DMGP2023-2nd :メタゲームブレイクダウン
ライター:清水 勇貴(yk800)
「デュエキングMAX2023」の発売を間近に控え、「魔覇革命」環境の集大成となるDMGP2023-2nd。予選ラウンドは下馬評通り、【水火マジック】・【闇自然アビス】・【魔導具】・【火自然アポロヌス】、他にも【5cザーディクリカ】や【水闇自然グラスパー】や……絶対王者たる水闇自然ジャオウガの下に様々なデッキが入り乱れる環境となった。
やはり事前評価で最有力候補と目されてきた【水闇自然ジャオウガ】とその対抗馬として名高い【水火マジック】の絶対数が多い印象はあったものの、他のデッキも負けず劣らずのパワーを誇っている。
それでは、熾烈な予選ラウンドをくぐり抜けた128人の選択を見ていこう。
TOP128 デッキ分布
【水闇自然ジャオウガ】 29【水火マジック】 17
【闇自然アビス】 13
【水闇魔導具】 11
【火自然アポロヌス】 11
【ブレスラチェイン】 10
【水魔導具】 5
【水闇自然グラスパー】 5
【闇単アビス】 4
【5cザーディクリカ】 3
【ガイアッシュ覇道】 3
【火自然闇邪王門アビス】 3
その他(母数2以下) 14
【水闇自然ジャオウガ】
まず環境の大前提をおさらいしておこう。現環境でもっとも強いデッキは間違いなく【水闇自然ジャオウガ】だ。2ターン目のマナブーストから3ターン目に《キユリのASMラジオ》を唱え、《天災 デドダム》や《Disメイデン》がめくれればハンドリソースを調整しながらマナを伸ばし、《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》のクリーチャー側をはじめとするメタクリーチャーがめくれれば喜び勇んで相手の展開を妨害する。
最速で4ターン目に成立する《母なる星域》+《CRYMAX ジャオウガ》リーサルは、相手のトリガー率を3/5に減らしながら容易に過剰打点を作り上げ、ビートダウンとしても速度・強度ともに十分以上だ。
環境的な要因に目を向ければ、≪ボン・キゴマイム≫をもっと強く使えるデッキであることがこのデッキが強い理由のひとつに数えられるだろう。
ただメタクリーチャーを出すだけであれば除去カードに容易に屈するところだが、「魔覇革命」から加わった2枚の頼れる護衛がその前提を覆した。
相手の除去を吸い寄せつつメガ・ラスト・バーストでテンポロスを強制する《同期の妖精 / ド浮きの動悸》。
コスト4以下であれば文明に関わらずクリーチャーを2体同時に蘇生できる《アーテル・ゴルギーニ》。
環境屈指のメタクリーチャーである≪ボン・キゴマイム≫を長くバトルゾーンで活躍させられるようになり、これらを乗り越えて【水闇自然ジャオウガ】の牙城を貫通することは容易なことではなくなった。
しかも、これらのカードは≪ボン・キゴマイム≫がなくとも単体でも十分に強い。
《同期の妖精 / ド浮きの動悸》は単体除去トリガーやG・ストライクを全て吸い寄せて詰めに貢献するうえ、単体でも受けトリガーとして機能する。
《アーテル・ゴルギーニ》は蘇生だけでなく-4000の振り分けパワー低下モードも持つため相手のメタクリーチャーにも強く、自身もパワー6000・Wブレイカーのブロッカーで盤面の取り合いにおいて幅広い活躍を期待できる。
このようなカードが≪ボン・キゴマイム≫の脇を固める中、環境の中心に舞い戻ったのが、無差別に相手の軽量クリーチャーを弾き飛ばし、再展開を禁じる《飛翔龍 5000VT》。
水文明を採用したほとんどのデッキがこのビクトリーカードを携え、世はまさに大VT時代……というのがGP2023-2nd開催当日までに形成されていたメタゲームだ。
では、大会当日となる今日の結果はどうだったか。フタを開けてみれば、【水闇自然ジャオウガ】を携えて予選を突破したプレイヤーの多くが、テンプレートな構築に甘んじることをよしとしなかった。
クロロ/山形 DMGP2023-2ndTOP8デッキリスト オリジナル構築 |
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ユウキング/わいきん DMGP2023-2ndTOP8デッキリスト オリジナル構築 |
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最も顕著に目立ったのが、《飛翔龍 5000VT》への対抗手段として採用されていた《キャディ・ビートル》だ。
3コスト帯である《Disジルコン》や《Disメイデン》の枚数を極限まで切り詰め、こじ開けた2〜3枠に採用されたメタクリーチャー。
これまで【水闇自然ジャオウガ】が触れられなかったコスト軽減や手札からの踏み倒しにも対応しているのが最大の強みで、≪ボン・キゴマイム≫が間に合わない後手からでも【火水マジック】の3ターン目の革命チェンジを防ぎ、≪ナウ・オア・ネバー≫や《星門の精霊アケルナル / スターゲイズ・ゲート》の呪文面を防ぎ……そして何より、大幅なコスト軽減を防ぎ切る。
メタゲーム上では本来【水闇自然ジャオウガ】に五分以上と目されてきた【水火マジック】に対する明確な回答であることが大きな利点だろう。
メタの間に合わない早期の革命チェンジと《飛翔龍 5000VT》の大規模バウンス、そのどちらも止められるとあっては【水火マジック】側にとって厳しい戦いになることは想像に難くない。
ミラーマッチにおいても少なからず有用で、《飛翔龍 5000VT》に加えて、《母なる星域》+《CRYMAX ジャオウガ》の定番プランに7マナを要求できるのは面白い。
仮に除去されたとして、破壊除去であればかわりにマナに置かれる性質も、現在の【水闇自然ジャオウガ】のメインプランとよく噛み合っている。
また、墓地蘇生対策としてはメクレイドにも有効な《とこしえの超人》がこれまでのメタゲームにおける多数派だったが、《若き大長老 アプル》に切り替える構築が一定数見られたことにも触れておきたい。
能力を逆利用してマナを伸ばされないのはもちろん、墓地からの呪文詠唱まで止まる点は大躍進を遂げた【ブレスラチェイン】や【5cザーディクリカ】を相手取る上では大きな違いになってくる。
アドバンテージ源となる3マナ域をさらにシェイプアップし、《飛翔龍 5000VT》を止めつつ、早期に攻めの動きを通しに行くアグレッシブな構築。これが本大会の予選段階における大きな流れとして特筆すべき点だろう。
しかし、ベスト8まで勝ち残ったユウキング/わいきん選手とたつどら選手のリストには追加のメタクリーチャーの姿はなく、かわりに2人が共通して採用していたのが《流星のガイアッシュ・カイザー》だった。
いわゆる「わからん殺し」の期待値が高い一発勝負の大型大会においては不意を突く1枚の価値が通常の大会よりも高いが、中でも《流星のガイアッシュ・カイザー》は劇的だっただろう。
メクレイドや革命チェンジ、侵略に《キユリのASMラジオ》と言った定番の踏み倒しギミックはもちろん、大型大会に付き物のローグデッキに対しても切り返し札として機能する。
しっかりとマナを伸ばせる現在の【水闇自然ジャオウガ】であれば、手札から召喚して中長期戦におけるリソース源として、さらには追加の≪ボン・キゴマイム≫として機能させるのもさほど負担にはならないだろう。
コスト・パワー帯が≪ボン・キゴマイム≫と散っているのもニクい。序盤はあちらでフタを仕掛けつつ、中盤以降は併用することで《飛翔龍 5000VT》によるロックを乗り越える盤面を作りやすくなる。
TOP128の結果を見てもらえばわかるように、本大会のメタゲームにおいて明確に「ビートダウンデッキ」と分類できるのは【水火マジック】と【火自然アポロヌス】の他にはほとんどいない。
【水火マジック】も手札のキープ次第では中期戦にもつれ込むうえ、他の対面はタフなロングゲームになることも想定しなければならないようなデッキが多く勝ち残っていた。
そこを行くと、単体でアドバンテージを取れるため中長期戦においてもデッキが痩せず、テンプレートなデッキリストを想定している相手の虚を突く効果的な一手となる《流星のガイアッシュ・カイザー》が優れた選択肢となったことにも頷けるだろう。
惜しくも両選手はベスト8で敗退してしまったものの、今回のメタ傾向に適した良いアプローチだったと考えられる。
【水火マジック】
青木瑠璃 DMGP2023-2ndTOP8デッキリスト オリジナル構築 |
《芸魔隠狐 カラクリバーシ》と《芸魔王将 カクメイジン》に《瞬閃と疾駆と双撃の決断》を絡めることで最速3ターンでゲームを決着させられる、極めて鋭い攻めが持ち味の【水火マジック】。
2ターン《AQvibrato》+3ターン手札調整のパターン、2ターン手札調整+3ターン《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》のパターンの両面で3ターンリーサルを組めるため3ターンリーサルの再現性が高く、除去トリガーさえ踏まなければ溢れんばかりの打点を生み出し相手を圧倒。
仮に止まったとしてもルートの途中でプレイするカードにことごとくドロー能力が付いているためほとんどリソースを消耗せず、再展開も容易だ。
アグロデッキ特有の「リソースをオールインして返されれば終わり」といったゲーム展開はほとんど見られず、≪ボン・キゴマイム≫で遅延しながらドロー能力を連打して、ある程度の長期戦まで見据えられるのも強みのうちと言えるだろう。
空の盤面からでも手札枚数さえ揃っていれば《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》1枚でゲームが終わる危険性があるため、対戦相手からすれば3ターン目以降は常に「詰めろ」がかかっている状態になる。心理的なプレッシャーの強さも目に見えない武器のひとつだ。
その速度と《飛翔龍 5000VT》の存在で【水闇自然ジャオウガ】とも互角を主張できるのが環境上のポジションの良さと、妨害に脆い側面もありながらも構築とプレイで乗り越えられるデッキの強さが評価され、勢力としては2番手に。そして青木瑠璃選手は見事に3位の座をも手にした。
本大会における傾向としては、《飛翔龍 5000VT》の2〜3枚採用は前提として、《Napo獅子-Vi無粋 / ♪オレの歌 聞けよ聞かなきゃ 殴り合い》と《AQsabbath / ♪このギター グシャっとすれば グシャっとなる》も合わせて3枚前後採用した選手がほとんどだった。
≪Napo獅子-Vi無粋≫は環境に跋扈する《飛翔龍 5000VT》のロック能力を無視して直接召喚し、即座に《芸魔王将 カクメイジン》にチェンジできるジャンプ力が最大の魅力。
≪AQsabbath≫は小回りの効く軽量エレメント除去に加えて汎用性に優れた無制限バウンスをクリーチャー側が持っているおかげで、《ガル・ラガンザーク》や《アルカディアス・モモキング》のような呪文でどうにもならないクリーチャーを早期着地された際の詰みを回避できる。大型大会においてはひときわ頼れる選択肢だ。
いずれにせよ5〜8マナ時に他のカードと同時にプレイも想定されるカードチョイスであり、【水火マジック】の単なるアグロデッキではない要素が色濃く反映されている。3位決定戦での粘り強い姿勢も記憶に新しいが、「速度と粘り強さの両立」が【水火マジック】というデッキの真骨頂なのだろう。
【闇自然アビス】・【闇火自然邪王門アビス】
シュカ01 DMGP2023-2ndTOP8デッキリスト オリジナル構築 |
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【闇自然アビス】もまた、本大会における注目デッキのひとつだった。
軽量マナブーストからいち早く強力なアビスひしめく5マナ域へとアクセスし、豊富なハンデスとマッハファイターで相手のバトルゾーンと手札を制圧する、ミッドレンジでのゲームもできるコントロールデッキといった立ち位置。
ことバトルゾーンをめぐる争いにおいては右に出るもののいない、地上戦番長とも言えるデッキだ。
ロングレンジでの戦いを得意としながらも、2ターン目のマナブーストから3ターン目に《フットレス=トレース / 「力が欲しいか?」》の呪文面で5マナアビスへと繋ぐブン回りを有しているのも特筆すべき点だろう。
3ターン目に《邪幽 ジャガイスト》でのメクレイド5連鎖や《ア:エヌ:マクア》からの《アビスベル=覇=ロード》革命チェンジ、といった展開になれば、並大抵では覆らない盤面を形成できる。
一方で、【水闇自然ジャオウガ】や【水火マジック】が必ず採用する《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》が重く刺さるのが環境上のウィークポイントだ。
クリーチャーとして出されればマッハファイターがビタ止まるうえに解決手段を探そうとメクレイドすればドローを与えてしまい、呪文面で5を宣言されればバトルゾーンのアビスがまとめて機能停止を余儀なくされる。
ブロッカーや攻撃誘導が有効に機能するためデッキコンセプト上はさほど不利にならない【水火マジック】はともかく、最大勢力の【水闇自然ジャオウガ】に若干不利が付くと目され、事前評価の段階では有力なデッキでありながら微妙な立ち位置にあるデッキとされていた。
本大会において目立った採用カードとしては、《ア:グンテ》が挙げられる。
S・トリガー・プラスが発動すれば1体で3面を除去できる非常に優秀な受けトリガーだが、「コスト4のアビス」というスペックのおかげでメクレイドや《邪幽 ジャガイスト》の蘇生による踏み倒し先、そしてもちろん手札から召喚するクリーチャーとして選択肢に入る。
汎用的に使えるエレメント除去ということで、直前で評価を高めた【水魔導具】をはじめ、不意のフィールドやクロスギアに対してきっちり対抗していけるのも嬉しく、追加の除去カードとして重宝される1枚となった。
他にも《》など、マッハファイターに頼らないトリガー付きの除去を採用した構築が多く見られる傾向にあった。
やはり≪ボン・キゴマイム≫への対処法をうまくデッキに取り込んだプレイヤーが、より多く予選を勝ち残ったと言えるだろう。
にわか DMGP2023-2ndTOP8デッキリスト オリジナル構築 |
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そして、多くのプレイヤーが一般的な闇/自然2色のデッキの中、4位入賞を果たしたにわか選手が持ち込んだのは火文明を加えた形だった。
火文明を採用する理由は攻守の2要素にある。
攻めのキーカードとなるのは《鬼寄せの術》。
アビスを持っているわけでもなく、カードパワーもやや低い《フェアリー・Re:ライフ》に代わる初動として採用され、《フェアリー・ギフト》と合わせて3ターン目のコスト5クリーチャー投下の再現性を高める選択肢だ。
その分2マナブースト→≪力が欲しいか?≫のルートはやや手薄になり、《ア:エヌ:マクア》に軽減が乗らないものの、手札を減らさずに《謀遠 テレスコ=テレス》や《邪幽 ジャガイスト》を着地させられるメリットがデメリットに勝る。
コスト軽減呪文との相性に優れる追加の5マナ域として、《信眼!ジェンゲガーvs.シェケダン》の存在も見逃せない。
《信眼!ジェンゲガーvs.シェケダン》は《カンゴク入道》相当のシールド回収に加えて、シールドゾーンのカードが離れた際にカードを1枚なんでも墓地から拾える能力を持っており、ただ出すだけで確実に2枚分のアドバンテージを保証してくれるシステムクリーチャーだ。
《鬼寄せの術》や《フェアリー・ギフト》経由で早期に出せばそのままターン終了時に墓地から拾って次のターンにも使えるシナジーがシンプルながら強力。特にこのクリーチャーがいる時の《鬼寄せの術》は、効果でシールドを回収した際に墓地から召喚したいクリーチャーを拾い上げ、それをそのまま軽減して召喚するトンデモ呪文へと変貌する。
守りのキーカードとなるのは《百鬼の邪王門》。
《百鬼の邪王門》は言わずもがなの強力な受け札で、従来の【闇自然アビス】が苦手としていた【火自然アポロヌス】に対するキラーカードでもある。
このカードによるシールドに依存しない受けギミックがあるからこそ《鬼寄せの術》や《信眼!ジェンゲガーvs.シェケダン》を気兼ねなく使える側面は大いにあるだろう。
また、ブーストや墓地肥やしの過程で手札以外のゾーンに落ちてしまっても、《信眼!ジェンゲガーvs.シェケダン》や《ア:エヌ:マクア》といったカード指定回収手段が充実しているおかげで手札に抱えやすい。
唯一の単色火文明カードとしては、《「必然」の頂 リュウセイ / 「オレの勝利だオフコース!」》に白羽の矢が立った。【水闇自然ジャオウガ】の≪ボン・キゴマイム≫+≪同期の妖精≫の布陣を一手で返せる強烈なメタカードだ。
お世辞にも「幅広い相手に刺さる」とは言えないカードだが、こと【水闇自然ジャオウガ】への有効性は劇的。他の対面ではG・ストライクとアンタップインする火マナ源だけでも御の字だ。
《信眼!ジェンゲガーvs.シェケダン》の墓地回収で何度も使い回しが効くのももちろんのこと、手札に加えたのを見せておくだけでも相手にケアした展開を要求できる点が凶悪だ。
【闇自然アビス】と比較すれば、メクレイドのヒット率が低下して爆発力がやや控えめになり、マナ色の確保や墓地回収などの分岐の多さでプレイの難易度が上がっている点がデメリット。
その一方で、コスト軽減の充実や置きリソースの増加、手札誘発式受け札のおかげで早期に強引なメクレイドでハイリスクハイリターンな動きをする必要性が薄れ、適切に運用できれば安定性の面で大きく強化されているのがこの構築のメリットだと言えるだろう。
【水闇魔導具】
monokuro DMGP2023-2ndTOP8デッキリスト オリジナル構築 |
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王者・【水闇自然ジャオウガ】と「魔覇革命」からの新星・【水火マジック】&【闇自然アビス】が大いに活躍を見せる中、決勝戦の舞台に立った2人が使用していたのはそのいずれでもなく、【水闇魔導具】だった。
このデッキはとにもかくにも《「無月」の頂 $スザーク$》に始まり、《「無月」の頂 $スザーク$》に終わるデッキだ。
序盤は手札調整をこなす軽量魔導具呪文や《堕魔 ドゥポイズ》で凌ぎつつ、4ターン目に《堕∞魔 ヴォゲンム》を召喚。
手札や墓地にある《「無月」の頂 $スザーク$》の「無月の門・絶」を宣言してから《堕∞魔 ヴォゲンム》の能力で一挙に大量の墓地を確保し、6枚の魔導具を元に召喚して一気に相手の場と手札を荒らしにかかる。
《「無月」の頂 $スザーク$》を一度着地させればあとはリソース差が開くばかり。2体目の《「無月」の頂 $スザーク$》や《堕魔 ドゥポイズ》の自壊を絡めた再展開で執拗にアドバンテージ優位に立ちながら山札を掘り進め、《神の試練》で安全なフィニッシュを狙う。
速度はそれほど早くないものの、手札と盤面に同時に触りつつドローを進める《「無月」の頂 $スザーク$》がとにかく強く、うっかり4ターン目終了時に2体出ようものならゲームエンド級の破壊力。
《卍 新世壊 卍》や《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を廃したことで防御や除去にデッキスペースを費やせるようになり、ただでさえ効きづらいメタを乗り越えることも難しくなくなっている。
環境では数少ない《飛翔龍 5000VT》と≪ボン・キゴマイム≫のどちらもほとんど刺さらないデッキで、現在のメタ傾向から立ち位置は非常に良いデッキだったと言えるだろう。ただでさえ高いデッキパワーに加えて、環境からのガードまで下がっているのだ。
決勝戦を戦った両者のデッキにスーパーテクのようなものは一切なく、優勝したmonokuro選手に至っては流行りの《飛翔龍 5000VT》すら採用しない極めて硬派な構築。【水闇魔導具】というデッキへの信頼が伺える。
ここからは惜しくも上位入賞は果たせなかったがメタゲームに鋭くアプローチしたデッキや、母数こそ少なかったものの輝かしい活躍を見せたデッキたちをいくつかピックアップしていこう。
せいな DMGP2023-2ndTOP8デッキリスト オリジナル構築 |
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GP2ndを【マークロループ】で制したせいな選手が持ち込んだのは、現代の《マーシャル・クロウラー》デッキだった。
いわゆる【ブレスラチェイン】と呼ばれるデッキタイプはTOP128の入賞数では【水闇魔導具】・【火自然アポロヌス】に迫る6位。環境母数と比べての入賞率が高い、「勝ち組」デッキのひとつだった。
1枚でも踏めば一発でKOされかねないインパクト抜群の踏み倒しトリガーと最速4ターンコンボインを両立した稀有なデッキだが、せいな選手の構築は一般的に見られる《ディスタス・ゲート》+《Disアイ・チョイス》のパッケージを起用せず、そのスペースを独自のピン刺しカードに多く割り振っているのが特徴的だ。
一見して全てのカードの採用理由を見出すことはできないが、初動ブーストの枚数を11枠確保することと、コンボのコアとなるパーツ以外をできるだけ単色に抑えて手札になるべく負担をかけずに3→5を成功させることの2点は明確に意識されていると見て良いだろう。
あごもん DMGP2023-2ndTOP8デッキリスト オリジナル構築 |
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令和の世に突如として現れたドロン・ゴーデッキは、生配信を大いに沸き立たせた。……もちろん筆者もその例に漏れない。
どうしても《終剣連結 アビスハリケーン》を絡めた無限攻撃コンボが目を惹くが、筆者が注目したいのは《制服槍 ブータン》の強さだ。
【水闇魔導具】でも《堕魔 ドゥポイズ》が採用されているが、2ターン目に出てきたクリーチャーをコンパクトに対処できる除去は現環境においてかなり使い勝手が良い。
革命チェンジのタネを割ったり、メタクリーチャーのポン置きを咎めたり、軽減初動を排除したり……パワー8000と大きいため《飛翔龍 5000VT》のロックを無視して着地し、相手の盤面にクリーチャーがいなければジャストダイバーも貫通して打点を排除できる。
ラスト・バーストやドロン・ゴーでアドバンテージを取れるのは言うに及ばず、《俺神豚 ブリタニア /「カツキング、俺とお前の勝負だ!」》が場と手札に1枚ずつあれば2マナを支払うたびに相手のクリーチャーを1体ずつ破壊していくループすら成立する。
【水闇自然ジャオウガ】のような空の盤面からリーサルを組めないデッキには特に有効なギミックだ。
S・バックメクレイド呪文やツインパクト・トリガー、《終末の時計 ザ・クロック》まで無理なく採用できるため防御力が非常に高く、大量のルーターでドロン・ゴーのための手札供給はかなり安定する。ウルトラ・ドロン・ゴーは環境の中心にいるバウンス除去をものともせず、《飛翔龍 5000VT》を無理なく使えてトレンドもしっかり押さえている。
目新しさに印象を持っていかれがちなデッキだが、今回の上位入賞は為すべくして為ったものだと言えるだろう。
みぃむ DMGP2023-2ndTOP8デッキリスト オリジナル構築 |
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ベスト8は【水闇自然ジャオウガ】、【水火マジック】、【水闇魔導具】が各2人ずつに、【闇火自然邪王門アビス】が1人。残る1人であるみぃむ選手が愛機として選んだのは、TOP128唯一の【水闇火バイク】だった。
軽量コマンドと優秀な侵略先をメインアタッカーに据えつつ、《異端流し オニカマス》や《影速 ザ・トリッパー》に代表されるメタ要素を絡めたメタビート。
《覇帝なき侵略 レッドゾーンF》と3打点の侵略者、《龍装者 バルチュリス》が揃えば空のバトルゾーンからでも1体のスピードアタッカーコマンドが通るだけで勝負を決められる火力も持ち合わせている。
みぃむ選手の構築は、定番の《終末の時計 ザ・クロック》のみならず《終止の時計 ザ・ミュート》や《撃髄医 スパイナー》まで、トリガーを多めに採用しているのが特徴だと言えるだろう。
トリガーの採用傾向としては、いずれも面攻撃を止めつつ打点をバトルゾーンに残せるカードであることが目立つ。
《撃髄医 スパイナー》のスーパー・S・トリガーは《CRYMAX ジャオウガ》3点や《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》へのカウンターパートとして非常に有効に機能してくれるだろう。侵略元のコストが揃って4以下なので、蘇生先が強いのも嬉しいポイントだ。
ここまでで3つのデッキを紹介したが、これらはいずれも「手札からのコスト踏み倒し」を展開の起点、あるいは主軸に据えている点で共通している。
【ブレスラチェイン】は《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》の呪文面、【水闇ブータン】はドロン・ゴー、【水闇火バイク】は侵略と《龍装者 バルチュリス》がそれらに該当する。
《飛翔龍 5000VT》が牛耳る現環境は【水闇自然ジャオウガ】以外に軽量メタクリーチャーを扱うデッキが少なく、あっても≪ボン・キゴマイム≫ぐらいのもの。
当の【水闇自然ジャオウガ】のメタクリーチャーも少数の《とこしえの超人》や《若き大長老 アプル》が優先されるため、手札からの踏み倒しに無防備なデッキが非常に多い環境が形成されている。
間もなく「デュエキングMAX2023」の発売に合わせて切り替わる環境だが、新たなデッキを考える際のひとつの鍵として押さえておきたい傾向だ。
総括
煮詰まってきた環境末期ゆえにか、ほとんどのプレイヤーが事前予想したであろう形にメタゲームは収束した。《飛翔龍 5000VT》と≪ボン・キゴマイム≫が支配する環境で、【水闇自然ジャオウガ】がダントツの最多予選突破者を輩出した。【水火マジック】が電光石火で駆け抜け、ビートダウンデッキのトップを勝ち取った。【闇自然アビス】がいくつものバトルゾーンを深淵で埋め尽くし、その強さを知らしめた。
そして優勝を収めたのは、《飛翔龍 5000VT》と≪ボン・キゴマイム≫を意に介さず、《「無月」の頂 $スザーク$》の圧倒的なカードパワーでゲームをコントロールする【水闇魔導具】だったのだ。
一つの大会が終わり、一つの環境が終わったが、デュエル・マスターズは終わることなく新たな環境が始まる。
この大会の記録が、また新たな戦場の礎の一部となれば幸いである。
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