超CSⅥ福岡 Round 1:カロン vs. オチャッピィ
ライター:河野 真成(神結)
撮影者:瀬尾 亜沙子
夢が叶うのは、ほんの僅か一握りで、多くのプレイヤーにとっては挑むことすらも許されない。
それがDMPランキングというものだ。
だからこそ、社会人との二足の草鞋を履きながらランキングの2位に付けているオチャッピィというプレイヤーには、個人的に尊敬の念を抱いている。
彼が挙げた実績の凄まじさは、過酷な日々からも理解することが出来るだろう。
そう、例えばこの日も。
オチャッピィ「仕事が残業でさ、家帰ったら間に合わないからそのまま新幹線に飛び乗ったんだよね」 超CSの前日は金曜日。社会人であるオチャッピィにとっては、当然のように仕事だった。
そんなわけで彼は仕事をこなして大急ぎで新幹線に飛び乗って、ギリギリで福岡に到着したという。
試合前には対戦相手で知り合いでもあるというカロンとの談笑を楽しんでいるようだったが、流石には疲労は完全に抜け切ってはいないようだった。
オチャッピィ「いやー、起きる時間もギリギリで。近くのホテルとっておいて良かったっすね」
カロン「(寝坊しそうという)ツイートみた瞬間、『これは来たか?』と思ったんだけど」
オチャッピィ「小賢しすぎだろ」
《ストームジャベリン・ワイバーン》のようなツッコミはさておき、どんな状況であれ、どんな境遇であれ、机に座れば始まるのがデュエル・マスターズである。もちろん、相手に対して遠慮している余裕など――それが例え残業からの新幹線5時間コースであったとしても――このゲームには存在していない。
ちなみにカロンの方も、昨年は長野から仙台まで車を飛ばして超CSに参加した経験がある。恐らくオチャッピィのこの日の境遇に対して、何かしら思うところがあったかもしれない。
やがてフィーチャー卓から少し離れたところで、「天井にも届くほどの元気な挨拶」を求めるチアリの掛け声が飛ぶ。何とも皮肉めいた話ではあるが、それはさておき「デュエマスタート!」の掛け声と共に、試合は始まった。
先攻:カロン カロンの初手埋めは《芸魔隠狐 カラクリバーシ》で、どうやら【水火マジック】の模様。対してオチャッピィは《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》。闇単か闇自然かはわからないが、自身の代名詞とも言えるアビスデッキのようだ。
試合前に「アビス前提で行くから」と宣言していたカロンにとっては、予想通りの展開となったか。2ターン目、《AQvibrato》を召喚しプレッシャーを掛けにいく。
だがこれに対してオチャッピィも《ブルーム=プルーフ》の召喚に成功。どうやら闇単が確定したと同時に、その効果によって革命チェンジを防ぐ格好だ。 これで一旦落ち着いたゲームになるかと思えたが、そんなことにはならなかった。
カロンは《Napo獅子-Vi無粋 / ♪オレの歌 聞けよ聞かなきゃ 殴り合い》の呪文面で《ブルーム=プルーフ》を破壊すると、《AQvibrato》を《芸魔隠狐 カラクリバーシ》へと革命チェンジ。そして1ドローから《瞬閃と疾駆と双撃の決断》まで唱える。
カロン「《ハンマ=ダンマ》ってより小さいですよね?」
オチャッピィ「そう、有効じゃないんですよ」 苦笑いで応じるオチャッピィ。《瞬閃と疾駆と双撃の決断》のクリーチャーを出す効果で《AQvibrato》を置くと、《芸魔隠狐 カラクリバーシ》の1点が入る。トリガーはない。
《瞬閃と疾駆と双撃の決断》の効果で起き上がった《芸魔隠狐 カラクリバーシ》は、続けざまに革命チェンジで《芸魔王将 カクメイジン》へと変わる。 なんと初手から綺麗に繋げ切ったカロン。さすがに追加の呪文はないものの、《瞬閃と疾駆と双撃の決断》だけでも充分お釣りが来る展開だ。
そして、この2点にもトリガーはなかった。
カロンは起き上がった《芸魔王将 カクメイジン》で更にWブレイクを宣言すると、呪文の使用はせず。《AQvibrato》と合わせてちょうどピッタリの打点になる。
だが【闇単アビス】も受けの自信のあるデッキだ。そうそう簡単に通るわけが……。
オチャッピィ「何もないです……」
……なんと、通ってしまった。
「マジかよ」とでも言いたげな表情のオチャッピィと、笑顔のカロンとの対比が、あまりにも印象的だった。
WINNER:カロン
オチャッピィ「俺、今日《死神XENARCH・ハンド》と≪龍頭星雲人≫入れてたのに」
カロン「え、じゃあ(《瞬閃と疾駆と双撃の決断》から出すべきカードは)≪同期の妖精≫だったじゃん」
オチャッピィ「そう。だからそもそもあのタイミングで踏ませれば勝てたんだよな。そもそも《ハンマ=ダンマ》入ってないし」
上記のゲーム進行になると《ハンマ=ダンマ》は機能しない。それを見越し、どうやら【水火マジック】に有効なトリガーを2種積んでいたようだ。
もっとも、この試合で姿を見せることはなかった訳だが。
デュエル・マスターズでは、このような形で決着が付くこともしばしばある。本来勝てる対面をノートリガーで落としたり、デッキの半分くらいの回答札を引かなかったり、或いは自分のプレイが関与する瞬間がほぼないまま終わったり。
だからこそ高い勝率を維持して上位をキープしているオチャッピィの恐ろしさも際立つのだが……。
オチャッピィ「まぁ、これで観光までリーチだね」
カロン「いや、俺は決勝で待ってるよ?」
オチャッピィ「決勝まで残ると飛行機間に合わないんだよ」
オチャッピィは、苦笑いで応じた。
詳しく聞くと、明日(日曜日)の天候が不透明であるため、万が一欠航になるようなことがあれば月曜日の出社に間に合わない。だから、今日中に帰るらしい。
オチャッピィ「福岡の滞在時間、24時間もないっすよ」
社会人とプレイヤー、二足の草鞋を履く。
その言葉の意味と覚悟を、見せ付けられたような気がした。
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