4:BUKOU@酒場 vs. がらがらどん

ライター:清水 勇貴
撮影者:瀬尾 亜沙子

BUKOU@酒場「最初の写真撮る時は握手ですか? ……あっ、そうかそうか、できないんだ」

 テキストカバレージに欠かせないもののひとつに、選手の写真がある。

 今まさに対戦を行わんとする2人が和やかに、しかし闘志に満ち溢れた顔で向かい合う様は、大型大会特有の空気感を、ありありと伝えてくれる。

 3年ぶりのグランプリとなったGP2022。

 時流の変化に伴って、これまでにはなかった制約がイベント開催にはのしかかる。当たり前のように行われていた選手同士の握手は行えなくなり、かわりにファイティングポーズで向かい合う写真が多く使われるようになっている。

 爽やかにカメラマンと受け答えを進めながらも少し物足りなさそうなBUKOU@酒場と、緊張まじりの笑顔を浮かべたがらがらどん

 シングルエリミネーション最後となるRound4のフィーチャーマッチは、奇しくも中国地方を根城とする2人の対決となった。

BUKOU@酒場「やだよもぉ〜〜〜、同郷で潰し合いなんてさあ〜〜〜」

 せっかくなら決勝でやりたかったな、と呟きをこぼすBUKOU@酒場。何気ない一言だが、その台詞回しからは「自分こそが決勝戦に勝ち進む」という強い意志が感じられる。

 それもそのはず、BUKOU@酒場は予選ラウンドを含めてここまで無敗。堂々の「予選1位」を背負って勝ち進んできている、まさにノリにノッている男だ。

 着々と準備を進めるBUKOU@酒場のバトルゾーンに鎮座する≪FORBIDDEN STAR ~世界最後の日~≫に封印が4つ置かれ、対するがらがらどんのバトルゾーンには≪禁断 〜封印されしX〜≫が6つの封印とともにある。

 本大会では珍しくもなんともない光景だが、対戦準備からもアドバンスフォーマットらしさが溢れているのが、そこはかとなく嬉しい。オリジナル・アドバンスという区別さえ存在しない3年前にはなかった感慨だ。

 セッティングが終わるや、大きく柏手を打ち、気迫を漲らせるBUKOU@酒場。破裂音と呼んでも差し支えない大音量に思わずびくりと肩を震わせたがらがらどんだったが、

BUKOU@酒場「気楽にやりましょう」

 ゲーム開始のアナウンスを待つBUKOU@酒場のその言葉に、彼のしゃちほこばった肩が少しやわらぐ。

 お互いに全力を振り絞り、本気でぶつかりあう。激しくも楽しいデュエル・マスターズの時間が、今始まろうとしていた。

先攻:BUKOU@酒場
 先攻を取ったBUKOU@酒場。しかし、先にマナゾーンのカードをタップしたのはがらがらどんの方だった。

 水文明のマナを2枚揃えたがらがらどんは、《アストラルの海幻》をプレイ。カードを2枚引いて《ネ申・マニフェスト》を捨て、後攻の2ターン目を終える。
 がらがらどんにとっては大型大会初参加となるGP2022。この晴れ舞台に彼の持ち込んだ相棒は《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》、それも《ネ申・マニフェスト》のシンカパワーで確実なフィニッシュを狙う【水火アポロヌス】だ。

 現在主流となっている【火自然アポロヌス】と比較したうえで、あえてこちらを選んだという【水火アポロヌス】。その真価は程なく発揮されることになる。

 BUKOU@酒場の3ターン目、《鬼寄せの術》から《霊刑連結 ジゴク・パルテノン》が召喚された次のターン。

 がらがらどんは《シブキ将鬼の巻》をマナに埋め、《アストラルの海幻》《ウェイボール <バイロン.Star>》に進化させて攻撃し、2ドロー。《霊刑連結 ジゴク・パルテノン》で削られる手札を補填していく。

 《進化設計図》による爆発的なアドバンテージを有する【火自然アポロヌス】だが、使えるのはあくまでも一発限り。それも進化クリーチャーのめくれ方次第ではほとんどアドバンテージに繋がらない不安定なものだ。

 その点、《ウェイボール <バイロン.Star>》は生き残り続けるかぎりずっと手札を供給してくれる。

 速度には寄与しないものの、《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》に進化すれば追加の侵略を引かずとも《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》に繋がるパターンもある。ある程度のロングゲームを見据えるのであれば、これ以上はない置きドローソースだ。

 もっとも、安易に継続的なアドバンテージ源を許すBUKOU@酒場ではない。

 《終断Δ ドルハカバ》を捨てながら《D2V3 終断のレッドトロン / フォビドゥン・ハンド》をコスト軽減してプレイ、≪FORBIDDEN STAR ~世界最後の日~≫の封印をひとつ外してスレイヤーを付与する。

 厄介な《ウェイボール <バイロン.Star>》を即座に除去し、《霊刑連結 ジゴク・パルテノン》によるハンデス体制を継続する魂胆だ。

 しかし、返すがらがらどんのターンには、さらに2枚目の《ウェイボール <バイロン.Star>》が降り立ち、水文明の強みを見せつけるようにリソース包囲網をかいくぐっていく。

 迎えた先攻の5ターン目。BUKOU@酒場はビッグアクションに出る。

 《Forbidden Sunrise ~禁断の夜明け~》を設置しながら、墓地から軽くなった《終断Δ ドルハカバ》をプレイし、《時空の禁断 レッドゾーンX》へとP侵略。

 パワー低下込みで《ウェイボール <バイロン.Star>》を殴り返し、BUKOU@酒場は≪終焉の禁断 ドルマゲドンX≫の禁断爆発に王手をかけた。

 手札リソースを巡る戦いはなんとか乗り越えたものの、じわじわと追い詰められつつあるがらがらどん。

 山札を着々と掘り進めていた彼だったが、それでもなお解消できない手札トラブルに悩まされていた。

 《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》はある。《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》もある。しかし、間に挟むべき侵略クリーチャー——《禁断の轟速 レッドゾーンX》に届いていないのだ。

 引き続き山札を掘るしかないがらがらどんは、《ネ申・マニフェスト》をプレイする。山札の上3枚を確認し、渋面。手札から《瞬閃と疾駆と双撃の決断》2枚を墓地に送り込んでターンを終える。

 BUKOU@酒場のターン開始時に《時空の禁断 レッドゾーンX》が≪終焉の覚醒者 レッドゾーンBSR≫へとメテオバーン覚醒すると、いよいよゲームは佳境に差し掛かった。

 進化元の《終断Δ ドルハカバ》が再び墓地に装填されるや、BUKOU@酒場はそのまま《終断Δ ドルハカバ》を召喚。禁断爆発によるカウンターの目を残すべく、解除する封印は《Forbidden Sunrise ~禁断の夜明け~》のものだ。

 即座にプレイヤーへと攻撃しながら《時空の禁断 レッドゾーンX》へと侵略し、≪終焉の覚醒者 レッドゾーンBSR≫・《霊刑連結 ジゴク・パルテノン》と合わせて、ちょうどがらがらどんを倒し切れるだけの点を作り出す。

 あわや決着かと思われたが、2枚のシールドを確認したがらがらどんの手が《終末の時計 ザ・クロック》を表返すと、BUKOU@酒場のクリーチャーたちは動きを止める。このターン中の決着はお預けだ。

 もっとも、BUKOU@酒場からすれば、攻める以外の選択肢がない状況で《終末の時計 ザ・クロック》を踏み抜く方がはるかに危険だ。「禁断爆発カウンター」という虎の子を抱えたままでこのトリガーを踏めたのは、不幸中の幸いだったといえるだろう。

 一方で、いよいよ後がなくなったのはがらがらどんだ。
 マナをアンタップし、山札の上から1枚をドローする。手札、墓地、バトルゾーン。余すことなくお互いの公開情報を確認し、深呼吸をすると同時。がらがらどんが、目つきを変えた。
 《瞬閃と疾駆と双撃の決断》を唱え、コスト3以下のクリーチャーを手札から出す効果を選択。回数を指定するがらがらどんの指は、まごうことなきVサインだ。

 《ネ申・マニフェスト》《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》を手札から公開し、そのまま両者を重ねてバトルゾーンへ。手札入れ替え能力で3枚引き……手札から捨てられたのは待望の《禁断の轟速 レッドゾーンX》《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》でBUKOU@酒場のシールドめがけて攻撃する。

 侵略宣言、《禁断の轟速 レッドゾーンX》《禁断の轟速 レッドゾーンX》《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》。4枚の進化元のうち3枚に手をかけ、自身の墓地に置く。《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》の神炎がBUKOU@酒場のシールドへと襲い掛かった。

 もちろん、がらがらどんはこの時点で勝利を確信していたわけではない。

 BUKOU@酒場のシールドから《終断γ ドルブロ》がめくれれば。手札に《終断χ ベガスランチャー》が潜んでいれば。

 【闇火ドルマゲドン】にとっては珍しくもなんともないアクションで、この攻撃はあっさりと止まりうる。

 「ほとんど」無敵の《ネ申・マニフェスト》のシンカパワーを引き継いだ《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》は多くの対面を確実に打ち砕いてくれるが、禁断爆発・禁断解放による無差別の全体封印には無力なのだ。

 しかし、がらがらどんは理解していた。いくら禁断爆発を恐れたところで、今、この時、この一撃を通し切る以外に、自分の勝つ道はないのだと。

 決して太くはないが、しかし渡らざるをえない綱へ、がらがらどんは一歩踏み込む。ブレイクされた5枚のシールドを眺めるBUKOU@酒場を前に、がらがらどんは懸命に祈りを捧げていた。人事はとうに尽くしきったのだ。あとは。

 やがて、BUKOU@酒場は1枚のカードを公開し、側に控えるジャッジに声を掛ける。 BUKOU@酒場「……《ネ申・マニフェスト》のシンカパワーがかかってると、《D2V3 終断のレッドトロン / フォビドゥン・ハンド》の封印除去でも選べないんですよね?」

 ——待ちわびた天命が、がらがらどんをもう一歩先へと進ませた。

Winner:がらがらどん

 【水火アポロヌス】を選択したがらがらどんが仮想敵に据えていたのは、まさに【闇火ドルマゲドン】や【5cコントロール】のような防御力の高いデッキだという。

がらがらどん「今のアドバンス環境は【火自然アポロヌス】の存在が前提になっていて、受けに寄ったメタゲームになると思ったんです。そこで、同じ【アポロヌス】でもほとんどの受け手段が通らなくなる【水火アポロヌス】の通りがいいと考えました」

 禁断爆発という「紙一重」こそあったものの、結果として彼が想定していた通りの対戦相手を、想定通りに倒し切った格好となった。

 敗戦の悔しさに顔を歪ませ、高らかに咆哮を上げながらも、すぐにがらがらどんへと向き直るBUKOU@酒場。

 その顔には、自らを打ち倒した好敵手を讃える笑みを浮かべていた。

BUKOU@酒場「悔しいけど、楽しかった〜!!!」

 「本当だったら握手したかったんだけど、時勢だからね」とがらがらどんに言い、彼は晴れやかながら、どこか寂しそうな笑顔でフィーチャーテーブルを後にした。

 3年ぶりのグランプリとなったGP2022。

 時流の変化に伴って、これまでかかっていた様々な規制が徐々に緩和されつつある。次に彼らが対戦テーブルで向かい合う時に、今日この場所で行えなかった握手を行えるようになったとしたら。それはきっと、とても素晴らしいことだろう。

 そう遠くない未来、テーブルを挟んで向かい合う2人が思う存分健闘を讃え合えるようになることを、願ってやまない。

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